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IT & SES INDUSTRY

「うちのSEは裁量労働制だから大丈夫」——
その思い込みが、約1,140万円の
支払い命令を招きました。

裁量労働制の形骸化・偽装請負・多重下請け——
2024年4月の制度改正で、IT業界の労務管理は「実態審査」の時代へ。
放置すれば、未払い残業代請求・事業停止命令・直接雇用申込みみなしが現実化します。

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CHALLENGES
IT企業の経営者が
直面する「7つの労務リスク」

TOPIC 01

専門業務型裁量労働制の「適用否認」——
エンジニアの肩書きだけでは適用できない

「うちはシステムエンジニアに専門業務型裁量労働制を適用しているから残業代は発生しない」——この認識は、司法の前では通用しません。裁量労働制の対象業務は「情報処理システムの分析又は設計の業務」と厚生労働省令で定められていますが、単にこの肩書きで働かせているだけでは適用要件を満たしません。実際の業務遂行に「裁量性」があることが絶対条件です。裁判所は就業規則の形式ではなく、日々の運用における「実態」を厳格に審査します。

✕ 無効(会社敗訴)

エーディーディー事件(京都地判 平成23年10月31日/大阪高判 平成24年7月27日)

【事案】京都市のコンピュータ会社「エーディーディー」でシステムエンジニアとして勤務していた男性が、実際には裁量のない労働に従事していたとして、会社に残業代など約1,600万円の支払いを求めて提訴した事案。会社側からは労働者に対する損害賠償請求訴訟も提起されていました。

【裁判所の判断】京都地裁は2011年10月31日、裁量労働制の適用を否認し、会社側に約1,140万円(未払残業代 約570万円+付加金 約570万円)の支払いを命じる判決を下しました。判断のポイントは次の3点です。

@ 実態の伴わない職種名:原告は「システムエンジニア」の肩書きだったが、実際には裁量労働制の対象外であるプログラミング業務や営業活動にまで従事させられていた。
A 業務遂行の裁量性の欠如:下請けとして受注したシステム設計の一部業務であり、タイトな納期とノルマが設定されていたため、「業務遂行と時間配分の裁量性がない」と判断された。
B 健康確保措置の不備:退職前の約5カ月間で月80〜140時間もの異常な残業(認定分だけで552時間)を強いておきながら、健康確保措置を講じていなかった。原告はうつ病を発症し労災認定も受けている。

【実務上の意味】多重下請け構造の下層に位置する企業では、システム全体の設計ではなく一部の工程のみを受注するケースが大半です。その場合、「業務遂行の裁量性」が構造的に存在しないため、裁量労働制の適用は原則として認められません。大阪高裁(平成24年7月27日判決)でも地裁判断が維持され、会社の長時間労働認識義務違反によるうつ病発症との因果関係も認定されました。

⚠ IT業界で多発する裁量労働制の「適用否認」パターン

対象外業務への従事:「SE」の肩書きでプログラミング、テスト、運用保守、営業活動にまで従事させている。
具体的な指揮命令:工数の詳細指示、日次の進捗管理、タイトな納期設定により、時間配分の裁量が実質的にない。
下請け構造での適用:システム全体の設計権限がなく、発注元から降りてきた工程のみを担当している。
みなし時間と実態の乖離:みなし労働時間を大幅に超える恒常的な長時間労働が発生している。
健康確保措置の不備:2024年4月改正で義務化された健康・福祉確保措置を講じていない。

⚠ リスク: 裁量労働制が無効と判断されれば、通常の労働時間制で残業代を再計算。1人あたり数百万〜1,000万円超の未払い残業代+付加金(労基法114条)が発生。うつ病等の発症があれば安全配慮義務違反による損害賠償も上乗せされます。
✓ 対応策: 対象業務の実態精査と対象者の絞り込み、工数指示・進捗管理の運用見直し、2024年4月改正対応(本人同意・撤回手続・健康福祉確保措置)、みなし時間と実労働時間の乖離モニタリング体制の構築。

