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作成日:2026/03/03
【チェックリスト付】2026年社会保険適用拡大、人事担当者が今すぐ確認すべき5つのポイント

はじめに

202610月、社会保険制度が大きく変わります。いわゆる**106万円の壁」が撤廃**され、これまで社会保険の対象外だった多くのパート・アルバイト従業員が新たに加入対象となります。

特に、中小企業の経営者や人事労務担当者にとっては、事務負担の増加や従業員への説明対応など、早急な準備が求められる大きな制度改正です。

本記事では、2026年の社会保険適用拡大について、実務担当者が押さえるべきポイントをチェックリスト形式でわかりやすく解説します。


📌 2026年社会保険制度改正の全体像

まず、改正の全体スケジュールを確認しましょう。

時期

改正内容

20264

130万円の壁」判定基準の変更(労働契約書ベースへ)

20264

在職老齢年金の支給停止基準額引き上げ(51万円→62万円)

202610

106万円の壁」撤廃(賃金要件の廃止)

202710月以降

企業規模要件の段階的撤廃開始(36人以上→21人以上→11人以上完全撤廃)

特に影響が大きいのが、202610月の「106万円の壁」撤廃です。これにより、20時間以上働くパート・アルバイトは、収入額に関わらず社会保険の加入対象となります。


チェックリスト:人事担当者が確認すべき5つのポイント

それでは、実務担当者が今すぐ確認・準備すべきポイントをチェックリスト形式で見ていきましょう。


ポイント1:自社の加入対象者数を把握する

【確認事項】

  • [  ]  20時間以上勤務のパート・アルバイト従業員数をリストアップ
  • [  ]  現在の月額賃金が8.8万円未満(年収106万円未満)で、新たに加入対象となる従業員数を算出
  • [  ]  2カ月超の雇用契約、または実働が2カ月連続で週20時間以上の従業員を確認
  • [  ]  学生を除外(高校・大学・専門学校等の学生は対象外)

【実務のポイント】

202610月以降は、「月額8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されます。つまり、週20時間以上働いていれば、月収が5万円でも社会保険に加入することになります。

厚生労働省は、この改正により新たに約200万人が社会保険加入対象になると試算しています。

【注意点】

  • 現在「従業員数51人以上」の企業が対象ですが、202710月以降は段階的に企業規模要件も撤廃されます
  • 従業員数のカウントは、厚生年金保険の被保険者数(フルタイム+週労働時間が正社員の4分の3以上のパート)で判定

ポイント2:労働条件通知書の記載内容を見直す

【確認事項】

  • [  ]  現在使用している労働条件通知書のフォーマットを確認
  • [  ]  時給、所定労働時間、勤務日数が明確に記載されているか
  • [  ]  諸手当(固定手当)が明記されているか
  • [  ]  賞与の有無と金額が記載されているか
  • [  ]  年収見込み額が算出可能な内容になっているか

【実務のポイント】

20264月から、健康保険の被扶養者認定(いわゆる「130万円の壁」)の判定方法が変わります。

従来: 過去・現在の収入実績や将来の収入見込みを総合的に判断
改正後: 労働契約書(労働条件通知書)に記載された年収見込みで判定

つまり、労働条件通知書の記載内容が、扶養認定の判断基準として非常に重要になります。

【注意点】

  • 残業代、賞与、通勤手当、臨時的な賃金は「106万円の壁」の計算には含まれませんが、「130万円の壁」には含まれます
  • 労働条件通知書は証跡管理が重要(後日の調査や確認に備える)

ポイント3:従業員への説明と合意形成の準備

【確認事項】

  • [  ]  社会保険加入による手取り額の変化をシミュレーション
  • [  ]  従業員向け説明資料(メリット・デメリット)を作成
  • [  ]  個別相談の窓口体制を整備
  • [  ]  労働条件変更に伴う同意取得の手順を確認
  • [  ]  106万円の壁」撤廃後の働き方について従業員の希望をヒアリング

【実務のポイント】

社会保険への加入は、従業員の手取り額に直接影響を与えます。一般的なケースでは、年収106万円の場合、年間約16万円の社会保険料負担が発生します。

一方で、社会保険加入には以下のようなメリットもあります:

【従業員のメリット】

  • 将来受け取れる年金額が増える(国民年金のみより手厚い)
  • 健康保険の傷病手当金・出産手当金が受けられる
  • 障害厚生年金・遺族厚生年金の対象になる
  • 老齢年金の受給資格期間(10年)を満たしやすくなる

