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作成日:2026/09/21
令和7年外国人雇用実態調査(2026年8月31日公表)を読む――外国人労働者204万人・月給292.4千円の内側にある「在留資格別の断層」

労務トピックス

令和7年外国人雇用実態調査(2026年8月31日公表)を読む――外国人労働者204万人・月給292.4千円の内側にある「在留資格別の断層」

技能実習は身分に基づく在留資格の人より月20時間近く長く働き、月給は13万円以上低い。海外から入職した人の58.3%は入国に40万円以上を払っている。育成就労計画の申請受付が始まった今、経営者・人事担当者が押さえるべき数字を、厚生労働省の一次資料から整理します。

2026年9月2日|社会保険労務士法人T&M Nagoya

📌 この記事の要点

  • 厚生労働省が2026年8月31日に「令和7年外国人雇用実態調査」を公表。雇用保険被保険者5人以上の事業所で働く外国人労働者は約204万人(前年約182万人)で、在留資格別では専門的・技術的分野が42.1%と最大。ただし、その内訳は技術・人文知識・国際業務18.5%と特定技能17.9%がほぼ同規模。
  • 一般労働者の月間きまって支給する現金給与額は292.4千円(前年比6.4%増)。一方で、身分に基づく在留資格347.2千円(13.8%増)に対し、技能実習213.5千円(1.7%増)、特定技能254.1千円(1.5%増)と、伸び率に明確な断層がある。
  • 技能実習は所定内165.2時間・超過21.4時間と最も長く働き、年間賞与は63.6千円。身分に基づく在留資格(151.0時間・15.8時間、賞与450.6千円)との差は、賃金・労働時間・賞与の3方向に開いている。所定内給与を所定内時間で割った技能実習の時間額は約1,092円で、調査時点で適用されていた令和6年度の全国加重平均最低賃金1,055円との差は37円。
  • 海外から入職した人の82.0%が紹介会社等を経て来日し、入国費用は40万円以上が58.3%、100万円以上が16.1%。就労上のトラブルの最多は「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」22.2%。
  • 「トラブルをどこに相談すればよいか分からなかった」は全体15.8%だが、技能実習では18.9%(前年9.3%)に倍増。定着意向は全体81.2%に対し技能実習76.1%と最も低く、転職希望は9.3%。
  • 2026年9月1日に育成就労計画の認定申請(施行日前申請)の受付が始まった。受入企業は、在留資格別の賃金点検、最低賃金改定への追随、相談先の多言語書面交付、入国費用の把握を、今から進める必要がある。

はじめに――「届出状況」では見えなかったものが見える統計

外国人雇用に関する統計として実務家が長く参照してきたのは「外国人雇用状況の届出状況」です。これは事業主の届出(労働施策総合推進法28条)を集計した行政記録であり、人数と在留資格の分布は分かりますが、いくら払われているか、どのような経路で入職したか、何に困っているかまでは分かりません。その空白を埋めるために令和5年から始まったのが「外国人雇用実態調査」で、事業所調査と労働者調査の2本立てで、賃金、労働時間、入職経路、入国費用、就労上のトラブル、定着意向にまで踏み込んでいます。

その令和7年調査の結果が、2026年8月31日に公表されました。翌9月1日には、技能実習制度に代わる育成就労制度(2027年4月1日施行)について、受入企業側の育成就労計画の認定申請(施行日前申請)の受付が外国人技能実習機構で始まっています。制度の転換点で、実態の数字が出てきたというタイミングです。本稿では、厚生労働省の報道発表資料と別添「調査結果の概況」を直接確認したうえで、経営者・人事担当者の視点から数字を読み解きます。

1.調査の概要と、読む前に押さえるべき3つの注意点

項目 内容
調査名 令和7年外国人雇用実態調査(厚生労働省職業安定局外国人雇用対策課)
公表日 2026年8月31日(令和8年8月31日)
調査時点 令和7年9月30日現在の状況(令和7年10月から11月に実施)
調査対象 雇用保険被保険者5人以上で、外国人労働者を1人以上雇用している全国の事業所(9,016事業所を抽出)と、その事業所に雇用される外国人常用労働者(45,198人を抽出)
有効回答 事業所3,919(有効回答率43.5%)、労働者14,248人(同31.5%)
構成 事業所調査(雇用状況・労働時間・賃金・雇用理由・課題)と労働者調査(属性・入職経路・入国費用・トラブル・雇用状況)

