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おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。 シフト制のパート・アルバイトを雇う会社が突き当たりやすい問いがあります。「月によって働く日数が違う人に、年次有給休暇を何日付与すればよいのか」です。週5日のフルタイムであれば、6か月の継続勤務と8割以上の出勤で10日、以後は勤続年数に応じて増えるという労働基準法39条の原則をそのまま当てはめれば足ります。ところがシフト制では、付与日数を決める物差しである「所定労働日数」が契約で固定されていないことがあります。 厚生労働省は、「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日策定。以下「留意事項」といいます)を令和8年6月19日に改正し、この問いに対する計算方法を示しました。さらに、令和8年10月付けで、計算例を載せたリーフレット「『シフト制』で働く場合の年次有給休暇について」(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)が作成されています。 本記事は、2026年7月に公開した解説を2026年10月8日に更新したものです。更新では、このリーフレットの付与日数の計算例、賃金の計算例、使用者の取組例を加え、「目安となる労働日数」の取扱いについての説明を改め(第3章)、厚生労働省の資料へのリンクを現在掲載されているものに改めました。 |
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| 1 改正前と改正後――何が変わったのか | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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留意事項は法令そのものではなく、現行の労働関係法令等に照らして使用者が留意すべき事項を、厚生労働省が一覧できる形で整理したものです。改正によって新しい義務が作られたわけではありません。変わったのは、労働基準法39条をシフト制に当てはめるときの計算方法が、行政の文書として具体的に示されたことです。 対象となる「シフト制」は、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定する勤務形態を指します。三交替勤務のように、年や月などの一定期間における労働日数や労働時間数が決まっていて、就業規則等に定められた勤務時間のパターンを組み合わせて勤務する形態は除かれます。 年次有給休暇に関する記載を、改正前、改正後、10月版リーフレットの順に並べると次のとおりです。改正前の記載は、厚生労働省が令和8年1月9日に規制改革推進会議のワーキング・グループへ提出した資料に引用されているものによっています。 |
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経緯を確認しておきます。内閣府の規制改革推進会議「働き方・人への投資ワーキング・グループ」は令和8年1月9日の会合でシフト制の年次有給休暇を取り上げ、厚生労働省労働基準局が資料を提出しました。留意事項の改正は同年6月19日です。当法人は同会議の答申の段階でこの方向性を取り上げており、本記事はその続報に当たります。 |
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| 2 出発点――付与要件と、通常の付与・比例付与の振り分け | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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シフト制であっても、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には、年次有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法39条1項)。契約期間が6か月未満であっても、契約が更新されて6か月以上に及んでいれば、継続勤務の要件を満たします。 リーフレットは、この「全労働日」について、一般的には、期間内におけるシフト表で確定した所定労働日などの全日数であると注記しています。出勤率の分母は、シフト表で働くことが確定した日の数であって、暦の上の平日の数ではない、という読み方になります。したがって、シフトに入った日数が少ないこと自体は出勤率を下げません。日数の少なさは、出勤率ではなく、次に見る比例付与の区分に反映されます。なお、全労働日の8割以上出勤していない労働者に対して、任意に年次有給休暇を付与することは差し支えないとされています。 付与日数は、基準日(年次有給休暇を付与する日)の時点で予定されている所定労働日数と労働時間数に応じて決まります。まず、次のどちらの表に当たる人かを振り分けます。 |
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(1) 週の所定労働日数が5日以上、又は週の所定労働時間が30時間以上の場合(通常の付与) |
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(2) 週の所定労働日数が4日以下、かつ週の所定労働時間が30時間未満の場合(比例付与。労働基準法39条3項) |
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赤字は付与日数が10日以上になる区分です。比例付与の対象であっても、週4日の人は継続勤務3年6か月で、週3日の人は5年6か月で10日に達します。法定の付与日数が10日以上の労働者については、そのうち5日を、基準日から1年以内に時季を定めて取得させなければなりません(労働基準法39条7項)。パート・アルバイトであることは、この義務の対象から外れる理由になりません。 週以外の期間で所定労働日数を定めている場合(例えば、月の所定労働日数を10日とし、具体的な日はシフトで指定する場合)は、1年間の所定労働日数の列で区分を判定します。また、物差しになるのは基準日の時点で予定されている所定労働日数ですから、入社時の契約書の日数で固定されるものではなく、基準日ごとに確認することになります。 |
