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2026年(令和8年)7月23日、中部運輸局は、愛知県名古屋市港区のトラック運送事業者に対し、事業停止7日間・車両使用停止350日車等の行政処分を行ったと発表しました。確認された違反は合計13件。そのなかには、運転者の勤務時間・乗務時間、休日労働の限度、疾病・疲労等のおそれのある運行という、労務管理に直結する違反が含まれています。 本記事では、この処分事例を素材に、運送業の経営者・人事労務担当者が押さえておくべき「労働時間管理と行政処分の関係」を、当法人の実務視点から整理します。 |
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1. 事案の概要 ── 何が起き、どんな処分が下されたのか |
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中部運輸局の発表(令和8年7月23日14時00分)によると、処分の概要は次のとおりです。
13件の違反は、車庫の無認可設置や事業計画外の業務、定期点検整備の未実施、点呼の未実施・記録の不実記載、車体表示義務違反など多岐にわたります。本記事では、このうち労働関係の違反に焦点を絞って解説します。 |
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2. 労働関係の違反3項目を読み解く |
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13件の違反のうち、運転者の労務管理に直結するのは次の3項目です。いずれも根拠は貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)にあります。
「国土交通省告示で定める基準」の正体輸送安全規則第3条第4項にいう告示とは、「貨物自動車運送事業者の事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」(平成13年国土交通省告示第1365号)です。この告示は、厚生労働省が定める改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)の内容に準拠する構造になっています。つまり、運輸局の監査で問われる「勤務時間・乗務時間」の基準と、労働基準監督署が監督する「改善基準告示」は、実質的に同じルールを指しているのです。 「疾病、疲労等のおそれのある運行」とは輸送安全規則第3条第6項は、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全に業務を遂行できないおそれのある乗務員等を、事業用自動車の運行の業務に従事させてはならないと定めています。この義務の履行手段が点呼における健康状態の確認です。本件では点呼の未実施・記録の不実記載も併せて認定されており、健康状態を確認する仕組み自体が機能していなかった可能性がうかがわれます(この点は処分発表からの推測を含みます)。長時間拘束と休息不足が重なれば、過労運転は重大事故に直結します。 |
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3. おさらい:改善基準告示(2024年4月改正)の主要ルール |
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トラック運転者に適用される改善基準告示は、2024年4月1日に改正基準が適用され、拘束時間の短縮と休息期間の拡大が図られました。主要な数値は次のとおりです。
本件で認定された「勤務時間・乗務時間の基準不遵守」「休日労働の限度不遵守」は、まさにこの枠組みへの違反です。改正から2年以上が経過し、行政の監査では「知らなかった」「移行期間のつもりだった」という説明はもはや通用しません。 |
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4. 本件最大の教訓 ──「改善が確認されなかった」ことの重み |
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本件で注目すべきは、監査の端緒です。発表によれば、この事業者は過去にも行政処分を受けて事業の改善を命じられ、その改善状況を確認する監査(改善確認監査)が行われたものの、改善が確認されなかったため、改めて監査が実施されました。 つまり本件は、初回の指摘で改善に動かなかった結果、事業停止7日間・車両使用停止350日車という事業継続に直接影響する処分に至った事例です。1件の処分で付された違反点数は39点。違反点数は累積し、累積点数が増えるほど、より重い処分(事業停止の長期化、最終的には許可取消し)へ段階的につながっていく制度設計になっています。
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5. 運輸局だけではない ── 労基署との「二正面」リスク |
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運送業の労働時間管理は、運輸局(国土交通省)と労働基準監督署(厚生労働省)の双方から監督を受けるという特殊な構造にあります。前述のとおり、運輸局監査で問われる勤務時間・乗務時間の基準は改善基準告示と連動しており、同じ改善基準告示は労基署の監督対象でもあります。両行政機関の間には、重大な違反の疑いがある事案を互いに知らせる相互通報の仕組みが設けられており、運輸局の監査を端緒に労基署の調査へ、あるいはその逆へと連鎖することがあります。 さらに、拘束時間の超過や休日労働の常態化は、労働基準法上の問題──36協定の上限(時間外・休日労働の上限規制)超過、割増賃金の未払い──と表裏一体であることがほとんどです。改善基準告示違反が確認される職場では、未払残業代の潜在債務が同時に積み上がっているケースが少なくありません。行政処分と民事的な賃金債務、その両方のリスクが同じ根から生じている点に注意が必要です。 |
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6. 自社を守るためのセルフチェック |
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7. 当法人の実務視点 ── 「改善報告」で終わらせない体制づくりを |
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本件が示すのは、行政処分を受けた後の「改善」が形式的な報告に留まると、次はより重い処分が待っているという現実です。労働時間管理の改善は、就業規則や協定書の整備だけでは完結しません。デジタコ・勤怠システムによる拘束時間の自動集計、月次のアラート運用、点呼記録の実効性確保、運行計画と受注管理の見直しまで踏み込んで、初めて「改善が確認できる」状態になります。 当法人では、運送業を含む中小企業の労務管理体制について、規程・協定の整備から労働時間の実態把握、行政対応を見据えた労務監査まで、経営者と共に歩む伴走型の支援を行っております。「自社の拘束時間管理が基準を満たしているか不安がある」「過去に行政指導を受けたが改善の進め方が分からない」という段階でのご相談も歓迎します。 |
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【出典・参考資料】 ・中部運輸局自動車交通部「トラック事業者を事業停止処分」(令和8年7月23日発表) ・トラックニュース「中部運輸局/名古屋市港区で『事業改善の未実施』などで事業停止7日間、車両使用停止処分350日車」(2026年7月23日) ・厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト(トラック運転者の改善基準告示)」 ・国土交通省「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」 |