TOPIC 02

2024年4月施行・裁量労働制改正——
本人同意・撤回権・健康福祉確保措置の義務化

2024年4月1日施行の改正労働基準法施行規則により、専門業務型裁量労働制の運用ルールが大きく変わりました。これまで不要だった労働者本人の同意が必須となり、同意しない労働者への不利益取扱いが禁止され、同意の撤回手続きの整備も義務化されています。既に制度を導入している企業も、2024年3月31日までに新ルールに基づく労使協定の再締結・届出・本人同意の取得が必要でした。これらの対応を怠っている場合、そもそも裁量労働制の適用自体が無効となります。

⚠ 2024年4月改正の主要ポイント(専門業務型)

本人同意の義務化:制度適用にあたり労働者本人の同意を得ることが必須。就業規則による包括的同意は不可。個別の同意書を労働者ごと・有効期間ごとに取得する必要があります。
不利益取扱いの禁止:同意しなかった労働者に対する解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています。
同意撤回手続きの整備:撤回の申出先・方法・撤回後の処遇について労使協定で定めることが必要。
健康・福祉確保措置の強化:「長時間労働抑制のための措置(勤務間インターバル、深夜業回数制限等)」と「個々の労働者に応じた措置(医師面接指導等)」の2カテゴリから、それぞれ1つ以上の実施が望ましいとされています。
記録保存義務:労働時間状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理の状況、同意・撤回の記録を労使協定の有効期間中および満了後3年間保存する義務。

⚠ リスク: 改正対応を怠れば、2024年4月以降は裁量労働制そのものが無効に。全エンジニアについて通常の労働時間制で残業代を計算し直す必要があります。退職者3年分の遡及請求で、会社規模次第では数千万円〜億単位の潜在債務が顕在化します。
✓ 対応策: 労使協定の再締結・新様式での届出、個別同意書フォーマットの整備、撤回手続きの就業規則への明記、健康福祉確保措置の選定と運用体制構築、苦情処理窓口の設置。

TOPIC 03

SES契約の「偽装請負」リスク——
労働契約申込みみなし制度の衝撃

SES契約(準委任契約)に基づきエンジニアを発注元企業に常駐させる形態は、IT業界の標準的な取引形態です。しかし、発注元が常駐エンジニアに直接業務指示を出したり、労働時間を管理したりすれば、それは「偽装請負」です。形式上は準委任契約でも、実態が労働者派遣であれば労働者派遣法違反となり、派遣事業の許可を得ていなければ刑事罰の対象となります(労働者派遣法59条2号。1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。

⚠ 偽装請負と判断される典型パターン(厚労省告示37号基準)

発注元からの直接指示:常駐先の担当者がエンジニアに業務内容・進め方を直接指示している。
発注元による勤怠管理:常駐先の勤怠システムで出退勤を管理し、残業・休日出勤を常駐先が命じている。
事前面談による配置決定:常駐前にスキル審査を目的とした面談を実施し、発注元が配置を決定している(「顔合わせ・職場見学」は許容されるが、「事前面談」は実質的な採用選考に該当する可能性)。
1人常駐:現場責任者を置かず、エンジニアが1人で常駐して発注元の指示で稼働している。
多重下請け構造:発注元→元請→2次請→SES会社→エンジニアという多層構造の中で、指揮命令系統が不明確になっている。

■ 労働契約申込みみなし制度(労働者派遣法40条の6)

偽装請負と判断された場合、さらに深刻な効果が発生します。それが「労働契約申込みみなし制度」です。発注元企業がエンジニアを違法な偽装請負で受け入れていた場合、発注元企業がそのエンジニアに対して、その時点の労働条件と同一条件で労働契約の申込みをしたものとみなされます。エンジニア側がこの申込みを承諾すれば、発注元企業との間に直接の雇用関係が成立します。SES会社を経由せず、常駐先企業の従業員になってしまうということです。この申込みみなしの効力は1年間存続するため、偽装請負の発覚後、相当期間にわたってリスクが残り続けます。

