作成日:2026/07/01
正社員の不足感DI+47ポイントで高止まり 厚労省「労働経済動向調査(令和8年5月)」が示す 「採れない・辞める」時代の定着戦略
| 労務トピックス
正社員の不足感DI+47ポイントで高止まり 厚労省「労働経済動向調査(令和8年5月)」が示す 「採れない・辞める」時代の定着戦略
2026年7月1日|社会保険労務士法人T&M Nagoya 執筆者:三重英則(社員/特定社会保険労務士)
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| 経営者との会話でいま最も頻繁に出てくる悩みは、売上でも資金繰りでもなく、「人が採れない」「せっかく採っても辞める」という人材の問題です。この肌感覚を四半期ごとに定点観測しているのが、厚生労働省の「労働経済動向調査」です。2026年(令和8年)6月23日に公表された最新版(令和8年5月調査)を読み解き、社会保険労務士が顧問先とともに取り組むべき「定着・確保」の実務を掘り下げます。 |
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📌 この記事でわかること
| ・令和8年5月調査で正社員の不足感DIが+47ポイントと高止まりしている事実 |
| ・建設・不動産・生活関連サービスで人手不足感が突出している背景 |
| ・課題の重心が「採れない(入口)」から「辞める(出口)」へ移っていること |
| ・中小企業が現実的に取り組める「定着」の実務ステップ |
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| 労働経済動向調査は、厚生労働省が四半期ごと(2月・5月・8月・11月)に実施する統計調査です。景気の動きに応じた労働力の需給・雇用・労働時間・賃金などの動向を、事業所への聞き取りによって把握します。今回の令和8年5月調査は、令和8年5月1日現在を調査時点とし、規模30人以上の民営事業所5,786事業所を抽出、3,174事業所から有効回答を得たものです。 |
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「労働者過不足判断D.I.」とは
労働者が「不足」と回答した事業所の割合から「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いた値です。プラスが大きいほど、人手不足を感じている事業所が多いことを意味します。この一つの数字で、企業の人手の逼迫感を端的に読み取ることができます。
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| 2|調査結果の要点 ― 数字が語る「人手不足の高止まり」 |
| 今回の調査で、正社員等労働者の過不足判断D.I.は+47ポイントでした。前回(令和8年2月調査)の+49ポイントからわずかに縮小したものの、依然として極めて高い水準にあります。パートタイム労働者は+27ポイント(前回2月調査は+28ポイント)で、非正規雇用でも人手不足の状態が続いています。 |
| 労働者過不足判断D.I. |
令和8年5月 |
令和8年2月 |
| 正社員等労働者 |
+47ポイント |
+49ポイント |
| パートタイム労働者 |
+27ポイント |
+28ポイント |
| 産業別 ― 雇用を増やす動きが突出するのは建設・不動産・生活関連 |
| 今回の調査で公表された産業別の「雇用判断D.I.」(実際に雇用を増やした・増やす見込みの事業所が多いほどプラスが大きい)で、プラスが大きい産業は次のとおりです。人手の逼迫感が強く、採用・雇用拡大の意欲が旺盛な産業と読み取れます。 |
| 産業(正社員等雇用判断D.I.) |
D.I. |
| 建設業 |
+12ポイント |
| 不動産業,物品賃貸業 |
+11ポイント |
| 生活関連サービス業,娯楽業 |
+11ポイント |
| 建設業の人手不足は、2024年4月の時間外労働上限規制の適用(いわゆる建設業の2024年問題)以降、慢性的な課題であり続けています。生活関連サービス業・娯楽業は、インバウンド需要の回復とも重なり、現場の人手が追いつかない状況がうかがえます。なお、調査産業計でみた雇用判断D.I.(実績見込)は正社員等+2ポイント、パートタイム+1ポイントと落ち着いた数字で、「人手は足りないが、実際の雇用の増減は緩やかに推移している」という需給の綱引きの様子も読み取れます。 |
| 3|この数字をどう読むか ― 「採れない」より「辞める」への視点転換 |
この調査結果を社会保険労務士としてどう読むか。ポイントは、人手不足が「一時的な景気変動」ではなく「構造的な労働供給制約」に転じているという認識です。日本の生産年齢人口は減少を続けており、「頑張って採用すれば足りる」時代は終わりつつあります。正社員DIが2ポイント縮小したことをもって「人手不足が和らいだ」と楽観するのは早計で、+47という水準はなお歴史的に高い部類に入ります。
