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Q1. 改正労働安全衛生法は「努力義務」とのことですが、本当に対応が必要ですか?
A. 努力義務のため直接的な行政処分・罰則はないと考えられますが、労災が発生した際の民事損害賠償請求において、「国がガイドラインで求めていたのに対策していなかった」という事実は、安全配慮義務違反を認定する重要な判断材料となります。実質的な義務とお考えください。
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Q2. 定年後再雇用の賃金は、定年時の何割まで下げてよいのですか?
A. 「総支給額の60%であれば適法」といった一律の基準はありません。
過去の裁判例(名古屋自動車学校事件)において、名古屋地裁・名古屋高裁が「定年退職時の基本給の60%を下回る部分は不合理」とする基準を示したことがありました。しかし、最高裁判所(令和5年7月20日判決)は、この「60%基準」を採用しませんでした。
最高裁が示した判断枠組みは、賃金総額(あるいは基本給の総額)の比較ではなく、基本給・賞与・各種手当といった「個別の賃金項目ごと」に、その性質や支給目的を検討するというものです。具体的には次の点が問われます。
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・基本給の性質:年齢や勤続年数に応じた「年功的」なものか、職務内容や能力に応じた「職務給・職能給」的なものかによって、減額の合理性が変わります。
・各種手当の趣旨:役職手当(役職への対価)・精勤手当(皆勤の奨励)・住宅手当(生活費の補助)など、それぞれの趣旨に照らして、再雇用後の不支給・減額の合理性を個別に説明できる必要があります。
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したがって、総支給額が定年前の60%であっても、項目別の合理性が説明できなければ違法と判断される可能性がありますし、逆に50%でも、業務内容の差や激変緩和措置・各項目の性質を踏まえた説明ができれば適法と判断されることもあります(日本ビューホテル事件等)。会社としては、「総額で何割だから大丈夫」と考えるのではなく、個々の賃金項目ごとに減額・不支給の合理的理由を整理し、労働者に説明できる体制を整えることが重要です。
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Q3. 定年前と全く異なる業務内容を提示してもよいのですか?
A. 再雇用後の労働条件の提示は使用者の合理的な裁量に委ねられているため、定年前と異なる業務内容の提示は可能です。ただし、社会通念に照らして「到底受け入れ難い全く別個の職種」を提示する場合、実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められず違法となるリスクがあります。職務関連性のある業務範囲内での提案を心がけるべきです。
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Q4. 人事評価に応じて、再雇用条件に差を設けることはできますか?
A. 希望者全員を対象とする制度に加え、一定の人事評価を得ているなどの客観的かつ合理的な要件を満たした者のみを有利な労働条件で雇用する「コース制」を設けることは可能です。ただし、評価基準の客観性・合理性が問われますので、運用ルールの整備が前提となります。
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Q5. 労働者が再雇用条件に同意せず、対案を提示してきた場合は?
A. 使用者が提示した労働条件が「合理的な裁量の範囲」のものであれば、労働者が同意せず再雇用契約が不成立となっても、高年齢者雇用安定法違反とはなりません。ただし、名古屋自動車学校事件・差戻控訴審が「労使交渉の誠実性」を問うた点を踏まえれば、事前に丁寧に協議を重ねる対応が望ましく、その記録を残すことが極めて重要です。
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Q6. 再雇用後も役職を継続させる場合、役職手当はどう扱うべきですか?
A. 定年後も役職としての責任と権限を担って実働してもらう以上は、役職手当等の職務関連賃金項目は基本的に定年前のものをそのまま維持すべきです。一律減額すると、長澤運輸事件・名古屋自動車学校事件で示された「項目別判断」に照らして、不合理な相違と認定されるリスクがあります。専門業務についても同様で、業務内容が変わらないなら待遇維持が原則です。
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Q7. 65歳までの再雇用社員を、経営悪化を理由に雇止めできますか?
A. 65歳以下の定年後再雇用者を雇止めする場合、解雇に相当する事由(整理解雇の4要素)が必要です。アルバイトなどの非正規労働者の削減を図らなかったり、希望退職募集における慎重な検討を欠いたりすると、人選の合理性等が否定され違法と判断されるリスクがあります。「契約期間満了」だけでは雇止めはできない、と認識すべきです。
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Q8. 勤務態度不良の高年齢社員を雇止めできますか?
A. 勤務態度不良があっても直ちに雇止めすることはできず、時間をかけて指導・警告・懲戒等を行う必要があります。65歳まで雇用されるという労働者の合理的期待を上回るほどの勤務態度不良や協調性の欠如等が証明できなければ、雇止めは無効となる可能性が高いです。記録の蓄積と段階的対応が不可欠です。
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Q9. リモートワークで労務提供が不十分な高年齢社員への対応は?
A. まずはリモートワークを中止して出社を命じ、主治医や産業医から情報を得て健康状態を確認すべきです。その上で配置転換や休職を検討し、それでも改善が見込めない場合に雇止めを検討することになります。健康問題を理由とする雇止めは、安全配慮義務とのバランスが極めて難しい領域です。
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Q10. 契約更新時に、労働条件を不利益に変更できますか?
A. 契約更新時に労働条件を一方的に不利益に変更し、労働者が応じないことを理由に雇止め(変更解約告知)をするには、客観的合理的理由と社会通念上の相当性が厳格に求められます。これを有効とするには、給与変更等の社内ルールを具体化し、十分な説明と猶予を与えるなどの適正な手続を踏むことが必要です。安易な不利益変更はトラブルの温床です。
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Q11. 助成金申請も依頼できますか?
A. 申し訳ございません。当法人では助成金申請業務は取り扱っておりません。労務管理体制の構築・運用・紛争対応に専念することで、本質的な経営支援を提供しています。
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