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| おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。 令和8年(2026年)10月1日、同一労働同一賃金ガイドラインの改正(令和8年厚生労働省告示第203号による改正)をはじめとする「施行5年後見直し」が施行・適用されます。当法人ではこれまで、ガイドライン改正の全体像と、令和2年10月の最高裁3判決(日本郵便・メトロコマース・大阪医科薬科大学)を解説してきました。今回はその原点に立ち返ります。 旧労働契約法20条の解釈を最高裁が初めて示したハマキョウレックス事件(最高裁第二小法廷 平成30年6月1日判決)です。条文が労契法20条からパート・有期法8条へ移った今も、「手当ごとに趣旨を問う」という実務の基本動作はこの一件から始まっており、賃金規程の点検を担うすべての企業にとって立ち返るべき出発点です。 |
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| 1. 事案の背景 ― 何が起きたのか | |||||||||||||||||||||
| 被告は、全国に事業所を展開する物流会社(株式会社ハマキョウレックス)。原告は、滋賀県の彦根支店でトラック運転手として勤務する契約社員(有期雇用)でした。 原告の担当する配送業務の内容は、同じ支店の正社員トラック運転手と基本的に同一。ところが、正社員に支給される手当のうち、契約社員には支給されないものが複数ありました。上告審で判断の対象となったのは、次の6つの手当です。
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| 2. 争点 ― 3つの論点 | |||||||||||||||||||||
| 本件の争点は、大きく次の3つに整理できます。 第1に、労契法20条の効力。同条に違反した場合、契約社員の労働条件は正社員と同一になるのか(いわゆる「補充効」の有無)。 第2に、「期間の定めがあることにより」の意味。どのような相違が同条の規制対象となるのか。 第3に、不合理性の判断方法。賃金総額で比較するのか、それとも手当ごとに判断するのか。そして、6つの手当それぞれの相違は不合理か。 |
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| 3. 下級審の判断 ― 審級が上がるごとに「不合理」の範囲が広がった | |||||||||||||||||||||
| 一審(大津地裁彦根支部 平成27年9月16日判決)は、6手当のうち通勤手当の相違のみを不合理と認めました。 二審(大阪高裁 平成28年7月26日判決)は、これに加えて無事故手当・作業手当・給食手当の相違も不合理と判断し、一審を一部変更して会社に損害賠償の支払を命じました。他方、皆勤手当と住宅手当については不合理とはいえないとしました。 なお、正社員と同一の地位の確認請求(補充効を前提とする請求)は、一審・二審とも認めていません。 ※下級審の認容範囲の細部は、判決文の引用を含む複数の専門解説(弁護士事務所・専門機関)に基づく整理です。手当ごとの認容範囲・金額の詳細は判決原文でご確認ください。 |
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| 4. 最高裁の判断 ― 4つの重要判示 | |||||||||||||||||||||
| 最高裁第二小法廷(平成28年(受)第2099号・第2100号)は平成30年6月1日、会社側の上告を棄却する一方、皆勤手当に関する部分について原判決を破棄しました。判示のポイントは次の4点です。 | |||||||||||||||||||||
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| ■ 6つの手当の判断と理由(最高裁) | |||||||||||||||||||||
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| 5. 実務への示唆 ― 令和8年10月1日の改正ガイドライン施行を前に | |||||||||||||||||||||
| (1) 手当の「趣旨」を言語化する棚卸し 本判決以降、待遇差の適法性は「その手当は何のために払うのか」の説明可能性で決まります。賃金規程上のすべての手当について、支給趣旨・対象・金額根拠を一覧化する棚卸しが第一歩です。「昔からあるが趣旨を誰も説明できない手当」が最大のリスクです。 (2) 「総額で上回っているから大丈夫」は通用しない 判断は手当ごとです。基本給や賞与で優遇していても、通勤手当や給食手当のような生活関連・実費補償型の手当の不支給は、それ単体で不合理と評価され得ます。 (3) 令和8年10月1日施行の改正への接続 施行5年後見直しでは、雇入れ時に「待遇差の説明を求めることができる旨」の明示が義務化されるなど、説明義務の実効性強化が省令・告示レベルで手当てされます(2026年4月28日公布・令和8年10月1日施行)。ハマキョウレックス型の「手当ごとの趣旨説明」を、雇入れ時・求めがあった時に文書で行える体制を整えることが、見直し対応の中核になります。詳細は当法人のガイドライン改正解説記事をご参照ください。 (4) 是正の方法にも注意 不合理な相違を解消する際、正社員の手当を引き下げて“下方統一”する方法は、労働条件の不利益変更として別の紛争リスクを生みます(賃金など重要な労働条件の不利益変更への同意については、山梨県民信用組合事件〔最二小判平成28年2月19日〕が「自由な意思」に基づく同意と認めるに足りる合理的な理由の存在を求めています)。原資配分の再設計は計画的に進めるべきです。 |
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| 6. まとめ ― 5判決シリーズの「原点」として | |||||||||||||||||||||
| ハマキョウレックス事件は、@私法上の効力と補充効の否定、A「期間の定めの有無に関連して」という広い入口、B手当ごと・趣旨ごとの判断、という現在の同一労働同一賃金実務の三本柱を打ち立てた判決です。令和2年10月の3判決(日本郵便・メトロコマース・大阪医科薬科大学)も、令和8年10月1日施行の改正ガイドラインも、すべてこの判断枠組みの延長線上にあります。 同日に判決が言い渡された長澤運輸事件(定年後再雇用の文脈)とあわせてお読みいただくと、「同じ判断枠組みでも、事情が変われば結論が変わる」ことがよく分かります。 |
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| 根拠法令・判例・出典 | |||||||||||||||||||||
| 【法令・指針】 ・労働契約法旧20条(平成25年4月1日施行、平成30年法律第71号による改正前) ・短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)8条 ・短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第430号。令和8年厚生労働省告示第203号による改正、令和8年10月1日施行・適用) 【判例】 ・ハマキョウレックス事件(最二小判平成30年6月1日・平成28年(受)第2099号、第2100号。一審:大津地裁彦根支部平成27年9月16日判決、二審:大阪高裁平成28年7月26日判決) ・長澤運輸事件(最二小判平成30年6月1日・平成29年(受)第442号) ・山梨県民信用組合事件(最二小判平成28年2月19日) 【一次情報源】 ・裁判所ウェブサイト「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html ・長澤運輸事件判決全文(ハマキョウレックス事件の事件番号引用を含む) https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-87785.pdf ・厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html |
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