丁寧な説明と合意形成が、トラブル回避の鍵となります。

【注意点】

  • 一方的な労働条件変更は労働契約法違反となる可能性
  • 「手取りが減るから働く時間を減らしたい」という従業員への対応方針を事前に決めておく

ポイント4:社会保険加入手続きの体制を整備する

【確認事項】

  • [  ]  「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」の提出フローを確認
  • [  ]  提出期限(雇用開始から5日以内)を厳守できる体制か
  • [  ]  電子申請(e-Gov)の利用環境を整備
  • [  ]  マイナンバーの取得・管理体制を確認
  • [  ]  被扶養者がいる従業員の「健康保険被扶養者(異動)届」提出手順を確認

【実務のポイント】

社会保険の資格取得届は、「従業員の雇用開始から5日以内」に提出しなければなりません。

対象者が増加する中で、手書きの届出書作成や郵送では期限遵守が困難になる可能性があります。電子申請(e-Gov)の活用を検討しましょう。

【注意点】

  • 届出の遅延は、従業員の資格確認書発行の遅れにつながる
  • 年金事務所からの指導対象となる可能性
  • 4月などの繁忙期は、資格確認書の発行に1カ月以上かかることもある

ポイント5:労務管理のデジタル化を検討する

【確認事項】

  • [  ]  電子契約システムの導入検討
  • [  ]  労働条件通知書の電子交付への移行
  • [  ]  契約期間・労働時間の自動管理システムの導入
  • [  ]  加入要件を満たすタイミングの自動アラート機能
  • [  ]  従業員情報の一元管理体制の構築

【実務のポイント】

2026年以降の社会保険適用拡大により、人事労務の事務負担は爆発的に増加します。

特に以下の業務が重要になります:

  • 労働条件通知書の適切な作成・保管(証跡管理)
  • 契約期間や労働時間の継続的なモニタリング
  • 加入漏れ・届出遅延の防止

電子契約システムや労務管理ツールを導入することで、以下のメリットがあります:

  • 契約締結日時のタイムスタンプ記録(改ざん防止)
  • 労働条件変更の通知と同意取得のオンライン完結
  • 加入要件を満たすタイミングの自動検知・アラート
  • 未対応者へのリマインド自動送信

【注意点】

  • システム導入には時間がかかるため、早めの検討が必要
  • 労働条件通知書の電子交付には従業員の同意が必要
  • マイナンバーを含む特定個人情報の安全管理措置を徹底

📊 企業規模別の影響度まとめ

制度改正による影響度を企業規模別に整理しました。

企業規模

20264月の影響

202610月の影響

今後の影響

従業員51人以上

130万円の壁判定変更

106万円の壁撤廃で対象者急増

2027年以降、段階的に小規模企業も対象に

従業員3650

130万円の壁判定変更

影響なし

202710月から対象

従業員2135

130万円の壁判定変更

影響なし

202910月から対象

従業員1120

130万円の壁判定変更

影響なし

203210月から対象

従業員10人以下

130万円の壁判定変更

影響なし

203510月から対象


💡 企業が得られるメリット

短期的にはコスト増となりますが、中長期的には以下のメリットがあります:

【従業員定着率の向上】

社会保険完備により、従業員の生活が安定し、長期勤務のインセンティブが高まります。

【採用力の強化】

「社会保険完備」は求職者にとって大きな安心材料。人材獲得競争で優位に立てます。

【企業の社会的責任】

従業員の年金記録を充実させることで、企業としての社会的責任を果たせます。

【コンプライアンス強化】

適切な労務管理により、行政指導や法的リスクを回避できます。


🚀 今すぐ始めるべきアクションプラン

20263月まで】 現状把握フェーズ

  • 加入対象となる従業員数の算出
  • 労働条件通知書フォーマットの確認
  • コスト試算(社会保険料負担増の見積もり)

202649月】 準備・整備フェーズ

  • 労働条件通知書の改訂
  • 従業員向け説明会の実施
  • 電子契約システム等の導入
  • 社会保険加入手続きフローの構築

202610月】 実施フェーズ

  • 新規加入対象者への個別説明
  • 資格取得届の一斉提出
  • 労働条件変更契約の締結

まとめ

202610月の「106万円の壁」撤廃は、企業の人事労務管理に大きな影響を与える重要な制度改正です。

人事担当者が押さえるべき5つのポイントを再確認しましょう:

  1. 自社の加入対象者数を把握する
  2. 労働条件通知書の記載内容を見直す
  3. 従業員への説明と合意形成の準備
  4. 社会保険加入手続きの体制を整備する
  5. 労務管理のデジタル化を検討する

「準備不足で混乱してしまった」とならないよう、今から計画的に準備を進めることが重要です。

制度改正を機に、自社の労務管理体制を見直し、コンプライアンス強化と従業員の安心につながる環境整備を進めましょう。


【参考資料】


本記事の内容は20263月時点の情報に基づいています。最新の制度内容については、厚生労働省や日本年金機構の公式サイトをご確認ください。