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作成日:2026/10/17
職理由の1位は「賃金が低かった」25.5%、転職先でも賃金の満足度が最も低い−令和7年転職者実態調査(2026年9月25日公表)を、採用と定着の両面から読む
労務トピックス
離職理由の1位は「賃金が低かった」25.5%、転職先でも賃金の満足度が最も低い
令和7年転職者実態調査(2026年9月25日公表)を、採用と定着の両面から読む
2026年10月17日|社会保険労務士法人T&M Nagoya 三重 英則(特定社会保険労務士)

おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。

厚生労働省は2026年9月25日、「令和7年転職者実態調査」の結果を公表しました。転職者を受け入れた事業所と、転職した本人の双方に尋ねる調査で、前回の令和2年調査から5年ぶりの公表です。人手不足のなかで中途採用の比重を高めている会社は多いはずです。なぜ前の会社を辞めたのか、なぜ今の会社を選んだのか、入社後に何に満足し何に不満なのか。本記事では、報道発表資料と概況の各PDFを確認したうえで、採用と定着の両面からこの調査を読み解きます。

先に結論を言えば、賃上げだけでは離職は止まらず、賃金だけでは転職者は集まらない。数字はそう読めます。

📌 この記事でわかること

✓ 転職者が直前の勤め先を自己都合で辞めた理由は「賃金が低かったから」25.5%が最多ですが、「会社の将来に不安を感じたから」25.2%、「満足のいく仕事内容でなかったから」24.7%と、上位3項目は1ポイント以内の僅差であること

✓ 転職者が今の会社を選んだ理由は「仕事の内容・職種に満足がいくから」40.2%、「自分の技能・能力が活かせるから」38.4%が上位で、「賃金が高いから」は18.8%にとどまること

✓ 入社後の満足度D.I.は職業生活全体で44.0ポイントである一方、「賃金」は22.2ポイントと項目別で最も低く、男女差(男27.2、女16.7)も大きいこと

✓ 事業所側は「人員構成の歪みの是正」48.3%を最も重視して転職者を採用しており、今後3年間に採用予定のある事業所(63.6%)のうち40.0%が「転職者を優先」、「新規学卒者を優先」は9.8%にとどまること

✓ 本調査は常用労働者5人以上の事業所で働くフルタイムの転職者が対象で、パートタイム労働者の転職は含まれていないこと

中途採用は「欠員の穴埋め」から、会社の人員構成を支える柱に変わりつつあります。

1 調査の概要と、読む前に押さえる3つの注意点

厚生労働省の報道発表資料と「調査の概要」によると、調査の枠組みは次のとおりです。

項目 内容
調査名・公表日 令和7年転職者実態調査(厚生労働省)。2026年(令和8年)9月25日公表。前回調査は令和2年
調査時点 令和7年10月1日現在(事業所調査は令和7年9月16日から10月17日、個人調査は10月17日から12月19日に実施)
調査対象 常用労働者5人以上の事業所17,354事業所(16大産業)と、そこで働く転職者13,975人
有効回答 事業所調査9,154事業所(有効回答率52.7%)、個人調査7,310人(同52.3%)
「転職者」の定義 雇用期間の定めがない、又は1年以上の雇用期間を定めて雇用する一般労働者(フルタイム)のうち、その事業所に雇用される前の1年間に他企業に雇用された経験があり、令和6年10月1日から令和7年9月30日の間に雇用された者

数字を読む前に、3点を確認しておきます。第1に、対象は常用労働者5人以上の事業所で働くフルタイムの転職者に限られ、パートタイム労働者の転職は含まれていません。第2に、「転職者」は採用前1年以内に他企業での雇用経験がある人を指し、学生アルバイトや1か月以内の臨時的な仕事のみの経験は除かれます。第3に、比較対象となる前回の令和2年調査は、新型コロナウイルス感染症の影響下にあった2020年に実施されたものです。転職市場の環境が大きく異なる時点との比較である点は、増減を読むときに念頭に置く必要があります。

2 事業所側から見た転職者――「人員構成の歪みの是正」が最多に

一般労働者がいる事業所のうち、転職者がいる事業所は38.2%でした。内訳は、雇用期間の定めのない転職者がいる事業所が33.4%、1年以上の有期の転職者がいる事業所が11.0%です。事業所規模が大きいほど割合は高く、1,000人以上では94.6%、300から999人で86.1%、100から299人で77.7%、30から99人で60.3%に対し、5から29人では32.7%です。産業別では不動産業・物品賃貸業53.9%、情報通信業49.0%、医療・福祉48.8%が高くなっています。

