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作成日:2026/10/31
医療・介護・保育の紹介手数料は医師107.8万円・看護72.5万円・保育66.8万円・介護59.7万円、介護は紹介で就職した5人に1人が半年以内に離職
労務トピックス
医療・介護・保育の紹介手数料は医師107.8万円・看護72.5万円・保育66.8万円・介護59.7万円、介護は紹介で就職した5人に1人が半年以内に離職
厚生労働省が9月30日に公表した職種別平均手数料・離職率を3年分の推移と愛知県のデータで読む
2026年10月31日|社会保険労務士法人T&M Nagoya 三重 英則(特定社会保険労務士)

おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。

「紹介会社に払う手数料、高くないですか」「紹介で入った人がすぐ辞めてしまう」。医療機関、介護事業所、保育所の経営者から、こうした声を聞くことは少なくないと思います。人手不足が続くなか、有料職業紹介事業者(いわゆる紹介会社)を通じた採用は、この3分野で欠かせない手段になっています。

厚生労働省は2026年9月30日、「地域ブロック別の職種別平均手数料及び離職率について」を公表しました。職業紹介事業者が国に提出する職業紹介事業報告を集計し、医療・介護・保育分野の職種別の平均手数料額(令和6年度実績)と、就職後6か月以内の離職率(令和5年度実績)を、全国、地域ブロック、都道府県の単位で示したものです。厚生労働省は「職業紹介事業者を選択する際の参考としていただく」ことを目的に掲げています。

本記事では、今回の公表値を整理したうえで、厚生労働省のウェブサイトで確認できる過年度の資料と並べて3年分の推移を示し、名古屋の社会保険労務士法人として気になる東海ブロック・愛知県のデータを確認します。そのうえで、顧問先の採用実務にどう生かすかを考えます。総数だけが引用されがちな資料ですが、PDFの内訳と過年度分を読むと、別の姿が見えてきます。

📌 この記事でわかること

✓ 厚生労働省が2026年9月30日に公表した資料によれば、医療・介護・保育分野の職業紹介の平均手数料額(令和6年度実績、全国)は、医師107万8千円、看護72万5千円、保育66万8千円、介護59万7千円です。前年度の公表値(令和5年度実績)と比べると、医師は82万4千円から25万4千円の増加、看護は63万9千円から8万6千円、保育は64万6千円から2万2千円、介護は55万1千円から4万6千円、いずれも増えています。

✓ 就職後6か月以内の離職率(令和5年度実績、無期雇用のみ、全国)は、医師4.8%、看護12.9%、保育14.5%、介護19.9%です。介護では、紹介で無期雇用として就職した人のおよそ5人に1人が半年以内に辞めている計算になります。前年度公表値(令和4年度実績)の医師3.0%、看護10.5%、保育12.2%、介護15.3%から、全職種で上昇しました。

✓ ただし、離職の有無が「判明せず」と報告された件数が、介護で934件から227件、看護で1,392件から241件へと大きく減っています。判明せず分をすべて離職とみなした上限値で比べても介護は17.7%から20.5%へ上がっており、介護の上昇は報告精度の改善だけでは説明できません。一方、看護と保育は上限値ではほぼ横ばいで、見かけ上の上昇には報告の変化が含まれていると考えられます。

✓ 愛知県に所在する紹介事業所の実績は、看護79万2千円、保育72万円、介護71万7千円と、3職種で全国平均を上回り、介護の離職率は23.6%と全国平均(19.9%)より高くなっています。介護の手数料は令和4年度の59万円から2年で12万7千円増えました。数値は紹介事業所の所在地ベースであり、「愛知で採用するといくらかかるか」を直接示すものではない点に注意が必要です。

✓ 当法人は、紹介手数料を「1人採用あたり」ではなく「半年後に在籍している1人あたり」で捉え直すこと、契約前に返戻金・違約金・年収の定義を確認すること、入職後6か月の定着策を労務管理の課題として位置付けること、ハローワークなど手数料のかからない経路と併用することの4点を、顧問先への助言として示します。