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| 3 所定労働日数が決まっていない場合の算定――リーフレットの計算例で確かめる | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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改正の中心はここです。留意事項とリーフレットは、まず言葉の意味を確認しています。所定労働日とは労働契約により労働義務の設定された日であり、所定労働日数とは、その日数のとおりに働くことを使用者と労働者で約束する日数です。留意事項は、実際に働く日数と所定労働日数が乖離しないようにすることが望まれるとし、使用者の都合で一方的に所定労働日数を増減させることは認められないとしています。 そのうえで、所定労働日数や時間数を労働契約に明確に定めていない場合について、あらかじめ所定労働日数を定めていないことを理由に、シフト制労働者に年次有給休暇を付与しないことは認められないと明記しました。付与日数を特定するに当たって所定労働日数を算出しがたい場合には、次の日数を1年間の所定労働日数として付与日数を算出して差し支えないとされています。 |
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労働契約に「1週4日程度勤務」のような目安となる労働日数が定められているときは、その目安を所定労働日数として付与日数を算出しても差し支えないとされています。ただし、労働日数の実績を用いて算出した付与日数よりも多い場合に限ります。リーフレットは、この関係を2つの例で示しています。 |
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2つの例から読み取れるのは、目安となる労働日数は付与日数を増やす方向にだけ使え、減らす方向には使えない、ということです。契約書に少なめの目安を書いておいても、実績による付与日数を下回る日数にすることはできません。一方、例1のように目安のほうが多くなる場合は、リーフレットの文言上、実績による5日と目安による7日のいずれの算出も認められています。 7月の公開時、本記事はこの点を「実績と目安を比べて、労働者に有利な(日数の多い)方を採るという設計」と説明していました。リーフレットの例1は、目安のほうが多くなる場合でも実績による算出を認めていますので、上記のとおり説明を改めます。どちらで算出するのがよいかについての当法人の考えは、第7章で述べます。 実績による算出は、所定労働日数の定めがなく、算出しがたい場合の方法です。契約書に「週4日勤務」と日数そのものを約束している場合、それは目安ではなく所定労働日数ですから、実際にシフトに入った日数が少なかったとしても、週4日の区分で付与日数を決めることになると考えられます。自社の契約書の記載が「所定労働日数」なのか「目安」なのかを、最初に確かめてください。 |
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| 4 年休取得日の賃金――計算例で比べる「通常の賃金」と「平均賃金」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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年次有給休暇を取得した日の賃金は、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、又は労使協定を結んだ場合の健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する額のいずれかで支払います(労働基準法39条9項)。厚生労働省の資料によれば、通達は、使用者が労働者ごとにその都度恣意的に方法を選ぶことを認めておらず、就業規則等であらかじめ定めた方法によらなければならないとしています。 改正後の留意事項は、このうち「通常の賃金」の計算方法をシフト制について示しました。賃金が日給の場合はその金額、時給の場合は、時給額に、年次有給休暇取得日における所定労働時間として定められている労働時間を乗じた金額です。リーフレットは、この労働時間を「一般的には、シフト表で確定した所定労働時間など」と注記しています。4時間のシフトの日に取得すれば4時間分、8時間のシフトの日に取得すれば8時間分を支払うことになり、平均的な時間数で一律に計算する方法ではありません。 リーフレットの計算例は次のとおりです。前提は、時給1,500円、所定労働時間は日によって5時間又は8時間、年休取得日のシフト表で確定した所定労働時間は5時間、直近3か月の暦日数は92日、労働日数は60日(5時間の日が20日、8時間の日が40日)です。 |
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平均賃金は、原則の計算による額と最低保障額のいずれか大きいほうですから、この例では6,847.82円です。5時間のシフトの日に取得した場合、通常の賃金との差は652.18円にとどまります。 時給、暦日数、労働日数の前提が同じ計算例は、厚生労働省が規制改革推進会議のワーキング・グループに提出した資料にも載っています。そこでは取得日のシフトを特定せず、通常の賃金として「1,500円×5時間=7,500円」と「1,500円×8時間=12,000円」の2つが示されています。平均賃金は取得日のシフトの長さにかかわらず6,847.82円ですから、8時間のシフトの日に取得した場合の差は5,152.18円に広がります(差額は当法人の計算です)。平均賃金は3か月間の賃金の総額を暦日数で除して求めるため(労働基準法12条)、出勤しない日も分母に入ります。時給や日給で働く人については、1日働いた場合の賃金より低くなりやすい計算式です。 この点について、厚生労働省の労働基準関係法制研究会の報告書(令和7年1月8日公表)は、日給制・時給制の場合等に平均賃金や標準報酬月額による方法がとられると計算式上賃金が大きく減額され得るとし、これらの方法をとらざるを得ない状況としてどのようなものがあるのかを考慮しつつ、原則として通常の賃金による方法をとるようにしていくべきではないか、と述べています。10月版リーフレットは、通常の賃金と平均賃金の双方を計算例として挙げています。 |
