| 裁判例解説 |
上司から「同僚の悪口」をほぼ毎日聞かされた部下 広島高裁が「違法なパワハラ」と認め、一審の請求棄却を覆して県に22万円の賠償を命じた判決(令和8年10月1日)。言葉の矛先が本人に向いていなくても違法になる理由と、会社の規程・相談対応の見直し |
| 2026年11月6日|社会保険労務士法人T&M Nagoya 三重 英則(特定社会保険労務士) |
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おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。
2026年10月1日、改正労働施策総合推進法の施行により、カスタマーハラスメントの防止措置が事業主の義務になりました。ハラスメント防止規程や相談体制の見直しを進めている会社も多いと思います。
報道によれば、その同じ10月1日、広島高等裁判所で、パワーハラスメントの「範囲」を考えるうえで見逃せない判決が言い渡されました。広島県の元職員が、直属の上司から同じ部署の職員の悪口や県の事業への批判を約10か月にわたってほぼ毎日聞かされたとして、県に損害賠償を求めた事件です。一審の広島地方裁判所は請求を棄却しましたが、控訴審の広島高裁はこれを変更し、上司の言動を違法なパワハラと認めて、県に22万円の支払いを命じました。
パワハラというと、怒鳴る、人格を否定する、過大なノルマを課すといった、本人に向けられた攻撃を思い浮かべがちです。しかし報道された判断を見る限り、本判決は、言葉の矛先が本人に向いていなくても、立場上それを聞かざるを得ない部下に、業務上の必要のない批判や不平を長期間一方的に聞かせ続ければ、違法なパワハラになりうることを示しました。
本件は地方公務員の事案です。もっとも、総務省は、地方公共団体も改正労働施策総合推進法と厚生労働省の指針に基づいて、職場のパワハラを防止するための雇用管理上の措置を講じなければならないとしており(令和2年10月2日付け総行女第40号)、判断の考え方は民間の職場にもそのまま通じます。当法人がこの事件を取り上げるのは初めてです。
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| 📌 この記事でわかること |
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✓ 広島高裁(末永雅之裁判長)は令和8年10月1日、上司が直属の部下に、同じ部署の職員の悪口や県の事業への批判を約10か月間ほぼ毎日聞かせた行為を違法なパワハラと認め、一審の請求棄却を変更して、県に22万円の支払いを命じたと報じられていること(請求額は330万円)
✓ 報道によれば、判決は上司の発言を「その時その時の不満や怒りの感情を身近にいる部下に対して一方的に吐き出すもの」と評価し、優越的地位に基づき、業務上の必要性のない批判や不平を、社会通念上相当性を著しく欠く態様で長期間続け、大きな心理的負担を与えたとしたこと
✓ 一審は「業務に関連しない人格批判ではない」などとして違法性を否定していたと報じられており、一審と二審の分かれ目は、話の中身が業務に関わるかどうかではなく、部下に聞かせることに業務上の必要があったか、どのような態様でどれだけ続いたかにあると読めること
✓ 判決文は公開されておらず、本記事は報道に依拠していること。判決が確定したかどうかも確認できていないため、「悪口を聞かせればただちに違法」と一般化することはできないこと
✓ 会社が見直すべきことは、管理職研修で「部下を愚痴や不満のはけ口にしない」ことを具体例として示すこと、ハラスメント防止規程の禁止行為の例示を見直すこと、「言われているのはあなたではない」と相談を受け流さないことの3つであること
パワハラかどうかは、「誰に向けた言葉か」だけでは決まりません。
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出典と本記事の信頼度について
本記事は、中国新聞デジタル(2026年10月1日、10月11日配信)、HOME広島ホームテレビ(10月1日、10月5日配信)、テレビ新広島(10月3日配信)の報道と、厚生労働省のパワハラ防止指針(令和2年厚生労働省告示第5号)、総務省の通知(令和2年10月2日付け総行女第40号)に基づいています。
判決文は、一審・控訴審とも確認できていません。判決の理由は報道の要約と引用に依拠しており、「」で示した判決の文言も、原文と細部が異なる可能性があります。報道に書かれていない事情は補っていません。報道の内容、当法人の読み方、当法人の見解は書き分けています。
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| 1 事件の基本情報 |
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内容 |
| 事件 |
広島県の元職員が県に損害賠償を求めた事件(報道上の呼称。正式な事件名と事件番号は確認できていません) |
| 一審 |
広島地方裁判所 2026年(令和8年)2月判決 請求棄却(判決日は確認できていません) |
| 控訴審 |
広島高等裁判所 2026年(令和8年)10月1日判決(末永雅之裁判長) 一審判決を変更し、請求を一部認容 |
| 原告 |
広島県の元職員(2024年5月に退職) |
| 被告 |
広島県(上司個人は被告とされていません) |
| 請求額 |
330万円 |
| 認容額 |
22万円(慰謝料など。内訳は確認できていません) |
| 違法と認められた言動 |
上司が、同じ部署の職員の悪口や県の事業への批判を、長期間にわたって部下に聞かせ続けたこと |
| 違法と認められなかった言動等 |
上司が原告の呼び方を変えたこと、原告に話しかけなくなったこと、相談を受けた後に県が上司を異動させなかったことなど |