転職者の採用に当たり重視した事項(複数回答)を令和2年と比べると、次のとおりです。

重視した事項 令和7年 令和2年
人員構成の歪みの是正 48.3% 43.8%
既存事業の拡大・強化 39.5% 42.0%
組織の活性化 31.7% 29.1%
新規事業分野への進出 4.3% 5.1%
新技術の導入・開発 1.3% 1.8%
その他 16.9% 17.3%
特に意識しなかった 2.2% 3.3%

※複数回答。出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」事業所調査「転職者の採用状況」

「人員構成の歪みの是正」が5年前より4.5ポイント上がり、「既存事業の拡大・強化」を上回って最多になりました。産業別では宿泊業・飲食サービス業56.7%、不動産業・物品賃貸業55.6%で高くなっています。事業を広げるための採用というより、年齢構成の偏りや欠員を埋めるための採用の比重が高まっていると読めます。

採用理由(3つまでの複数回答)は職種ではっきり分かれます。管理的な仕事と専門的・技術的な仕事では「経験を活かし即戦力になるから」(60.7%・64.1%)と「専門知識・能力があるから」(50.2%・51.2%)が上位です。一方、事務的な仕事(51.8%)、販売の仕事(54.6%)、サービスの仕事(60.8%)、生産工程等の仕事(59.4%)では、いずれも「離職者の補充のため」が最多でした。

転職者の賃金を決める際に考慮した要素(複数回答)は、「これまでの経験・能力・知識」59.2%、「年齢」35.3%、「賃金の世間相場」34.2%、「免許・資格」30.6%、「前職の賃金」27.0%、「学歴」12.0%の順でした。最も重視した要素でも「これまでの経験・能力・知識」が38.4%で最多、「賃金の世間相場」19.1%が続きます。この数字は、後述する転職者本人の賃金への不満と合わせて読む必要があります。

転職者に教育訓練を実施した事業所は82.6%で、令和2年の74.5%から8.1ポイント上がりました。実施した事業所のうち「計画的なOJT」79.8%、「OFF-JT」64.5%、「入職時のガイダンス」53.9%です。規模別では1,000人以上で97.5%、5から29人で79.8%と差があります。

今後3年間に転職者を採用する予定がある事業所は63.6%で、令和2年の53.3%から10.3ポイント増えました。採用予定のある事業所のうち「転職者を優先して採用したい」が40.0%、「新規学卒者を優先して採用したい」は9.8%、「どちらともいえない」が50.2%です。産業別の採用予定は情報通信業72.6%、建設業70.9%、運輸業・郵便業69.4%が高く、規模別では1,000人以上90.5%に対し5から29人は61.2%でした。新卒より中途を優先する事業所が4倍あることは、中小企業を含めた採用の主戦場が中途採用に移っていることを示していると考えられます。

3 転職者本人から見た転職――辞めた理由と、選んだ理由

転職者が直前の勤め先を辞めた主な理由は「自己都合」が81.3%で最多でした(令和2年76.6%)。ほかは契約期間の満了4.7%、出向4.0%、勧奨退職3.3%、定年1.6%、早期退職優遇制度1.0%、倒産・整理解雇0.7%です。自己都合で辞めた人の離職理由(3つまでの複数回答)の上位5項目を令和2年と比べます。

自己都合による離職理由 令和7年 令和2年
賃金が低かったから 25.5% 23.8%
会社の将来に不安を感じたから 25.2% 23.3%
満足のいく仕事内容でなかったから 24.7% 26.0%
労働条件(賃金以外)がよくなかったから 23.4% 28.2%
いろいろな会社で経験を積みたいから 22.2% 23.0%

※3つまでの複数回答。出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」個人調査「離職理由」。このほか「人間関係がうまくいかなかったから」18.9%、「安全や衛生等の職場環境が悪かったから」17.1%、「雇用が不安定だったから」13.5%などの項目があります。

男女別では、男性は「賃金が低かったから」29.6%、女性は「満足のいく仕事内容でなかったから」23.5%がそれぞれ最多でした。

見出しに使われやすいのは「賃金が1位」という点ですが、上位3項目は0.8ポイントの幅に収まっています。「賃金」だけでなく「将来性」「仕事内容」も同じ重さで見られていると読むのが正確です。一方、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」は28.2%から23.4%へと5年間で最も大きく下がりました。休日や労働時間の面での改善が進んだ結果、辞める理由としての重みが相対的に軽くなった可能性がありますが、この調査からその因果までは言えません。

