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昭和60年報告から41年、「労働者」の判断基準は見直されるのか 厚労省・労働基準法における「労働者」に関する研究会 第6回(令和8年7月17日開催)の議事録・「これまでの議論の整理(案)」を読む |
📌 本記事の要点 ・厚生労働省「労働基準法における『労働者』に関する研究会」(座長:岩村正彦氏)の第6回(令和8年7月17日開催)の議事録と配布資料が公表されました。 ・配布資料「これまでの議論の整理(案)」には、昭和60年報告以降の裁判例50件の分析結果が記載され、裁判所は「補強要素」(事業者性・専属性等)ではなく「使用従属性」を中心に労働者性を判断していることが確認されました。 ・プラットフォームワーカー実態調査(27者ヒアリング)を踏まえ、アルゴリズムによる「誘導」を判断要素にどう取り込むかが議論の焦点となっています。 ・「業務委託契約だから労基法は無関係」という理解は通用しません。契約の形式ではなく働かせ方の実態で決まる――この原則が50件の裁判例で裏付けられています。 |
| はじめに この研究会が、いま最も注目すべき労働法の議論である理由 |
社労士の実務は、突き詰めると「この人は労働者か、そうでないか」という一点から始まります。労働者であれば、労働時間規制がかかり、割増賃金が発生し、年次有給休暇を付与し、解雇には労働契約法16条の制約がかかり、労災保険が適用されます。労働者でなければ、そのいずれも原則として及びません。
この振り分けの基準となってきたのが、昭和60年(1985年)の「労働基準法研究会報告(労働基準法の『労働者』の判断基準について)」、通称「昭和60年報告」です。そして今、この昭和60年報告を41年ぶりに正面から見直す議論が、厚生労働省で進んでいます。
第6回研究会(令和8年7月17日開催)の議事録が、このほど厚生労働省ウェブサイトで公表されました。あわせて、第6回の配布資料である「これまでの議論の整理(案)」と、プラットフォームワーカーの実態調査報告書も公開されています。本記事では、当法人が厚生労働省の公表資料(議事録全文・整理案PDF・調査報告書概要)を直接確認したうえで、この研究会が何を議論しているのか、そして実務にどう跳ね返ってくるのかを整理します。
| 項目 |
内容 |
| 名称 |
労働基準法における「労働者」に関する研究会 |
| 開催開始 |
令和7年(2025年)5月2日(第1回) |
| 座長 |
岩村正彦氏 |
| 構成員 |
第6回議事録には、芦野・小畑・笠木・川田・島田・新屋敷・竹内・水町の各構成員(いずれも労働法等の研究者)の発言が記録されています |
| 第6回 |
令和8年7月17日(金)17:00〜19:00/中央合同庁舎5号館17階 専用第21会議室 議題:(1)プラットフォームワーカーの働き方等について(2)労働基準法における「労働者」について |
この研究会は、突然できたものではありません。系譜をたどると、@昭和60年(1985年)の昭和60年報告による労働者性判断基準の提示、A令和7年(2025年)1月の労働基準関係法制研究会報告書の取りまとめ、B同年5月の本研究会発足、という流れになります。
「これまでの議論の整理(案)」によれば、労働基準関係法制研究会の報告書は、プラットフォームワーカーの拡大や労務管理のデジタル化等の進展により「労働者性の判断の分かりにくさが増大し、予見可能性が低くなりつつある」との認識を示したうえで、「労働者性の判断基準に関して、引き続き専門的な研究の場を設けて総合的な検討を行うべきである」と提言しました。これを受けて本研究会が設置されています。【事実】
キーワードは「予見可能性」です。「後から裁判所が判断すれば分かる」では、実務は動けません。契約を結ぶ時点で当事者が判断できる基準が必要だ――この問題意識が研究会の核にあります。
研究会の検討事項【事実】 @ 労働基準法上の労働者性に関する事例・裁判例等や学説の分析・研究、プラットフォームワーカーを含む新たな働き方に関する課題や国際的な動向の把握・分析 A 労働基準法上の労働者性の判断基準の在り方 B 新たな働き方への対応も含めた労働者性判断の予見可能性を高めるための方策 |
「これまでの議論の整理(案)」によれば、研究会は次の作業を積み上げてきました。【事実】
(1)裁判例の分析――50件を抽出。昭和60年1月1日から令和6年12月31日までの期間に判決が下された、労働基準法等の労働者性が争点とされた裁判例から50件を抽出し、整理した資料を用いて議論しています。
(2)学説の整理。労働者性について一定の見解が示されている専門書・論文から関連部分を抜粋した資料を用いて議論しています。
(3)法曹専門家からのヒアリング。労使間の紛争実務に携わる法曹専門家2名から、訴訟・労働審判等における労働者性判断の実態・課題についてヒアリングを実施しています(第2回・非公開、議事要旨は公表済み)。
