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作成日:2026/10/08
【ブログ】シフト制パートの年休、何日つければいいのか 厚労省「シフト制」留意事項の令和8年6月19日改正を、10月版リーフレットの計算例で確かめる(付与日数・目安となる労働日数・取得日の賃金)
労務トピックス
シフト制パートの年休、何日つければいいのか
厚労省「シフト制」留意事項の令和8年6月19日改正を、10月版リーフレットの計算例で確かめる(付与日数・目安となる労働日数・取得日の賃金)
2026年7月公開・2026年10月8日更新|社会保険労務士法人T&M Nagoya 三重 英則(特定社会保険労務士)

おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。

シフト制のパート・アルバイトを雇う会社が突き当たりやすい問いがあります。「月によって働く日数が違う人に、年次有給休暇を何日付与すればよいのか」です。週5日のフルタイムであれば、6か月の継続勤務と8割以上の出勤で10日、以後は勤続年数に応じて増えるという労働基準法39条の原則をそのまま当てはめれば足ります。ところがシフト制では、付与日数を決める物差しである「所定労働日数」が契約で固定されていないことがあります。

厚生労働省は、「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日策定。以下「留意事項」といいます)を令和8年6月19日に改正し、この問いに対する計算方法を示しました。さらに、令和8年10月付けで、計算例を載せたリーフレット「『シフト制』で働く場合の年次有給休暇について」(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)が作成されています。

本記事は、2026年7月に公開した解説を2026年10月8日に更新したものです。更新では、このリーフレットの付与日数の計算例、賃金の計算例、使用者の取組例を加え、「目安となる労働日数」の取扱いについての説明を改め(第3章)、厚生労働省の資料へのリンクを現在掲載されているものに改めました。

📌 この記事でわかること

✓ 留意事項は令和8年6月19日に改正され、年次有給休暇について、比例付与を含む付与日数、所定労働日数を算出しがたい場合の取扱い、取得時に支払う賃金の計算方法が追記されたこと。令和8年10月付けのリーフレットに、その計算例が示されたこと

✓ あらかじめ所定労働日数を定めていないことを理由に年休を付与しないことは認められないこと。算出しがたい場合は、雇入れ6か月経過後の付与は「6か月間の労働日数の実績を2倍した日数」、1年6か月経過後以降の付与は「前年の労働日数の実績」を、1年間の所定労働日数として算出してよいこと

✓ 契約に「目安となる労働日数」があるとき、それを使えるのは実績で算出した付与日数より多くなる場合に限られること。リーフレットの例では、実績78日(2倍して156日)なら5日、目安「1週4日程度」なら7日で、いずれの算出もできる。目安のほうが少なくなる場合は実績による

✓ 年休取得日の賃金を「通常の賃金」で支払う場合、時給者は時給額にその日のシフト表で確定した所定労働時間を乗じること。リーフレットの計算例(時給1,500円・取得日のシフト5時間)では、通常の賃金7,500円、平均賃金6,847.82円となること

✓ 「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない」という取扱いは認められず、単に「代わりの人がいないから」「忙しいから」というだけでは時季の変更もできないこと

付与日数は、契約で定めた所定労働日数、それを算出しがたければ労働日数の実績、目安となる労働日数は多くなる場合だけ、という順序で決まります。この順序を社内のルールとして書き留めておくことが出発点です。

1 改正前と改正後――何が変わったのか

留意事項は法令そのものではなく、現行の労働関係法令等に照らして使用者が留意すべき事項を、厚生労働省が一覧できる形で整理したものです。改正によって新しい義務が作られたわけではありません。変わったのは、労働基準法39条をシフト制に当てはめるときの計算方法が、行政の文書として具体的に示されたことです。

対象となる「シフト制」は、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定する勤務形態を指します。三交替勤務のように、年や月などの一定期間における労働日数や労働時間数が決まっていて、就業規則等に定められた勤務時間のパターンを組み合わせて勤務する形態は除かれます。

