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作成日:2026/10/31
第214回労働条件分科会(10月30日) 「13日を超える連続勤務の規制」「法定休日の特定の義務付け」「副業・兼業の割増賃金通算」の3つの問いを厚生労働省が提示 約80年続く労基法35条の「週1休・4
労務トピックス【法改正動向】
【続報】第214回労働条件分科会(10月30日)
「13日を超える連続勤務の規制」「法定休日の特定の義務付け」「副業・兼業の割増賃金通算」の3つの問いを厚生労働省が提示
約80年続く労基法35条の「週1休・4週4休」はどう変わるか、企業が今から点検すること
2026年10月31日|社会保険労務士法人T&M Nagoya 三重 英則(特定社会保険労務士)

おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。

労働基準法35条は、昭和22年の制定以来、「毎週少なくとも1回の休日」または「4週間を通じ4日以上の休日」という枠組みを保ってきました。この枠組みのもとでは、36協定を結んで休日労働の割増賃金を払えば、相当な日数の連続勤務が可能です。4週4休の変形週休制を使えば制度上は48日の連続勤務も可能であると、厚生労働省自身が審議会の資料で図示しています。

本日(2026年10月30日)開催された第214回労働政策審議会労働条件分科会では、この「休日」の問題と「副業・兼業の労働時間通算」が議題となり、事務局(厚生労働省労働基準局)から「本日ご議論いただきたい論点」として具体的な問いが示されました。9月16日の第211回で労働時間法制の議論が再開されてから、第212回(10月14日、勤務間インターバル等)、第213回(10月23日、裁量労働制)と各論が続き、今回がその3回目です。

本記事では、厚生労働省が公開した資料No.1-1と資料No.1-2の原文から、示された問いの文言、資料に載った統計、これまでの労使・公益委員の意見の整理を確認し、法改正の前に企業が今から点検しておくべきことを整理します。本日の会議でどのような発言があり、議論がどこまで進んだかは、議事録が未公開のため確認できていません。

📌 この記事でわかること

✓ 第214回労働条件分科会(令和8年10月30日)で厚生労働省は、法定休日の特定を義務付けることをどう考えるか、例えば13日を超える連続勤務を規制することをどう考えるか、副業・兼業の割増賃金の支払に係る労働時間の通算の在り方をどう考えるか、という3つの問いを示したこと(資料No.1-1)

✓ 連続勤務規制の問いでは、例外の対象が「災害等に限らず、事業場の実態に応じて特に必要な場合」と書かれ、その場合に一定の健康確保措置を義務付けることが併せて問われていること

✓ 資料によれば、最大14日以上連続で勤務した労働者は全体の約2%だが、宿泊業・飲食サービス業では8.2%、建設業では7.8%、教育・学習支援業では5.4%に上ること(令和6年4月から6月の実績、当法人集計)。精神障害の労災支給決定のうち「2週間以上の連続勤務」を主な出来事として心理的負荷「強」と判断された事案は令和7年度に30件(うち自殺3件)あること

✓ 副業・兼業では、雇用での副業を認めている事業所のうち、他社の労働時間と通算して割増賃金を支払っているのは12.7%にとどまり、32.5%は割増賃金を支払っていないという実態調査の数字が資料に載っていること。労働者側は割増賃金の通算の廃止に強く反対し、使用者側は健康確保の通算を残したうえで割増賃金は通算の適用外とするよう求めており、3つの論点の中で労使の対立が最も鮮明と読めること

✓ 法改正の内容、13日という日数がそのまま採用されるか、例外の範囲、罰則の有無、法案の国会提出時期と施行時期は、いずれも現時点で決まっていないこと

規制の中身が決まる前に、自社の最大連続勤務日数、法定休日の特定の有無、休日振替の運用、副業の届出と労働時間の把握を点検しておく。それが、どの方向に決まっても困らない準備です。

出典について

本記事の会議の日時・議題・資料名、「本日ご議論いただきたい論点」の文言、これまでの労使・公益委員の主な意見の整理、統計の数値は、厚生労働省が2026年10月30日に公開した第214回労働政策審議会労働条件分科会の資料No.1-1(全3頁)と資料No.1-2(全52頁)の原文から直接確認しました。資料No.1-2は、第204回・第205回分科会の資料を更新・再掲したものが中心です。

