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作成日:2026/10/04
長時間労働が疑われる29,150事業場のうち38.5%で違法な時間外労働 令和7年度の監督指導結果を前年度と比べて読む(厚生労働省 令和8年9月15日公表)
労務トピックス
長時間労働が疑われる29,150事業場のうち38.5%で違法な時間外労働
令和7年度の監督指導結果を前年度と比べて読む(厚生労働省 令和8年9月15日公表)
2026年10月4日|社会保険労務士法人T&M Nagoya 三重 英則(特定社会保険労務士)

おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。

厚生労働省は令和8年9月15日、長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が令和7年度(令和7年4月から令和8年3月まで)に実施した監督指導の結果を公表しました。監督指導を実施した29,150事業場のうち、11,228事業場(38.5%)で違法な時間外労働が確認されています。

この監督指導の対象は、無作為に選ばれた事業場ではありません。公表資料によれば、各種情報から時間外・休日労働が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、過労死等に係る労災請求が行われた事業場など、長時間労働が疑われる事業場です。したがって「日本の事業場の38.5%が違法」という意味ではありません。

報道発表のページには総数しか載っていませんが、同時に公表されたPDF資料には前年度(令和6年度)との比較表、労働時間の管理方法の内訳、3つの監督指導事例が収録されています。この記事では、そこまで読んだうえで、違反率が下がったことをどう評価すべきか、そして9月から見直された監督指導の運用のもとで自社が何を点検すべきかを整理します。

📌 この記事でわかること

✓ 令和7年度に監督指導を実施した29,150事業場のうち、22,882事業場(78.5%)で労働基準関係法令違反があり、11,228事業場(38.5%)で違法な時間外労働が確認されたこと

✓ 違法な時間外労働の割合は前年度の42.4%から38.5%に下がったが、監督指導の実施数が2,638事業場増えた一方で違法な時間外労働の事業場数はほぼ同じ(11,230から11,228)であり、単純な改善とは読めないこと

✓ 違法な時間外労働があった事業場で最も長く働いた労働者の時間数は、月80時間超が4,991事業場、月200時間超が111事業場で、いずれも前年度より減っていること。業種別では運輸交通業の違法な時間外労働の割合が54.7%と最も高いこと

✓ 健康障害防止のため指導票を交付された事業場は12,811(43.9%)、労働時間の把握が不適正として指導された事業場は4,045(13.9%)であり、公表された事例ではパソコンの使用記録との乖離や、後から修正できる勤怠システムが問題とされたこと

✓ 令和8年9月1日から、月45時間以内への一律の削減指導が見直され、36協定で定めた健康・福祉確保措置の実施状況を重点的に確認する運用に変わっており、11月には過重労働解消キャンペーンによる重点監督が予定されていること

監督指導で問われるのは、時間数そのものに加えて、労働時間を正しく記録し、その記録に基づいて健康確保の措置を実際に講じているかどうかです。

1 公表された数字を前年度と並べる

公表資料に掲載された前年度比較表をもとに、主な数値を整理します。かっこ内の割合は、とくに断りのない限り監督指導を実施した事業場数に対するものです。

区分 令和6年度 令和7年度
監督指導を実施した事業場 26,512 29,150(2,638増)
労働基準関係法令違反があった事業場 21,495(81.1%) 22,882(78.5%)
違法な時間外労働があった事業場 11,230(42.4%) 11,228(38.5%)
賃金不払残業があった事業場 2,118(8.0%) 1,901(6.5%)
過重労働による健康障害防止措置が未実施の事業場 5,691(21.5%) 5,919(20.3%)
健康障害防止措置が不十分なため改善を指導した事業場(指導票) 12,890(48.6%) 12,811(43.9%)
労働時間の把握が不適正なため指導した事業場(指導票) 4,016(15.1%) 4,045(13.9%)

次は、違法な時間外労働があった事業場について、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数を区分したものです。割合は違法な時間外労働があった事業場数に対するもので、上位の区分は下位の区分に含まれます(月200時間超の事業場は、月80時間超にも数えられています)。

最長の労働者の時間外・休日労働 令和6年度 令和7年度
月80時間超 5,464(48.7%) 4,991(44.5%)
うち月100時間超 3,191(28.4%) 2,842(25.3%)
うち月150時間超 653(5.8%) 554(4.9%)
うち月200時間超 124(1.1%) 111(1.0%)

ここで注意したいのは、この区分が事業場の中で最も長く働いた1人の時間数で集計されているという点です。月200時間超の111事業場で、何人がその水準に達していたかは公表されていません。