次に、転職者が現在の勤め先を選んだ理由(3つまでの複数回答)です。

現在の勤め先を選んだ理由 令和7年 令和2年 一番の理由(令和7年)
仕事の内容・職種に満足がいくから 40.2% 41.0% 16.5%
自分の技能・能力が活かせるから 38.4% 36.0% 17.7%
労働条件(賃金以外)がよいから 23.1% 26.0% 10.7%
賃金が高いから 18.8% 15.1% 11.5%
転勤が少ない、通勤が便利だから 17.1% 20.8% 6.5%
キャリアアップできるから 16.6% (調査なし) 6.4%
会社に将来性があるから 8.4% 12.2% 2.8%

※3つまでの複数回答(一番の理由は単一回答)。「キャリアアップできるから」は令和2年調査では調査項目にありません。出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」個人調査「転職について」

辞める理由では「賃金」が1位なのに、選ぶ理由では「賃金が高いから」は18.8%にとどまり、「仕事の内容・職種」40.2%と「自分の技能・能力が活かせる」38.4%の半分以下です。一番の理由で見ても、「自分の技能・能力が活かせるから」17.7%、「仕事の内容・職種に満足がいくから」16.5%が上位で、「賃金が高いから」は11.5%です。求職者は賃金の高さだけで会社を選んでいるのではなく、「何をする仕事か」「自分の経験が活きるか」を先に見ていることがうかがえます。

ただし、賃金の重みが小さくなっているわけではありません。「賃金が高いから」は令和2年の15.1%から3.7ポイント上がり、一番の理由でも7.0%から11.5%へと伸びています。賃金で会社を選ぶ人は増えている。それでも仕事内容と技能の発揮には及ばない、というのが正確な読み方です。

もう1つ注目したいのは「会社に将来性があるから」です。辞める理由では「会社の将来に不安を感じたから」が25.2%で2位なのに、選ぶ理由としては8.4%にすぎず、令和2年の12.2%からむしろ下がっています。会社の将来性は、入社前の外からは見えにくく、入社後に見えてきてから辞める理由になる。そう読むのが自然だと考えられます。

4 転職活動の方法――求人サイトが伸び、ハローワークと縁故が減る

転職活動の方法(複数回答)は次のとおりです。

転職活動の方法 令和7年 令和2年
求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等 45.1% 39.4%
ハローワーク等の公的機関 29.6% 34.3%
縁故(知人、友人等) 22.2% 26.8%
民間の職業紹介機関 20.9% 14.8%
企業のホームページ 13.5% ―

※複数回答。「―」は本記事で令和2年の値を確認していない項目。出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」個人調査「転職について」

求人サイトと民間の職業紹介機関が伸び、ハローワークと縁故が減っています。ただし年齢で様相は変わります。55から59歳ではハローワーク等が40.4%で求人サイト等の36.0%を上回り、60から64歳でもハローワーク等39.0%、求人サイト等38.2%と並びます。65歳以上では縁故が37.6%で最多となり、ハローワーク等31.7%、求人サイト等25.6%が続きます。採用したい年齢層によって、有効な経路が違うということです。

5 入社後の満足度――「賃金」だけが突出して低い

満足度D.I.は、「満足」又は「やや満足」と答えた人の割合から「不満」又は「やや不満」と答えた人の割合を引いた値です。現在の勤め先における職業生活全体の満足度D.I.は44.0ポイントで、男45.8、女42.2、正社員43.3、正社員以外50.5でした。項目別は次のとおりです。

項目 満足度D.I. 満足・やや満足 不満・やや不満
通勤の便 58.0 70.0% 12.0%
仕事内容・職種 57.8 68.7% 10.9%
会社の規模・知名度 52.3 56.5% 4.2%
人間関係 48.7 62.1% 13.4%
安全や衛生等の職場環境 48.5 60.0% 11.5%
労働時間・休日・休暇 47.9 65.6% 17.7%
福利厚生 38.1 53.2% 15.1%
会社の将来性 35.3 49.1% 13.8%
役職 32.6 39.7% 7.1%
賃金 22.2 49.8% 27.6%

※満足度D.I.=「満足」「やや満足」の割合−「不満」「やや不満」の割合。出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」個人調査「転職について」

賃金の満足度D.I.は22.2ポイントで、2番目に低い「役職」32.6ポイントとも10ポイント以上の差があります。転職者の4人に1人以上(27.6%)が賃金に不満を持っている計算です。男女差も大きく、男27.2ポイントに対し女は16.7ポイントで、女性の30.7%が賃金に不満と答えています。就業形態別では、職業生活全体の満足度は正社員以外(50.5)が正社員(43.3)より高く、労働時間・休日・休暇の満足度でも正社員以外53.5に対し正社員46.0と差があります。賃金については正社員22.6、正社員以外21.8とほぼ同水準です。