本日の会議でどのような発言があったか、どこまで合意が進んだかは、議事録が未公開のため確認できていません。今後の法改正の内容と時期に関する記述は当法人の推測を含み、その旨を明記しています。論点の引用は資料の文言を要約したもので、原文は出典欄のリンクから確認できます。

1 第214回労働条件分科会の概要と、ここまでの経過
項目 内容
会議名 第214回労働政策審議会労働条件分科会
日時・場所 令和8年10月30日(金)10時から12時、厚生労働省講堂
議題 労働基準関係法制について
資料No.1-1 労働時間法制の具体的課題に関する検討の論点について(法定休日、連続勤務規制、副業・兼業)(全3頁)
資料No.1-2 労働時間法制の具体的課題について(法定休日、連続勤務規制、副業・兼業)(全52頁)
議事録 未公開(2026年10月30日時点)
出典:厚生労働省「第214回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」、同「労働政策審議会(労働条件分科会)」開催一覧。

労働条件分科会は、9月16日の第211回で労働時間法制の各論の議論を再開し、第212回(10月14日)で労働契約承継法の通知の電子化、勤務間インターバル、つながらない権利、労働時間の把握を、第213回(10月23日)で裁量労働制を取り上げました。今回の第214回は、休日と副業・兼業です。いずれも、令和7年1月の労働基準関係法制研究会報告書が示した見直しの方向性を、審議会で具体的な問いに落とし込む作業と位置付けられます。改正法案の国会提出時期は確定しておらず、2026年通常国会への提出は見送られたと報じられています。

2 現行ルール・研究会報告書・本日の論点の対比

法改正はまだ決まっていませんので、通常の法改正記事のような「改正前・改正後」の表は作れません。その代わりに、現行のルール、令和7年1月の労働基準関係法制研究会報告書の提言、本日示された論点を並べます。右の列は検討中の論点であって、決定事項ではありません。施行日も未定です。

論点 現行のルール 労働基準関係法制研究会報告書(令和7年1月)の提言 第214回で示された問い(決定事項ではない)
法定休日の特定 労基法35条は休日の特定を求めていない。通達(昭和23年5月5日基発682号等)が就業規則で具体的に一定の日を休日と定めるよう指導するにとどまる あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規定することに取り組むべき。保護法益の変化による罰則適用の変化、振替の手続と期間、パート・シフト制労働者への対応を論点として挙げる 法定休日の特定を義務付けることをどう考えるか。保護法益の変化、特定の時期や方法、変更(振替)のルールの設定をどう考えるか
連続勤務の上限 週1休(35条1項)または4週4休(同2項)。36協定と休日労働の割増賃金の支払により、相当の日数の連続勤務が可能。4週4休では制度上48日連続が可能 36協定に休日労働の条項を設けた場合も含め、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労基法に設けるべき。災害復旧等の例外や、代替措置を設けて労使合意で例外とする措置も検討 例えば13日を超える連続勤務を規制することをどう考えるか。災害等に限らず、事業場の実態に応じて特に必要な場合に例外的に一定日数を超えて連続勤務できる仕組みと、その場合の健康確保措置の義務付けをどう考えるか
副業・兼業の割増賃金 労基法38条1項により事業主を異にする場合も労働時間を通算し、法定労働時間を超える部分について割増賃金を支払う(昭和23年5月14日基発769号、令和2年9月1日基発0901第3号) 健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払については通算を要しないよう制度改正に取り組むことが考えられる。解釈変更ではなく法制度の整備が必要 割増賃金の支払に係る労働時間の通算の在り方について、労働者が副業・兼業をする理由や割増賃金の制度趣旨も踏まえつつどう考えるか。健康確保のためにどのような措置を講ずべきか
出典:資料No.1-1、資料No.1-2(7頁、8頁、16頁、20頁から22頁、49頁)。右列は資料の文言を当法人が要約したもので、原文は出典欄のリンクから確認できます。
3 論点�@ 法定休日の「特定」を義務付けるか