| 確定の有無 |
確認できていません |
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| 2 事案の経緯――報道から確認できる範囲 |
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各報道によれば、事実関係は次のとおりです。報道に書かれていない事情は補っていません。
(1) 上司の言動――約10か月、ほぼ毎日 2022年3月ごろから2023年1月中旬ごろまでの約10か月間、原告はほぼ毎日、直属の上司から、対面や電話で、同じ部署の職員の悪口や県の事業への批判を聞かされたとされています(中国新聞)。HOME広島の報道では、上司は原告に、その内容に同調するよう求めていたとされています。原告は、自分も仕事で失敗すれば同じように悪く言われるのではないかと不安を感じるようになったと報じられています(HOME広島)。
(2) 体調の悪化と退職 原告は体調を崩し、2023年11月に適応障害と診断され、2024年5月に退職しました(中国新聞)。
(3) 相談と県の対応 原告は、相談を受けた県が上司を異動させなかったことなども不当だと主張しました(テレビ新広島)。原告がいつ、誰に相談したのか、県がどのような調査や措置をとったのかは、報道からは確認できません。
(4) 提訴 原告は2024年、パワハラで精神的苦痛を受けたのに県が適切な措置をとらなかったなどとして、県に330万円の損害賠償を求めて広島地裁に提訴しました(中国新聞)。請求の法的根拠(国家賠償法に基づく請求か、安全配慮義務違反などに基づく請求か)は、報道からは分かりません。
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| 3 一審と控訴審――何が判断を分けたか |
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(1) 一審(広島地裁)――「違法とまではいえない」 一審は、上司の言動について「業務に関連しない人格批判ではない。社会通念上、許容される限度を超え、違法とまではいえない」などとして、原告の請求を棄却したと報じられています(中国新聞)。この要約からは、一審は、発言が県の事業や業務に関わる批判であって、業務と無関係に他人の人格を攻撃するものではない点を重く見たと読めます。ただし、一審の判決理由の全体像は確認できていません。
(2) 控訴審(広島高裁)――「違法なパワハラ」 控訴審は一審判決を変更し、上司の悪口などを違法なパワハラに当たると認定しました。報道によれば、判決は上司の発言を「その時その時の不満や怒りの感情を身近にいる部下に対して一方的に吐き出すものと言わざるを得ない」と評価し、上司の言動は「優越的地位に基づき、業務上の必要性がない批判や不平を、社会通念上相当性を著しく欠く態様で、長期間にわたって継続しており、大きな心理的負担を与えた」と述べたとされています(中国新聞)。HOME広島は、原告が直属の部下として上司の発言を聞かざるを得ない立場にあったことを報じています。
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| 観点 |
一審(広島地裁) |
控訴審(広島高裁) |
| 発言の性質 |
業務に関連しない人格批判ではない |
その時々の不満や怒りの感情を、身近にいる部下に一方的に吐き出すもの |
| 重く見た点 |
話の中身が県の事業や業務に関わること |
部下に聞かせることに業務上の必要性がないこと。部下は聞かざるを得ない立場にあったこと |
| 態様と継続性 |
(報道からは分かりません) |
社会通念上相当性を著しく欠く態様で長期間続き、大きな心理的負担を与えた |
| 結論 |
違法とまではいえない(請求棄却) |
違法なパワハラ(県に22万円の支払いを命令) |
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| 一審欄の「重く見た点」は、報道された一審の判示から当法人が読み取ったものです。両判決とも判決文は確認できていません。 |
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二審は、「何について話したか」よりも、「部下にとってそれを聞かされることに業務上の意味があったか」「どのような態様で、どれだけ続いたか」を問うたといえます。話題が業務や同僚に関することであっても、それだけでは違法性を否定する理由にならない、というのが当法人の読み方です。
報道によれば、県の担当課は、主張が認められず残念であり、関係部署と協議して対応を決めたいという趣旨のコメントを出しています。原告側の代理人弁護士は、本人に向けられた暴言でなくても、程度が著しければハラスメントと評価されることを裁判所が認めた点に意義がある、という趣旨のコメントをしています(いずれも中国新聞)。
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| 4 パワハラ指針の3要素に当てはめると |
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厚生労働省のパワハラ防止指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、職場におけるパワーハラスメントを、「職場において行われる�@優越的な関係を背景とした言動であって、�A業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、�B労働者の就業環境が害されるもの」と定義し、�@から�Bまでの要素をすべて満たすものとしています。報道された本判決の判断をこの3要素に当てはめると、次のように整理できます。この当てはめは当法人によるものです。