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| 5 請求と時季変更、取得しやすくする取組例 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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シフト制で働く場合であっても、労働者は、取得を希望する日に年次有給休暇を請求することができ、使用者は、原則として労働者の請求する時季に取得させなければなりません(労働基準法39条5項)。リーフレットは、「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない」といった取扱いは認められないと明記しています。 使用者が時季を変更できるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。リーフレットは、その例として、同一期間に多数の労働者が休暇を希望したため全員に付与し難い場合を挙げ、単に「代わりの人がいないから」「忙しいから」というだけでは、労働者の請求した日に年次有給休暇を使わせないといった取扱いはできないとしています。 リーフレットの最後には、シフト制で働く人の悩みと、それに対して考えられる使用者の取組例が3組掲載されています。 |
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厚生労働省がワーキング・グループに提出した資料は、働き方・休み方改善ポータルサイトに掲載されている事例として、シフト制労働者も年次有給休暇の計画的付与の対象とした事例と、事前に年次有給休暇等の取得希望を聴取してシフトを作成している事例を紹介しています。後者は、翌月のシフトの希望票に年休の希望も書いてもらい、それを踏まえてシフトを作成するというものです。取組例1はシフトの希望を提出する用紙に年休の残日数を記載する方法を、この事例は同じ用紙で年休の希望を受け付ける方法を示しており、どちらも、シフトの希望を出す用紙を年休の入口にしています。シフトが確定した後に年休を請求されて再調整するよりも、シフトの希望と一緒に年休の希望を受け付けるほうが、会社にとっても調整の負担は小さくなると考えられます。 |
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| 6 点検すべき5項目と、厚生労働省の公表資料 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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以上を踏まえると、会社が点検すべきことは次の5つに整理できます。個別の事情を離れた一般的な整理です。 |
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年次有給休暇の権利は、労働者が法律の定める要件を満たすことによって法律上当然に発生するものであり、労働者の請求を待って初めて生じるものではないとされています(白石営林署事件・最高裁昭和48年3月2日判決。厚生労働省の上記資料の整理によります)。そうであれば、会社の管理上の付与日数が法定の日数より少なかったとしても、法定の日数分の権利は発生していることになります。不足に気づいた場合は、まず管理上の日数を法定の日数に改めることが必要だと考えられます。 厚生労働省の公表資料は次のとおりです。 |
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| 7 当法人の視点 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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6月の改正は計算方法を文章で示し、10月のリーフレットはそれを数字で示しました。数字になったことで、文章だけでは読み取りにくかった点が2つ見えてきます。1つは、目安となる労働日数が付与日数を増やす方向にしか働かないこと、もう1つは、年休取得日の賃金の支払方法によって、同じ1日の年休の金額が大きく変わることです。 |
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| まとめ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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厚生労働省の「シフト制」留意事項は令和8年6月19日に改正され、所定労働日数を算出しがたいシフト制労働者について、雇入れ6か月経過後は6か月間の労働日数の実績の2倍、1年6か月経過後以降は前年の労働日数の実績を、1年間の所定労働日数として年休の付与日数を算出してよいことが示されました。目安となる労働日数は、実績による付与日数を上回る場合に限って使えます。年休取得日の賃金を通常の賃金で支払う場合、時給者は時給額×取得日のシフト表で確定した所定労働時間です。令和8年10月付けのリーフレットには、これらの計算例と、取得しやすくするための取組例が載っています。 当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。シフト制の年休について、付与日数の算定ルールと取得日の賃金の定めを就業規則に書き、給与計算をそのとおりに行う状態を、経営者と一緒に整えてまいります。年休の算定ルールと賃金の定めの規程化については就業規則作成・改訂、年休取得日の賃金計算については給与計算代行、付与日数と取得状況の点検については労務手続代行・監査のページもご覧ください。 |
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