トップ
事務所案内
お問合せ
労務コンテンツ一覧
サービス案内
人事労務ニュース
リーフレット
リンク先
IPO労務監査・改善
M&A労務監査
労働問題解決
高難度業務対応
就業規則作成・改定
給与監査顧問
給与計算代行
手続代行・手続監査
お知らせ
作成日:2026/07/22
【実務】シフト制パートの年休、何日つければいいのか ―― 厚労省「シフト制」留意事項が令和8年6月に改正
社会保険労務士法人T&M Nagoya
労務トピック   年次有給休暇

シフト制パートの年休、何日つければいいのか

厚労省「シフト制」留意事項が令和8年6月19日に改正
― 所定労働日数が決まらない人の付与日数を「実績」から算定する

おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。

顧問先から最もよく受ける質問の一つが、これです。
「うちのパートはシフト制で、月によって働く日数がバラバラです。年次有給休暇は何日つければいいんですか?」

正社員なら単純です。勤続6か月・出勤率8割以上で10日、以降は勤続年数に応じて増える。労働基準法39条の原則どおりです。ところが週や月ごとに労働日数が変わるシフト制のパート・アルバイトでは、そもそも「所定労働日数」が固定されていません。付与日数を決める分母が、はっきりしないのです。

この実務上の悩みに、厚生労働省が正面から手を入れました。「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日策定)が、令和8年6月19日に改正され、年次有給休暇に関する記載が大幅に追記されたのです。飲食・小売・介護・宿泊・警備など、シフト制のパートを多数抱える企業には看過できないトピックです。

📌 この記事のポイント

■ 厚労省「シフト制」留意事項が令和8年6月19日に改正。年次有給休暇の記載が大幅に追記された
所定労働日数を定めていないことを理由に年休を付与しないのは「認められない」と明記された
■ 算定しがたい場合は実績で代替できる。6か月経過時=過去6か月の労働日数の実績を2倍/1年6か月経過時以降=前年の労働日数の実績
■ 契約に「目安となる労働日数」が定めてある場合、実績より付与日数が多くなるときに限り、目安日数を使ってよい
使用者の都合で一方的に所定労働日数を増減させることは認められない
■ 年休取得日の賃金は、時給者ならその日のシフト上の所定労働時間分を支払う

1.改正前と改正後 ― 何が変わったのか

留意事項は法令そのものではなく、行政が示す「留意すべき事項」の整理です。したがって改正によって新たな法的義務が生まれたわけではありません。変わったのは、現場が最も困っていた「で、結局何日つければいいのか」に、行政が具体的な計算方法を示したという点です。

項目 改正前(令和4年1月7日版) 改正後(令和8年6月19日)
付与日数 「労働日数に応じた日数を与えなければならない」と原則を確認するのみ。具体的な日数は示されていなかった 通常付与・比例付与の日数表を掲載。参照すべき「所定労働日数」の意味も明示
所定労働日数を
算出しがたい場合
記載なし(現場の最大の悩みが未回答だった) 実績による算定方法を明示。「定めていないから付与しない」は認められないと明記
年休取得日の賃金 「一定の賃金を支払わなければならない」と述べるのみ 「通常の賃金」の具体的計算方法を明示(時給者・日給者の別に)
その他 有期契約の更新上限・無期転換の明示、雇用保険および社会保険の適用要件など、令和8年6月までの法令改正を踏まえた修正・追記

この改正は、内閣府・規制改革推進会議の「働き方・人への投資」ワーキング・グループが令和8年1月9日にシフト制の年休を取り上げた議論を受けたものです。当法人ではすでに答申段階での方向性を解説しており、本稿はそれが実際に行政の留意事項へ反映されたという続報にあたります。

2.前提の確認 ― ここでいう「シフト制」とは

◆ 留意事項における「シフト制」の定義

労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような勤務形態。

三交替勤務のように、年や月などの一定期間における労働日数・労働時間数があらかじめ決まっている勤務形態は含まれません。勤務の時間帯が交替するだけで、日数・時間は確定しているためです。

つまり問題になるのは、「契約時点で労働日数が確定していない」働き方に限られます。この特徴こそが、年休の付与日数を決めるうえでの難しさの根源です。

3.出発点 ― 「通常付与」と「比例付与」を正しく振り分ける

改正後の留意事項には、付与日数の表そのものが掲載されました。まずは自社のシフト制パートが、どちらの表に乗る人なのかを判定します。

(1) 比例付与の対象者

1週間の所定労働日数が4日以下、または1年間の所定労働日数が216日以下であり、かつ、1週間の所定労働時間が30時間未満の労働者(労基法39条3項)