第2章で見たとおり、事業所の約6割は転職者の賃金を「これまでの経験・能力・知識」で決めています。それでも入社後の賃金満足度が最も低いということは、会社が経験や能力を評価して決めたつもりの賃金が、本人にはそう受け止められていない可能性を示しています。決め方の問題というより、決めた理由が本人に伝わっていない問題だと考えられます。

6 採用と定着の実務ポイント――調査から導く5つの点検項目

この調査を自社に引き付けるなら、次の5項目です。いずれも調査の数字から直接導けるものに限っています。

点検1 求人票は「仕事内容」と「活かせる経験」を具体的に書いているか

転職者が会社を選ぶ理由の上位は「仕事の内容・職種」40.2%と「自分の技能・能力が活かせる」38.4%でした。求人票や募集要項に、担当業務、1日の流れ、求める経験、入社後に任せたい役割を具体的に書くことが、応募の質を高める近道です。なお、2024年4月以降は、求人の段階でも、労働契約の締結時にも、従事すべき業務と就業場所の「変更の範囲」の明示が求められています(職業安定法5条の3、労働基準法15条1項・同法施行規則5条1項1号の3)。仕事内容を具体的に書くことは、法令上の明示義務を満たすことと重なります。

点検2 中途採用者の賃金を「なぜこの額か」説明できるか

事業所の59.2%は「経験・能力・知識」で賃金を決めていますが、転職者の賃金満足度は最も低い水準です。前職の賃金や本人の交渉力で個別に決める運用は、既存社員との不均衡と、入社後の不満の両方を生みやすくなります。等級制度や中途採用時の格付け基準を整え、本人にも既存社員にも「なぜこの賃金なのか」を説明できる状態にしておくことをお勧めします。賃金規程に中途採用者の初任格付けの基準を置くことが出発点です。

点検3 「会社の将来性」を社員に言葉で伝えているか

離職理由の2位は「会社の将来に不安を感じたから」25.2%、入社後の満足度でも「会社の将来性」は35.3ポイントと下から3番目です。そして、選ぶ理由としての「会社に将来性があるから」は8.4%にすぎません。将来性は入社前には見えず、入社後に見えてから辞める理由になる。ならば、経営方針や事業計画を社員に伝える機会を意識的に設けることが、費用をかけずにできる定着策の1つです。

点検4 中途採用者にも計画的な教育訓練を用意しているか

転職者に教育訓練を実施した事業所は82.6%に上りますが、5から29人規模では79.8%にとどまります。中途採用者は「即戦力だから教えなくてよい」と扱われがちです。しかし、社内ルール、システム、人間関係といった会社固有の知識は、経験者であっても入社時に持っていません。入職時のガイダンスと計画的なOJTを、正社員か否かを問わず用意しておくことが早期離職の防止につながります。訓練費用については、人材開発支援助成金など公的な支援制度の活用も検討できます。

点検5 採用したい年齢層に合わせて経路を使い分けているか

全体では求人サイトと民間の職業紹介機関が伸びていますが、55歳以上ではハローワークが約4割、65歳以上では縁故が最多です。若年層と中高年層で経路を変えることが、費用対効果の面でも有効です。なお、民間の職業紹介事業者を利用するときは、厚生労働大臣の許可を受けた事業者かどうかを確認してください(職業安定法30条)。縁故採用を活用する場合も、紹介者の関係に頼りすぎず、労働条件の明示と入社後の教育訓練は他の経路と同じ水準で行う必要があります。

7 当法人の視点

この調査が示しているのは、賃金は「辞める理由」にはなるが「選ぶ理由」の中心ではない、という非対称です。辞める理由の1位は賃金、しかし選ぶ理由では仕事内容と技能の発揮が賃金の2倍。入社後に最も不満が集まるのは賃金。この3つを並べると、採用の訴求は仕事内容と活かせる経験を軸にし、定着の手当ては賃金の納得性と将来性の共有に置く、という役割分担が見えてきます。

当法人の見解

中小企業が中途採用で大手と競うとき、賃金の絶対額では勝ちにくいのが現実です。しかしこの調査は、求職者が先に見ているのは「何をする仕事か」「自分の経験が活きるか」であることを示しています。求人票の仕事内容を具体的に書き、面接で任せたい役割を伝え、入社後に「なぜこの賃金か」を説明できる。この3つは、賃上げ余力の乏しい会社でも今日から手を付けられます。

