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作成日:2026/09/13
国民年金の納付率79.6%で「14年連続上昇」、最終納付率85.6%は過去最高/最低賃金「目安」審議の続報も
労務トピックス
国民年金の納付率79.6%で「14年連続上昇」、最終納付率85.6%は過去最高
― 目標を前倒し達成した数字の裏側と、顧問先・相談者に伝えるべきこと/最低賃金「目安」審議の続報も
2026年9月13日 | 社会保険労務士法人T&M Nagoya

おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。

📌 この記事のポイント

  • 令和7年度(2025年度)の国民年金の現年度分納付率は79.6%(+1.0ポイント・14年連続上昇)、最終納付率は85.6%(令和5年度分・統計開始以降最高)。政府目標を前倒しで達成しました
  • ただし納付率は免除・猶予者595万人を分母から除いた数字です。「8割の人が納めている」という読み方は正確ではありません
  • 納付猶予・学生納付特例は、受給資格期間には算入されるが年金額には反映されない追納は承認月の前10年以内――この2点を退職者・若年層に伝えられるかが、専門家の実務価値です
  • 外国人の納付率55.0%(+5.3ポイント)は令和5年度分の「最終」納付率です。令和7年度の外国人納付率は非公表とされています
  • 最低賃金の目安審議は7月27日の第5回でも決着せず、本日28日に第6回。労働者側は75円を提示しています

本記事の信頼度:87%(ファクトチェック実施済み)

国民年金の各数値は、厚生労働省の報道発表(令和8年7月24日公表)を報じた複数の報道(共同通信・日本経済新聞・TBS・NHK・読売新聞)を突き合わせて確認しています。厚生労働省公表PDFの本文は自動取得ツールで読み取れず、数値は報道記事に依拠しています。最低賃金の審議状況は時事通信・日本経済新聞の報道および厚生労働省の小委員会資料ページで確認しています。本日28日の審議結果は本記事執筆時点では未確定です。分析・実務上の示唆は筆者の見解であり【私見】と表示しています。

はじめに ― 「年金は誰も払っていない」という思い込み

顧問先の従業員や個人の相談者と話していると、いまだにこの種の声を聞きます。

「国民年金なんて、みんな払っていないんでしょう」
「どうせ将来もらえないから、払うだけ損だ」

この「みんな払っていない」というイメージは、20年前の実感としては当たっていました。しかし、いまや事実として誤りです。

2026年7月24日、厚生労働省年金局は「令和7年度の国民年金の加入・保険料納付状況」を公表しました。数字は、多くの人のイメージとかなり違う姿を示しています。

1.公表された数字 ― 納付率は14年連続で上昇

【事実】 報道各社が伝えた主な数値は次のとおりです。

指標 数値 前年度比
現年度分納付率(令和7年度分) 79.6% +1.0ポイント(14年連続上昇)
最終納付率(令和5年度分保険料) 85.6% +1.1ポイント(13年連続改善・統計開始以降最高)
第1号被保険者数(令和7年度末) 1,357万人 ▲11万人(過去最少)
保険料の免除・猶予者数 595万人 +2万人
未納者数 67万人 ▲5万人
外国人の最終納付率(令和5年度分) 55.0% +5.3ポイント
【事実・要注意】 外国人に関する数値は、令和5年度分保険料の「最終」納付率です。令和7年度の外国人の納付率は非公表とされています。「外国人の納付率が55.0%に上がった」という言い方をする際は、どの年度のどの指標かを取り違えないようご注意ください。

【事実】 都道府県別の現年度分納付率は、最も高いのが新潟県88.06%、最も低いのが沖縄県71.89%でした。

「現年度分」と「最終」の違いを押さえる

【事実】 ここで混乱しやすいのが2つの納付率の違いです。

区分 意味
現年度分納付率 その年度中に納付すべき保険料のうち、その年度中に納付されたものの割合
最終納付率 国民年金保険料は2年間の時効期間内であれば後から納付できるため、2年経過後に確定する納付率。令和7年度に確定するのは令和5年度分の保険料

つまり、「令和7年度の納付率」として語られる79.6%は、これから2年かけてさらに上がっていく途中の数字です。

【事実】 日本経済新聞の報道によれば、厚生労働省が掲げていた「2028年度末までに最終納付率を8割台後半に伸ばす」という目標は、前倒しで達成されました。

2.なぜ上がったのか

【事実】 厚生労働省は上昇の要因として、口座振替の電子申請やスマートフォン決済アプリの導入など、納付環境の整備を挙げています。また外国人については、やさしい日本語による冊子の作成、未納者への英語の催告状の送付、自治体国際化協会や外国人技能実習機構と連携した制度周知といった取組が行われました。