手数料の高さは「採用の成否」ではなく「定着の成否」で評価するべきです。半年以内の離職は、紹介会社の問題であると同時に、受け入れる職場の問題でもあります。

1 公表資料の概要と、読むうえでの3つの注意点

今回の資料は、厚生労働省のウェブページ「地域ブロック別の職種別平均手数料及び離職率について」に、「全国及びブロック別 職種別平均手数料(額・分布)」と「全国及びブロック別 職種別離職率」の2本のPDFとして掲載されています。公表日は厚生労働省の新着情報で2026年9月30日と確認しました。同種の資料は過年度分も同省のウェブサイトに残っており、本記事では令和4年度・令和5年度実績の手数料と、令和3年度・令和4年度実績の離職率のPDFも確認しています。

項目 平均手数料額 離職率
対象年度 令和6年度実績 令和5年度実績
対象となる就職 常用就職(無期雇用、または4か月以上の期間を定めた雇用) 常用就職のうち無期雇用のみ
算出方法 事業所ごとの常用就職件数と、それに係る手数料総額から算出 事業所ごとの常用就職件数と、就職後6か月以内の離職者数から算出
職種区分 医師・看護・保育・介護 同左
地域区分 全国、北海道、東北、南関東、北関東・甲信、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州の各ブロックと都道府県 同左
資料出所 職業紹介事業報告 同左

出典:厚生労働省「全国及びブロック別 職種別平均手数料(額・分布)」(令和6年度実績)、「全国及びブロック別 職種別離職率」(令和5年度実績)の注記から当法人が整理。

この資料を読むときに外せない注意点が3つあります。第1に、地域は紹介事業所の所在地ベースです。ブロック別・都道府県別の数値は、職業紹介事業所の所在地が属する都道府県で算出されており、求人施設の所在地によるものではありません。東京の紹介会社が愛知の病院に紹介した案件は「東京(南関東)」に計上されます。第2に、対象事業所が10事業所未満の都道府県は非公表で、表では「−」とされています。平均値としての有意性や個別の事業所が特定されないようにする観点からの措置と、資料に説明されています。第3に、離職率には「判明せず」が外数として括弧書きで示されています。6か月以内に離職したか否かが「判明せず」と報告された割合で、離職率には含まれていません。この第3の点は、後述する年度比較で重要になります。

2 全国の数値――手数料は全職種で上昇、離職率も上昇

まず全国の手数料です。今回公表された令和6年度実績と、厚生労働省のウェブサイトで確認できる過年度の公表値を並べます。

職種 令和4年度実績 令和5年度実績 令和6年度実績(今回) 前年度比
医師 98万4千円 82万4千円 107万8千円 +25万4千円
看護 63万円 63万9千円 72万5千円 +8万6千円
保育 63万4千円 64万6千円 66万8千円 +2万2千円
介護 54万6千円 55万1千円 59万7千円 +4万6千円

出典:厚生労働省「地域ブロック別の職種別平均手数料額・分布について」(令和4年度実績、令和5年度実績、令和6年度実績)。全国の平均手数料額(単位:千円)を万円表記に換算。前年度比は当法人の計算。

介護は2年で5万1千円、看護は9万5千円、保育は3万4千円増えました。医師は令和5年度に一度下がって令和6年度に大きく上がっており、件数が少ない職種のため年度ごとの振れが大きいと考えられます。手数料の水準そのものについて、京都労働局の説明資料は、3分野の紹介事業者の約7割が手数料率を20%から30%としていると紹介しています。

次に離職率です。今回公表された令和5年度実績と、過年度の公表値を並べます。括弧内は「判明せず」の率です。

職種 令和3年度実績 令和4年度実績 令和5年度実績(今回)
医師 5.1%(0.1%) 3.0%(0.1%) 4.8%(0.1%)
看護 12.6%(3.0%) 10.5%(2.4%) 12.9%(0.3%)
保育 9.8%(6.4%) 12.2%(3.8%) 14.5%(1.1%)
介護 14.7%(3.5%) 15.3%(2.4%) 19.9%(0.6%)

出典:厚生労働省「地域ブロック別の職種別離職率について」(令和3年度実績、令和4年度実績、令和5年度実績)。就職後6か月以内の離職率(無期雇用のみ、全国)。括弧内は離職の有無が「判明せず」と報告された割合(離職率の外数)。