(4)国際動向の調査。ドイツ・フランス・イギリス・アメリカ合衆国およびEUを対象に、労働者概念、その拡張ないし類似の概念、プラットフォーム就業者に関する近時の裁判例・立法の状況を調査・議論しています。さらに、第113回ILO総会(令和7年6月2日〜13日)における「プラットフォームエコノミーにおけるディーセント・ワークに係る基準設定1回目討議」の状況についても議論しました。2回目の討議は第114回総会(令和8年)で行われることとされています。【事実】
| 【当法人の見解】ここは見落とせません。国際労働基準の策定が現在進行形で進んでいるということは、日本の議論が国内事情だけで完結しないことを意味します。 |
| 3 プラットフォームワーカー実態調査――27者へのヒアリング |
第6回の議題の柱となったのが、令和7年度AI等調査事業「プラットフォームワーカーの働き方等に関する調査」(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社実施)の報告書です。ヒアリングの実施期間は令和7年10月〜令和8年2月で、対象は業界団体5・労働組合1・事業者21(うち2事業者は議事要旨の確認を受けられなかったため報告書には不含)でした。【事実】
協力先の業界団体は、一般社団法人フリーランス協会、一般社団法人シェアリングエコノミー協会、一般社団法人日本フードデリバリーサービス協会、一般社団法人全国軽貨物協会、一般社団法人ITフリーランス支援機構の5団体、労働組合は全国コミュニティ・ユニオン連合会です。事業者の内訳は、業種横断型(プロフェッショナル人材マッチング)8、フードデリバリー等4、軽貨物等の輸送・配送2、システム開発等IT3、その他(家事代行・育児サービス・飲食サービス等)4となっています。【事実】
@ 契約形態は大きく2種類。ワーカーとクライアント(発注者)が直接契約するものと、事業者がクライアントから発注を受けてワーカーに再委託するものです。再委託型では、事業者・ワーカー間を「準委任契約」とする事例が確認され、その理由として、請負契約のような「完成責任」を個人に負わせることは過大な負担となること、納品物への評価ではなくより上流の工程でワーカーの知見を活用したいこと、報酬未払いなどの不利益に対し事業者が間に入り調整・保護できること、直接は断りにくい案件でも事業者を通じて辞退できることなどが挙げられています。【事実】
A マッチングの仕組み。案件をワーカーに(一斉に、または受託者が現れるまで個別に順番に)通知し、「早い者勝ち」で受注する仕組みとしている事例が確認されています。【事実】
B インセンティブとペナルティ。直接的なボーナスではないが、検索結果の上位に表示されやすくなる、高い時給のオファーが届きやすくなるなど、結果的にワーカーの利益につながり得る仕組みや、天候・注文が集中する時間帯・配達員が少ないエリア等によってインセンティブが加算され得る仕組みが確認されています。【事実】
C アルゴリズム管理・AIの利用。配達員の検索、配達予想時間の算出、報酬額の算定、最適な配達ルートの算出のほか、ワーカー向けの自己紹介文の自動生成、職務経歴書の添削・診断、クライアント向けの求人票の自動生成、PR文の作成補助などに活用されています。【事実】
D 業務中の関与。アプリが提示するルートはあくまで参考であるとする事例、アプリを通じてワーカーが事業者に業務の進捗状況を知らせる仕組みがある事例(連絡が強制か任意かは区別されていない)、業務の実施場所について必要に応じて事後的に確認を行うことは可能、ワーカーの任意で位置情報を提供することが可能とする事例が確認されています。【事実】
| 【当法人の見解】この調査結果を読んで印象的なのは、「指揮命令」と呼ぶべきかどうかが判然としない関与が、幾層にも積み重なっているという点です。ルート提示は「参考」、位置情報提供は「任意」、進捗連絡は「強制か任意か区別していない」。従来の「命令したか/していないか」という二分法では捉えきれない構造が、そこにあります。 |
公表された議事録から、実務家として押さえておくべき論点を抜き出します。以下の発言要旨は、いずれも当法人が議事録本文で確認したものです。【事実】
デジタル技術による管理について、水町構成員は「人による命令処分から監視に基づく誘導や決定に、決定の在り方、監視の在り方が大きくシフトしている」「命令からコントロール、命令から監視へという中で、これまでの労働者性の判断基準は人による命令が重視されてきたが、アルゴリズムによる誘導決定をどう判断要素に取り込んでいくかを考え直す必要がある」という趣旨の指摘をしています。
| 【当法人の見解】これは本質を突いた指摘です。かつての指揮命令は「これをやれ」という言葉でした。今は、アルゴリズムが提示する報酬額とマッチング順位が、事実上ワーカーの行動を決めていく。命令していないのに、結果は命令したのと変わらない――この構造をどう法的に評価するかが、まさに焦点です。 |