現行の労基法35条は、休日を特定することまでは求めていません。通達は、就業規則で単に週1日とするだけでなく、具体的に一定の日を休日と定める方法を規定するよう指導し、常時10人未満の事業場でも同様に指導するとしています(昭和23年5月5日基発682号)。休日の振替については、就業規則に振替規定を設け、あらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えれば休日労働にならない一方、休日に労働させた後に代わりの日を休ませる「代休」はこれに当たらず、振り替えた結果として週の法定労働時間を超えれば時間外労働になることが示されています(昭和23年4月19日基収1397号、昭和22年11月27日基発401号)。

研究会報告書は、法定休日は健康確保のための休息であるとともに私的生活のリズムを保つためのものであり、法律関係が当事者間で明確に認識されるべきであるとして、あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上に規定することに取り組むべきとしました。その際の論点として、35条の保護法益が「週1回の休日が確保されること」から「あらかじめ特定した法定休日が確保されること」に変わることによる罰則適用の変化、振替の手続と期間、パートタイム労働者やシフト制労働者への対応(いつまでに特定するか、特定した休日を変更できるか)の3つを挙げています。

立場 これまでの主な意見(資料No.1-2の整理による)
労働者側 1週間単位のリズムを整える健康確保とワーク・ライフ・バランスの観点から、あらかじめ法定休日を特定すべきことを法律上規定すべき。直前の変更などの恣意的な運用を防ぐルールも併せて検討すべき。時間外労働の一部を休日労働に振り替えて上限規制を潜脱する運用がされないよう、振替の手続を明文化し、振替期間の限定も含めて検討すべき
使用者側 特定のルールを明確化することは労務管理がしやすくなり法令遵守にもつながるなど労使双方にメリットがあり、法定化に賛同する。いつまでに特定すべきかは業種・業態により異なる労務管理の実態を踏まえて検討すべき。突発的な業務や急な欠勤で代替要員を確保できず休日振替で対応せざるを得ない場合もあり、直前の変更規制や事前の特定期間の設定は事業の円滑な運用の大きな障害になりかねない
出典:資料No.1-2「これまでの議論の主な意見の整理(法定休日)」(2頁)。

法定休日を特定すること自体には労使とも前向きで、争点は特定の時期と振替の柔軟性に移っていると読めます。シフト制の多い小売、飲食、介護では、いつまでに休日を確定させなければならないか、確定後の変更をどこまで認めるかが、実務上の最大の焦点になると考えられます。これは当法人の読みであり、資料が結論を示しているわけではありません。

4 論点�A 「13日を超える連続勤務」を規制するか

資料No.1-1は、現行の休日規制では4週4休のほか36協定と休日労働の割増賃金の支払によって相当の日数連続して労働させることも可能であるとしたうえで、連続勤務の実態や精神障害の労災認定基準も踏まえ、長期間の連続勤務を防ぐ観点から、例えば13日を超える連続勤務を規制することをどう考えるか、と問いかけています。続けて、災害等に限らず、事業場の実態に応じて特に必要な場合に、例外的に一定の日数を超えて連続勤務を行える仕組みを設けることと、その場合にも一定の健康確保措置を講じなければならないとすることをどう考えるか、を問うています。例外の対象を「災害等に限らず」と明記した点は、使用者側がこれまで求めてきた労使合意による例外の制度設計を、事務局が論点として受け止めたものと読むことができます。これは当法人の読みです。