介護の19.9%は、紹介で無期雇用として就職した人のおよそ5人に1人が半年以内に辞めている計算です。全国の「判明せず」件数は、医師9件、看護241件、保育190件、介護227件でした。

ここで注意が必要なのは、前年度まで「判明せず」の件数がはるかに多かったことです。令和4年度実績では看護1,392件、保育762件、介護934件、令和3年度実績では看護1,454件、保育1,177件、介護1,481件が判明せずとされていました。判明せずが減った分、以前なら離職率の分子に入らなかった件数が今回は離職として報告されている可能性があります。そこで、判明せず分をすべて離職とみなした上限値で比べてみます。介護は令和4年度の17.7%(15.3%+2.4%)から令和5年度の20.5%(19.9%+0.6%)へ上がっており、介護の離職率の上昇は、報告精度の改善だけでは説明できません。一方、看護は12.9%から13.2%、保育は16.0%から15.6%と、上限値で比べるとほぼ横ばいか低下です。看護・保育の見かけ上の上昇には、「判明せず」が減ったことによる報告上の変化が相当程度含まれていると考えられます。この整理は公表資料の数値から当法人が行った推論であり、厚生労働省が示している見解ではありません。

なお、手数料は令和6年度、離職率は令和5年度と対象年度が1年ずれており、手数料には4か月以上の有期雇用も含まれる一方、離職率は無期雇用のみが対象です。両者を単純に結び付けることには限界があります。

3 地域ブロック別の特徴――南関東の医師、北陸の介護、四国の離職率

地域ブロック別の数値を見ます。繰り返しになりますが、紹介事業所の所在地ベースの集計です。

ブロック 医師 看護 保育 介護
全国 1,078 725 668 597
北海道 934 644 555 583
東北 951 694 567 564
南関東 1,520 769 698 575
北関東・甲信 737 581 669 544
北陸 1,028 817 674 878
東海 946 784 733 670
近畿 438 730 604 603
中国 1,111 664 658 626
四国 793 581 789 601
九州 1,057 575 639 576

平均手数料額(令和6年度実績、単位:千円)。出典:厚生労働省「全国及びブロック別 職種別平均手数料(額・分布)」。

ブロック 医師 看護 保育 介護
全国 4.8% 12.9% 14.5% 19.9%
北海道 0% 12.7% 12.9% 20.7%
東北 1.9% 10.2% 11.0% 21.1%
南関東 5.7% 12.3% 14.8% 17.3%
北関東・甲信 2.9% 17.9% 13.6% 17.3%
北陸 0.9% 13.6% 15.0% 18.7%
東海 2.0% 12.4% 15.1% 22.2%
近畿 2.9% 14.0% 14.4% 20.1%
中国 3.2% 13.8% 14.4% 25.1%
四国 16.4% 24.8% 16.7% 27.1%
九州 2.1% 13.7% 14.1% 24.7%

就職後6か月以内の離職率(令和5年度実績、無期雇用のみ)。「判明せず」の率は省略。出典:厚生労働省「全国及びブロック別 職種別離職率」。

目立つのは4点です。医師の手数料は南関東が152万円と突出しており、都県別では東京が164万3千円です。逆に近畿は43万8千円とブロック別では最も低くなっています。介護の手数料は多くのブロックで50万円台から60万円台ですが、北陸は87万8千円と全国平均を大きく上回り、県別では新潟が104万円と全国平均の1.7倍を超える水準です。離職率では、四国が医師16.4%、看護24.8%、保育16.7%、介護27.1%と全職種で全国平均を上回っています。介護の離職率は中国25.1%、九州24.7%でも高く、東海も22.2%と全国平均を上回りました。

ブロック間の差の理由(紹介事業者の規模や件数、職種の内訳、地域の労働市場など)は、公表資料には示されていません。所在地ベースの集計である以上、「その地域で採用するといくらかかるか」を直接示すものではないことも、重ねて注意が必要です。

