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おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。 厚生労働省は2026年(令和8年)10月8日、11月の「過労死等防止啓発月間」に行う取組の概要を公表しました。全国48会場でのシンポジウムに加え、11月1日(日)から30日(月)までを「過重労働解消キャンペーン」の期間として、長時間労働が疑われる事業場への重点監督、11月1日から7日までの相談受付集中期間、11月7日(土)の無料の特別労働相談が実施されます。 過重労働解消キャンペーンは毎年11月の恒例の取組ですが、重点監督の対象は無作為に選ばれるわけではありません。厚生労働省のキャンペーンページによれば、対象は、過労死等に係る労災請求が行われた事業場、各種情報から時間外・休日労働が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場、そして労働基準監督署やハローワークに寄せられた相談等から離職率が極端に高いなどの問題があると考えられる事業場です。中小企業にとって11月は、労働基準監督署の調査が入りやすい時期です。本記事では、公表された取組の内容を厚生労働省の報道発表とキャンペーンページで確認したうえで、11月1日までの約3週間で点検しておくべきことを整理します。 なお、当法人は9月16日の記事で、令和7年度に長時間労働が疑われる29,150事業場に行われた監督指導の結果(違法な時間外労働が確認された事業場は11,228、38.5%)を取り上げています。本記事はその続報として、今年11月に行われる取組そのものを扱います。 |
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| 1 「過労死等防止啓発月間」と過重労働解消キャンペーンの全体像 | |||||||||||||||||||||
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過労死等防止啓発月間は、過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)5条に定められています。同条1項は「国民の間に広く過労死等を防止することの重要性について自覚を促し、これに対する関心と理解を深めるため、過労死等防止啓発月間を設ける」とし、2項で月間を11月と定め、3項で国と地方公共団体に、月間の趣旨にふさわしい事業の実施に努めることを求めています。11月のシンポジウムもキャンペーンも、この条文を根拠とする取組です。 同法2条は「過労死等」を、業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡、業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡、そしてこれらの脳血管疾患・心臓疾患・精神障害(死亡に至らないものを含む)と定義しています。死亡に至らない脳・心臓疾患や精神障害も「過労死等」に含まれるという点は、見落とされがちです。 厚生労働省の10月8日の報道発表によれば、11月に行われる取組は次のとおりです。 |
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このうち、会社の実務に直接関わるのは重点監督と、その端緒となり得る相談受付・特別労働相談です。以下、順に確認します。 |
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| 2 重点監督――誰が対象になり、何を見られるか | |||||||||||||||||||||
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厚生労働省のキャンペーンページは、重点監督の対象を2つの文で示しています。1つは「長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等」、もう1つは「労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなどの問題があると考えられる事業場等」です。整理すると、労災請求、月80時間超の疑い、離職率の3類型になります。 ここで注意したいのは、「各種情報」と「離職率が極端に高い」の中身が公表資料では定義されていないことです。各種情報には、労働者からの申告(労働基準法104条)、相談受付集中期間や特別労働相談で寄せられた情報、労災請求に伴う情報などが含まれると考えられますが、これは当法人の推論であり、厚生労働省が範囲を明示しているわけではありません。離職率についても、数値の基準は示されていません。対象の3類型のいずれも、会社が自分で選べるものではなく、労働者や元労働者の行動を通じて外に出た情報から決まるという点が、この監督の特徴です。 重点監督で主に確認される事項は、キャンペーンページに4つ挙げられています。 |
