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おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。 厚生労働省は2026年9月25日、労働者派遣事業の許可取消しを2件公表しました。1件は愛知県一宮市の会社で、当法人のある名古屋から電車で十数分の距離にあります。取消しの理由は、出入国管理及び難民認定法(入管法)の不法就労助長罪で罰金刑が確定したことでした。もう1件は東京都港区の会社で、理由は「関係派遣先派遣割合報告書」を提出しなかったことです。労働局の指導にも指示にも従わず、最後は許可を失いました。 一方は刑事事件、一方は書類の未提出。性質はまったく違いますが、どちらも「事業の存続そのもの」が失われたという点で、派遣会社を経営する方にも、派遣を受け入れている会社にも見過ごせない事例です。本記事では、厚生労働省の報道発表資料と条文を確認したうえで、2件の処分の仕組みを読み解き、派遣元と派遣先のそれぞれが点検すべきことを整理します。 |
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| 1 公表された2件の概要 | ||||||||||||
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厚生労働省の報道発表資料(2026年9月25日)に記載された内容を整理します。事業主名、所在地、許可番号、処分日、根拠条文、処分理由はいずれも公表資料に記載されているものです。 |
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| 2 事案�@を読む――「罰金」でも許可は失われる | ||||||||||||
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不法就労助長罪とは何か。入管法73条の2第1項は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者(1号)、外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者(2号)、業として不法就労活動をさせる行為等をあっせんした者(3号)を処罰します。今回の処分理由は同項1号、つまり「不法就労活動をさせた」類型です。同条2項は、雇った外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、知らないことに過失があれば処罰を免れないと定めています。在留カードの確認を怠ったまま雇い入れた場合は、この過失に当たり得ます。 罰則は引き上げられるが、まだ施行されていない。出入国在留管理庁の「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」によれば、令和6年の入管法等改正(令和6年法律第60号、令和6年6月21日公布)により、この罪の罰則は「拘禁刑3年以下又は罰金300万円以下」から「5年以下又は500万円以下(併科可)」に引き上げられます。ただし、同資料は施行時期を「公布の日から原則3年以内に施行」としており、改正法の施行期日を定める政令(令和7年政令第340号)は、施行期日を令和9年4月1日と定めています。つまり、罰則の引上げは2027年4月1日からであり、本記事執筆時点では引上げ前の罰則が適用されています。ファブレス社の刑が確定したのは2026年1月7日ですから、引上げ前の罰則の下で処断されたことになります。民間の解説には「2025年に厳罰化された」とするものが見られますが、当法人が確認した一次資料とは一致しません。 |
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※出典:出入国在留管理庁「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」および「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」。改正法(令和6年法律第60号)は育成就労制度の創設を主な内容とする法律で、その施行期日が令和9年4月1日とされています。 なぜ「罰金」で派遣許可が消えるのか。労働者派遣法6条は、許可の欠格事由を定めています。その1号は、拘禁刑以上の刑に処せられた者のほか、労働関係法令の一定の規定、刑法の暴行・傷害等の罪などと並んで、入管法73条の2第1項の罪により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者を挙げています。そして14条1項1号により、許可を受けた後に6条各号(一部の号を除く)の欠格事由に該当するに至ったときは、許可を取り消すことができます。職業安定法も同じ構造で、32条1号が同じ罪による罰金刑を欠格事由とし、32条の9第1項1号が取消事由としています。つまり、不法就労助長罪は、罰金刑でも派遣・紹介事業の欠格事由になる「特別扱い」の罪だということです。一般の法令違反であれば罰金刑で許可が失われるとは限りませんが、この罪は違います。今回の事案�@で派遣と職業紹介の許可が同時に取り消されたのは、両法が同じ罪を欠格事由に挙げているからです。 取消しの「その先」も重い。6条5号は、14条1項(1号を除く)の規定により許可を取り消された者について、取消しの日から5年間は新たに許可を受けられないとしています。今回の事案�@は14条1項1号による取消しのため5号の直接の対象ではありませんが、そもそも1号の欠格事由(罰金刑の執行終了等から5年)が続いている間は、再取得はできません。また、6条11号により、法人の役員のうちに欠格事由に該当する者がいれば、その法人自体が欠格になります。役員個人が不法就労助長罪で罰金刑を受ければ、会社の事業許可に直結する構造です。今回の刑事事件で処罰されたのが法人か、役員個人か、その両方かは、公表資料からは分かりません。 |
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| 3 事案�Aを読む――「報告書1枚」の重さ | ||||||||||||