業種別の状況も公表資料に掲載されています。次の表の事業場数は公表資料によるもので、かっこ内の割合は各業種の監督指導実施事業場数に対して当法人が計算したものです(公表資料は主な業種のみを掲げているため、業種の合計は全体と一致しません)。

業種 監督指導を実施した事業場 労働基準関係法令違反 違法な時間外労働 賃金不払残業 健康障害防止措置の未実施
商業 6,398 4,885(76.4%) 2,133(33.3%) 350(5.5%) 1,567(24.5%)
製造業 4,567 3,639(79.7%) 1,882(41.2%) 246(5.4%) 649(14.2%)
保健衛生業 3,810 3,102(81.4%) 1,460(38.3%) 253(6.6%) 673(17.7%)
接客娯楽業 3,116 2,640(84.7%) 1,431(45.9%) 304(9.8%) 958(30.7%)
建設業 2,421 1,878(77.6%) 865(35.7%) 160(6.6%) 438(18.1%)
運輸交通業 2,423 2,072(85.5%) 1,326(54.7%) 163(6.7%) 400(16.5%)
その他の事業 3,316 2,349(70.8%) 1,137(34.3%) 202(6.1%) 598(18.0%)
全体 29,150 22,882(78.5%) 11,228(38.5%) 1,901(6.5%) 5,919(20.3%)

監督指導の実施数が最も多いのは商業ですが、違法な時間外労働の割合は33.3%で、表の中では最も低い水準です。割合が最も高いのは運輸交通業の54.7%で、監督を受けた事業場の半数を超えています。接客娯楽業は違法な時間外労働が45.9%、賃金不払残業が9.8%、健康障害防止措置の未実施が30.7%と、3つの項目のいずれも全体を上回っています。業種によって、監督で見つかる問題の組合せが異なることが読み取れます。

ただし、業種ごとの監督対象がどのような情報に基づいて選ばれたかは公表されていないため、この割合を業種全体の違反傾向と同一視することはできません。

規模別に見ると、監督指導を実施した事業場のうち、労働者数1〜9人の事業場が6,823(23.4%)、10〜29人が12,234(42.0%)で、30人未満の事業場が全体の65.4%を占めています。30〜49人は4,510(15.5%)、50〜99人は2,595(8.9%)、100〜299人は1,946(6.7%)、300人以上は1,042(3.6%)です。一方、企業規模別では、労働者数300人以上の企業に属する事業場が6,599(22.6%)あります(1〜9人3,557、10〜29人7,697、30〜49人3,791、50〜99人3,480、100〜299人4,026)。長時間労働の監督は小規模な事業場が中心ですが、大企業の支店や営業所などの小さな拠点も、その中に相当数含まれていると考えられます。規模別の違反率は公表されていません。

2 違反率は下がったが、違反の件数は減っていない

見出しの数字だけを見れば、違法な時間外労働の割合は42.4%から38.5%へ3.9ポイント下がっています。しかし中身を分けると、動いたのは分母です。監督指導の実施数が2,638事業場増えたのに対し、違法な時間外労働が確認された事業場数は11,230から11,228と、ほとんど変わっていません。

監督の対象を広げれば、違法状態にない事業場が監督を受ける数も増え、割合は下がります。今回の低下がその影響によるものなのか、事業場の実態の改善によるものなのかは、公表資料からは判別できません。当法人としては、割合の低下を改善の証拠として説明することは避けるべきだと考えます。

一方で、実態の変化を示す可能性がある数字もあります。違法な時間外労働があった事業場のうち、最長の労働者が月80時間を超えていた事業場は5,464から4,991へ、月100時間超は3,191から2,842へ減っています。違法な時間外労働の事業場数が同水準のまま、最も重い区分に入る事業場が減っているということです。これは、違法状態の中でも極端な長時間労働に至る事業場は減りつつあるという読み方と整合します。ただし、監督対象の選び方が年度によって同じとは限らないため、断定はできません。

それでも、月200時間を超えて働いた労働者がいる事業場が111あったという事実は重いものです。脳・心臓疾患の労災認定基準(令和3年9月14日基発0914第1号)は、発症前1か月におおむね100時間、または発症前2か月から6か月にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性が強いと評価できるとしています。月200時間は、その1か月100時間の2倍の水準です。

3 是正勧告書と指導票を分けて読む

公表資料の数字は、性質の異なる2つの集計から成り立っています。1つは、法令違反があり是正勧告書を交付した事業場の集計で、違法な時間外労働、賃金不払残業、健康障害防止措置の未実施がこれに当たります。もう1つは、健康障害防止のため指導票を交付した事業場の集計で、健康障害防止措置が不十分なための改善指導と、労働時間の把握が不適正なための指導がこれに当たります。