4 東海ブロック・愛知県のデータ――全国より高い手数料、全国より高い離職率

名古屋の社会保険労務士法人として、東海ブロックと愛知県の数値を確認します。岐阜と三重は、対象事業所が10事業所未満のため、ほとんどの職種が非公表です。

  医師 看護 保育 介護
東海ブロック 946 784 733 670
岐阜 − − − 371
静岡 − 746 − 556
愛知 926 792 720 717
三重 − − − −
(参考)全国 1,078 725 668 597

平均手数料額(令和6年度実績、単位:千円)。「−」は対象事業所が10事業所未満のため非公表。出典:厚生労働省「全国及びブロック別 職種別平均手数料(額・分布)」。

  医師 看護 保育 介護
東海ブロック 2.0%(1.2%) 12.4%(0.4%) 15.1%(0.3%) 22.2%(0.1%)
岐阜 − − − −
静岡 − 12.5%(0.3%) − 20.5%(0%)
愛知 2.1%(1.2%) 12.4%(0.4%) 14.3%(0.4%) 23.6%(0.1%)
三重 − − − −
(参考)全国 4.8%(0.1%) 12.9%(0.3%) 14.5%(1.1%) 19.9%(0.6%)

就職後6か月以内の離職率(令和5年度実績、無期雇用のみ)。括弧内は「判明せず」の率。出典:厚生労働省「全国及びブロック別 職種別離職率」。

愛知県に所在する紹介事業所の実績を3年分並べると、次のようになります。

愛知県 手数料
令和4年度
手数料
令和5年度
手数料
令和6年度
離職率
令和3年度
離職率
令和4年度
離職率
令和5年度
医師 87万7千円 76万7千円 92万6千円 2.8% 2.5% 2.1%
看護 70万6千円 74万1千円 79万2千円 14.1% 11.3% 12.4%
保育 63万6千円 66万2千円 72万円 13.2% 24.8% 14.3%
介護 59万円 62万円 71万7千円 19.1% 19.8% 23.6%

出典:厚生労働省「地域ブロック別の職種別平均手数料額・分布について」(令和4年度から令和6年度実績)、「地域ブロック別の職種別離職率について」(令和3年度から令和5年度実績)の愛知県の行。離職率の「判明せず」の率は省略(令和3年度実績では看護5.5%、保育5.6%、介護5.1%と高く、令和5年度実績では0.1%から1.2%)。

愛知県の紹介事業所の実績では、看護・保育・介護の3職種で手数料が全国平均を上回っています。特に介護は71万7千円で、全国平均(59万7千円)より12万円高く、令和4年度の59万円から2年で12万7千円増えました。そのうえで介護の離職率は23.6%と、全国平均(19.9%)を上回り、令和3年度実績の19.1%、令和4年度実績の19.8%から2年連続で上がっています。名古屋・愛知の介護事業所は、全国平均より高い手数料を払い、全国平均より高い確率で半年以内に辞められている可能性を、このデータは示しています。繰り返しますが、所在地ベースの集計であり、個々の事業所の実態を示すものではありません。保育の令和4年度実績24.8%は、前後の年度と比べて突出しており、件数の少なさによる振れと考えられますが、資料からは理由は分かりません。

5 背景――3分野の職業紹介をめぐる国の取組と、令和7年4月の新ルール

この公表は、国が医療・介護・保育分野の職業紹介に対して進めてきた一連の取組の一部です。京都労働局の説明資料「医療・介護・保育分野の人材確保について」(一般社団法人京都私立病院協会のウェブサイト掲載)と、厚生労働省のウェブページ「雇用仲介事業者(職業紹介事業者、募集情報等提供事業者)は新たなルールへの対応が必要です」で、取組の内容を確認しました。

まず利用状況です。京都労働局資料によれば、令和5年度の3分野の就職件数は、ハローワーク経由が171,898件、民間職業紹介事業者経由が175,636件とほぼ同数です。分野別では、医療(ハローワーク48,686件、民間112,114件)と保育(14,537件、21,405件)は民間が多く、介護(108,675件、42,117件)はハローワークが約2.6倍と多い構造になっています。

医療・介護・保育分野の職業紹介に対する国の主な措置

1 お祝い金と転職勧奨の禁止を許可条件に。求職者への就職お祝い金の禁止と、就職後2年間の転職勧奨の禁止が、職業紹介事業の許可条件に規定されています。指導監督にもかかわらず違反が継続・反復する場合は、許可取消しの対象になります(京都労働局資料)。