資料No.1-2に載った連続勤務の実態は次のとおりです。最大14日以上連続で勤務した労働者は全体の約2%ですが、産業によって差があります。

産業 6〜13日 14〜20日 21〜27日 28日以上 14日以上(計)
全労働者計 34.1% 1.2% 0.5% 0.2% 1.9%
宿泊業、飲食サービス業 41.0% 8.0% 0.2% ― 8.2%
建設業 47.6% 4.5% 2.3% 1.0% 7.8%
教育、学習支援業 46.9% 2.6% 1.2% 1.6% 5.4%
運輸業、郵便業 48.8% 0.5% 0.3% 0.2% 1.0%
製造業 33.0% 0.3% 0.4% 0.2% 0.9%
医療、福祉業 30.7% 0.5% 0.1% 0.3% 0.9%
卸売業、小売業 30.3% ― 0.4% ― 0.4%
出典:資料No.1-2「連続勤務日数」(13頁、労働時間制度等に関する実態調査、令和6年4月から6月の実績、労働者個人調査)。「14日以上(計)」は14〜20日、21〜27日、28日以上の各欄を当法人が合計したもので、四捨五入の関係で資料本文の「約2%」と一致しない場合があります。残りは5日以下の割合です。

精神障害の労災認定基準では、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」ことが心理的負荷「中」の出来事とされ、1か月以上の連続勤務や連日深夜に及ぶ連続勤務は「強」の具体例として明記されています。資料によれば、令和2年度のストレス評価に関する調査では、2週間以上の連続勤務のストレス強度は5.63で、「1か月に120時間以上の時間外労働を行った」(5.53)を上回りました。令和7年度の業務災害に係る精神障害の支給決定1082件のうち、2週間以上の連続勤務を主な出来事として心理的負荷「強」と判断された事案は30件(うち自殺3件)です。13日という日数は、この「2週間以上」の認定基準と整合させるために導かれています。

資料は、13日を超える連続勤務を規制した場合のイメージを2通り示しています。労基法35条で規制した場合、法定休日を一定の時期に集中させるときでも少なくとも2週間に1度は法定休日が確保されるため、連続勤務日数の観点では1週1休(最大12日連続)と同程度の規制になりますが、36協定があればその休日にも休日労働させることは可能です。労基法36条で規制した場合は、36協定を結んで休日労働させる場合であっても、少なくとも2週間に1日の休日が確保されます。研究会報告書は「36協定に休日労働の条項を設けた場合も含め」と明記しており、後者の形で法改正されれば、「36協定さえあれば何日でも連続勤務させられる」という現在の前提が崩れることになります。どちらの形になるかは決まっていません。

立場 これまでの主な意見(資料No.1-2の整理による)
労働者側 休日労働を含めた連続勤務規制を早期に導入すべきで、災害時対応などの例外は限定的に。現行制度は36協定と割増賃金で上限規制の範囲内なら何日でも休日労働が可能な建付けであり、2週間以上の連続勤務という労災認定の判断要素との整合も勘案して罰則付きで規制すべき。4週4休は最大48日の連続勤務が可能で早急な見直しが必要。健康・福祉確保相談窓口の設置だけでは代替措置として効果が乏しい
使用者側 健康確保の観点で重要だが、災害復旧やシステムトラブル等の大きな突発事象で、取引先の事業運営を通じて国民生活にも影響する場合にやむを得ず連続勤務が必要なケースがあり、画一的な規制ではなく、現場の実態を踏まえ労使合意で一定の例外を設けられる制度設計とすべき。ごく短時間の業務で休日労働となる場合の扱いも議論すべき。代替措置は高度プロフェッショナル制度や裁量労働制と同様に、代償休日に限らず医師の面接指導や相談窓口の設置など幅広い選択肢から企業の実態に合わせて選べるようにすべき
公益 連続勤務規制は労働からの解放のためのものであり、健康確保措置の内容は、連続勤務が続いている段階での医学的なチェックや、終了後にダメージを回復できるよう労働からの解放を保障することが考えられる。13日を超える連続勤務をさせてはならないという規定を設けるべきという提言は重く受け止めるべきで、原則に対する例外は考えるべきだが、限定的な形で設けることはあり得る
出典:資料No.1-2「これまでの議論の主な意見の整理(連続勤務規制)」(3頁、4頁)。
5 論点�B 副業・兼業の「割増賃金の通算」をどうするか

資料No.1-1は、副業・兼業について2つの問いを示しました。1つは、割増賃金の支払に係る労働時間の通算の在り方について、労働者が副業・兼業をする理由や、割増賃金の制度趣旨も踏まえつつどう考えるか。もう1つは、副業・兼業を行う労働者の健康確保を図るにはどのような措置を講ずべきか、です。