数として最も大きいのは、健康障害防止措置が不十分として指導票を交付された12,811事業場(43.9%)です。ただし、この事業場と違法な時間外労働があった事業場がどれだけ重なっているかは公表されていません。したがって「違法ではない事業場でも43.9%が指導を受けた」と読むことはできません。言えるのは、是正勧告に至る違反の有無とは別の帳簿で、健康確保の指導が大量に行われているということまでです。

指導の中身も一部公表されています。12,811事業場のうち6,717事業場(52.4%)には、時間外・休日労働を月80時間以内に削減するよう指導が行われました。公表資料の注記によれば、このほか、月45時間以内への削減に努めること、衛生委員会等での調査審議、医師による面接指導の申出が適切になされるための仕組みを予め定めることなども指導事項として集計されています。

労働時間の把握については、4,045事業場(13.9%)が、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)に適合するよう指導を受けています。公表資料によれば、監督指導を実施した事業場の労働時間の管理方法は、タイムカードを基礎とするものが10,498、ICカード・IDカードを基礎とするものが6,237、パソコンの使用時間の記録を基礎とするものが1,071、使用者の現認によるものが2,201、そして自己申告制によるものが6,517でした(部署によって方法が異なる事業場は複数に計上されています)。

4 公表された3つの監督指導事例

公表資料には、違法な長時間労働を認めた監督指導事例が3件掲載されています。いずれも公表資料に記載された範囲で紹介します。

1件目は、労働者数約20名の電気設備工事業の事業場です。現場労働者7人について、36協定の特別条項で定めた月99時間を超え、かつ労働基準法の上限(月100時間未満、複数月平均80時間以内)も超える時間外・休日労働が認められ、最長で1か月当たり237時間に達していました。休憩時間中の労働の一部が把握されていない状況もあったとされています。是正勧告は労働基準法32条違反と36条6項違反の2本立てです。事業場は14人を増員し、スマートフォン等から始業・終業時刻を入力するシステムと、労務管理責任者の現場常駐によって出退勤をリアルタイムで把握する体制に改めています。

2件目は、労働者数約400名のソフトウェア業の事業場です。プロジェクトリーダーの労働者が長時間労働を原因とする脳出血で死亡したとして労災請求がなされ、それを契機に立入調査が行われました。システムトラブル対応や部下の指導が集中し、休日出勤などの記録に過小申告がみられたとされています。36協定の上限(月80時間)と法定の上限を超える時間外・休日労働が認められ、最長は1か月当たり125時間でした。注目すべきは是正の内容で、従来の勤怠システムは自動反映された入退室時間を後から修正できる仕様だったため、システムを改修したとされています。

3件目は、労働者数約130人の河川の管理業務を行う事業場です。始業・終業時刻の記録とパソコンの使用時間記録との間に1時間以上の乖離がある日が複数あり、休日や年次有給休暇として処理された日にもパソコンの使用記録が残っていましたが、事業場は乖離の理由を把握していませんでした。監督署が過去に遡った実態調査を指導した結果、36協定の上限(月91時間)と法定の上限を超える最長で1か月当たり199時間の時間外・休日労働が判明し、実態調査前に把握していた時間分しか賃金を支払っていなかったとして、不足額の遡及払いも是正勧告されています。

3件目の事例は、この記事で最も実務的な示唆を含んでいると当法人は考えます。記録上の労働時間が短くても、客観的な記録との乖離を放置していれば、調査の結果として違法な長時間労働と賃金不払いが同時に確定するという流れが、1つの事例の中に示されているからです。

5 同日公表の外国人を使用する事業場の結果

厚生労働省は同じ9月15日に、技能実習生または特定技能外国人を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況も公表しています。こちらは年度ではなく令和7年(暦年)の集計です。

区分 技能実習生を使用する事業場 特定技能外国人を使用する事業場
監督指導を実施した事業場 13,148 8,082(前年5,750)
労働基準関係法令違反があった事業場 9,619(73.2%) 6,179(76.5%)
主な違反事項 使用する機械等の安全基準(22.8%)、健康診断結果についての医師等からの意見聴取(15.7%)、割増賃金の支払(15.6%) 使用する機械等の安全基準(20.7%)、健康診断結果についての医師等からの意見聴取(16.7%)、割増賃金の支払(16.3%)
送検件数 26件 9件