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4つ目の事項は、2026年9月1日から見直された労働基準監督署の監督指導の方向と重なります。厚生労働省は8月19日、時間外・休日労働の時間数のみに着目して月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直し、各事業場が36協定で定める健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を重点的に確認すると発表しました。見直しの内容は当法人の記事「「残業45時間」一律指導の見直しは長時間労働の容認なのか」で解説しています。11月の重点監督でも、特別条項で定めた健康福祉確保措置が実際に講じられ、その記録が残っているかが見られることになります。 違反が見つかった場合の帰結も、キャンペーンページに明記されています。重大・悪質な法違反が認められた場合は送検し、公表するとされています。加えて、監督指導の結果、1年間に2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けた場合等は、ハローワークにおいて一定期間求人を受理しないとされています。これは職業安定法5条の6第1項3号に基づく求人の不受理で、労働基準法や最低賃金法など政令で定める労働関係法令の違反について一定の処分や公表等の措置が講じられた事業主からの求人が対象です。人手不足のもとでハローワーク経由の採用ができなくなることは、中小企業にとって送検以上に直接的な打撃になり得ます。 |
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| 3 相談受付集中期間と11月7日の特別労働相談 | |||||||||||||||||||||
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キャンペーンの最初の1週間、11月1日(日)から7日(土)までは「過重労働相談受付集中期間」です。報道発表とキャンペーンページはいずれも、11月1日(日)と3日(火・祝)を除くとしています。11月1日は期間の初日でありながら除外日にも挙げられているため、実質的には2日(月)から7日(土)までの平日と土曜が受付日と読めますが、原文の表記に不整合があることをそのままお伝えしておきます。この期間、都道府県労働局と労働基準監督署は、過重労働に関する相談と、労働基準関係法令違反が疑われる事業場の情報を積極的に受け付けるとしています。 11月7日(土)には、電話による無料の特別労働相談が行われます。窓口は2つです。 |
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過重労働解消相談ダイヤルは労働基準監督官が直接対応する窓口です。相談対象者の範囲(労働者本人のほか、家族や事業主からの相談を受け付けるか)については、本年の報道発表とキャンペーンページに明示的な記載を確認できていません。 この相談は、労働者の側から見れば、休日に労働基準監督官に直接相談できる機会です。会社の側から見れば、ここに寄せられた情報が「各種情報」として重点監督の端緒になり得ます。社内に相談できる窓口がない、あるいは窓口はあっても機能していない会社ほど、従業員は外に相談します。相談窓口の有無と実効性を点検することは、11月に限らない課題ですが、この時期に確かめておく意味は大きいと考えられます。 |
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| 4 シンポジウムとセミナー――愛知会場は11月10日(火)吹上 | |||||||||||||||||||||
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過労死等防止対策推進シンポジウムは、47都道府県48会場(東京は2会場)で開催されます。報道発表によれば、過労死で亡くなった方の遺族の体験談や、メンタルヘルスの専門家等による講演などが予定され、参加は無料で誰でも参加でき、インターネット視聴用に講演などの動画も配信されます。申込みは専用ページから会場を選んで行う先着順で、申込準備が整った会場から順次受付が始まっています。執筆時点では北海道と熊本の会場が準備中と表示されていました。 愛知会場は、専用ページの愛知会場案内によれば、2026年11月10日(火)14時から16時30分まで(受付13時30分から)、名古屋市中小企業振興会館7階メインホール(名古屋市千種区吹上二丁目6番3号)で開催されます。プログラムは、愛知労働局からの報告「職場におけるカスタマーハラスメント対策の強化等について」、基調講演「過労死被害の実態から、予防・根絶を考える」(玉木一成氏)、企業からの取組事例発表、過労死遺族の声の4部構成で、愛知県、名古屋市、愛知県弁護士会が後援しています。愛知労働局の報告が、10月1日に施行されたカスタマーハラスメント対策の事業主の措置義務を扱う点は、11月に入ってからの実務の参考にもなると考えられます。 当法人は、経営者や管理職の方がこのシンポジウムに参加する価値は高いと考えます。過労死等の防止は、就業規則や36協定の整備だけでなく、現場で部下の働き方を見ている管理職の認識に左右されるからです。管理職研修の一環として参加を検討することをお勧めします。 このほか、10月から翌年1月にかけて、委託事業として「過重労働解消のためのセミナー」が会場またはオンラインで無料で開催されます。特別企画として「業務効率化セミナー」もオンラインで実施されます。申込先は厚生労働省のキャンペーンページから案内されています。 |