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| 指針の要素 |
本判決で重視されたとみられる事情 |
| �@優越的な関係 |
直属の上司と部下の関係。部下は上司の発言を「聞かざるを得ない」立場にあった |
| �A業務上必要かつ相当な範囲を超えた |
業務上の必要性のない批判や不平。感情を一方的に吐き出すもので、態様が社会通念上の相当性を著しく欠く |
| �B就業環境が害される |
約10か月、ほぼ毎日の継続。大きな心理的負担(報道によれば、その後、適応障害と診断され退職) |
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指針は、�Aを判断するにあたって、「当該言動の目的」「当該言動の態様・頻度・継続性」「行為者との関係性」などの様々な要素を総合的に考慮することが適当であるとしています。本判決は、言葉の矛先が本人でなくても、目的、頻度、継続性、関係性の事情が重なれば違法となりうることを、具体的な事実関係で示した例といえます。
指針は、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6類型について具体例を示していますが、あわせて、それらの例は「限定列挙ではないことに十分留意」するよう求めています。本件のような「第三者の悪口を聞かせ続ける」行為は、6類型のどれにもそのまま当てはまりにくい言動です。それでも違法と評価されたことは、6類型の例示だけで自社の規程や研修を組み立てることの限界を示しています。
違法とされなかった言動 一方で、上司が原告の呼び方を変えたことや、原告に話しかけなくなったことについては、違法性は認められませんでした(HOME広島)。6類型でいえば「人間関係からの切り離し」に近い言動ですが、報道からは具体的な態様や期間が分からず、違法とされなかった理由は確認できません。相談を受けた後に上司を異動させなかったことが不当だとする主張なども、退けられています(テレビ新広島)。この理由も報道からは分かりません。言動の一部だけが違法とされたことは、パワハラの主張が一括して認められるのではなく、言動ごとに評価されることを示しています。
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| 5 民間企業で同じことが起きたら |
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本件の被告は県で、上司個人は被告とされていません。民間企業で同じような事案が起きた場合、会社は、行為者である従業員の不法行為について使用者責任(民法715条)を問われる可能性があり、職場環境に配慮する義務や安全配慮義務(労働契約法5条)の違反を問われる可能性もあります。行為者である上司個人も、不法行為責任(民法709条)を問われる可能性があります。これとは別に、会社には、パワハラを防止するための雇用管理上の措置を講じる義務(労働施策総合推進法30条の2)があります。
賠償額は22万円にとどまりました。しかし、原告は適応障害と診断されて退職し、提訴から控訴審判決までおよそ2年を要しています。賠償額が小さいことは、会社が失うものが小さいことを意味しません。経験のある職員を失い、職場には「上司が他人の悪口を言い続けても止められなかった組織」という評価が残ります。精神障害を発病した従業員から労災請求がなされる可能性も考えられます。
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| 6 会社が見直すべき3つのこと |
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ここからは、本判決を踏まえた一般的な実務の整理です。いずれも当法人の整理であり、判決が示したものではありません。
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見直し1 管理職研修で「部下を愚痴や不満のはけ口にしない」ことを具体例として伝える
パワハラ研修では、怒鳴る、人格を否定するといった本人に向けた言動が中心になりがちです。本判決を踏まえ、管理職には、「他の社員や取引先の悪口、組織や施策への不平を、業務上の必要なく部下に聞かせない」「部下に同調を求めない」ことを、具体例として伝えてください。
線を引くときの目安は、「その話を部下に聞かせることに、業務上の目的があるか」です。業務の改善に向けて課題を共有する、部下の意見を求めるといった目的があれば、話題が他部署や施策への批判であっても直ちに問題になるわけではありません。感情を吐き出すことだけが目的になっていないか、相手と頻度が偏っていないかを、管理職自身が点検できるようにしておくことが大切です。
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見直し2 ハラスメント防止規程の禁止行為に例示を加える
禁止行為を指針の6類型の例示だけで定めている規程は少なくありません。包括的な禁止規定(たとえば「その他、優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の従業員の就業環境を害すること」)を置いたうえで、例示に次のような項目を加えることを検討してよいと考えます。
「部下その他の従業員に対し、業務上の必要がないにもかかわらず、他の従業員や取引先等に対する悪口、批判、不平不満を一方的かつ継続的に聞かせ、またはこれへの同調を求めること」
カスタマーハラスメント対策の義務化に合わせて規程を改定する会社では、あわせて見直す好機です。規程を変える場合は、懲戒規定との連動(どの懲戒事由に当たるか)も確認してください。