近年の他の統計(人手不足倒産の増加、退職代行の広がりなど)と重ね合わせると、企業が直面する課題の重心は、「採れない(入口の問題)」から「辞める(出口の問題)」へ移りつつあります。採用市場で人を奪い合うより、いま在籍している従業員に長く働いてもらう(定着)ことのほうが、費用対効果の高い経営戦略になっているのです。 |
| 4|実務への示唆 ― 顧問先と取り組む「定着」の実務 |
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@ 「辞める理由」を可視化する
まず必要なのは、自社の離職の実態を数字で把握することです。離職率、勤続年数別の離職状況、退職理由(退職者アンケート・エグジットインタビュー)を整理し、「どの層が・なぜ辞めているか」を可視化します。感覚論ではなく、データに基づいた対策が定着施策の出発点になります。
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A 賃金だけでない「働きやすさ」の整備
中小企業が大企業と同じ土俵で賃金競争をするのは容易ではありません。むしろ、休みやすさ(年休取得・柔軟な休暇制度)、働き方の柔軟性(テレワーク・時差出勤・短時間勤務)、育児・介護との両立支援といった「非賃金の労働条件」の整備が、中小企業にとって現実的で効果的な差別化になります。これらは近年の育児・介護休業法改正への対応とも直結します。
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B 建設・生活関連サービス業は「特に手厚く」
不足感が突出する建設業・生活関連サービス業では、時間外労働の管理、シフトの平準化、資格取得支援、外国人材(育成就労制度への移行)の活用など、業種特有の対策が必要です。人手不足が慢性化している業種ほど、労務管理の巧拙が採用力・定着力に直結します。
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C 「入社後3か月・1年」の定着支援
早期離職を防ぐには、入社直後のオンボーディング(受け入れ体制)が鍵を握ります。教育計画、メンター制度、定期的な1on1面談などを制度として整え、「入ってすぐ辞める」を減らすことが、採用コストの無駄を防ぐ最も確実な方法です。
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| 厚労省「労働経済動向調査(令和8年5月)」は、正社員の不足感DI+47ポイント・パート+27ポイントと、人手不足の高止まりを改めて示しました。この数字が突きつけるのは、「人を採る力」だけでなく「人が辞めない組織をつくる力」が、これからの経営の生命線になるという現実です。当法人は、賃金制度・労働時間・両立支援・定着施策を一体で設計する伴走者として、顧問先の「構造的人手不足」への備えを支えてまいります。次回調査は令和8年8月調査となる見込みで、数値に大きな変化があれば続報として取り上げます。 |
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根拠資料・出典
| ・厚生労働省「労働経済動向調査(令和8年5月)の概況」(令和8年6月23日公表) |
| ・厚生労働省「労働経済動向調査:調査の結果」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/43-1d.html |
| ・労働政策研究・研修機構(JILPT)「労働経済動向調査」関連統計 |
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| ※本記事は、公表された統計調査の内容を一般的に解説するものであり、個別企業の人事制度設計・就業規則変更・労務管理の適法性については、別途、社会保険労務士・弁護士等の専門家への個別相談を推奨します。数値の詳細は厚生労働省が公表する調査結果原本をご確認ください。 |
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執筆者:三重英則(社員/特定社会保険労務士)
社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区) IPO労務監査・M&A労務デューデリジェンス・人事制度設計を通じて、経営者と共に歩き続ける伴走者として、人手不足時代の採用・定着・人事制度づくりをご支援します。
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