数字を読む前に、この調査の性格を3点確認しておきます。

第1に、対象が「雇用保険被保険者5人以上の事業所」に限られるため、被保険者4人以下の零細事業所は含まれません。外国人雇用状況の届出状況(令和7年10月末現在)では外国人労働者数は257万1,037人と公表されていますが、本調査の約204万人との差の相当部分は、この対象範囲の違いによるものと考えられます。本調査は日本の外国人労働の全体像ではなく、一定規模以上の事業所に雇用保険被保険者として雇われている外国人の姿を映したものです。

第2に、労働者調査は全て母国語で行われたものではありません。調査票は日本語と英語で、オンライン回答の場合にはこれらに加えて中国語、ベトナム語、ポルトガル語で実施されたと注記されています。日本語能力の低い層ほど回答しにくい構造であることは、トラブルや相談先に関する数字を読むときに意識しておく必要があります。

第3に、賃金は「令和7年9月分として支給された額」です。令和7年度の地域別最低賃金の改定(全国加重平均1,121円、前年度比66円・6.3%増)は多くの都道府県で2025年10月以降に発効しているため、本調査の賃金水準は令和7年度改定前、すなわち令和6年度の最低賃金(全国加重平均1,055円)が適用されていた時点のものです。この点は後述の賃金分析の前提になります。

2.事業所調査――204万人、「専門的・技術的分野が最大」の中身

2-1 1年で約22万人増、在留資格別の構成

外国人労働者数(雇用保険被保険者5人以上事業所)は約204万人で、前年の約182万人から約22万人、率にして約12%増加しました。産業別では製造業が約61万人(30.1%)で最も多く、サービス業(他に分類されないもの)約33万人(16.3%)、卸売業・小売業約23万人(11.1%)、建設業約18万人(8.7%)が続き、上位4産業で全体の約3分の2を占めています。

在留資格区分 令和7年 令和6年 備考
専門的・技術的分野 42.1%(約86万人) 38.9% うち技術・人文知識・国際業務18.5%、特定技能17.9%、高度専門職1.2%
身分に基づくもの 24.0%(約49万人) 27.6% 永住者15.9%、定住者4.0%ほか
技能実習 21.7%(約44万人) 20.2% 技能実習1号から3号
留学 6.8%(約14万人) 資格外活動によるアルバイト等
その他 5.4%(約11万人) 家族滞在、特定活動等

出典:厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査の概況」第1表。本調査では特定技能1号・2号は「専門的・技術的分野」に含めて区分されている。

専門的・技術的分野が4割を超えて最大になったことが、事業所調査の見どころとして報じられています。ただし、この区分の中身を見ると、技術・人文知識・国際業務(約37.8万人)と特定技能(約36.5万人)がほぼ同じ規模で並んでいます。特定技能の多くは技能実習からの移行者であり、労務管理の実態は技能実習に近い部分が少なくありません。「専門的・技術的分野が最大」という見出しから「高度人材が主流になった」と読むのは早計で、正確には、技能実習と特定技能を合わせた技能系の在留資格が約80万人、技術・人文知識・国際業務と高度専門職を合わせたホワイトカラー系が約40万人という構成だと理解する方が実務には役立ちます。

2-2 雇用形態――技能実習は正社員56.1%、うち有期が38.1%

雇用形態は、全体で「正社員・正職員」57.7%、「正社員・正職員以外」41.7%です。専門的・技術的分野では正社員が70.8%ですが、技能実習では56.1%にとどまり、そのうち期間の定めのある者が38.1%を占めます。特定技能でも、期間の定めのある正社員25.7%と期間の定めのある正社員以外40.0%を合わせ、有期契約が過半です。この点は、後述する2026年10月1日施行のパートタイム・有期雇用労働法関係の改正との関係で重要になります。

3.賃金と労働時間――292.4千円の平均の裏で、格差は3方向に開いている

一般労働者の月間きまって支給する現金給与額は292.4千円(前年274.9千円、6.4%増)、所定内給与額は258.4千円、前年1年間の賞与等特別給与額は281.1千円でした。所定内実労働時間は158.7時間、超過実労働時間は17.6時間です。これを在留資格別に分解したのが次の表です。