現行ルールでは、労基法38条1項の「事業場を異にする場合」には事業主を異にする場合も含むとされ(昭和23年5月14日基発769号)、令和2年9月1日の通達(基発0901第3号)が、所定労働時間は労働契約の締結の先後の順に、所定外労働時間は実際に発生した順に通算し、自らの事業場の法定労働時間を超える部分のうち自ら労働させた時間について割増賃金を支払うという原則的な方法と、あらかじめ各事業場の労働時間の上限を設定しておく「管理モデル」を示しています。研究会報告書は、副業・兼業が使用者の命令ではなく労働者の自発的な選択で行われることからすると、割増賃金の趣旨が通算のうえで各使用者に及ぶものではないという整理が可能であるとし、健康確保のための通算は維持しつつ、割増賃金については通算を要しないよう制度改正に取り組むことが考えられるとしました。

資料No.1-2には、この論点の判断材料となる2種類の数字が載っています。1つは副業者の姿、もう1つは企業側の支払の実態です。

項目 数値(JILPT「副業者の就労に関する調査」2024年7月)
有職者に占める副業者の割合 6.0%(男性5.1%、女性7.4%)
副業する理由(複数回答) 「収入を増やしたいから」54.5%、「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体ができないから」38.2%(本業が非正社員では43.9%)
本業と副業を合わせた1週間の実労働時間 平均47.7時間(「40時間以上50時間未満」21.5%、「50時間以上60時間未満」18.1%)
本業と副業の就業形態の組合せ 「非正社員+非正社員」32.9%で最多。「正社員+非正社員」19.5%
本業の勤め先への労働時間の報告 副業を知らせている人のうち「報告を求められていないし、報告していない」67.0%
出典:資料No.1-2(28頁、30頁から32頁、36頁)。調査は2022年10月実施、副業者1万1358人の回答。
雇用での副業・兼業を認めている事業所の割増賃金の支払状況 割合
他社の労働時間と通算して割増賃金を支払っている 12.7%
管理モデルを導入して割増賃金を支払っている 0.2%
自社の労働時間制度において発生した割増賃金のみを支払っている 28.3%
通算しても法定労働時間に達しないため、割増賃金を支払う必要がない 25.9%
割増賃金を支払っていない 32.5%
出典:資料No.1-2「副業・兼業の場合における割増賃金の支払状況」(44頁、労働時間制度等に関する実態調査、事業所調査)。雇用での副業・兼業を認めていると回答した事業所のうち、該当労働者が1人以上いる事業所の集計。

この2つの表を並べると、論点の構図が見えてきます。副業者の3人に1人以上は生活のために副業しており、非正社員同士の組合せが最も多く、週の総労働時間は平均で47.7時間に達します。一方で、通算して割増賃金を支払っている事業所は1割強にとどまり、3割は支払っていません。労働者側は「現にそれほど支払われていないことを理由に通算を廃止するのは強行法規性に反する。周知と適正運用を進めるべきだ」と主張し、使用者側は「中小企業では通算が難しく、副業の受入れが進まない。健康確保の通算は残し、割増賃金は適用外に」と主張しています。