年次有給休暇に関する記載を、改正前、改正後、10月版リーフレットの順に並べると次のとおりです。改正前の記載は、厚生労働省が令和8年1月9日に規制改革推進会議のワーキング・グループへ提出した資料に引用されているものによっています。

項目 改正前(令和4年1月7日策定時) 改正後(令和8年6月19日改正) リーフレット(令和8年10月)での補足
付与日数 所定労働日数が少ない労働者にも、労働日数に応じた日数分の年次有給休暇を与えなければならない、という原則の確認 付与日数の表を掲載。参照する所定労働日数は、基準日(継続勤務6か月経過日から1年ごとの各期間の初日)に予定されているものであることを明示 通常の付与と比例付与の日数表を掲載。全労働日の考え方を注記
所定労働日数を算出しがたい場合 年次有給休暇の項に、算出方法の記載なし 労働日数の実績による算出方法を明示。あらかじめ定めていないことを理由に付与しないことは認められないと明記。目安となる労働日数は、実績による付与日数を上回る場合に限り用いてよい 計算例を2件掲載(実績78日の場合は5日、実績96日の場合は4日)
年休取得日の賃金 通常どおり勤務した場合と同等の賃金など、一定の賃金を支払わなければならない、という記載 「通常の賃金」の計算方法を明示(時給は時給額×取得日の所定労働時間、日給はその金額) 通常の賃金と平均賃金の計算例を掲載
その他 ― 有期労働契約の更新上限や無期転換に関する明示、雇用保険・社会保険の適用要件など、令和8年6月までの関係法令の改正を踏まえた修正・追記 年休を取得しやすくするための使用者の取組例を3件掲載

経緯を確認しておきます。内閣府の規制改革推進会議「働き方・人への投資ワーキング・グループ」は令和8年1月9日の会合でシフト制の年次有給休暇を取り上げ、厚生労働省労働基準局が資料を提出しました。留意事項の改正は同年6月19日です。当法人は同会議の答申の段階でこの方向性を取り上げており、本記事はその続報に当たります。

2 出発点――付与要件と、通常の付与・比例付与の振り分け

シフト制であっても、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には、年次有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法39条1項)。契約期間が6か月未満であっても、契約が更新されて6か月以上に及んでいれば、継続勤務の要件を満たします。

リーフレットは、この「全労働日」について、一般的には、期間内におけるシフト表で確定した所定労働日などの全日数であると注記しています。出勤率の分母は、シフト表で働くことが確定した日の数であって、暦の上の平日の数ではない、という読み方になります。したがって、シフトに入った日数が少ないこと自体は出勤率を下げません。日数の少なさは、出勤率ではなく、次に見る比例付与の区分に反映されます。なお、全労働日の8割以上出勤していない労働者に対して、任意に年次有給休暇を付与することは差し支えないとされています。

付与日数は、基準日(年次有給休暇を付与する日)の時点で予定されている所定労働日数と労働時間数に応じて決まります。まず、次のどちらの表に当たる人かを振り分けます。

(1) 週の所定労働日数が5日以上、又は週の所定労働時間が30時間以上の場合(通常の付与)

継続勤務年数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

(2) 週の所定労働日数が4日以下、かつ週の所定労働時間が30時間未満の場合(比例付与。労働基準法39条3項)

1週間の所定労働日数 1年間の所定労働日数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
4日 169日〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

赤字は付与日数が10日以上になる区分です。比例付与の対象であっても、週4日の人は継続勤務3年6か月で、週3日の人は5年6か月で10日に達します。法定の付与日数が10日以上の労働者については、そのうち5日を、基準日から1年以内に時季を定めて取得させなければなりません(労働基準法39条7項)。パート・アルバイトであることは、この義務の対象から外れる理由になりません。

週以外の期間で所定労働日数を定めている場合(例えば、月の所定労働日数を10日とし、具体的な日はシフトで指定する場合)は、1年間の所定労働日数の列で区分を判定します。また、物差しになるのは基準日の時点で予定されている所定労働日数ですから、入社時の契約書の日数で固定されるものではなく、基準日ごとに確認することになります。