違反率は70%台で、長時間労働の監督結果の38.5%を大きく上回ります。ただし、こちらは労働基準関係法令違反の全般を数えたもので、違法な時間外労働に限った数字と単純に比較することはできません。長時間労働の監督結果でも、労働基準関係法令違反の全般で見れば78.5%です。

内訳で目を引くのは、両方の集計で最も多い違反が長時間労働ではなく、機械等の安全基準である点です。2番目が健康診断結果についての医師等からの意見聴取(労働安全衛生法66条の4)であることも共通しています。外国人材を受け入れている事業場では、労働時間の管理とあわせて、安全衛生の基本的な措置を点検する必要があると考えられます。

6 9月からの監督指導の見直しを踏まえて自社で点検すべき5項目

今回の結果は令和7年度、すなわち令和8年3月までの監督指導の集計です。その後、厚生労働省は令和8年8月19日、同年9月1日から労働基準監督署の監督指導を見直すと発表しました。時間外・休日労働の時間数のみに着目して月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直し、各事業場が36協定で定める健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を重点的に確認するというものです。過重労働による健康障害のおそれが高い場合には引き続き必要な指導を行うともされています。見直しの内容と実務上の論点は、当法人の記事「「残業45時間」一律指導の見直しは長時間労働の容認なのか」で詳しく解説しています。

また厚生労働省は、11月の過重労働解消キャンペーンの期間中に重点的な監督指導を行うと明記しています。令和8年度のキャンペーンの具体的な内容は、この記事の執筆時点で当法人は確認できていません。

時間数の一律指導が見直されても、法律上の上限規制と健康確保の義務は変わりません。むしろ監督の焦点が、記録と措置の実施状況に移ります。今回の公表資料と見直しの内容を重ねると、確認すべきは次の点です。

点検1 36協定の上限と特別条項の手続を、実績と照らしているか

36協定の範囲内であっても、労働基準法36条6項の上限(時間外・休日労働の合計が単月100時間未満、2か月から6か月の平均80時間以内)を超えれば違法です。公表事例の3件はいずれも、協定の上限と法定の上限の両方を超えていました。月45時間を超えられるのは年6か月までであることも含め、協定の文言ではなく毎月の実績で確認してください。

点検2 健康・福祉確保措置を、協定に書いたとおり実施し記録しているか

特別条項付きの36協定には、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を定めることになっています。9月からの監督指導で重点的に確認されるのはこの実施状況です。協定に書いた措置が実際に行われ、その記録が残っているかを確認してください。

点検3 月80時間を超えた労働者への対応が、仕組みとして回っているか

時間外・休日労働が1か月当たり80時間を超えた労働者については、本人への超えた時間に関する情報の通知(労働安全衛生規則52条の2第3項)、産業医への情報提供(同規則14条の2)、申出に基づく医師による面接指導(労働安全衛生法66条の8)が求められます。公表資料では、面接指導の申出が適切になされるための仕組みを予め定めることも指導事項として集計されています。

点検4 労働時間の状況を、客観的な方法で、管理監督者も含めて把握しているか

労働安全衛生法66条の8の3は、面接指導を実施するため、管理監督者を含む労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者を除く)の労働時間の状況を、客観的な方法その他の適切な方法で把握することを求めています。自己申告制を採る場合は、入退場記録やパソコンの使用時間との乖離を調べ、必要に応じて補正することがガイドラインで求められています。公表事例の2件目のように、勤怠システムの記録を後から修正できる設定になっていないかも確認してください。

点検5 記録との乖離を遡ったときの金額を把握しているか

公表事例の3件目では、実態調査の結果、違法な長時間労働と同時に割増賃金の不足額の遡及払いが是正勧告されています。賃金請求権の消滅時効は労働基準法115条で5年とされていますが、同法附則143条3項により当分の間3年です。乖離の平均時間に、対象人数と36か月を掛けた金額が、潜在的な負債の目安になります。

7 当法人の視点

今回の公表資料を「違反率が下がった」という見出しで読み終えるのは、正確ではないと当法人は考えます。違法な時間外労働が確認された事業場数は前年度とほぼ同じです。変わったのは監督を受けた事業場の数であり、割合の低下は、監督の網が広がったことの反映でもあり得ます。

実務上より重い意味を持つのは、指導票の集計と監督指導事例です。12,811事業場が健康障害防止の指導を受け、4,045事業場が労働時間の把握について指導を受けています。そして公表された3つの事例は、いずれも労働時間の記録が実態を捉えていなかったことが問題の出発点になっています。休憩中の労働が把握されていない、休日出勤の記録に過小申告がある、パソコンの記録と打刻が1時間以上ずれている。長時間労働は、まず記録の欠陥として現れています。