→ これに当てはまらない人は、シフト制のパートであっても正社員と同じ通常付与(勤続6か月で10日〜)です。

(2) 通常付与の日数

継続勤務年数 6か月 1年
6か月
2年
6か月
3年
6か月
4年
6か月
5年
6か月
6年6か月
以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

(3) 比例付与の日数

週の所定
労働日数
1年間の所定
労働日数
6か月 1年
6か月
2年
6か月
3年
6か月
4年
6か月
5年
6か月
6年6か月
以上
4日 169〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

赤字部分にご注目ください。週4日勤務でも、勤続3年6か月を超えれば年10日以上が発生します。年10日以上ということは、年5日の時季指定義務(労基法39条7項)の対象になるということです。「パートだから年5日は関係ない」という思い込みは、そのまま法違反につながります。

✓ 「所定労働日数」とはいつ時点のものか

改正後の留意事項は、参照すべき「所定労働日数」を基準日(継続勤務6か月経過日から1年ごとの各期間の初日)に予定されている1週間の所定労働日数と明示しました。週以外の期間で定めている場合は、1年間の所定労働日数を用います。「入社時の契約書に書いてある日数」で固定するのではありません。基準日ごとに見直す必要があります。

4.改正の核心 ― 所定労働日数が決まっていない場合の算定

ここが今回の改正の中心です。シフト制では、そもそも「所定労働日数」が契約上定まっていないことが多い。改正後の留意事項は、まず前提として次を明言しました。

◆ あらかじめ所定労働日数を定めていない場合に、そのことを理由としてシフト制労働者に年次有給休暇を付与しないことは、認められません。

そのうえで、所定労働日数を算出しがたい場合の代替算定が示されました。次の日数を「基準日における1年間の所定労働日数」とみなして、付与日数を算出して差し支えないとされています。

付与のタイミング みなす日数
雇入れから6か月経過後の付与 雇入れから6か月間の労働日数の実績を2倍した日数
雇入れから1年6か月経過後以降の付与 前年の労働日数の実績

具体例で確認します。入社から6か月間の実際の労働日数が40日だった場合――

40日 × 2 = 年間の所定労働日数80日とみなす
→ 比例付与の表で「73〜120日」の行に当てはまる
→ 6か月経過時の付与日数は3日

★ 見落とし厳禁 ― 「目安となる労働日数」との有利比較ルール

今回の改正で最も見落とされやすいのが、この規律です。労働契約に「1か月○日程度勤務」といった目安となる労働日数を定めている場合、その目安日数を所定労働日数とみなして付与日数を算出することもできます。ただし――

✓ 目安日数を使えるのは「実績より多くなる場合に限り」

目安となる労働日数で算出した付与日数が、実績で算出した付与日数を上回る場合に限って、目安日数を用いてよいとされています。

つまり、実績と目安を比べて、労働者に有利な(日数の多い)方を採るという設計です。「契約書に少なめの目安日数を書いておけば、付与日数を抑えられる」――そういう運用は、この規律によって封じられています。

★ 所定労働日数の一方的な増減は認められない

もう一点、改正で明記された重要な記述があります。所定労働日とは労働契約により労働義務が設定された日であり、所定労働日数とはその日数のとおりに働くことを労使で約束するものである――だからこそ、実際に働く日数と所定労働日数が乖離しないようにすることが望まれ、使用者の都合で一方的に所定労働日数を増減させることは認められない、とされています。

年休の付与日数を抑える目的で契約上の所定労働日数を低く設定し、実際にはそれ以上働かせる――こうした運用は、明確に否定されたと理解すべきです。

◆ あわせて明記されたこと

全労働日の8割以上出勤していない労働者に対して、任意に年次有給休暇を付与することは差し支えないとされています。法定を上回る運用は妨げられません。

5.年休取得日に、いくら払うか

年休取得日の賃金は、あらかじめ就業規則等で定めたところにより、@平均賃金、A所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、B健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する額(労使協定が必要)――のいずれかによります(労基法39条9項)。

改正後の留意事項は、このうちA「通常の賃金」の具体的な計算方法を、シフト制向けに明示しました。ここが3つ目の追記です。

給与形態 「通常の賃金」として支払う額
時間給 時給額 × その年休取得日における所定労働時間として定められている労働時間
日給 その日給額

つまり時給者の場合、その日のシフトが4時間なら4時間分、8時間なら8時間分を支払うということです。「平均的な時間数で一律に計算する」という処理ではありません。

✓ 就業規則を今すぐ確認してください

@〜Bのどれを採用するかは就業規則等に定めがあることが前提です。定めがないまま運用しているケース、あるいは@平均賃金を選んでいて時給者に不利になっているケースが少なくありません。就業規則の作成・改訂にあわせて点検してください。