在留資格区分 きまって支給する現金給与額 前年比 所定内給与額 所定内実労働時間 超過実労働時間 前年1年間の賞与等
外国人常用労働者計 292.4千円 +6.4% 258.4千円 158.7時間 17.6時間 281.1千円
専門的・技術的分野 306.5千円 +6.0% 272.7千円 159.4時間 16.4時間 311.3千円
 うち技術・人文知識・国際業務 343.1千円 308.9千円 157.1時間 14.9時間 412.9千円
 うち特定技能 254.1千円 +1.5% 217.0千円 163.1時間 20.3時間 174.9千円
技能実習 213.5千円 +1.7% 180.4千円 165.2時間 21.4時間 63.6千円
身分に基づくもの 347.2千円 +13.8% 312.2千円 151.0時間 15.8時間 450.6千円
 うち永住者 373.7千円 341.0千円 150.2時間 14.4時間 559.0千円

出典:同概況第4表および報道発表資料。前年比は報道発表資料に記載のある区分のみ。「−」は前年比が公表資料に記載されていないもの。

3-1 賃金・時間・賞与の「3方向の格差」

最も高い身分に基づくもの(347.2千円)と最も低い技能実習(213.5千円)の差は133.7千円、約1.6倍です。ここまでは前年までの調査でも指摘されてきた構図ですが、本調査の表を丁寧に読むと、格差は月給だけではないことが分かります。

労働時間を見ると、技能実習は所定内165.2時間に超過21.4時間を加えて月186.6時間、特定技能も183.4時間働いています。これに対し身分に基づくものは166.8時間です。つまり技能実習は、身分に基づく在留資格の人より月に20時間近く長く働いて、月給は13万円以上低いという関係にあります。さらに前年1年間の賞与等特別給与額は、技能実習63.6千円に対し身分に基づくもの450.6千円で、約7倍の開きです。月給、労働時間、賞与の3方向すべてで、技能実習・特定技能が不利な側に位置しています。

3-2 伸び率の断層と、最低賃金との距離

前年比の伸び率にも注目すべき断層があります。身分に基づくものが13.8%増と突出する一方、特定技能1.5%増、技能実習1.7%増は、ほぼ横ばいと言ってよい水準です。ここで、調査時点の賃金は令和7年9月分であり、その1年前の令和6年9月分との間には、令和6年度の最低賃金改定(全国加重平均51円・5.1%増)が挟まっています。最低賃金が5%以上引き上げられた期間に、技能実習の平均月給は1.7%しか伸びていないことになります。

この読み方には留保が必要です。本調査の数値は同じ人の賃金の変化ではなく、その年に在籍している労働者の平均値です。新規入国者が増えれば勤続年数の短い層が増え、平均を押し下げます。実際、勤続1年未満の平均給与は244.0千円で、前年の255.3千円より下がっています。したがって伸び率の断層をそのまま「技能実習生の賃上げが行われていない」と断定することはできません。

それでも、当法人が重要だと考えるのは水準そのものです。技能実習の所定内給与額180.4千円を所定内実労働時間165.2時間で単純に割ると、時間当たり約1,092円になります。調査時点で適用されていた令和6年度の全国加重平均最低賃金は1,055円ですから、差は37円しかありません。所定内給与額には通勤手当や家族手当など最低賃金の算定から除外される手当が含まれ得ることを考えると、実際の乖離はさらに小さい可能性があります。同じ計算で特定技能は約1,330円、身分に基づくものは約2,068円です。技能実習の賃金水準は、全国平均で見ても最低賃金に張り付いていると評価するのが妥当です。

▼ 最低賃金改定のスケジュールと、最低賃金張り付き型賃金のリスク

令和7年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,121円(前年度比66円・6.3%増)で、多くの都道府県では2025年10月以降に発効しています。さらに2026年7月28日には中央最低賃金審議会が令和8年度の目安をAランク54円、B・Cランク56円と答申し、目安どおりなら全国加重平均は1,176円(55円・4.9%増)となり、2026年10月頃から順次適用される見込みです。

技能実習・特定技能の賃金を最低賃金ぎりぎりで設定している事業所では、改定の効力発生日を1日でも過ぎれば、その日から最低賃金法4条違反の状態になります。月給制の場合は、月額を月平均所定労働時間で割った時間額が新しい最低賃金以上かを、改定のたびに点検する必要があります。効力発生日は都道府県ごとに異なるため、複数の都道府県に事業所がある企業は特に注意が必要です。