9月からの監督指導の見直しは、この構造をさらに明確にするものと考えられます。時間数の一律指導が見直され、健康・福祉確保措置の実施状況が重点的に確認されるということは、措置を講じる前提となる労働時間の記録そのものが、これまで以上に問われるということです。記録が不正確であれば、措置を講じるべき労働者を特定することもできません。

当法人の見解

使用者の立場から見れば、監督指導は時間数の上限を守っているかの確認だけでなく、記録と措置が一貫しているかの確認に移りつつあります。36協定の範囲内に収まっていることは、それだけでは安全の根拠になりません。協定に書いた健康確保の措置を実施した記録と、その前提となる客観的な労働時間の記録が揃ってはじめて、監督指導にも紛争にも耐えられる状態になると考えられます。

労働者の立場から見れば、記録が実態を捉えていないことは、未払いの問題であると同時に、面接指導などの健康確保の仕組みから漏れてしまうことを意味します。正確な記録は、会社を守る証拠であり、働く人の健康を守る入口でもあります。11月の重点監督を待たず、打刻とパソコンの記録の乖離を一度確かめることから始めることをおすすめします。

まとめ

厚生労働省が令和8年9月15日に公表した令和7年度の監督指導結果によれば、長時間労働が疑われる29,150事業場のうち11,228事業場(38.5%)で違法な時間外労働が確認されました。割合は前年度の42.4%から下がりましたが、監督指導の実施数が2,638事業場増えた一方で、違法な時間外労働の事業場数はほぼ同じです。最長の労働者が月80時間を超えていた事業場は4,991、月200時間を超えていた事業場は111で、いずれも前年度より減っています。業種別では、違法な時間外労働の割合は運輸交通業が54.7%と最も高く、監督を受けた事業場の65.4%は労働者数30人未満の事業場でした。健康障害防止のため指導票を交付された事業場は12,811、労働時間の把握が不適正として指導された事業場は4,045で、公表された事例ではいずれも労働時間の記録の不備が問題の出発点になっていました。

当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。36協定の運用と健康・福祉確保措置の記録、客観的な労働時間の把握、乖離がある場合の遡及額の試算まで、監督指導を受ける前に自社の状態を確認する作業を、一緒に進めてまいります。

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36協定と特別条項の運用確認、健康・福祉確保措置の記録整備、労働時間の把握方法の見直し、労働基準監督署の調査対応まで、
社会保険労務士法人T&M Nagoya がご相談をお受けします。

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【根拠法令・資料】

労働基準法32条(労働時間)、36条(時間外及び休日の労働。上限規制は同条6項)、37条(割増賃金)、115条(時効)、附則143条3項(賃金請求権の消滅時効を当分の間3年とする経過措置)/労働安全衛生法66条の4(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)、66条の8(面接指導)、66条の8の3(労働時間の状況の把握)/労働安全衛生規則14条の2(産業医等に対する情報の提供)、52条の2(面接指導の対象となる労働者の要件等)/厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)/「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」(令和3年9月14日基発0914第1号)/厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果を公表します」(令和8年9月15日)および同公表資料(PDF)/厚生労働省「外国人技能実習生又は特定技能外国人を使用する事業場に対して行った令和7年の監督指導、送検等の状況を公表します」(令和8年9月15日)/厚生労働省「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」(令和8年8月19日)

【免責事項】

本記事は2026年9月16日時点の公表資料に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。前年度との比較は公表資料の比較表によるもので、増減の数値は当法人が計算したものです。業種別の割合は公表された事業場数から当法人が計算したものであり、事業場規模別・企業規模別の違反率は公表されていません。令和8年度の過重労働解消キャンペーンの具体的内容は、本記事では扱っていません。具体的な事案については、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

なお、紛争性のある事案の交渉代理および訴訟代理は、弁護士法72条により社会保険労務士の業務範囲外です(特定社会保険労務士による個別労働関係紛争のあっせん代理等の法定の例外を除きます)。労働基準監督署への是正報告や社内体制の整備は会社自身が行うものであり、当法人は36協定の運用確認、健康・福祉確保措置の記録整備、労働時間管理の点検、就業規則の整備、労働基準監督署の調査への対応支援を担います。未払賃金請求その他の交渉代理・訴訟対応が必要な局面では、提携する弁護士と連携して対応いたします。

この記事を書いた人

三重 英則(HIDENORI MIE)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員(特定社会保険労務士)

特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)

法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。