【私見】 現場の実感としても、納付環境の整備は大きいと考えます。かつて国民年金保険料は「納付書を持って金融機関やコンビニの窓口に行く」ことが基本でした。この物理的な手間が、若年層の未納の相当部分を生んでいたと言ってよいでしょう。バーコードをスマホで読み取れば数十秒で完了する現在とは、心理的なハードルがまるで違います。

2027年6月から、在留資格の審査に納付状況が反映される

【事実】 外国人材を雇用している企業にとって、より重要なのはこちらです。政府は2027年6月から、在留資格の審査に国民年金保険料の納付状況を活用する方針で、出入国在留管理庁がマイナンバーによる情報連携を通じて納付状況を把握するとされています。

【私見】 つまり、未納が在留資格の更新に直結し得る局面が近づいているということです。退職・転職に伴う手続の抜けが、本人の在留に影響する可能性が生じます。

【私見】 在留外国人が退職後に厚生年金から国民年金第1号被保険者に切り替わるタイミングは、手続の抜けが生じやすい局面です。離職時の説明パッケージに国民年金の切替手続と納付方法(口座振替・クレジット・スマホ決済)を含めておくだけで、後日のトラブルはかなり減らせます。

3.数字の裏側 ― 「595万人の免除・猶予」をどう見るか

ここが本日の記事で最も強調したい点です。

【事実】 納付率79.6%という数字は、保険料の免除・納付猶予・学生納付特例を受けている人を分母から除いて計算されています。令和7年度末時点で、その人数は595万人です。つまり納付率は「保険料を納めるべき人のうち何%が納めたか」を示す指標であって、「第1号被保険者全体のうち何%が保険料を納めたか」ではありません

【私見】 この点を理解せずに「納付率79.6%だから8割の人が払っている」と説明すると、実態を見誤ります。免除・猶予は制度上正当な手続であり、未納とはまったく異なりますが、将来の年金額という観点では、免除期間・猶予期間は満額納付とは異なる扱いになります

押さえておくべき整理は次のとおりです。

区分 受給資格期間 年金額への反映
全額納付 算入される 満額
全額免除 算入される 国庫負担分(原則2分の1)が反映
納付猶予・学生納付特例 算入される 反映されない(追納しない限り年金額は増えない)
未納 算入されない 反映されない

【私見】 特に納付猶予・学生納付特例は、「受給資格期間には入るが年金額には反映されない」という中間的な位置づけです。相談者から「猶予にしてあるから大丈夫ですよね」と言われたときに、「受給資格の面では大丈夫ですが、年金額は増えていません。10年以内なら追納できます」と正しく伝えられるかどうか。ここが専門家の価値の出るところだと考えます。

【事実】 追納が可能な期間は承認を受けた月の前10年以内です。就職して所得ができた若年層に対し、この10年という期限を伝えられるのは、多くの場合、勤務先を通じた情報提供です。新入社員研修や入社手続の資料に一行加えるだけで、その人の将来の年金額が変わります。

4.【私見】この数字を、実務でどう使うか

(1)「みんな払っていない」という誤解を正す

【私見】 納付率が8割に迫り、最終納付率が85.6%に達したという事実は、「国民年金は形骸化した制度だ」という言説を明確に否定します。従業員から「国民年金なんて」という声が出たとき、事実ベースで応答できる材料になります。

(2) 退職・独立の相談で「切替の空白」をつくらせない

【私見】 実務で現実に関与しやすいのは、厚生年金から国民年金第1号への切替局面です。退職後に手続を放置し、そのまま未納になるケースは今も少なくありません。退職時に伝えるべきことは3つに集約できます。

  1. 14日以内に市区町村での第1号被保険者への種別変更手続(配偶者が第3号だった場合はその切替も)
  2. 収入が下がっているなら、未納ではなく「免除・納付猶予」を申請すること
  3. 免除・猶予を受けた場合、10年以内なら追納できること

「払えないから放っておく」と「払えないから免除を申請する」とでは、受給資格期間の扱いが決定的に違います。これを伝えられるかどうかが、退職者のその後を左右します。

(3) 地域差(新潟88.06% / 沖縄71.89%)を過度に一般化しない

【推測】 都道府県別で16ポイント超の差がありますが、これは県民性の問題ではなく、産業構造(第1号被保険者に占める自営業・非正規の比率)や所得水準の差を反映しているものと推測されます。公表資料でこの要因分析が示されているかは確認できていません。