3-3 超過労働時間は技能実習・特定技能で月20時間超

超過実労働時間は、技能実習21.4時間、特定技能20.3時間で、身分に基づくもの15.8時間、技術・人文知識・国際業務14.9時間を上回ります。職業別に見ると生産工程従事者26.5時間、農林漁業従事者25.8時間、輸送・機械運転従事者23.0時間が高く、技能実習・特定技能が多く従事する職種で超過労働が長い構図です。平均値としては突出して長いわけではありませんが、月20時間の時間外労働は年間で240時間に相当し、36協定の限度時間(原則月45時間・年360時間)に対する余裕は無限ではありません。技能実習・特定技能の受入事業所では、36協定の締結・届出と限度時間の管理、割増賃金の適正な計算が、賃金水準の点検と並ぶ基本的な確認事項になります。

4.事業所が雇う理由と抱える課題――「同等以上の活躍を期待」が56.2%に上昇

外国人労働者を雇用する理由(複数回答) 令和7年 令和6年
労働力不足の解消・緩和のため 68.2% 69.0%
日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して 56.2% 54.7%
事業所の国際化、多様性の向上を図るため 18.1% 15.8%
日本人にはない知識、技術の活用を期待して 14.1% 13.2%

労働力不足の穴埋めという理由が最多であることは予想どおりですが、当法人が注目するのは「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」が56.2%と、前年から1.5ポイント上昇して過半数を維持している点です。半数以上の事業所が、外国人労働者を補充要員ではなく戦力として位置付けています。

この認識は、同一労働同一賃金の観点で意味を持ちます。同等以上の活躍を期待して雇っておきながら、賃金、手当、賞与、昇進機会に日本人との差を設けているとすれば、その差は何によって正当化されるのかという問いに、事業所は答えられなければなりません。2026年10月1日からは、パートタイム・有期雇用労働法6条に基づく雇入れ時の明示事項に「待遇の相違の内容及び理由等に関する説明を求めることができる旨」が追加されます(違反には同法31条の過料の適用があり得ます)。第2章で見たとおり、技能実習の38.1%、特定技能の過半が有期契約ですから、この明示義務は外国人労働者にも当然に及びます。どの言語で、どの様式で明示するのか、説明を求められたときに誰が対応するのかを、10月までに決めておく必要があります。

外国人労働者の雇用に関する課題(複数回答) 令和7年 令和6年
日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい 46.2% 43.9%
在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑 24.8% 24.7%
文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある 22.4% 20.9%
生活環境の整備にコストがかかる 21.9% 19.9%
在留資格によっては在留期間の上限がある 21.6%
在留資格によっては任せられる業務が限定される 17.3%
特にない 17.1% 17.4%

課題の第2位「在留資格申請等の事務負担」については、業際の整理が必要です。出入国在留管理庁への在留資格の申請取次は社会保険労務士の業務範囲ではなく、申請取次の届出をした行政書士や弁護士等が担います。当法人が担えるのは、雇用保険・社会保険の資格取得手続と外国人雇用状況届出(労働施策総合推進法28条)の一体的な処理、在留資格で認められた業務範囲と整合した労働条件通知書の整備、就業規則の各規定が外国人労働者にも適用される建付けになっているかの点検、そして行政書士との連携窓口です。事務負担を課題と感じている4分の1の事業所に対しては、どこまでを社内で担い、どこからをどの専門家に委ねるかを切り分けることが出発点になります。

5.労働者調査――入国費用、相談先、定着意向が示す構造

5-1 国籍・地域――ベトナム26.5%に低下、送出国は多様化

国籍・地域別ではベトナムが26.5%で最多ですが、前年の32.4%から5.9ポイント低下しました。中国(香港、マカオ含む)14.7%、フィリピン10.5%は前年と同じです。在留資格別に見ると、技能実習ではベトナム44.1%(前年49.8%)、インドネシア17.6%、ミャンマー16.3%(前年7.0%)の順で、ミャンマーの割合が1年で2倍以上になっています。留学ではネパールが40.1%(前年20.5%)と急伸しました。