3 所定労働日数が決まっていない場合の算定――リーフレットの計算例で確かめる

改正の中心はここです。留意事項とリーフレットは、まず言葉の意味を確認しています。所定労働日とは労働契約により労働義務の設定された日であり、所定労働日数とは、その日数のとおりに働くことを使用者と労働者で約束する日数です。留意事項は、実際に働く日数と所定労働日数が乖離しないようにすることが望まれるとし、使用者の都合で一方的に所定労働日数を増減させることは認められないとしています。

そのうえで、所定労働日数や時間数を労働契約に明確に定めていない場合について、あらかじめ所定労働日数を定めていないことを理由に、シフト制労働者に年次有給休暇を付与しないことは認められないと明記しました。付与日数を特定するに当たって所定労働日数を算出しがたい場合には、次の日数を1年間の所定労働日数として付与日数を算出して差し支えないとされています。

付与の時期 1年間の所定労働日数とみなす日数
雇入れ6か月経過後の付与 雇入れから6か月間の労働日数の実績を2倍した日数
雇入れ1年6か月経過後以降の付与 前年の労働日数の実績

労働契約に「1週4日程度勤務」のような目安となる労働日数が定められているときは、その目安を所定労働日数として付与日数を算出しても差し支えないとされています。ただし、労働日数の実績を用いて算出した付与日数よりも多い場合に限ります。リーフレットは、この関係を2つの例で示しています。

  実績による算出 目安による算出 リーフレットの結論
例1 雇入れ6か月経過後 6か月間の労働日数の実績が78日。78日×2=156日を1年間の所定労働日数とみなす。比例付与の表の「121日〜168日」に当たり、5日 目安が「1週4日程度勤務」。1週間の所定労働日数を4日とみなし、7日 目安による算出が実績による算出を上回る。実績により5日と算出することもでき、これを上回る取扱いとして、目安により7日と算出することもできる
例2 雇入れ1年6か月経過後 前年の労働日数の実績が96日。比例付与の表の「73日〜120日」に当たり、4日 目安が「1週1日程度勤務」。1週間の所定労働日数を1日とみなし、2日 目安による算出が実績による算出を下回る。目安に基づいて付与日数を算出することはできず、実績により4日となる

2つの例から読み取れるのは、目安となる労働日数は付与日数を増やす方向にだけ使え、減らす方向には使えない、ということです。契約書に少なめの目安を書いておいても、実績による付与日数を下回る日数にすることはできません。一方、例1のように目安のほうが多くなる場合は、リーフレットの文言上、実績による5日と目安による7日のいずれの算出も認められています。

7月の公開時、本記事はこの点を「実績と目安を比べて、労働者に有利な(日数の多い)方を採るという設計」と説明していました。リーフレットの例1は、目安のほうが多くなる場合でも実績による算出を認めていますので、上記のとおり説明を改めます。どちらで算出するのがよいかについての当法人の考えは、第7章で述べます。

実績による算出は、所定労働日数の定めがなく、算出しがたい場合の方法です。契約書に「週4日勤務」と日数そのものを約束している場合、それは目安ではなく所定労働日数ですから、実際にシフトに入った日数が少なかったとしても、週4日の区分で付与日数を決めることになると考えられます。自社の契約書の記載が「所定労働日数」なのか「目安」なのかを、最初に確かめてください。

4 年休取得日の賃金――計算例で比べる「通常の賃金」と「平均賃金」

年次有給休暇を取得した日の賃金は、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、又は労使協定を結んだ場合の健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する額のいずれかで支払います(労働基準法39条9項)。厚生労働省の資料によれば、通達は、使用者が労働者ごとにその都度恣意的に方法を選ぶことを認めておらず、就業規則等であらかじめ定めた方法によらなければならないとしています。