立場 これまでの主な意見(資料No.1-2の整理による)
労働者側 低賃金のために副業せざるを得ない非正規雇用労働者が大きな比重を占め、結果として長時間労働になっていることを踏まえ、通算と割増賃金規制の遵守・徹底を図るべき。労働者が自発的に副業していることや、通算に基づく割増賃金の支払が現にそれほど行われていないことを理由に通算を廃止することは、労基法の強行法規性や割増賃金規制の趣旨に照らして違和感がある。廃止は企業側の負担を減らすだけで労働者には賃金面で不利になるだけであり、長時間労働の是正と過労死等ゼロの取組に逆行する。支払われていないなら、ルールを緩めるのではなく周知と適正運用を広げるべき
使用者側 副業・兼業は自発的なキャリア形成に資するが、割増賃金規制が普及を阻害しており、健康確保のための通算を残すことを前提に見直すべき。副業は会社の業務命令ではなく本人の選択であり、通算して割増賃金を支払うことは制度趣旨になじまない。中小企業では通算が難しく利用が進まず、副業先の負担が大きいため採用を控えたりフリーランスでの兼業を選んだりする判断を招いている。割増賃金は通算管理の適用外とし企業ごとの管理とする方向で検討すべきで、先に契約した方を本業とする現行の整理も再検討が必要
公益 自社の労働者が他社でも就労していることを知らない場合には通算した労働時間に基づく割増賃金の支払義務を負わないという地裁判決が出たが、これは、労働者の健康確保という重要な目的のために、通算に基づく割増賃金支払義務という金銭的負担を使用者に負わせる方法が適しているのかという問題提起ではないか
出典:資料No.1-2「これまでの議論の主な意見の整理(副業・兼業)」(18頁、19頁)。

公益委員が言及した地裁判決は、資料に事件名の記載はありませんが、スポットワーク仲介事業者が被告となり、使用者が労働者の他社での就労を知らなかった場合の割増賃金支払義務が論じられた東京地裁令和7年3月27日判決(労働経済判例速報2593号3頁)を指すものと考えられます。これは当法人の推測です。

この論点は、労使の対立が最も鮮明です。研究会報告書と規制改革実施計画(令和7年6月13日閣議決定)は、健康確保のための通算は維持し割増賃金の通算は見直す方向を示していますが、労働者側は廃止に強く反対しており、本日の議論でどこまで接近したかは議事録の公開を待つ必要があります。現時点で結論を予測することはできません。

6 今後のスケジュール――確認できたことと分からないこと

確認できているのは、労働条件分科会が9月16日の第211回で労働時間法制の議論を再開し、その後、第212回(10月14日)、第213回(10月23日)、第214回(10月30日)と、月2回から3回のペースで各論を進めていることです。分からないのは、法案の国会提出時期、施行時期、13日という日数がそのまま採用されるか、例外の範囲、罰則の有無、副業・兼業の割増賃金通算の結論です。

過去の労働基準法改正の例からすると、分科会で建議(報告)がまとまり、法案要綱の諮問と答申を経て国会に提出されるまでに一定の期間を要し、成立後も周知と準備のための期間が置かれるのが通常です。仮に法改正が実現しても、施行までには準備期間が設けられる可能性が高いと考えられます。これは当法人の推測であり、今後の政治日程によって変わり得ます。

7 企業が今から点検すること――5つの点検項目

規制の中身が決まる前にできることは、現行法のもとで既に求められていることの点検と、自社の実態の把握です。いずれも当法人の整理です。

点検1 自社の「最大連続勤務日数」を勤怠データで把握する

まず、過去1年間の勤怠データから、社員ごとの最大連続勤務日数を出してください。資料の実態調査では14日以上の連続勤務は全体の約2%ですが、宿泊・飲食で8.2%、建設で7.8%、教育・学習支援で5.4%と、業種によって大きく異なります。シフト制の職場、繁忙期のある業種、災害対応やシステム保守のある部門では、14日以上の連続勤務が発生していないかを部門別に確認します。仮に13日を上限とする規制が36条の形で入れば、36協定による休日労働を含めて数えることになりますので、休日出勤を含めた連続日数で集計してください。

点検2 就業規則で法定休日を特定し、所定休日と区別する

法改正を待たなくても、通達は休日の特定を指導しています。完全週休2日制の会社でも、どちらが法定休日かを就業規則で特定していないと、休日労働の割増賃金率(法定休日は35%、法定外休日は時間外として25%)の計算が曖昧になります。令和7年就労条件総合調査では完全週休2日制を採用する企業は65.5%ですが、週休2日の会社ほど、どちらが法定休日かを定めないまま運用している例が見受けられます。法定休日が特定の義務付けの対象になれば、就業規則への記載と、シフト制の場合はいつまでに特定するかのルールが必要になります。今のうちに、就業規則の休日条項を見直してください。