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関係派遣先派遣割合報告書とは何か。労働者派遣法23条の2は、派遣元がグループ企業など「関係派遣先」に派遣する割合を80%以下にしなければならないと定めています。いわゆるグループ企業内派遣の8割規制で、派遣がグループ内の人件費調整の手段として使われるのを防ぐための規定です。この割合を行政が把握するために、23条3項は、派遣元に関係派遣先への派遣割合を厚生労働大臣に報告する義務を課しています。これが「関係派遣先派遣割合報告書」(様式第12号-2)です。提出期限は、労働者派遣法施行規則17条の2により、毎事業年度経過後3か月以内です。労働者派遣事業報告書(様式第11号)が事業所単位で作成するのに対し、この報告書は事業主単位で作成します。 関係派遣先がない会社も提出が必要か。実務でよく聞かれるのが、「うちはグループ会社に派遣していないから関係ない」という声です。23条3項の条文は、派遣実績の有無で報告義務を区別していません。大阪労働局のウェブページも、労働者派遣事業報告書、収支決算書、関係派遣先派遣割合報告書の3つについて、派遣実績がない場合でも提出は必要と案内しています。したがって、関係派遣先への派遣がない場合でも報告書の提出は必要と考えられます。管轄の労働局によって案内の仕方が異なることがありますので、提出方法は管轄の労働局にご確認ください。 取消しまでの段階。公表資料から、行政が次の段階を踏んでいたことが分かります。 |
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当ブログの9月14日の記事では、求人サイトを運営する特定募集情報等提供事業者が、年1回の事業概況報告書を提出せず業務改善命令にも違反したことを理由に、職業安定法に基づく事業停止命令を受けた事案を取り上げました。今回はさらに進んで許可の取消しです。人材ビジネスの規制では、定期報告の未提出が「うっかり」では済まされないことが、改めて確認できます。なお、DAYDREAM社がなぜ指導・指示に応じなかったのか、事業の実態がなかったのか、単なる放置だったのかは、公表資料からは分かりません。 |
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| 4 派遣先・受入れ企業にとっての意味 | ||||||||||||
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派遣元の許可取消しは、派遣元だけの問題ではありません。労働者派遣法24条の2は、派遣先が、許可を受けた派遣元事業主以外の者から労働者派遣の役務の提供を受けることを禁じています。取消し後も漫然と受入れを続ければ、派遣先も違法状態になります。 さらに、無許可の事業主からの受入れは、労働契約申込みみなし制度(同法40条の6第1項2号)の対象です。派遣先が違法派遣に当たる行為をした時点で、派遣先はその派遣労働者に対し、派遣元との労働条件と同一の労働条件による労働契約の申込みをしたものとみなされます。派遣先が違法であることを知らず、かつ知らなかったことに過失がなかったときはこの限りではないとされていますが、厚生労働省が報道発表で事業主名を公表している以上、公表後も受入れを続けた場合に「知らなかった」と主張するのは難しくなると考えられます。これは当法人の推測です。 事案�@のように不法就労助長罪が問題になった派遣元から外国人労働者を受け入れていた場合、派遣先自身の在留資格確認も問われかねません。前述のとおり、入管法73条の2第2項は、不法就労者であることを知らなかった場合でも過失があれば処罰を免れないと定めています。派遣労働者の雇用主は派遣元ですが、派遣先が就労させている外国人の在留資格と就労制限の有無を確認していなかった場合に、この規定との関係でどう評価されるかは、個別の事情によります。 |
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| 5 確認できなかった点 | ||||||||||||
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正確を期すため、公表資料から確認できなかった事項を挙げておきます。 |
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| 6 派遣元と派遣先、それぞれの点検項目 | ||||||||||||
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2件の処分を自社に引き付けるなら、派遣元・紹介事業者と派遣先とで点検すべきことが分かれます。いずれも、本件の事実関係を離れて一般的な実務として整理したものです。 |
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| 7 当法人の視点 | ||||||||||||
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2件の処分は、性質こそ違いますが、共通点があると考えます。事業の存続要件が、日々の営業活動とは別のところで管理されるべきものだったという点です。在留資格の確認も、年1回の報告書も、売上には直結しません。しかし、そこを外すと、売上を生む許可そのものが消えます。 |
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| まとめ | ||||||||||||
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厚生労働省は2026年9月25日、労働者派遣事業の許可取消し2件を公表しました。愛知県一宮市の株式会社ファブレスは、不法就労助長罪(入管法73条の2第1項1号)で罰金刑が確定したことにより、派遣と職業紹介の両方の許可を取り消されました。この罪は罰金刑でも派遣・紹介事業の欠格事由になります。東京都港区の株式会社DAYDREAMは、関係派遣先派遣割合報告書を提出せず、指導・指示にも従わなかったことで許可を取り消されました。不法就労助長罪の罰則引上げ(5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金)は2027年4月1日施行であり、まだ施行されていません。派遣元は定期報告と在留資格確認の運用を、派遣先は取引先の許可の有効性の確認を、それぞれ点検してください。 当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。許可を取るところまでではなく、許可を維持し続ける仕組みを会社の中に組み込むところまで、経営者と一緒に整えてまいります。派遣・職業紹介事業の定期報告と手続の管理については労務手続代行・監査、外国人雇用や許認可に関わる難しい案件の対応については高難度業務対応型顧問のページもご覧ください。 |
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