5.【続報】最低賃金の「目安」審議 ― 第5回も決着せず、本日28日に再協議

【事実】 本ブログで7月21日・27日に取り上げた令和8年度の地域別最低賃金額改定の「目安」審議について、続報です。

  • 7月27日、中央最低賃金審議会 目安に関する小委員会の第5回が開催されました。
  • 労使ともに引上げの必要性では一致したものの、引上げ額をめぐる隔たりが埋まらず、この日も結論は持ち越しとなりました。
  • 労働者側は7月23日の第4回会合で75円の引上げを提示しています。使用者側は、原材料費の高騰と価格転嫁の遅れを理由に、慎重な検討を求めています。
  • 本日7月28日に第6回会合が開かれ、決着を目指すとされています。現行の全国加重平均額は1,121円で、報道では1,100円台後半での攻防が続いていると伝えられています。
【事実・数字の読み方に注意】 「75円」が比較される前年度の数字には、報道により63円66円の2つが登場します。63円は中央最低賃金審議会が示した「目安額」(Aランク63円・Bランク63円・Cランク64円)、66円は各都道府県の答申を反映した実際の全国加重平均の上昇額(1,055円→1,121円)です。令和7年度は39道府県が目安額を上回る答申を行ったため、両者に差が生じています。顧問先へご説明の際は、どちらの数字かを明示することをお勧めします。

【私見】 目安の取りまとめが第6回にまでもつれ込むのは異例です。政府が「日本成長戦略」(2026年7月21日閣議決定)で全国平均1,500円の達成時期を「2030年代前半のできる限り早期に」としたことで、目標年次には一定の含みが持たされました。それでも毎年数十円規模の引上げが必要な計算に変わりはなく、労使の距離が縮まりにくい構造そのものは当面続くと考えられます。

【推測】 目安が決まれば、8月に各都道府県の地方最低賃金審議会が地域別の答申を行い、例年どおりであれば10月からの発効となる見通しです。ただし、令和7年度は発効日を後ろ倒しした県が多数に上るなど運用に幅が生じており、顧問先への案内は「10月1日発効」と決め打ちせず、各都道府県労働局の公示を確認してから行うべきです。

【事実】 本日28日の審議結果は、本記事執筆時点では確認できていません。確定次第、改めて取り上げます。

6.まとめ

  • 国民年金の現年度分納付率は79.6%(14年連続上昇)最終納付率は85.6%(統計開始以降最高)。政府目標を前倒しで達成しました。
  • ただし納付率は免除・猶予者595万人を分母から除いた数字です。「8割の人が納めている」という読み方は正確ではありません。
  • 納付猶予・学生納付特例は、受給資格期間には入るが年金額には反映されない追納は10年以内――この2点を退職者・若年層に伝えられるかが実務価値です。
  • 外国人については、2027年6月から在留資格の審査に納付状況が活用される方針です。外国人材を雇用する企業では、離職時の切替案内を整備する価値があります。
  • 最低賃金の目安審議は7月27日の第5回でも決着せず、本日28日に第6回。労働側は75円を提示しています。

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根拠法令・出典
・国民年金法88条(保険料の納付義務)、89条〜90条の3(免除・納付猶予・学生納付特例)、94条(追納)、102条(時効)
・最低賃金法10条(地域別最低賃金の決定)
・厚生労働省「国民年金の加入・納付状況」(統計資料の掲載ページ)
 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/k-nenkin/
・厚生労働省「国民年金保険料の納付率について(月次)」
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/toukei/nouhuritu.html
・共同通信「国民年金納付率79.6% 25年度、14年連続上昇」(2026年7月24日。免除・猶予者数、未納者数、都道府県別の数値の確認に使用)
 https://news.yahoo.co.jp/articles/22455d593a332c972e8674ff914baff48dcf6cc4
・日本経済新聞「国民年金、25年度確定の最終納付率85.6% 13年連続改善」(外国人の最終納付率、在留審査への活用、目標の前倒し達成の確認に使用)
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA232MS0T20C26A7000000/
・時事通信「最低賃金、再び持ち越し 労使に溝、28日再協議―厚労省審議会」(2026年7月27日)
 https://portal.ijamp.jiji.com/portal/news/detail/2026072701001
・日本経済新聞「最低賃金、1100円台後半の攻防 引き上げ目安の結論持ち越し」(2026年7月27日。全国加重平均1,121円、前年度実績66円の確認に使用)
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA249I50U6A720C2000000/
・厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」(ランク別目安額63円・63円・64円の確認に使用)
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_60788.html
※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。国民年金の数値は報道記事に依拠しており、厚生労働省公表資料の原典と細部が異なる可能性があります。最低賃金の目安額および各都道府県の地域別最低賃金額は、今後の審議・答申により確定します。最新の情報は厚生労働省・日本年金機構および各都道府県労働局の公表資料をご確認ください。個別のご相談は、社会保険労務士等の専門家へお願いいたします。
執筆者
三重 英則(みえ ひでのり)
社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員
特定社会保険労務士 / 経営心理士 / 経営法曹会議賛助会員
SRP認証番号:第160175号