⚠ リスク: 労働者派遣法違反による刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)、事業停止命令(労働者派遣法49条)、改善命令、社名公表、直接雇用申込みみなしによる雇用関係の発生。受注企業・発注企業の双方にリスクが及びます。
✓ 対応策: SES契約書の見直し、現場責任者の常駐、指揮命令系統の明文化、発注元とのコミュニケーションルールの策定(責任者経由の徹底)、独立した勤怠管理体制の整備、多重下請け構造下での契約関係の整理。

TOPIC 04

固定残業代(みなし残業)の設計不備——
「無効」と判断されれば基礎単価が跳ね上がる

IT企業では、裁量労働制と並んで固定残業代制度も広く導入されています。しかし、基本給との明確な区分、対象時間数の明示、差額精算条項の不備が原因で「無効」と判断されるケースが後を絶ちません。最高裁は、固定残業代が有効と認められるためには「通常の労働時間の賃金部分と割増賃金部分が判別できること(明確区分性)」「割増賃金として支払われていること(対価性)」の2要件を求めています。

⚠ リスク: 固定残業代が無効と判断されると、その金額が基本給に組み込まれ、割増賃金の基礎単価が跳ね上がる「二重払い」状態に。既に支払った固定残業代は残業代として計上できず、全額が追加の残業代として再計算されます。
✓ 対応策: 就業規則・雇用契約書・求人票での明確な区分記載(基本給と固定残業代、対象時間数)、毎月の差額精算フロー整備、給与明細の記載方法見直し、裁量労働制との併用時の整合性確認。

TOPIC 05

長時間労働・メンタル不調——
安全配慮義務違反による経営責任

システム障害対応、リリース直前の追い込み、客先常駐での顧客対応——IT業界の業務特性から、長時間労働とメンタル不調のリスクは極めて高い水準にあります。月80時間超の時間外労働がある場合、脳・心臓疾患や精神障害の労災認定基準を超える「過労死ライン」に該当し、安全配慮義務違反(労契法5条)が強く推認されます。エーディーディー事件でも、裁量労働制の適用否認とあわせて、長時間労働を認識しながら健康確保措置を講じなかったことによるうつ病発症が認定されました。

⚠ リスク: 過労死・過労自殺による損害賠償請求(数千万〜1億円超)、精神障害の労災認定、ストレスチェック制度の実施義務違反(50人以上事業場)、長時間労働者への医師面接指導義務違反。
✓ 対応策: 労働時間の客観的把握(PCログ・入退館記録等)、長時間労働者への医師面接指導の制度化、ストレスチェックの実施と集団分析、メンタル不調者への休職・復職支援規程の整備、管理職への労務管理研修。

TOPIC 06

多重下請け構造の労務ガバナンス——
発注者側・受注者側のダブルリスク

IT業界の多重下請け構造は、労務リスクの温床です。発注元企業から見れば、下請けSES会社のエンジニアを使うことで表面上のコストは下がりますが、偽装請負・労働契約申込みみなし制度のリスクは発注元にも及びます。受注側のSES会社は、自社エンジニアを守る労務管理責任を負いながら、発注元の都合に左右される構造的な立場にあります。双方が適正な契約関係とコンプライアンス体制を構築しなければ、いずれかの側で問題が発生した時、両社が巻き込まれます。

⚠ リスク: 中間搾取の排除(労基法6条)違反、労働者供給事業の禁止(職業安定法44条)違反、多重派遣による事業停止命令、元請責任、下請代金支払遅延等防止法違反。
✓ 対応策: 契約関係の可視化と適正化、現場責任者の明確化、発注元との覚書・運用ルールの文書化、下請エンジニアに対する間接的な指示系統の整備、定期的な契約実態のセルフチェック。

TOPIC 07

SES企業のM&A活性化——
「アクイハイヤー」時代の労務DD

深刻なIT人材不足を背景に、エンジニアを抱えるSES企業の買収ニーズが急騰しています。大企業や成長企業は、採用市場で1人ずつ獲得するよりも、エンジニア集団を抱える中小SES企業を丸ごと買収する「アクイハイヤー(人材獲得目的の買収)」を展開しています。しかし、買い手企業が最も注視するのは「売上」ではなく「労務リスクの有無」です。裁量労働制の形骸化、固定残業代の無効リスク、偽装請負の実態、未払い残業代の潜在債務——これらは「隠れ負債」として譲渡価格の大幅な減額要因、場合によっては破談の原因となります。