2 手数料実績の公開義務(令和7年4月1日から)。職業紹介事業者は、徴収した紹介手数料の実績(職種ごとの平均手数料率など)を「人材サービス総合サイト」に掲載することが必要になりました。あわせて、違約金に関する定めについて、求人者に誤解が生じないようあらかじめ明示することが求められています(厚生労働省ウェブページ)。

3 「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口。都道府県労働局に設置されています(京都労働局では需給調整事業課)。厚生労働省のリーフレットは、採用後数日で退職した労働者について返戻金規定により減額された手数料を請求されたケースなどのトラブル事例を挙げ、契約前に料金・返戻金・違約金を確認することを求めています。

4 適正な有料職業紹介事業者の認定制度。法令遵守などの基準を満たす事業者を認定・公表する制度で、基本基準の1つとして、早期離職時(就職後6か月以内)の返戻金制度を設けていることが挙げられています。京都労働局資料によれば、令和7年11月時点の認定事業者は52社(うち医療40社、介護24社、保育15社。複数分野の重複を含む)です。

今回公表された手数料と離職率のデータは、こうした「見える化」の一環です。求人者である医療機関・介護事業所・保育所が、紹介会社を選ぶ材料として使うことが前提になっています。

6 顧問先の採用実務にどう生かすか――4つの点検

以上を踏まえ、当法人が医療機関・介護事業所・保育所の経営者にお勧めする点検項目を4つに絞ります。共通する考え方は、紹介手数料を「採用」の対価ではなく「定着」で評価することです。

点検1 「1人採用あたり」ではなく「半年後に在籍している1人あたり」で手数料を捉える

紹介手数料を1人採用あたりの費用だけで見ると、本当のコストを見誤ります。介護職の全国平均の手数料59万7千円と離職率19.9%を単純に当てはめると、半年後も在籍している1人あたりの手数料は約74万5千円(59万7千円÷(1−0.199))です。愛知の数値(71万7千円、23.6%)では約93万8千円になります。これは返戻金を考慮しない単純な試算で、実際には返戻金規定により早期離職時に手数料の一部が戻る場合があり、手数料と離職率は対象年度も対象雇用形態も異なります。考え方を示すための試算としてご覧ください。自社の数字で同じ計算をするには、直近1年の紹介経由の入職者数、そのうち6か月後に在籍している人数、支払った手数料の総額(返戻金を差し引いた額)の3つがあれば足ります。

点検2 契約前に、年収の定義・返戻金・違約金・公開実績の4つを確認する

紹介会社と新たに契約するときは、手数料率(または定額)と、その算定の基礎となる「年収」の定義(賞与・手当・残業代を含むか)、早期離職時の返戻金の有無、対象期間、返戻割合、違約金規定(紹介を受けた人をその紹介会社を介さずに採用した場合など)の内容と期間、人材サービス総合サイトでの手数料実績・定着実績の公開状況と適正事業者認定の有無、の4点を確認してください。令和7年4月からは、違約金に関する定めを求人者に誤解が生じないよう事前に明示することが紹介事業者に求められています。契約書に明示がない、または口頭の説明と異なる場合は、その場で書面での明示を求めることができます。すでに生じた返戻金や違約金をめぐる紛争の交渉は弁護士に委任すべき事項ですが、契約前の確認項目の整理と契約書の読み合わせは、当法人が支援できる範囲です。

点検3 「入職後6か月」の定着策を、採用の問題ではなく労務管理の問題として位置付ける

離職率の定義が「就職後6か月以内」であることは、裏を返せば、入職後半年間の定着策が採用コストを左右することを意味します。半年以内の離職理由として実務上よく聞くのは、求人票や労働条件通知書と実際の労働条件の食い違い、夜勤の頻度やシフトの決め方、休日の取り方に関する入職前の説明不足、試用期間中に誰も様子を見ていないことです。労働条件の明示(労働基準法15条)を求人票から労働条件通知書、入職後の実態まで一貫させること、シフトや夜勤の実際を入職前に具体的に説明すること、試用期間中の面談を定例化し教育担当者を明確にすることは、いずれも紹介会社ではなく受け入れ側が整えるものです。