点検3 休日振替と代休の運用を分け、週40時間超の時間外を見落とさない

振替は、事前に、振り替える日を特定して行う必要があります。休日に働かせた後で代わりの日を休ませる代休は振替ではなく、休日労働の割増賃金が必要です。また、振替によって週の法定労働時間を超えた分は時間外労働になります。この2点は現行の通達で明確に示されており、法改正の有無にかかわらず是正が必要です。労働者側が振替期間の限定を求めていることを踏まえると、振替先の休日を同一週内または近接する日に置く運用を社内ルールにしておくことが、将来の規制にも対応しやすいと考えられます。

点検4 4週4休(変形週休制)を使う会社は、起算日の定めと運用上の上限を確認する

4週4休を採用する場合、就業規則で単位となる4週間の起算日を定める必要があります(労基則12条の2第2項)。これがないと変形週休制自体が成り立ちません。加えて、制度上は48日連続勤務が可能な仕組みですから、運用として連続勤務の上限(例えば12日まで)を社内ルールに置き、超える場合は所属長と人事の承認を要する手続にしておくことを検討してください。労働者側は4週4休の早急な見直しを求めており、規制が入れば最も影響を受ける制度です。

点検5 副業・兼業の届出制と、健康確保のための労働時間の把握を整える

割増賃金の通算ルールがどちらの方向に決まっても、健康確保のための労働時間の把握は維持される見込みです。研究会報告書も規制改革実施計画も、割増賃金の通算を見直す場合には健康確保にこれまで以上に万全を尽くす必要があるとしています。副業の届出制、他社での労働時間の自己申告の仕組み、通算した労働時間が長い社員への面接指導や時間外労働の抑制のルールを、就業規則と運用で整えてください。現に雇用での副業を受け入れている会社は、現行法上は通算して割増賃金を支払う義務があることを前提に、管理モデルの導入可否を含めて現状の支払方法を点検する必要があります。資料によれば、通算して支払っている事業所は12.7%にとどまります。

8 当法人の視点

本日の論点を読んで当法人が最も重く見るのは、連続勤務規制の例外が「災害等に限らず」と書かれ、同時に健康確保措置の義務付けが対になっている点です。

当法人の見解

当法人は、連続勤務規制について、例外を労使合意で設けられる制度設計になる可能性が高まったと読みます。使用者側が求めてきた「画一的な規制ではなく労使合意による例外」と、公益委員の「限定的な形で例外を設けることはあり得る」という意見の間に、事務局が「災害等に限らず、事業場の実態に応じて特に必要な場合」という問いを置いたからです。ただし、例外には健康確保措置が条件として付く構造になると考えられます。会社にとっての実務上の意味は、例外を使いたいのであれば、どの業務で、どのような場合に、何日までの連続勤務を認め、その間とその後にどのような健康確保措置を講じるかを、労使で決めて規程にする準備が必要になるということです。36協定の特別条項の運用と同じ発想です。

この見解には、根拠が十分でない前提があります。本日の会議での発言内容は未公開で、労使がどこまで歩み寄ったかは分かりません。13日という日数、35条と36条のどちらで規制するか、罰則の有無も未定です。副業・兼業の割増賃金通算については、労使の対立が深く、方向性の予測はできません。法案の国会提出時期も確定していません。

最も強い反論は、2つの方向からあり得ます。労働者側からは、「災害等に限らず」例外を認めれば、繁忙期や人手不足を理由に例外が常態化し、規制が骨抜きになるという反論です。使用者側からは、健康確保措置を例外の条件にすれば、医師の面接指導や産業医の体制を持たない中小企業は事実上例外を使えず、規制が画一的に及ぶのと変わらないという反論です。当法人は、前者に対しては、例外の要件と健康確保措置が規程と記録で検証可能な形になるかどうかが実効性を分けると考え、後者に対しては、だからこそ今のうちに連続勤務の実態を把握し、例外を使わずに済むシフト設計に近づけておくことが、中小企業にとって最も確実な備えだと考えます。