改正後の留意事項は、このうち「通常の賃金」の計算方法をシフト制について示しました。賃金が日給の場合はその金額、時給の場合は、時給額に、年次有給休暇取得日における所定労働時間として定められている労働時間を乗じた金額です。リーフレットは、この労働時間を「一般的には、シフト表で確定した所定労働時間など」と注記しています。4時間のシフトの日に取得すれば4時間分、8時間のシフトの日に取得すれば8時間分を支払うことになり、平均的な時間数で一律に計算する方法ではありません。

リーフレットの計算例は次のとおりです。前提は、時給1,500円、所定労働時間は日によって5時間又は8時間、年休取得日のシフト表で確定した所定労働時間は5時間、直近3か月の暦日数は92日、労働日数は60日(5時間の日が20日、8時間の日が40日)です。

支払方法 計算 金額
通常の賃金 1,500円×5時間 7,500円
平均賃金(原則の計算) 1,500円×(5時間×20日+8時間×40日)÷92日 6,847.82円
平均賃金(最低保障額) 1,500円×(5時間×20日+8時間×40日)÷60日×0.6 6,300円

平均賃金は、原則の計算による額と最低保障額のいずれか大きいほうですから、この例では6,847.82円です。5時間のシフトの日に取得した場合、通常の賃金との差は652.18円にとどまります。

時給、暦日数、労働日数の前提が同じ計算例は、厚生労働省が規制改革推進会議のワーキング・グループに提出した資料にも載っています。そこでは取得日のシフトを特定せず、通常の賃金として「1,500円×5時間=7,500円」と「1,500円×8時間=12,000円」の2つが示されています。平均賃金は取得日のシフトの長さにかかわらず6,847.82円ですから、8時間のシフトの日に取得した場合の差は5,152.18円に広がります(差額は当法人の計算です)。平均賃金は3か月間の賃金の総額を暦日数で除して求めるため(労働基準法12条)、出勤しない日も分母に入ります。時給や日給で働く人については、1日働いた場合の賃金より低くなりやすい計算式です。

この点について、厚生労働省の労働基準関係法制研究会の報告書(令和7年1月8日公表)は、日給制・時給制の場合等に平均賃金や標準報酬月額による方法がとられると計算式上賃金が大きく減額され得るとし、これらの方法をとらざるを得ない状況としてどのようなものがあるのかを考慮しつつ、原則として通常の賃金による方法をとるようにしていくべきではないか、と述べています。10月版リーフレットは、通常の賃金と平均賃金の双方を計算例として挙げています。

就業規則の確認事項

どの方法で支払うかは、就業規則等にあらかじめ定めてあることが前提です。パート・アルバイトに適用される就業規則に年休取得日の賃金の定めがあるか、定めがある場合に実際の給与計算がそのとおりに行われているかを確認してください。通常の賃金による場合は、取得日のシフト表で確定した時間数で計算しているかどうかが点検の対象です。

5 請求と時季変更、取得しやすくする取組例

シフト制で働く場合であっても、労働者は、取得を希望する日に年次有給休暇を請求することができ、使用者は、原則として労働者の請求する時季に取得させなければなりません(労働基準法39条5項)。リーフレットは、「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない」といった取扱いは認められないと明記しています。

使用者が時季を変更できるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。リーフレットは、その例として、同一期間に多数の労働者が休暇を希望したため全員に付与し難い場合を挙げ、単に「代わりの人がいないから」「忙しいから」というだけでは、労働者の請求した日に年次有給休暇を使わせないといった取扱いはできないとしています。

リーフレットの最後には、シフト制で働く人の悩みと、それに対して考えられる使用者の取組例が3組掲載されています。

  シフト制で働く人の悩み 考えられる使用者の取組例
1 年休を取得できることは知っているが、申請方法や付与日数を知らされておらず、どう申請すればよいのか、そもそも申請できるのかが分からない 労働契約の締結や更新に際して、年休の(予定の)付与日、残日数、申請の方法を個別に通知する。付与日数や残日数を、給与明細やシフトの希望を提出する申請用紙などに記載して個別に周知する
2 シフトの通知が直前になると休暇の予定が立てづらいため、早くシフトを出してほしい 相当程度余裕をもってシフト案を示すことで、休暇の予定を立てやすくし、年休の取得申請があった場合の再調整の幅を確保する
3 年休を取得すると、同僚が本来の希望日以外にもシフトに入ることになると思うと、申請しにくい 交替可能な労働者を探すに当たっても、なるべく労働者の希望に沿って調整できるよう、労働する可能性がある最大の日数(例:月曜〜金曜は勤務可能)についても、労働契約の締結の際に労働者ごとに意向を確認する