⚠ リスク: 裁量労働制無効による未払い残業代の潜在債務(全エンジニア×3年分)、偽装請負による労働契約申込みみなしリスク、メンタル不調者・退職者からの損害賠償請求、36協定の未届出、社会保険の未加入。
✓ 対応策: 事前の労務デューデリジェンスでリスクを可視化・是正。裁量労働制の適正化、SES契約書の見直し、就業規則・賃金規程の整備を進めることで、企業価値を最大化。売り手・買い手双方の労務DD支援を経験豊富な特定社労士が伴走します。
SELF CHECK
御社の裁量労働制は「適法」ですか?
セルフチェック10項目

次の項目のうち「はい」が1つでもあれば、裁量労働制が無効と判断されるリスクがあります。

対象エンジニアにプログラミング業務・テスト業務・運用保守業務を行わせている
対象エンジニアに営業活動・顧客対応業務を行わせている
日次で工数の詳細を指示し、進捗を細かく管理している
タイトな納期が設定され、実質的に時間配分の裁量がない
システム全体の設計権限がなく、多重下請け構造の下層で一部工程を受注している
みなし労働時間を大幅に超える残業が恒常化している(月45時間超)
2024年4月改正後の労使協定を締結・届出していない
対象労働者から個別の同意書を取得していない
健康・福祉確保措置(勤務間インターバル、深夜業制限、医師面接等)を講じていない
同意・撤回の記録、苦情処理の記録を保存していない

チェック項目が多いほど、エーディーディー事件と同様の判断を受けるリスクが高まります。1人あたり数百万〜1,000万円超の未払い残業代+付加金が発生します。早期の制度見直しをご検討ください。
WHY T&M NAGOYA
「攻め方」を知っているから
「守り方」がわかる

01

法律事務所で
7年間の紛争実務

労働者側・使用者側の双方の代理人として労使紛争を扱った経験から、「どこを突かれるか」を熟知。

02

年間350件超の
相談対応実績

裁量労働制・固定残業代・SES契約の相談を多数受け、IT業界特有のリスクポイントを深く理解。

03

経営心理士の
視点で対話

エンジニアとの対話・制度移行の合意形成に心理学的アプローチで伴走。離職を防ぐ改革を支援。

「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」

IT企業の経営者は、エンジニア不足の中で事業を成長させ、同時に労務コンプライアンスを守り、発注元との関係も維持しなければなりません。その複雑な課題に、私は20年以上の紛争解決経験と、約7年間の法律事務所での実務経験でお応えします。裁量労働制の制度再設計、SES契約の見直し、M&A時の労務DD——「攻められる前に守りを固める」伴走型の支援を提供します。

社会保険労務士法人T&M Nagoya 代表社員 三重 英則
特定社会保険労務士|経営心理士|経営法曹会議賛助会員

FLOW
ご相談からサポート開始まで
01

お問い合わせ・初回ヒアリング

電話・メール・フォームからご連絡ください。現在の課題感を伺い、初回面談(WEB可)の日程を調整します。

02

現状診断・リスク分析

就業規則・労使協定・賃金規程・雇用契約書・SES契約書・勤怠記録を精査し、労務リスクを網羅的に診断します。

03

改善提案・お見積り

診断結果に基づき、裁量労働制の再設計・SES契約の見直し・賃金制度再構築プランと費用をご提示します。

04

伴走サポート開始

制度設計から運用定着まで、経営者と並走します。紛争が生じた場合の対応もワンストップで支援します。

「裁量労働制だから大丈夫」は、
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まずは30分、御社の現状をお聞かせください。
就業規則・労使協定・雇用契約書を拝見すれば、
その場でリスクの有無を率直にお伝えします。
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