点検4 ハローワークとの併用と、手数料を処遇改善に振り向ける比較

介護分野では、就職件数ベースでハローワーク経由が民間の約2.6倍あります(令和5年度)。紹介会社への依存度が高い事業所には、ハローワークの求人票の見直し、自社の採用ページの整備、職員紹介(リファラル)制度など、手数料のかからない経路の強化をあわせて検討する余地があります。また、介護職を年に3人紹介会社経由で採用し、うち1人が半年以内に辞める状況が続いているとすれば、全国平均の手数料でも年間180万円前後、愛知の水準では200万円を超える手数料が発生している計算になります。その費用を既存職員の処遇改善や職場環境の改善に回した場合の定着効果と比較してみることも、経営判断の材料になります。

7 当法人の視点

この資料は、紹介会社を選ぶための参考情報として公表されています。当法人は、それに加えて、受け入れる側の職場を点検するための資料として読むべきだと考えています。

当法人の見解

介護の離職率が全国でも愛知でも2年連続で上がり、直近の前年度比では報告精度の改善を織り込んだ上限値で比べても上昇していることは、紹介会社のマッチングの質だけでは説明がつきません。半年以内に辞めるかどうかを決めるのは、入職した後の職場です。手数料の高さを嘆く前に、半年以内に辞められている理由を自社の側で数えることが、採用コストを下げる最短の道だと当法人は考えています。愛知に所在する紹介事業所の実績が、全国より高い手数料と全国より高い離職率の組合せになっているというデータは、名古屋で介護事業所を支援する当法人にとって、他人事ではありません。

当法人の見解に対する最も強い反論は、「手数料の水準は人手不足という需給の結果であり、紹介会社を使わなければ採用そのものができない以上、手数料の高さや離職率を論じても現場の人員は埋まらない」というものです。この反論には理由があります。だからこそ当法人は、紹介会社の利用をやめることではなく、1人定着あたりのコストを自社の数字で把握し、契約条件を確認し、入職後6か月の定着策に投資することを勧めています。これらは紹介会社を使い続けながらできることです。もう1つの反論として、「所在地ベースの集計で愛知の事業所の採用コストを語るのは誤りだ」という指摘もあり得ます。これもそのとおりで、本記事の愛知の数値は、愛知に所在する紹介事業所の実績であって、愛知の事業所が払った額ではありません。自社の実態は自社の数字で確かめる必要があります。

簡易な確かめ方を1つ挙げます。直近1年間に紹介会社経由で入職した人を1人ずつ書き出し、入職日、6か月後に在籍していたか、支払った手数料(返戻金があれば差し引いた額)を並べ、手数料の合計を6か月後に在籍している人数で割ってみてください。その数字が全国平均の約74万5千円や愛知の約93万8千円より大きければ、次に、採用1人あたりの手数料そのものが全国平均(介護59万7千円)と比べて高いのかを見てください。採用1人あたりの額は平均並みなのに、定着1人あたりの額が大きいのであれば、問題は手数料率ではなく定着にあると考えられます。

まとめ

厚生労働省が2026年9月30日に公表した「地域ブロック別の職種別平均手数料及び離職率について」は、全国平均で医師107万8千円、看護72万5千円、保育66万8千円、介護59万7千円という紹介手数料の水準と、介護で19.9%、保育14.5%、看護12.9%、医師4.8%が就職後6か月以内に離職しているという実態を示しました。過年度の公表値と並べると、手数料は全職種で上昇し、介護の離職率は報告精度の改善を織り込んでも上がっています。愛知県に所在する紹介事業所の実績では、看護・保育・介護の手数料が全国平均を上回り、介護の離職率は23.6%でした。

当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。紹介手数料は、1人採用あたりではなく、半年後に在籍している1人あたりで評価し、入職後6か月の定着を労務管理の課題として位置付ける。これが、このデータから当法人が導く提案です。労働条件の明示から定着策の設計までは高難度業務対応型顧問、就業規則や労働条件通知書の整備は就業規則作成・改訂のページもご覧ください。