簡易な確かめ方を1つ挙げます。直近1年の勤怠データから、連続勤務日数が13日を超えた社員の人数と部門を数えてください。ゼロなら、規制が入っても就業規則の休日条項の整備で足ります。1人でもいれば、その部門のシフトと休日振替の運用に、規制前に手を付ける理由があります。

まとめ

本日開催された第214回労働条件分科会で、厚生労働省は、法定休日の特定の義務付け、例えば13日を超える連続勤務の規制、副業・兼業の割増賃金の支払に係る労働時間の通算の在り方について、具体的な問いを示しました。法定休日の特定は労使とも法定化に前向きで、焦点は特定の時期と振替のルールにあります。連続勤務規制は、例外を「災害等に限らず」認める仕組みと、その場合の健康確保措置が論点として明示されました。副業・兼業の割増賃金通算は、労使の意見が真っ向から対立しています。法改正の内容と時期はいずれも決まっておらず、本日の議論の内容は議事録の公開を待つ必要があります。

当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。連続勤務の実態把握、法定休日の特定、休日振替の運用点検、4週4休の起算日と運用上の上限、副業の届出と労働時間の把握。この5つを、規制の中身が決まる前に、規程と運用の両面から経営者と一緒に整えてまいります。就業規則の休日条項と副業規程の整備については就業規則作成・改訂、勤怠データからの連続勤務の実態把握については給与監査顧問、継続的なご相談については高難度業務対応型顧問のページもご覧ください。続報は議事録の公開を待って改めてお知らせします。

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【根拠法令】

労働基準法35条(休日)、36条(時間外及び休日の労働)、37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)、38条1項(時間計算)、89条(就業規則の作成及び届出の義務)/労働基準法施行規則12条の2第2項(変形週休制の起算日)/労働安全衛生法66条の8(面接指導)/昭和23年5月5日基発682号(休日の特定)、昭和23年4月19日基収1397号(休日の振替と代休)、昭和22年11月27日基発401号(休日の振替と時間外労働)、昭和23年5月14日基発769号(事業主を異にする場合の労働時間の通算)、令和2年9月1日基発0901第3号(副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について)

【参考判例】

東京地方裁判所令和7年3月27日判決(労働経済判例速報2593号3頁。公益委員が言及した地裁判決に当たると当法人が推測するもの。資料に事件名の記載はない)

【出典・参考資料】

厚生労働省「第214回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」(2026年10月30日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_77050.html/同 資料No.1-1「労働時間法制の具体的課題に関する検討の論点について(法定休日、連続勤務規制、副業・兼業)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001764245.pdf/同 資料No.1-2「労働時間法制の具体的課題について(法定休日、連続勤務規制、副業・兼業)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001764246.pdf/厚生労働省「労働政策審議会(労働条件分科会)」開催一覧 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126969_00004.html/厚生労働省「第213回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」(2026年10月23日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76895.html/当ブログ2026年10月15日「第212回労働条件分科会」に関する記事(労働契約承継法の通知の電子化、勤務間インターバル等)

【免責事項】

本記事は2026年10月30日時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。第214回労働条件分科会の議事録は未公開であり、本日の会議での発言内容と議論の到達点は確認できていません。法改正の内容、13日という日数、例外の範囲、罰則の有無、副業・兼業の割増賃金通算の結論、法案の国会提出時期と施行時期は、いずれも現時点で決まっていません。「当法人の見解」と第7章の点検項目は当法人の整理であり、審議会や厚生労働省の見解を示すものではありません。具体的な事案については、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

なお、紛争性のある事案の交渉代理および訴訟代理は、弁護士法72条により社会保険労務士の業務範囲外です(特定社会保険労務士による個別労働関係紛争のあっせん代理等の法定の例外を除きます)。休日制度と副業・兼業のルールの決定は会社自身が行うものであり、当法人は、就業規則の休日条項と副業規程の整備、36協定と休日振替の運用設計、勤怠データからの連続勤務の実態把握、副業者の労働時間把握と健康確保措置の設計を支援し、未払割増賃金の請求など紛争に発展した場面では、提携する弁護士と連携して対応いたします。

この記事を書いた人

三重 英則(HIDENORI MIE)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員(特定社会保険労務士)

特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)

法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。