6.「シフトを入れた日に年休は使わせない」は認められない

留意事項および使用者向けリーフレットが明確に否定している取扱いがあります。シフトを調整して労働日を決めたのだから、その日に年休を使わせない――という運用は認められません。労働者は、あらかじめ組まれたシフト日についても、年次有給休暇を請求する権利があります(労基法39条5項)。

使用者に認められているのは、事業の正常な運営を妨げる場合の時季変更権のみであり、取得そのものを拒否する権利はありません。「休みたいならシフトを入れなければいい」という発想が現場に根づいていると、年休が実質的に機能しません。管理者への周知が必要です。

7.今すぐ点検すべき5項目

✓ シフト制パートの年休 点検チェックリスト

□ 1. 付与区分の振り分け
週30時間以上、または週5日以上働いている人は通常付与(10日〜)。「一律で少なめに付与」していないか。

□ 2. 算定ルールの明文化
所定労働日数が定まらない人について、6か月経過時=実績2倍/1年6か月経過時以降=前年実績、というルールを社内で統一する。担当者の“さじ加減”は紛争リスクそのもの。

□ 3. 「目安となる労働日数」との比較
契約書に目安日数を定めている場合、実績と比べて付与日数が多くなる方を採れているか。

□ 4. 年休取得日の賃金
就業規則で@〜Bのどれを定めているか。Aを採るなら、時給者はその日のシフト時間分で計算できているか。

□ 5. 時季指定義務(年5日)の対象者
比例付与でも週4日・勤続3年6か月以上なら年10日に達する。対象者を特定し、取得状況を管理できているか。

この5項目は、労働基準監督署の調査で確認されやすい論点でもあります。付与日数の不足は、未払いの年休賃金として遡及するおそれがあります。労務手続代行・労務監査のなかでも、シフト制事業所の年休管理は重点確認項目としています。

8.厚生労働省の公表資料(リンク)

◆ 原文はこちらからご確認ください

■ 留意事項 本文(令和8年6月19日改正版・PDF)
いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項
※ 本稿で解説した年次有給休暇の追記内容は、すべてこの本文に記載されています。まず読むべきはこれです。

■ 使用者向けリーフレット(PDF)
「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項
※ シフト制労働契約の簡易チェックリスト付き。ただし年次有給休暇の追記内容は反映されていない場合がありますので、年休については必ず本文をご確認ください。

■ シフト制の円滑な運用のための取組事例(PDF)
シフトの決定方法・通知の仕方・急な欠員等への備え

■ 厚生労働省 特設ページ
いわゆる「シフト制」について
※ 最新版は常にこのページから辿れます。

9.おわりに ― 「地味だが、現場を最も救う」改正

年次有給休暇の付与日数の算定は、法改正のニュースとしては地味です。しかし、シフト制のパート・アルバイトを多数抱える中小企業にとって、「有給を何日つければいいのか分からない」という悩みは、日々の実務で確実に発生しています。

今回の改正は、その悩みに行政としての標準的な計算方法を示しました。同時に、「所定労働日数を決めていないから付与しない」「目安日数を少なめに書いて付与を抑える」「一方的に所定労働日数を動かす」といったグレーな運用の逃げ道を、はっきりと塞いだ改正でもあります。就業規則の改定を直ちに迫るものではありませんが、点検の期限を先延ばしにする理由はありません。まずは、シフト制パートの名簿を開いてみてください。

🔎 本記事の確信度について

本稿で解説した改正内容(改正日、比例付与の日数、所定労働日数を算出しがたい場合の算定方法、目安日数との比較ルール、所定労働日数の一方的増減の禁止、年休取得日の賃金計算)は、厚生労働省が公表した留意事項本文(令和8年6月19日改正版)で直接確認しています。第7章の点検項目は当法人の実務上の整理です。なお、使用者向け・労働者向けリーフレットは、当法人が確認した時点では年次有給休暇の追記内容が反映されていませんでした。年休の詳細については、必ず本文をご参照ください。

▶ シフト制の年休管理のご相談はこちら
【根拠法令・参考情報】
・労働基準法39条(年次有給休暇)1項・2項・3項・5項・7項・9項
・労働基準法施行規則24条の3(比例付与)
・厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日策定/令和8年6月19日改正)
・厚生労働省「いわゆる『シフト制』について」
・内閣府 規制改革推進会議 働き方・人への投資ワーキング・グループ(令和8年1月9日 資料)

【免責事項】
本記事は2026年7月13日時点で確認できた情報に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。具体的な制度設計・運用については、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
この記事を書いた人
三重 英則(みえ ひでのり)
社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員
特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員
SRP認証番号 第160175号

名古屋市中区を拠点に、労働紛争解決、IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度の労務案件を専門としています。「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」を使命に、伴走型の支援を提供しています。