厚生労働省がワーキング・グループに提出した資料は、働き方・休み方改善ポータルサイトに掲載されている事例として、シフト制労働者も年次有給休暇の計画的付与の対象とした事例と、事前に年次有給休暇等の取得希望を聴取してシフトを作成している事例を紹介しています。後者は、翌月のシフトの希望票に年休の希望も書いてもらい、それを踏まえてシフトを作成するというものです。取組例1はシフトの希望を提出する用紙に年休の残日数を記載する方法を、この事例は同じ用紙で年休の希望を受け付ける方法を示しており、どちらも、シフトの希望を出す用紙を年休の入口にしています。シフトが確定した後に年休を請求されて再調整するよりも、シフトの希望と一緒に年休の希望を受け付けるほうが、会社にとっても調整の負担は小さくなると考えられます。

6 点検すべき5項目と、厚生労働省の公表資料

以上を踏まえると、会社が点検すべきことは次の5つに整理できます。個別の事情を離れた一般的な整理です。

点検1 付与区分の振り分け

週の所定労働日数が5日以上、又は週の所定労働時間が30時間以上の人は、パート・アルバイトであっても通常の付与(6か月で10日)です。比例付与の人も、週4日は継続勤務3年6か月、週3日は5年6か月で10日に達し、年5日の時季指定の対象になります。シフト制の人に一律で少ない日数を付与していないかを、1人ずつ確認してください。

点検2 所定労働日数を算出しがたい人の算定ルール

雇入れ6か月経過後は6か月間の労働日数の実績の2倍、1年6か月経過後以降は前年の労働日数の実績、という算出方法を、就業規則や社内の手順書に書いてあるかを確認します。担当者ごとに算出方法が違う状態は、同じ条件の人の付与日数が食い違う原因になります。

点検3 目安となる労働日数の扱い

契約書に「週○日程度」「月○日程度」の目安がある人について、目安による付与日数が実績による付与日数を下回るのに、目安で付与日数を決めていないかを確認します。目安のほうが多くなる場合にどちらで算出するかも、あらかじめ決めておく必要があります。

点検4 年休取得日の賃金

就業規則がどの支払方法を定めているかを確認します。通常の賃金による場合、時給者は時給額×取得日のシフト表で確定した所定労働時間で計算します。一律の時間数(例えば契約書上の標準的な時間数)で計算している場合は、取得日のシフトが長い日に不足が生じます。

点検5 請求の手続と周知

年休の付与日、残日数、申請の方法を、本人に個別に知らせているかを確認します。シフトに入っている日の請求を「シフトが決まっているから」という理由で断っていないか、時季の変更の理由が「代わりの人がいない」「忙しい」だけになっていないかも、店長やシフト作成者に確かめてください。

年次有給休暇の権利は、労働者が法律の定める要件を満たすことによって法律上当然に発生するものであり、労働者の請求を待って初めて生じるものではないとされています(白石営林署事件・最高裁昭和48年3月2日判決。厚生労働省の上記資料の整理によります)。そうであれば、会社の管理上の付与日数が法定の日数より少なかったとしても、法定の日数分の権利は発生していることになります。不足に気づいた場合は、まず管理上の日数を法定の日数に改めることが必要だと考えられます。

厚生労働省の公表資料は次のとおりです。

厚生労働省の公表資料

留意事項の本文(令和8年6月19日改正) いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項
年次有給休暇の付与日数、所定労働日数を算出しがたい場合の取扱い、通常の賃金の計算方法は、この本文に記載されています。