低下の理由は調査結果自体が示すものではありませんが、実務への含意ははっきりしています。数年前まで「外国人対応イコールベトナム語対応」で足りていた事業所でも、今後はミャンマー語、インドネシア語、ネパール語の話者が増えます。就業規則の要旨や相談窓口の案内を多言語化する際、対象言語の選び方を見直す時期に来ています。

5-2 入職経路――海外から来た人の82.0%が仲介を経ている

入職前に日本に住んでいた人の入職経路は、知人・友人37.8%、求人広告19.1%、日本国内の民間紹介会社10.6%の順です。これに対し、入職前に日本以外に住んでいた人では82.0%(前年85.0%)が紹介会社や個人からの紹介等を受けており、その内訳は出身国・地域の紹介会社・個人41.2%、日本国内の紹介会社・個人16.7%(前年12.9%)、出身国・地域のその他の機関15.1%(前年9.5%)です。技能実習に限ると93.5%が仲介を経ています。この数字が、次の入国費用と直結します。

5-3 入国に要した費用――40万円以上が58.3%、技能実習では66.0%

在留資格区分 20万円未満 20〜40万円未満 40〜60万円未満 60〜80万円未満 80〜100万円未満 100万円以上 40万円以上の計
17.6% 21.1% 18.7% 11.5% 12.0% 16.1% 58.3%
専門的・技術的分野 21.4% 19.6% 20.2% 10.9% 11.5% 14.2% 56.8%
 うち特定技能 22.2% 17.9% 24.2% 11.7% 13.4% 8.4% 57.7%
技能実習 11.0% 21.0% 20.6% 15.3% 14.5% 15.6% 66.0%
留学 10.4% 13.0% 7.8% 2.0% 7.5% 57.7% 75.0%
身分に基づくもの 26.6% 32.6% 10.6% 3.5% 3.0% 15.6% 32.7%

出典:同概況第18表(入職前居住地が日本以外の者)。「40万円以上の計」は当法人が4区分を合算したもの。不明を除くため合計は100%にならない。

報道発表資料では「20万円以上40万円未満」21.1%が最多と紹介されていますが、概況の表で分布全体を見ると印象は変わります。海外から来た人の58.3%が入国までに40万円以上を支払っており、100万円以上も16.1%います。技能実習では40万円以上が66.0%、100万円以上が15.6%です。「40万円以上60万円未満」の割合は前年の14.5%から18.7%に上昇しており、費用が下がっている気配はありません。

この数字は、育成就労制度の設計思想と正面から関係します。技能実習制度に対する最大の批判は、送出し機関に多額の手数料を支払い、借金を背負って来日するために、劣悪な環境でも辞められないという構造でした。制度移行の議論では、本人が来日前に支払う費用の適正化が主要論点の1つとされてきました。9月1日に育成就労計画の申請受付が始まった今、受入企業が「本人が送出し機関にいくら払っているか」を把握しているかどうかは、制度上の要件であるか否かにかかわらず、労務リスク管理の項目として位置付けるべきだと当法人は考えます。

5-4 就労上のトラブル――「相談先が分からない」が技能実習で倍増

今の仕事をする上でのトラブルや困ったことが「あり」と答えた人は10.0%(前年10.9%)、「なし」は88.5%です。「あり」の人の内訳(複数回答)は次のとおりで、分母はトラブルがあったと答えた1割の人である点に注意が必要です。

トラブルの内容(「あり」の者の複数回答) 全体 技能実習 特定技能 身分に基づくもの
紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった 22.2%(前年18.6%) 42.8%(前年39.9%) 56.3% 3.9%
トラブルや困ったことをどこに相談すればよいか分からなかった 15.8%(前年14.9%) 18.9%(前年9.3%) 5.0% 26.7%(前年21.7%)
事前の説明以上に高い日本語能力を求められた 11.9%(前年8.8%) 6.4% 9.2% 5.5%
事前に説明された内容と実際の仕事内容が違った 9.9% 9.9% 2.8% 18.0%
事前に説明された条件と実際の就業条件が違った 5.5% 0.6% 1.9% 15.5%

出典:同概況第20表-2。在留資格別の前年値は概況本文に記載のあるもののみ。

トラブルの第1位「紹介会社の費用が高かった」は、前項の入国費用と完全に符合します。特定技能では56.3%と、トラブルがあった人の過半がこれを挙げています。そして第2位の「どこに相談すればよいか分からなかった」は、全体では15.8%ですが、技能実習では前年9.3%から18.9%へ倍増し、身分に基づくものでは26.7%に達しています。前者は受入企業だけで解決できる問題ではありませんが、後者は社内の体制で直接手を打てる領域です。