紹介手数料を「定着」で評価できていますか

1人定着あたりの採用コストの把握、紹介会社との契約前の確認項目、入職後6か月の定着策の設計まで、
社会保険労務士法人T&M Nagoya がご相談をお受けします。

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【根拠法令】

職業安定法30条(有料職業紹介事業の許可)、32条の3(手数料)、32条の13(取扱職種の範囲等の明示等)、32条の16(事業報告)、48条の3(改善命令等)/職業安定法関係法令の改正(令和7年4月1日から対応が必要とされたもの。職業紹介事業者の手数料実績の人材サービス総合サイトへの掲載、違約金に関する定めの事前明示)/労働基準法15条(労働条件の明示)/労働基準法施行規則5条

【参考判例】

本記事は統計資料の解説であり、特定の判決を取り上げていません。

【出典・参考資料】

厚生労働省「地域ブロック別の職種別平均手数料及び離職率について」(2026年9月30日掲載) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/36163_00001.html/厚生労働省「全国及びブロック別 職種別平均手数料(額・分布)」(令和6年度実績、PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001754261.pdf/厚生労働省「全国及びブロック別 職種別離職率」(令和5年度実績、PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001754262.pdf/厚生労働省「地域ブロック別の職種別平均手数料額・分布について」(令和5年度実績、PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001569957.pdf/厚生労働省「地域ブロック別の職種別離職率について」(令和4年度実績、PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001571749.pdf/厚生労働省「地域ブロック別の職種別平均手数料額・分布について」(令和4年度実績、PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001168882.pdf/厚生労働省「地域ブロック別の職種別離職率について」(令和3年度実績、PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001165536.pdf/厚生労働省「雇用仲介事業者(職業紹介事業者、募集情報等提供事業者)は新たなルールへの対応が必要です」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1_00002.html/厚生労働省「医療機関や介護・障害福祉施設、保育所・幼稚園などの求人者の皆様へ 職業紹介事業者や募集情報等提供事業者の支払いを巡るトラブルが発生しています」(リーフレット、PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/001592981.pdf/厚生労働省 京都労働局「医療・介護・保育分野の人材確保について」(一般社団法人京都私立病院協会ウェブサイト掲載の説明資料、PDF。資料に作成日の記載なし) https://www.khosp.or.jp/system/wp-content/uploads/2026/02/01_%E3%80%90%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%B1%80%E3%80%91%EF%BC%93%E5%88%86%E9%87%8E%E5%9C%B0%E6%96%B9%E7%B5%84%E7%B9%94%E8%A8%AA%E5%95%8F%E6%99%82%E8%AA%AC%E6%98%8E%E8%B3%87%E6%96%99.pdf

【免責事項】

本記事は2026年10月5日時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。数値は厚生労働省の公表資料(PDF)に基づきますが、地域別の数値は職業紹介事業所の所在地ベースの集計であり、求人施設の所在地によるものではなく、個々の事業所の実態を示すものではありません。年度間の比較と「判明せず」を踏まえた上限値の整理、1人定着あたりの手数料の試算は、公表資料の数値から当法人が行った計算と推論であり、厚生労働省が示している見解ではありません。試算は返戻金を考慮しておらず、手数料と離職率は対象年度と対象雇用形態が異なります。職種区分の細目(「看護」に准看護師や看護助手が含まれるか等)とブロック間の差の要因は、公表資料の範囲では確認できていません。具体的な事案については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。

なお、紹介会社との間で生じた返戻金・違約金等をめぐる紛争の交渉代理および訴訟代理は、弁護士法72条により社会保険労務士の業務範囲外です。当法人は、紹介会社との契約前の確認項目の整理と契約書の読み合わせ、労働条件の明示と求人票・労働条件通知書の整合の点検、入職後6か月の定着策(試用期間中の面談、教育担当者の設計、シフト・夜勤の事前説明)の設計、1人定着あたりの採用コストの把握を担い、紛争が生じた局面では提携する弁護士と連携して対応いたします。

この記事を書いた人

三重 英則(HIDENORI MIE)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員(特定社会保険労務士)

特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)

法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。