計算例を載せたリーフレット(令和8年10月) 「『シフト制』で働く場合の年次有給休暇について」(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
本記事の第3章から第5章の計算例と取組例は、このリーフレットによっています。当法人は、このリーフレットが掲載されているウェブページを本記事の更新時点で確認できていないため、リンクは掲載していません。

使用者向けリーフレット 「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項
シフト制労働契約の簡易チェックリストが付いています。年次有給休暇については、付与の原則と請求の原則の確認にとどまり、付与日数の算出方法や計算例は載っていません(2026年10月8日に確認)。

労働者向けリーフレット 「シフト制」で働くにあたって知っておきたい留意事項
従業員への周知に使えます。

取組事例 シフト制の円滑な運用のための取組事例

厚生労働省のページ いわゆる「シフト制」について
留意事項の本文、使用者向け・労働者向けリーフレット、取組事例の最新版は、このページから確認できます。計算例を載せた10月版リーフレットは、2026年10月8日時点でこのページには掲載されていません。

7 当法人の視点

6月の改正は計算方法を文章で示し、10月のリーフレットはそれを数字で示しました。数字になったことで、文章だけでは読み取りにくかった点が2つ見えてきます。1つは、目安となる労働日数が付与日数を増やす方向にしか働かないこと、もう1つは、年休取得日の賃金の支払方法によって、同じ1日の年休の金額が大きく変わることです。

当法人の見解

当法人は、今回の改正とリーフレットが会社に求めているのは、付与日数と取得日の賃金を、担当者の判断ではなく、あらかじめ書かれたルールで決めることだと考えます。具体的には2点です。第1に、目安となる労働日数がある人について、リーフレットの例1は実績による5日と目安による7日のいずれも認めていますが、どちらで算出するかを人ごと、年ごとに使い分けることは勧めません。同じ条件の人の付与日数が違えば説明がつかないからです。就業規則等でどちらによるかを決め、契約書の目安と実際のシフトが毎年大きく離れる人については、契約更新の際に目安のほうを実態に合わせて書き直すのが筋だと考えます。第2に、時給で働くシフト制の人の年休取得日の賃金は、通常の賃金(時給額×その日のシフト時間)によると定めるのが、本人への説明のしやすさの点で優れていると考えます。

この見解には、根拠が十分でない前提が2つあります。1つは、計算例を載せたリーフレットについて、当法人は入手したPDFの記載を確認していますが、掲載されているウェブページを確認できていないことです。もう1つは、例1で実績による5日を選んだ場合に、「1週4日程度」と契約書に書いた会社と労働者との間で民事上の争いになったとき、裁判所がどう評価するかは、リーフレットからは分からないことです。この点を判断した裁判例を当法人は確認できていません。

最も強い反論は、労働者側の立場から考えられます。「1週4日程度」という約束で契約したのに、会社がシフトを減らした結果として実績が少なくなり、その実績で付与日数を5日とされるのは、会社の都合を労働者に負わせるものだ、という指摘です。当法人はこの指摘に理由があると考えます。留意事項も、実際に働く日数と所定労働日数が乖離しないことが望ましく、使用者の都合で一方的に所定労働日数を増減させることは認められないとしています。目安がある人については目安で算出すると決めておくことには、この点からも合理性があります。使用者側からは、通常の賃金によると、長いシフトの日に年休が集まって費用が読めなくなる、平均賃金であれば金額が一定で見通しが立つ、という指摘が考えられます。これも事実です。ただし、第4章の計算例の前提で比べると、1日当たりの差は最大で5,152.18円です。この前提の働き方は3か月で60日・420時間、週当たり約32時間ですから、通常の付与(6か月経過後に10日)に当たります。仮にその10日のすべてを8時間のシフトの日に取得したとしても、差は1人当たり年に約5万2,000円です(当法人の計算です)。自社の時給とシフトの長さで同じ計算をしたうえで、説明のしやすさと比べて判断することになります。

