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✕ 無効(会社敗訴)
エーディーディー事件(京都地判 平成23年10月31日/大阪高判 平成24年7月27日)
【事案】京都市のコンピュータ会社「エーディーディー」でシステムエンジニアとして勤務していた男性が、実際には裁量のない労働に従事していたとして、会社に残業代など約1,600万円の支払いを求めて提訴した事案。会社側からは労働者に対する損害賠償請求訴訟も提起されていました。
【裁判所の判断】京都地裁は2011年10月31日、裁量労働制の適用を否認し、会社側に約1,140万円(未払残業代 約570万円+付加金 約570万円)の支払いを命じる判決を下しました。判断のポイントは次の3点です。
@ 実態の伴わない職種名:原告は「システムエンジニア」の肩書きだったが、実際には裁量労働制の対象外であるプログラミング業務や営業活動にまで従事させられていた。 A 業務遂行の裁量性の欠如:下請けとして受注したシステム設計の一部業務であり、タイトな納期とノルマが設定されていたため、「業務遂行と時間配分の裁量性がない」と判断された。 B 健康確保措置の不備:退職前の約5カ月間で月80〜140時間もの異常な残業(認定分だけで552時間)を強いておきながら、健康確保措置を講じていなかった。原告はうつ病を発症し労災認定も受けている。
【実務上の意味】多重下請け構造の下層に位置する企業では、システム全体の設計ではなく一部の工程のみを受注するケースが大半です。その場合、「業務遂行の裁量性」が構造的に存在しないため、裁量労働制の適用は原則として認められません。大阪高裁(平成24年7月27日判決)でも地裁判断が維持され、会社の長時間労働認識義務違反によるうつ病発症との因果関係も認定されました。
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