芦野構成員は、GPS等の仕組みについて、事業者側から見れば「働きやすいように用意しているもの」となる一方、働く側から見れば「自らを拘束し得るもの」と捉えられ得るという両面性を指摘し、「義務ではない」「ペナルティーはない」と説明されても、仕事の提案機会や収入への影響を働く側が意識し得ることを強調しました。
| (3)インセンティブ・ペナルティの多様性――島田構成員 |
島田構成員は、インセンティブやペナルティは内容が非常に多様であり、丁寧に見ていく必要があるとしたうえで、依頼受諾が給与に直接反映される仕組みであれば諾否の自由の欠如や指揮命令を推認させる事情になり得る一方、ユーザー評価が次のマッチングにつながる仕組みは、自らの才覚でビジネスチャンスを広げるという意味でむしろ事業者性に傾き得ると指摘しました。前掲の調査結果にあった「検索結果の上位に表示されやすくなる」仕組みは、まさにこの評価が分かれる領域に位置づけられます。
新屋敷構成員は、ペナルティ等を捉えて「これは指揮命令だ」という基準を示したとしても、プラットフォーム事業者側でアルゴリズム等の内容を調整して回避していくのではないかという懸念を示し、イギリスで実際にそのような動きがあると聞いている旨を述べています。評価が分かれ得るものをそのまま基準とすることの難しさの指摘です。
| 【当法人の見解】これは研究会が抱えるジレンマそのものです。予見可能性を高めるために基準を明確化すればするほど、その基準を回避する設計が可能になる。明確さと実効性が正面から衝突しています。 |
新屋敷構成員はさらに、労働者性の判断において予測可能性を高めるにあたり契約書の取扱い・位置づけを検討すべきであり、契約書に「これは業務の性質だから」と言わんばかりの内容が細かく整えられた場合に判断が揺れてくること、実態を捉えるために契約書・約款との関係をどう整理するかが今後の課題であることを指摘しました。これは社労士の実務に直結します(後述)。
| (6)昭和60年報告の位置づけ――竹内構成員・水町構成員・座長 |
竹内構成員は、調査結果を「単に昭和60年報告に当てはめて終わらせるのではなく、昭和60年報告ではあまり捉えていなかった就労の特徴を、今後の判断要素の在り方に考慮していくべき」とし、また「昭和60年報告がどのようにできたのか、その経緯を明らかにできれば今後の議論に資する」と述べました。水町構成員は、労基法9条の「使用」という概念の意味を、労基法の趣旨・構造と現在の働き方の実態に基づいて組み替えていくことを検討している旨を述べています。
岩村座長は締めくくりに際し、インセンティブを「指揮命令」と呼ぶことは言葉の表現上難しいとして「指揮命令という言葉が具体的に何を意味しているのかを議論した上でないと評価を導けない」こと、基本契約・個別契約の二段構えの契約関係のどちらを捉えて労働者性を考えるのかという問題があることを指摘し、次回以降、「これまでの議論の整理」を参照しながら個別の論点を議論していくとしました。【事実】
| 5 「議論の整理(案)」が明かした、裁判実務の実像 |
第6回配布資料「これまでの議論の整理(案)」には、裁判例50件の分析結果が記載されています。ここが本資料の白眉です。
昭和60年報告に示す労働者性の判断基準の枠組及び判断要素の重み付けが司法を含めた紛争の場面において参考とされ、一定程度機能していることが確認された 出典:これまでの議論の整理(案)38ページ【事実】 |
3つの最高裁判例では、昭和60年報告の枠組を用いると明確には言及されていないものの、同報告に示す判断要素に関する事情を確認したうえで労働者性判断を行っていることが確認されています。【事実】
昭和60年報告で「『労働者性』の判断を補強する要素」とされているものを主な判断要素として労働者性を判断しているものはほとんどないと考えられ、「使用従属性」に関する判断基準を中心に労働者性を判断している状況が確認された 出典:これまでの議論の整理(案)38ページ【事実】 |
つまり、事業者性の有無や専属性の程度といった「補強要素」は、実際にはあまり決め手になっていないということです。具体例として、保険契約の勧誘業務等に関する事例(裁判例30・株式会社MID事件)が挙げられています。この事案では、報酬は完全歩合制で所得税等の源泉徴収も社会保険・雇用保険への加入もなく、業務に必要な物品(自動車、パソコン、携帯電話、チラシ等)を自らの費用で準備していたという事実を認めつつ、指示を拒絶することはできなかったこと(諾否の自由)、業務の遂行について指揮監督を受けていたこと、勤務時間・勤務場所を管理されていたこと(拘束性)を理由に、労働者性を肯定しています。【事実】
| 【当法人の見解】この分析は、実務に対する強烈なメッセージを含んでいます。「業務委託契約にして、源泉徴収せず、社会保険にも入れず、道具も自前にさせた」からといって、労働者性は否定されない。裁判所が見ているのは、そこではないのです。 |