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| 5 中小企業が11月1日までに点検すべき5項目 | |||||||||||||||||||||
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重点監督の対象3類型と監督指導事項4つを踏まえ、11月1日までに最低限点検しておくべき項目を当法人なりに整理します。いずれも個別の事情を離れた一般的な整理であり、厚生労働省が点検項目として示したものではありません。 |
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| 6 今後の注目点と、確認できなかったこと | |||||||||||||||||||||
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重点監督の結果がどのように公表されるかは、現時点では分かりません。平成30年度のキャンペーンについては、翌年に厚生労働省が「平成30年度『過重労働解消キャンペーン』の重点監督の実施結果」として、8,494事業場に監督指導を行い、2,802事業場(33.0%)で違法な時間外労働が確認されたと公表しています。他方、直近の年度については、キャンペーン単独の結果公表を当法人は確認できておらず、令和7年度分は9月15日に公表された年度全体の監督指導結果に含まれている可能性があります。令和8年のキャンペーンの結果が単独で公表されるかどうかは不明です。 もう1つの注目点は、過労死等防止対策推進法6条に基づく年次報告、いわゆる過労死等防止対策白書です。令和7年版は令和7年10月28日に公表されました。令和8年版は、本記事の執筆時点(10月9日)で公表を確認できていません。例年どおりであれば10月中の公表が見込まれますが、これは過去の例からの推測です。 本記事で確認できなかった事項は次のとおりです。第1に、重点監督の実施件数の目標や規模は、報道発表にもキャンペーンページにも記載がありません。第2に、報道発表が言及する「別紙」の内容は、ページ本文に含まれておらず確認できていません。第3に、特別労働相談の相談対象者の範囲は、本年の資料で明示を確認できていません。第4に、重点監督の対象を定める「各種情報」と「離職率が極端に高い」の具体的な基準は公表されていません。 |
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| 7 当法人の視点 | |||||||||||||||||||||
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過重労働解消キャンペーンの案内を「11月は監督署が来やすい」という注意喚起として読むだけでは、半分しか読んだことになりません。重点監督の対象3類型を見れば、監督署がどの会社に行くかを決めているのは、会社の外にいる監督官ではなく、会社の中にいる従業員と、会社を辞めた元従業員だからです。 |
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| まとめ | |||||||||||||||||||||
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11月は過労死等防止対策推進法5条に基づく過労死等防止啓発月間です。厚生労働省は10月8日、全国48会場でのシンポジウム(愛知会場は11月10日)と、11月1日から30日までの過重労働解消キャンペーンの実施を公表しました。重点監督の対象は、過労死等の労災請求があった事業場、月80時間超の時間外・休日労働が疑われる事業場、離職率が極端に高いなどの問題があると考えられる事業場で、36協定の範囲内か、賃金不払残業がないか、労働時間の適正な把握、医師の面接指導等の健康福祉確保措置の4つが主に確認されます。重大・悪質な違反は送検・公表され、同一条項の違反で1年間に2回以上の是正勧告を受けた場合等はハローワークの求人不受理の対象になります。11月1日から7日までは相談受付集中期間、11月7日(土)には無料の電話相談が実施されます。 監督署の調査は、来てから慌てても間に合いません。36協定の不備や勤怠記録の乖離は、遡って直すことができないからです。当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。11月を迎える前の今のうちに、36協定の点検、労働時間の記録の見直し、面接指導の仕組みの確認、離職と相談の状況の把握を、経営者と一緒に進めてまいります。賃金台帳と勤怠記録の照合については給与監査顧問、36協定や相談窓口を含む規程の整備については就業規則作成・改訂、継続的なご相談については高難度業務対応型顧問のページもご覧ください。 |
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