「制度はあるのに違反」が増えている 埼玉労働局・品川労働基準監督署の注意喚起(労働新聞 2026年7月報道より) |
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📌 この記事の要点 ・埼玉労働局は、令和8年度建設関係労働時間削減推進協議会(2026年6月24日)で、36協定の特別条項の「発動手続き」を怠った違反事例を紹介し注意喚起しました。時間外労働の時間数自体は特別条項の範囲内でも、協定に定めた労使協議を経なければ手続き違反となります。 |
2026年7月、労働時間管理をめぐる労働行政の動きが相次いで報じられました。一つは埼玉労働局による36協定の特別条項の発動手続き違反事例の紹介、もう一つは品川労働基準監督署によるフレックスタイム制の不適切運用への警戒表明です(いずれも労働新聞・令和8年7月13日第3552号5面掲載)。
注目すべきは、どちらも「制度を導入していない」ことではなく、「制度を導入しているのに、運用が伴っていない」ことが問題とされている点です。本記事では、二つの行政動向の内容を整理し、企業が自社の労働時間管理を点検すべきポイントを解説します。
埼玉労働局(片淵仁文局長)は2026年6月24日、令和8年度建設関係労働時間削減推進協議会を開催し、同局の安武寿和監督課長が、36協定の特別条項の発動手続きに関する違反事例を紹介して注意喚起を行ったと報じられています。
報道によれば、違反のあった事業場は、特別条項を適用する際の手続きとして36協定に「労使協議を行う」と定めていました。ところが、工期の逼迫により1か月45時間を超える時間外労働を行わせる必要が生じた際、その労使協議を怠ったとのことです。実際の時間外労働の時間数は特別条項の範囲内だったにもかかわらず、手続きを経なかったことが違反と判断されました。同課長は、同種の手続きミスが散見されている旨の警戒を促しています。
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■ 「限度時間を超えて労働させる場合における手続」とは 特別条項付き36協定の様式(様式第9号の2)には、「限度時間を超えて労働させる場合における手続」を記載する欄があります。「労働者代表への事前申入れ」「労使協議」「通告」など、協定に定めた手続きは、月45時間・年360時間の限度時間(労基法36条3項・4項)を超えて労働させる場面が生じるたびに、その都度、実際に履行しなければなりません。 |
今回の事例は建設業の協議会で紹介されたものですが、特別条項付き36協定を締結している企業であれば業種を問わず同じ問題が起こり得ます。当法人では、この「発動手続き」の重要性について過去の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
▶ 関連記事:限度時間を超えて労働させる場合における手続について
東京・品川労働基準監督署(福島憲一署長)は、フレックスタイム制の不適切な運用に対し警戒を強めていると報じられています。背景には、同署管内で再開発により多くのオフィスビルが建設され、フレックスタイム制を採用する傾向の強いIT企業やスタートアップの入居・増加が相次いでいることがあります。
同署が問題として挙げたのは、コアタイムを定めていない企業で、時間指定のある顧客対応や定刻のミーティングへの参加を指示しているケースです。勤務時間について事実上の指揮命令が認められる場合には、指導票を交付する可能性もあるとしています。また、自社の業務に馴染むかを精査しないまま安易に制度を導入している企業が散見されるとの指摘もなされています。
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■ なぜ「時間指定の指示」が問題になるのか フレックスタイム制(労基法32条の3)は、始業・終業の時刻の決定を労働者に委ねることを本質とする制度です。コアタイム(必ず勤務すべき時間帯)を設けるかどうかは任意ですが、コアタイムを設けていないにもかかわらず、使用者が特定の時刻の勤務を事実上義務付けていれば、「時刻の決定を労働者に委ねている」という制度の前提が崩れます。 |
36協定の特別条項も、フレックスタイム制も、いずれも制度そのものは適法に「導入」されていました。問題とされたのは、導入後の運用です。特別条項は「協定に書いた手続きを実際に履行していなかった」こと、フレックスタイム制は「制度の本質と矛盾する業務指示を行っていた」ことが、それぞれ行政の指摘対象となりました。
協定の締結・届出や就業規則の整備は、労働時間管理の「入口」にすぎません。労基署の調査(臨検監督)では、書面の有無だけでなく、運用実態と記録が確認されます。次のチェックリストで、自社の運用を点検してみてください。
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✅ 自社点検チェックリスト 【36協定・特別条項】 |
今回の二つの報道は、労働行政が労働時間管理の「運用面」に踏み込んで監督を行っていることを示すものです。特に、時間外労働の上限規制が建設業等にも全面適用されて以降、36協定の運用の細部まで確認される場面が増えていることが報告されています。また、柔軟な働き方の普及に伴い、フレックスタイム制・変形労働時間制などの制度運用の適正性は、労基署調査だけでなく、IPO審査やM&Aの労務デューデリジェンスでも重点的に確認される論点です。
当法人では、労務手続代行・監査やIPO労務監査・改善支援を通じて、36協定の運用点検、特別条項の発動手続きの仕組みづくり、フレックスタイム制をはじめとする労働時間制度の運用実態の診断を支援しています。「協定・規程は整備してあるが、運用まで点検したことがない」という企業様は、この機会にぜひご相談ください。
初回のご相談で、貴社の状況に応じた点検の進め方をご案内します。 |
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■ 根拠法令・参考資料 ・労働基準法第32条(労働時間)、第32条の3(フレックスタイム制)、第36条(時間外及び休日の労働) ■ 出典 ・労働新聞社「手続き違反例を紹介 36協定特別条項の発動 埼玉労働局建設協議会」(労働新聞ニュース 2026年7月8日/令和8年7月13日第3552号5面掲載) ■ 免責事項 本記事は、掲載時点の報道および法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。行政の運用は事案により異なる場合があります。具体的な対応にあたっては、当法人または専門家にご相談ください。 |
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執筆者情報 |
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三重 英則(みえ ひでのり) 社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員 名古屋市中区丸の内を拠点に、IPO労務監査、給与監査、就業規則整備、労働紛争解決支援など、企業の労務管理を「誠実・Think more・伴走」の理念で支援しています。 |