法曹専門家からのヒアリングでは、裁判所は業務遂行上の指揮監督の有無や勤務場所・勤務時間に関する拘束性、事業者性を重視しているとの指摘とともに、裁判官によっては「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由」を重視したうえで、契約書等に諾否の自由がある旨規定されているだけで諾否の自由を肯定し、就労実態を踏まえずに労働者性を否定していることもあるとの指摘がありました。また、司法による労働者性判断では諾否の自由、業務遂行上の指揮監督の有無、報酬の労務対償性を特に重視しているとの意見も示されています。【事実】
| 【当法人の見解】「契約書に諾否の自由があると書いてあるだけで、実態を見ずに労働者性を否定する裁判官もいる」という実務家の証言は、率直に言って衝撃的です。契約書の書きぶりが結論を左右してしまう場面が現実にあるということであり、これこそ研究会が「予見可能性」の名の下に是正しようとしている歪みの一つと考えられます。 |
| (4)「経済的従属性」をどう扱うか――最大の対立軸 |
「議論の整理(案)」で議論が割れているのが、「事業組織への組み入れ」「契約内容の一方的・定型的決定」といった労働組合法上の労働者性の判断要素や「経済的従属性」を、労働基準法上の判断にも取り込むべきかという論点です。【事実】
取り込む方向の意見として、労基法にも交渉力の弱さ(経済的従属)を捉えた規制が含まれるため「経済的従属性」を補足的に扱うことも考えられるとの意見があり、その理由として「労働時間規制や労働安全衛生については人的従属性が強いから保護を及ぼすという性質があるが、解雇や賃金については、一般の独立自営業者とは違って交渉力が弱いということを捉えて保障する性質になっている。混在しているとすれば、人的従属性のみにこだわる必然性はない」との構成員意見が記載されています。【事実】
慎重論としては、「経済的従属性」は労働者性否定の材料として主張されうるものであり、内容を精査しなければかえって労働者保護に反するような帰結を招きかねないとの意見があり、イギリスのUber事件最高裁判決が、経済的従属性それ自体を労働者概念の判断基準としないと明確に述べていることも紹介されています。【事実】
| 【当法人の見解】「経済的に依存しているから労働者だ」という論法は、裏返せば「経済的に依存していないから労働者ではない」という論法を許してしまう。副業でフードデリバリーに従事する会社員は経済的には依存していない――だから労働者ではない、と。この危険性の指摘は、きわめて実務的な洞察だと思います。 |
| ✓ (1)「契約書の形式」に頼った設計は、いずれ立ち行かなくなる【事実】 裁判例分析が示したとおり、源泉徴収の有無・社会保険加入の有無・道具の自弁といった外形は、労働者性の決め手になっていません。決め手は諾否の自由、指揮監督、拘束性、報酬の労務対償性です。顧問先から「業務委託契約にすれば労基法は関係ないですよね」と問われたら、「契約書ではなく、実際の働かせ方で決まります」と伝えるべきです。従来からの原則ですが、今回の分析はそれを50件の裁判例で裏付けた点に意味があります。 |
| ✓ (2)ただし「契約書の書きぶりが効いてしまう」現実も直視する【事実】 契約書に諾否の自由が明記されているだけで実態を見ずに労働者性を否定する運用が現実にあると、法曹実務家が証言しています。「契約書は関係ない」と言い切ることも、「契約書さえ整えれば大丈夫」と言うことも、どちらも正確ではありません。契約書は影響を持つが、それに依存した設計はリスクが高い――この微妙な線を顧問先に説明する必要があります。【当法人の見解】 |
| ✓ (3)アルゴリズム管理を使う顧問先は、いまから記録を残す【当法人の見解】 配車・マッチング・報酬算定にアルゴリズムを使っている顧問先があれば、@どの範囲を人が判断し、どこからアルゴリズムが決めているのか、Aインセンティブが報酬に直結するのか、マッチング機会に影響するだけなのか、B位置情報の取得が任意なのか事実上必須なのか、を整理しておくことをお勧めします。研究会の議論は、まさにこれらを判断要素として取り込むかどうかを検討する方向で進んでいます。 |
| ✓ (4)フリーランス新法・安衛法改正との「二段構え」を意識する【事実】 「議論の整理(案)」は、労働者性判断の周辺領域における国内の動きとして、@フリーランス・事業者間取引適正化等法(令和5年法律第25号、令和6年11月施行)による取引条件明示義務・報酬減額等の禁止・ハラスメント相談体制整備等、A労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)による、労働者と同じ場所で働く個人事業者等の労働災害防止対策への取り込み、の2つを挙げています。日本の政策は「労働者性の線引きを動かす」のではなく「労働者でない人にも必要な保護を個別に及ぼす」方向で先に動いてきましたが、研究会の議論はそのうえでなお労基法の入口そのものをどうするかを問うものであり、射程はより深いと言えます。 |