▼ 「相談先が分からない」への対策として点検すべき事項

就業規則にハラスメントの相談窓口を定めていても、外国人労働者がその存在と使い方を理解しているかは別問題です。労働施策総合推進法30条の2に基づくパワーハラスメント防止措置として設けた相談窓口は、外国人労働者にも機能して初めて措置を講じたことになります。

社内窓口に加え、労働基準監督署の外国人労働者相談コーナー、厚生労働省の外国人労働者向け相談ダイヤルなど、社外の公的窓口を本人の理解できる言語で書面にして入社時に渡すこと、技能実習・特定技能では監理団体や登録支援機関以外の相談先も提示すること(仲介機関自体が問題の当事者となる場合に備えるため)を、当法人は勧めます。

5-5 定着意向――81.2%が「続けたい」、ただし技能実習は76.1%で転職希望9.3%

在留資格区分 今の会社の仕事を続けたい 続けながら別の会社の仕事もしたい やめて国内の別の会社に変わりたい 出身国・地域で働きたい
外国人常用労働者計 81.2% 5.3% 6.1% 1.9%
専門的・技術的分野 84.0% 5.6% 4.4% 1.8%
 うち特定技能 83.2% 5.1% 3.6% 2.4%
技能実習 76.1% 2.8% 9.3% 4.2%
留学 58.3% 7.1% 23.4% 3.6%
身分に基づくもの 85.1% 6.5% 4.2% 0.4%

出典:同概況第21表。本項目は令和7年調査における周期調査項目のため前年比較なし。

8割超が今の会社を続けたいと答えていることは、外国人雇用に不安を抱く事業所にとって朗報です。ただし在留資格別に見ると、技能実習は76.1%と最も低く、「やめて国内の別の会社に変わりたい」が9.3%あります。技能実習は制度上、本人の意向による転籍が原則として認められていません。転籍できない制度の下で1割近くが「変わりたい」と答えている事実は、「続けたい」が本心の満足なのか選択肢がないことの反映なのかを判別できないという留保を差し引いても、重く受け止めるべきです。

育成就労制度では、一定の要件の下で本人の意向による転籍が認められます。制度が定着を担保してくれる時代は終わり、賃金、労働時間、相談体制、能力開発の実質で選ばれなければ人材が離れていく構造に変わります。76.1%と9.3%という技能実習の数字は、制度移行後の受入企業が直面する現実の予告と読むべきです。

5-6 職業訓練・自己啓発――半数が学んでいるが、誰が主導しているか

過去1年間に仕事のための職業訓練・勉強等(日本語学習を除く)を実施した人は50.4%で、在留資格別では専門的・技術的分野56.6%、技能実習53.8%、留学42.7%、身分に基づくもの37.2%です。実施内容は全体では自学・自習48.9%が勤め先での研修43.7%を上回りますが、技能実習では勤め先での研修48.7%が自学・自習34.5%を上回り、逆転しています。

この違いは、技能実習が計画に基づく訓練を制度上組み込んでいるのに対し、専門的・技術的分野や身分に基づく在留資格の労働者では能力開発が本人任せになりやすいことを示唆しています。第4章で見たとおり56.2%の事業所が「同等以上の活躍」を期待しているにもかかわらず、その期待を支える投資が本人の自習に委ねられている構図です。人材開発支援助成金など公的な訓練助成は、要件を満たせば外国人労働者を対象とする訓練にも活用できる場合があります。日本語教育と業務スキルを組み合わせた計画的な訓練を設計することは、定着率と生産性の双方に効く投資です。

6.経営者・人事担当者が今から点検すべき6項目

以上の分析を踏まえ、当法人が受入企業に提案する点検項目を整理します。いずれも、育成就労制度への移行を待たずに着手できるものです。

✅ 外国人雇用管理の点検項目(2026年9月版)