簡易な確かめ方を1つ挙げます。シフト制の時給者を1人選び、直近の基準日について、実績による付与日数、目安による付与日数、実際に付与した日数の3つを並べてください。実際に付与した日数が実績による日数を下回っていれば、不足があります。あわせて、その人が直近に年休を取得した日の賃金を、時給額×その日のシフト時間と比べます。この2つの作業で、自社の運用が留意事項のどこに合っていないかが分かります。

まとめ

厚生労働省の「シフト制」留意事項は令和8年6月19日に改正され、所定労働日数を算出しがたいシフト制労働者について、雇入れ6か月経過後は6か月間の労働日数の実績の2倍、1年6か月経過後以降は前年の労働日数の実績を、1年間の所定労働日数として年休の付与日数を算出してよいことが示されました。目安となる労働日数は、実績による付与日数を上回る場合に限って使えます。年休取得日の賃金を通常の賃金で支払う場合、時給者は時給額×取得日のシフト表で確定した所定労働時間です。令和8年10月付けのリーフレットには、これらの計算例と、取得しやすくするための取組例が載っています。

当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。シフト制の年休について、付与日数の算定ルールと取得日の賃金の定めを就業規則に書き、給与計算をそのとおりに行う状態を、経営者と一緒に整えてまいります。年休の算定ルールと賃金の定めの規程化については就業規則作成・改訂、年休取得日の賃金計算については給与計算代行、付与日数と取得状況の点検については労務手続代行・監査のページもご覧ください。

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【根拠法令】

労働基準法12条(平均賃金)、39条1項・2項(年次有給休暇の付与要件と日数)、3項(比例付与)、5項(労働者の請求する時季と時季の変更)、7項(年5日の時季指定)、9項(年次有給休暇取得時の賃金)/労働基準法施行規則24条の3(比例付与の日数)、25条(所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の算定)

【参考判例】

白石営林署事件・最高裁昭和48年3月2日判決(年次有給休暇の権利は、労働者が法定の要件を充足することによって法律上当然に発生するとしたもの。当法人は判決文そのものではなく、下記の厚生労働省提出資料の記載によって確認しています)

【出典・参考資料】

厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日策定、令和8年6月19日改正)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001713615.pdf/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「『シフト制』で働く場合の年次有給休暇について」(令和8年10月。当法人は入手したPDFで内容を確認。掲載ページのURLは未確認)/厚生労働省「いわゆる『シフト制』について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html/厚生労働省「『シフト制』労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項」(使用者向けリーフレット)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001749108.pdf/厚生労働省「『シフト制』で働くにあたって知っておきたい留意事項」(労働者向けリーフレット)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001749112.pdf/厚生労働省「シフト制の円滑な運用のための取組事例」https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001079683.pdf/厚生労働省労働基準局「いわゆる『シフト制』、年次有給休暇について」(令和8年1月9日 規制改革推進会議 働き方・人への投資ワーキング・グループ 資料4。改正前の留意事項の記載、年次有給休暇中の賃金に関する通達の整理と計算例、労働基準関係法制研究会報告書の抜粋、取得促進事例は、この資料によっています)https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2501_03human/260109/human05_04.pdf

【免責事項】

本記事は2026年10月時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。第3章から第5章の計算例と取組例は、令和8年10月付けのリーフレットの記載によっています。第4章の差額の計算、第6章の点検項目、第7章は当法人の整理と見解です。労働基準関係法制研究会の報告書は、厚生労働省の上記提出資料に抜粋された範囲で確認しています。具体的な事案については、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

なお、紛争性のある事案の交渉代理および訴訟代理は、弁護士法72条により社会保険労務士の業務範囲外です(特定社会保険労務士による個別労働関係紛争のあっせん代理等の法定の例外を除きます)。当法人は、年次有給休暇の付与日数の点検、就業規則と雇用契約書の整備、給与計算を担い、付与日数や賃金をめぐって従業員との間に争いが生じた場面では、提携する弁護士と連携して対応いたします。

この記事を書いた人

三重 英則(HIDENORI MIE)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員(特定社会保険労務士)

特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)

法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。