(1)会社の応接室や就業時間中に団体交渉を開催しないこと
会社の会議室や就業時間に団体交渉を要求してくることがあります。もしそのようにしてしまうと、会社の施設内、就業時間中の労働組合活動を認めた、というような主張展開をされるリスクが考えられますので、会社内、就業時間中の団体交渉の開催は避けた方が良いです。
やはり、有料である会社外の施設で、終業時刻以降に対応するようにすべきと考えます。
団体交渉を行う過程において、団体交渉の場で、書面に署名を要求してくるケースがあります。そして、当該書面に署名しないことが、あたかも不当労働行為であるような言い回しをして、署名を要求してくることもあります。
書面の内容をよくよく検討せず、その場で安易に署名をしてしまうと、それは「労働協約」の締結という効果を持ち、とても大きな効力を有することになります。一度労働協約を締結してしまうと、簡単には破棄どころか変更もできないこともありますし、今後の労務管理において大きな影響を与えてしまう結果になりかねません。
この様な場合、会社に一度持ち帰って対応することが大切です。この対応が、直ちに不誠実団交となることはありえません。会社は組織ですから、当然に時間をかけて協議しなければならないものです。
よって、内容が不明若しくは理解ができない場合、その場で書類に署名をすべきではないですし、その場で署名する必要もありません。
合同労組(ユニオン)は、会社の諸規程を始め、決算報告書等さまざまな書類の提出を要求してきます。必ずしも要求される書類をすべて提出する義務はありません。
就業規則は従業員に積極的に開示し理解をさせるべきと考えますが、決算報告書等には、会社を経営していく上で、重要な機密事項が多く含まれています。これらの資料をすべて提出しなければならない根拠はありません。回答すべき事項に必要な情報を適宜口頭にて提示すれば十分に足ります。
ただし、交渉内容によっては、人件費や販管費等について、団体交渉の過程の中で必要であれば開示することも必要です。
合同労組(ユニオン)によっては、不当労働行為には当たらない使用者の行為について「それは不当労働行為にあたる」「労働委員会に申立をしますよ」など発言すること、又は不当労働行為にあたると考えるというニュアンス的な主張があります。
そのような発言を受けて、企業の担当者は恐ろしくなってしまい、労働組合のいうとおりに労働協約を結んでしまうことがあります。それを知ってわざとそのような発言をすることもありますが、本当に該当することもありますので、内容の見極めが必要ですが、その野次や罵声にひるまずに冷静になって対応することが大切です。
また、状況によっては、こちらから積極的に労働委員会を利用することも一つの手だと思います。そして、労働委員会の委員の方に立ち会って貰うこと(立会団交)も積極的に利用することも対応策の一つです。
団体交渉において企業に求められるのは、合同労組(ユニオン)の主張を受け入れ同意することではなく、合同労組(ユニオン)の主張を確認したうえで、会社の意見を誠実かつ明確に伝え、相手に納得してもらうよう真摯に対応することです。そして、団体交渉が進む中で、双方の妥結点を見出し、決着を見る、という展開となります。
しかし、場合によっては、双方の意見が全く落ち着かず、交渉が決裂することも考えられます。
団体交渉を開催したら、絶対に合意に至らなければならないと考えるかもしれませんが、決裂も十分に考えられるものです。また、団体交渉を行うにあたり、決して決裂することを恐れる必要はありません。
団体交渉を重ねても平行線から一向に改善が見られない場合等、団体交渉を打ち切ることもあります。しかし、企業側から、あまりこの様な姿勢で対応することは望ましいとは考えません。企業側は、合同労組(ユニオン)に対して、何度も何度も説得するくらいの気持ちで臨み、何とか妥結を試みる姿勢を貫くことが大切と考えます。
それは、決裂したの場合や団交を打ち切った場合、ビラ配りや旗振り、街宣活動、そして、訴訟への発展等も考えられますので、そこまで見越したうえで対応を考えないと非常に危険です。
不誠実団交や団交拒否が問題があることは 言うまでもありませんが、不必要に決裂を恐れ妥協する必要は全くありません。労働委員会であっせんの申し出をするぞ、不当労働行為で訴えるぞ、等合同労組(ユニオン)は脅し文句をいうこともありますが、それに怯むことなく、団体交渉を継続する姿勢が大切と考えます。