  • 在留資格別に賃金を並べ、説明できるか確認する。 技能実習213.5千円、特定技能254.1千円、身分に基づくもの347.2千円という全国平均を物差しに、自社の水準がどこに位置するか、日本人との差を何で正当化するかを整理する。
  • 最低賃金の改定日と、技能実習・特定技能の時間額を突き合わせる。 全国平均で見ても技能実習の時間額は最低賃金と37円差である。令和7年度改定(1,121円)が反映済みか、令和8年度改定(目安1,176円)に向けた原資を確保しているかを、都道府県ごとの効力発生日で点検する。
  • 相談先を、本人の言語で、書面で渡す。 社内窓口と社外の公的窓口を併記し、監理団体・登録支援機関以外の相談先を含める。入社時の交付記録を残す。
  • 入国に要した費用を本人に確認する運用を検討する。 海外から来た人の58.3%が40万円以上を支払っている。送出し機関への支払額の把握は、育成就労制度への移行を控えた受入企業のリスク管理項目になり得る。
  • 2026年10月1日のパートタイム・有期雇用労働法関係の改正に備える。 有期契約の外国人労働者に対し、待遇差の説明を求めることができる旨をどの言語・様式で明示し、説明を求められたときに誰が対応するかを決める。
  • 能力開発を本人任せから計画に移す。 自学・自習48.9%が勤め先での研修43.7%を上回る現状を、日本語教育と業務スキルを組み合わせた訓練計画と公的助成の活用で埋める。

7.まとめ――制度が変わる年に、実態の数字が出た

令和7年外国人雇用実態調査が示したのは、外国人労働者204万人という規模の拡大と、その内側に走る在留資格別の断層です。技能実習・特定技能は、最も長く働き、最も低い賃金で、最も少ない賞与を受け取り、最も高い入国費用を負担し、相談先を最も知らない層として数字に現れています。一方で、事業所の56.2%は外国人労働者に日本人と同等以上の活躍を期待しており、労働者の81.2%は今の会社を続けたいと答えています。期待と定着意向は高いのに、それを支える賃金・相談体制・能力開発の投資が追いついていない、というのがこの調査の全体像です。

9月1日に育成就労計画の申請受付が始まり、10月1日にはパートタイム・有期雇用労働法関係の改正が施行され、10月以降には令和8年度の最低賃金が順次発効します。外国人労働者を戦力として位置付ける企業にとって、この秋は、雇用管理を一度棚卸しする最適の時期です。当法人は、賃金体系の点検から就業規則の多言語対応、労務手続の一体処理まで、外国人雇用管理の実務の整備を経営者・人事担当者と共に進めます。

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外国人雇用管理の棚卸しは、当法人にご相談ください

在留資格別の賃金点検、最低賃金改定への対応、就業規則・労働条件通知書の多言語対応、相談窓口の整備、育成就労制度への移行準備まで、特定社会保険労務士が経営者・人事担当者に伴走します。在留資格申請については行政書士等と連携して対応します。

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よくあるご質問

Q1. 令和7年外国人雇用実態調査とは何ですか。外国人雇用状況の届出状況と何が違いますか。

厚生労働省が令和5年から実施している統計調査で、雇用保険被保険者5人以上かつ外国人労働者1人以上を雇用する事業所と、そこで働く外国人常用労働者を対象に、賃金、労働時間、入職経路、入国費用、就労上のトラブル、定着意向などを調べるものです。令和7年調査は令和7年9月30日現在の状況を調べ、2026年8月31日に公表されました。外国人雇用状況の届出状況が事業主の届出を集計した行政記録で人数と在留資格の分布を示すのに対し、実態調査は賃金や入職経路など届出では分からない事項を標本調査で把握する点が異なります。

Q2. 在留資格によって外国人労働者の賃金はどのくらい違いますか。

令和7年調査の一般労働者の月間きまって支給する現金給与額は、全体292.4千円に対し、身分に基づくもの347.2千円、専門的・技術的分野306.5千円(うち技術・人文知識・国際業務343.1千円、特定技能254.1千円)、技能実習213.5千円です。最高と最低の差は133.7千円で約1.6倍です。労働時間は技能実習が所定内165.2時間・超過21.4時間と最も長く、前年1年間の賞与等は技能実習63.6千円に対し身分に基づくもの450.6千円と約7倍の差があります。

Q3. 技能実習生の賃金は最低賃金と比べてどの水準にありますか。

令和7年調査の技能実習の所定内給与額180.4千円を所定内実労働時間165.2時間で単純に割ると、時間当たり約1,092円です。調査時点(令和7年9月分)に適用されていた令和6年度の全国加重平均最低賃金1,055円との差は37円で、全国平均で見ても最低賃金に近い水準です。令和7年度は1,121円、令和8年度の目安は1,176円と引上げが続くため、改定の効力発生日ごとに時間額を点検しないと最低賃金法4条違反となるおそれがあります。