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見直し3 相談を「本人への攻撃ではない」として受け流さない
指針は、相談窓口について、パワハラが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応することを求めています。相談があった場合には事実関係を迅速かつ正確に確認し、事案に応じて「被害者と行為者を引き離すための配置転換」などの措置を講じることも、措置の例として挙げています。
「言われているのはあなたではない」と受け流さず、双方からの聞き取りと記録、必要に応じた座席や指揮命令系統の見直しを行ってください。本件では、相談後に上司を異動させなかったことの違法性は認められませんでしたが、その理由は報道からは分かりません。異動させなくてよいという意味に受け取るべきではないと考えます。
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| 7 当法人の視点 |
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本件は、約10か月・ほぼ毎日・直属の部下・同調の要求・適応障害の診断という事情が重なった事案です。頻度が低い場合や、業務上の必要性を説明できる場合には、結論が変わる可能性があります。判決文が公開されておらず、確定したかどうかも分からない現時点で、本判決をもって「部下に他人の悪口を聞かせればただちに違法」と一般化することはできません。
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当法人の見解
当法人は、本判決が会社に求めているのは、パワハラの判断を「誰に向けた言葉か」から「その関係の中で、その言葉を聞かされる側にどう作用したか」へ広げることだと考えます。上司と部下の関係では、部下は上司の話を途中で遮ったり、席を立ったりすることが難しい立場にあります。業務上の必要がない批判や不平を一方的に聞かせ続けることは、その立場を利用して、部下に負担を押しつけることにほかなりません。
この見解には、根拠が十分でない前提があります。判決文が公開されておらず、判決の理由は報道の要約と引用に依拠しています。判決がどの事実をどの程度重く見たのか、上司の言動のうちどこまでが「悪口」として認定されたのかは、判決文を確認しなければ分かりません。また、県が上告または上告受理申立てをしたかどうかも確認できていません。
最も強い反論は、使用者側の立場から考えられます。上司が部下に組織の課題や他部署への懸念を率直に話すことまで「パワハラ」とされるおそれがあれば、職場の風通しが悪くなる、というものです。この懸念には理由があります。ただ、指針も、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導はパワハラに当たらないとしています。本判決で問題とされたのは、課題の共有ではなく、業務上の必要のない感情のはけ口として、長期間一方的に聞かせ続けたことだと報じられています。労働者側からは、22万円という額では行為の抑止にならない、という指摘も考えられます。ただし、請求の根拠や賠償額の内訳が分からないため、額の当否は判決文なしには評価できません。
簡易な確かめ方を1つ挙げます。従業員への匿名のアンケートに、「上司から、他の社員や取引先の悪口・不満を聞かされることがありますか(ほぼ毎日/週に数回/月に数回/ない)」という1問を加えてください。「ほぼ毎日」「週に数回」という回答が出た部署は、個別に事情を確認します。設問を1つ加えるだけで、規程や研修の見直しが必要かどうかが見えます。
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| まとめ |
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広島高裁は令和8年10月1日、上司が直属の部下に、同じ部署の職員の悪口や県の事業への批判を約10か月間ほぼ毎日聞かせ続けた行為を違法なパワハラと認め、一審の請求棄却を変更して、県に22万円の支払いを命じたと報じられています。判断の決め手は、部下が聞かざるを得ない立場にあったこと、業務上の必要性のない批判や不平を一方的に吐き出す態様、長期間の継続と大きな心理的負担でした。「本人に向けた言動ではない」「業務に関係する話だ」という理由だけでは、パワハラの評価を免れない可能性があります。ただし、判決文は公開されておらず、確定したかどうかも分からないため、結論の一般化には慎重さが必要です。
当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。管理職研修の具体例づくり、ハラスメント防止規程と懲戒規定の見直し、相談を受けたときの事実確認の手順まで、経営者と一緒に整えてまいります。規程の整備については就業規則作成・改訂、相談対応や紛争化した場面の対応については労働紛争解決、継続的なご相談については高難度業務対応型顧問のページもご覧ください。
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| この記事を書いた人 |
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三重 英則(HIDENORI MIE)
社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員(特定社会保険労務士)
特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)
法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。
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