反対の見方もあります。人手不足が続く中では賃金の絶対水準が応募の入口を決めるのであり、仕事内容をいくら丁寧に書いても賃金が相場を下回れば応募は来ない、という考え方です。実際、「賃金が高いから」を選ぶ理由に挙げた人は15.1%から18.8%へ、一番の理由でも7.0%から11.5%へ増えており、賃金の重みは5年前より増しています。当法人もこの点は否定しません。ただ、賃金を相場水準まで引き上げたうえで、なお差がつくのは仕事内容の見える化と賃金の説明可能性です。相場並みの賃金は入口の条件であり、選ばれる理由にはならない。そう整理するのが、この調査の正確な読み方だと考えます。

簡易な確かめ方を1つ挙げます。直近1年に自社を辞めた社員3名と入社した社員3名について、退職面談と採用面接の記録から「辞めた理由」「選んだ理由」を1行ずつ書き出し、この調査の上位3項目と並べてみてください。自社の傾向が全国の数字と重なっていれば、本記事の5つの点検項目がそのまま使えます。ずれていれば、そのずれこそが自社固有の手を打つ場所です。記録が残っていなければ、まず退職面談と採用面接の記録を残すところから始める合図だと考えられます。

まとめ

令和7年転職者実態調査(2026年9月25日公表)で、自己都合で辞めた理由の1位は「賃金が低かったから」25.5%でしたが、「会社の将来に不安を感じたから」25.2%、「満足のいく仕事内容でなかったから」24.7%が僅差で続きました。転職者が会社を選ぶ理由は「仕事内容」「技能・能力を活かせる」が中心で、「賃金が高いから」は18.8%にとどまり、入社後の満足度では「賃金」だけが22.2ポイントと突出して低い結果でした。事業所側は「人員構成の歪みの是正」48.3%を重視して転職者を採用し、今後3年間に採用予定のある事業所の40.0%が「転職者を優先」と答えています。求人票の仕事内容の具体化、中途採用者の賃金決定ルールの整備、会社の将来性の共有、計画的な教育訓練、年齢層に応じた採用経路の使い分けの5項目を、自社の数字と照らして点検してください。

当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。中途採用を「欠員の穴埋め」で終わらせず、賃金規程と評価制度、入社後の育成までを1つの仕組みとして、経営者と一緒に整えてまいります。賃金規程や中途採用時の格付け基準の整備については、就業規則作成・改定支援のページもご覧ください。

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【根拠法令】

労働基準法15条1項(労働条件の明示)/労働基準法施行規則5条1項1号の3(就業の場所及び従事すべき業務とその変更の範囲)/職業安定法5条の3(求人の際の労働条件等の明示)/職業安定法30条(有料職業紹介事業の許可)

【参考判例】

本記事は統計調査の解説であり、特定の裁判例を扱っていません。

【出典・参考資料】

厚生労働省「令和7(2025)年『転職者実態調査』の結果を公表します」(報道発表資料、令和8年9月25日)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r07-houdou.pdf/厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/6-18c-r07.html(調査の概要 6-18c-r07-gaiyo.pdf/事業所調査「転職者の状況」6-18c-r07-1-01.pdf、「転職者の採用状況」6-18c-r07-1-02.pdf、「転職者に対する教育訓練の実施状況」6-18c-r07-1-03.pdf、「今後3年間の転職者の採用予定」6-18c-r07-1-04.pdf/個人調査「離職理由」6-18c-r07-2-02.pdf、「転職について」6-18c-r07-2-03.pdf)

【免責事項】

本記事は2026年9月時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。統計の数値は厚生労働省の公表資料(報道発表資料および概況の各PDF)から転記したものです。表の細目については原資料でご確認ください。数値の読み方と実務上の示唆には当法人の見解が含まれます。具体的な事案については、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

なお、紛争性のある事案の交渉代理および訴訟代理は、弁護士法72条により社会保険労務士の業務範囲外です(特定社会保険労務士による個別労働関係紛争のあっせん代理等の法定の例外を除きます)。当法人は、求人票・労働条件通知書の点検、賃金規程・評価制度の設計、入社後の教育訓練計画の整備の助言を担い、賃金や労働条件をめぐる紛争対応が必要な局面では提携する弁護士と連携して対応いたします。

この記事を書いた人

三重 英則(HIDENORI MIE)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員(特定社会保険労務士)

特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)

法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。