「議論の整理」は現時点で「(案)」であり、確定していません。資料には、第4回(令和7年10月29日開催)までの議論をまとめた草案を基に、第5回(令和8年1月28日開催)、第6回、およびその後の研究会(開催回・日付は資料上空欄)で議論して取りまとめる旨が記載されており、最終的な取りまとめ時期は現時点では不明です。【事実】座長が指揮命令概念の内実や二段構えの契約関係の検討を次回以降の論点として挙げていること、ILO総会での2回目討議が令和8年中に予定されていることを踏まえると、これらの動向を見ながらの取りまとめになる可能性があります。【推測】
| 7 まとめ――「労働者とは誰か」が、41年ぶりに問い直されている |
昭和60年報告が示された1985年、プラットフォームもアルゴリズムもスマートフォンも存在しませんでした。それから41年、研究会が直面しているのは単なる基準の微調整ではありません。アルゴリズムによる誘導は指揮命令か。マッチング機会への影響はペナルティか。経済的従属性は保護の理由になるのか、それとも保護を外す口実になるのか。基準を明確にすれば、それを回避する設計が生まれるだけではないか。いずれも簡単な答えのない問いです。
顧問先に業務委託を勧める場面、フリーランスとの契約書を確認する場面、そして「この人、労働者ですか」と問われる場面――そのすべてに、この研究会の結論は跳ね返ってきます。議事録が公表されるたびに目を通しておく価値のある、数少ない検討会の一つだと当法人は考えます。【当法人の見解】
業務委託・フリーランス活用の労働者性リスク診断は当法人へ 契約書のリーガルチェックだけでなく、実際の働かせ方(指揮監督・拘束性・報酬設計)まで踏み込んだリスク評価を行います。 IPO準備・M&Aデューデリジェンスにおける労働者性論点にも対応しています。
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・労働基準法第9条(定義)、労働契約法16条(解雇) ・厚生労働省「第6回労働基準法における『労働者』に関する研究会 議事録」(令和8年7月17日開催) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74078.html ・厚生労働省「労働基準法における『労働者』に関する研究会 第6回資料」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74075.html ・厚生労働省「これまでの議論の整理(案)」(第6回研究会 資料2・裁判例50件の分析結果を含む一次資料) https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001725187.pdf ・厚生労働省「令和7年度AI等調査事業(プラットフォームワーカーの働き方等に関する調査)報告書概要」(第6回研究会 参考資料1) https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001725192.pdf ・厚生労働省「労働基準法における『労働者』に関する研究会」(開催状況一覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_558547_00032.html ・厚生労働省「第1回労働基準法における『労働者』に関する研究会 議事録」(令和7年5月2日開催) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58484.html ※上記URLはいずれも本記事執筆時点(2026年8月6日)で当法人がアクセスし内容を確認したものです。 |
※本記事は2026年8月6日時点で厚生労働省が公表している資料に基づき作成しています。本記事で紹介した「これまでの議論の整理」は審議中の「案」であり、最終的な取りまとめの内容は変更される可能性があります。 ※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別具体的な事案に対する法的助言ではありません。労働者性の判断が問題となる個別事案については、必ず社会保険労務士または弁護士にご相談ください。 |
WRITTEN BY 三重 英則(みえ ひでのり) 社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員 特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)
法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。 |
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