Q4. 外国人労働者は来日までにどのくらいの費用を負担していますか。

入職前に日本以外に住んでいた人のうち、入国に要した費用が40万円以上の人は58.3%、100万円以上の人は16.1%です。技能実習では40万円以上が66.0%、100万円以上が15.6%、特定技能では40万円以上が57.7%です。海外から入職した人の82.0%は紹介会社等の仲介を経ており、就労上のトラブルの内容として「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」を挙げた人は22.2%、技能実習では42.8%、特定技能では56.3%に上ります。

Q5. この調査結果を受けて、受入企業はまず何をすべきですか。

当法人は6点を提案しています。在留資格別に賃金を並べて日本人との差を説明できるようにすること、最低賃金の改定日ごとに技能実習・特定技能の時間額を点検すること、社内外の相談先を本人の理解できる言語で書面にして渡すこと、入国に要した費用を本人に確認する運用を検討すること、2026年10月1日施行のパートタイム・有期雇用労働法関係の改正(待遇差の説明を求めることができる旨の明示)に備えること、能力開発を本人任せから計画的な訓練に移すことです。

【本記事の確認状況(確信度ノート)】

本記事に掲げた調査数値は、厚生労働省が2026年8月31日に公表した報道発表資料「『令和7年外国人雇用実態調査』の結果を公表します」および別添「令和7年外国人雇用実態調査の概況」(PDF)を直接確認したものです(確信度:高)。調査時点、有効回答率、在留資格別の労働時間・賞与、入国費用の全区分、在留資格別のトラブル内容・定着意向・職業訓練の内訳は、報道発表資料には記載がなく、概況PDFで確認しました。40万円以上の合算値、時間当たり賃金の試算、伸び率の解釈は当法人の分析であり、平均値の構成変化等による留保を本文に記載しています。最低賃金額は厚生労働省・中央最低賃金審議会の公表値、外国人雇用状況の届出状況(令和7年10月末現在)の労働者数は厚生労働省の公表(2026年1月30日)を報じた資料で確認しました。育成就労計画の施行日前申請の受付開始日(2026年9月1日)とパートタイム・有期雇用労働法関係の改正(2026年10月1日施行)は、外国人技能実習機構の案内および厚生労働省ウェブマガジン等の公開情報で確認しました。本記事は当法人が一次資料から独自に分析・構成したものであり、特定の第三者の解説に依拠したものではありません。

【根拠法令】

・労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律28条(外国人雇用状況の届出)、30条の2(パワーハラスメント防止措置)
・最低賃金法4条(最低賃金の効力)
・労働基準法32条(労働時間)、36条(時間外及び休日の労働)、37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
・短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律6条(労働条件に関する文書の交付等)、14条(事業主が講ずる措置の内容等の説明)、31条(過料)
・出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)、同法の施行期日を定める政令(令和7年政令第340号)

【参考資料】

・厚生労働省「『令和7年外国人雇用実態調査』の結果を公表します」(2026年8月31日報道発表)
・厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査の概況」(別添PDF、2026年8月31日)
・厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和7年10月末現在)」(2026年1月30日公表)
・厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(中央最低賃金審議会答申、2026年7月28日)
・厚生労働省Webマガジン「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります」(2026年8月)
・外国人技能実習機構「育成就労計画の認定に係る施行日前申請」に関する案内(受付開始2026年9月1日)

【免責事項】

本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。統計の詳細は原典をご確認ください。在留資格の申請取次は社会保険労務士の業務範囲外であり、必要に応じて行政書士等と連携して対応します。記載内容は2026年9月2日時点の情報に基づいており、その後の法令改正、通達、統計の更新等により内容が変わる場合があります。実際の対応に当たっては、個別の事情を踏まえた専門家への相談をお勧めします。

執筆者

三重 英則

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員/特定社会保険労務士・経営心理士・経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)

名古屋市中区を拠点に、労働紛争解決(個別・集団)、IPO労務監査・改善指導、就業規則の作成・改訂、給与監査などの高難度労務分野で、経営者・人事担当者に伴走しています。