トップ
事務所案内
お問合せ
労務コンテンツ一覧
サービス案内
人事労務ニュース
リーフレット
リンク先
IPO労務監査・改善
M&A労務監査
労働問題解決
高難度業務対応
就業規則作成・改定
給与監査顧問
給与計算代行
手続代行・手続監査
お知らせ
作成日:2026/06/04
外国人雇用管理指針の見直し ― 不法就労防止を「事業主の責務」へ
法改正解説/外国人雇用

外国人雇用管理指針の見直し
― 不法就労防止を「事業主の責務」へ

2026年6月4日 労政審分科会了承/6月以降順次適用 ― 不法就労助長罪の厳罰化(2026年6月14日施行予定)と併せて押さえるべき実務対応

📌 この記事の要点

● 2026年5月15日、厚生労働省は労働政策審議会の分科会で外国人雇用管理指針の見直し案を提示し了承を得た。2026年6月以降、順次適用される。

● 見直しの最大のメッセージは、不法就労防止を「事業主の責務」として明確化したこと。在留カード確認・届出・日本語学習機会の整備が事業主に改めて求められる。

● 指針それ自体に罰則はないが、その背後にある不法就労助長罪(入管法73条の2)は2026年6月14日施行予定の改正で大幅に厳罰化される。

● 2027年4月施行の育成就労制度を見据え、外国人雇用は「人材戦略」へと位置づけを変える必要がある。当法人は、顧問先のコンプライアンス対応と人材戦略の両立を伴走支援する。

はじめに ― 「うちは外国人を雇っていないから関係ない」では済まされない

外国人労働者数は、厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」によれば、2024年10月末時点で2,302,587人に達し、前年比12.4%増(約25万人増)と統計開始(2007年)以降で最大の伸び幅を記録しました。コンビニ、飲食、建設、製造、介護、農業――いまや外国人材なしには成り立たない現場が全国に広がっています。

こうした流れの中、2026年5月15日、厚生労働省は労働政策審議会の分科会において、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(外国人雇用管理指針)の見直し案を示し、了承を得ました。今回の見直しは、不法就労の防止を事業主の責務として明確に位置づけ、雇入れ・離職時の届出の徹底や在留カードの確認、日本語学習機会の提供などを改めて求める内容で、2026年6月以降、順次適用されます。

当法人では、近年、顧問先から「外国人を採用したいが何を整えればよいか」「在留資格の確認はどうすればよいか」というご相談を受ける機会が急増しています。本記事では、この指針見直しの内容を整理し、2026年6月14日施行予定の不法就労助長罪の厳罰化、および2027年4月施行予定の育成就労制度も見据えながら、企業がいま押さえるべき実務対応を、当法人の視点から解説します。

1.そもそも「外国人雇用管理指針」とは何か

正式名称は、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」です。これは、労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)第7条に基づき厚生労働大臣が定める告示で、事業主が外国人労働者を雇用する際に守るべき・努めるべき事項を定めたものです。

指針が定める主な事項

● 募集・採用の際の国籍を理由とする差別の禁止、公平な採用選考

● 労働条件の明示(母国語等での説明への配慮)

● 適正な労働時間管理・賃金支払い・安全衛生の確保

● 社会保険・労働保険の適用

● 解雇・雇止め時の再就職支援

● 外国人雇用状況の届出(ハローワークへの届出義務)

重要なのは、この指針が「外国人だから特別扱いしてよい/悪い」という話ではなく、日本人と同様に労働関係法令を適用したうえで、言語・文化の違いに配慮して適切に雇用管理せよという枠組みである点です。今回の見直しは、この既存の枠組みを、不法就労防止の観点から一段強化するものと位置づけられます。

2.今回の見直しの3つの柱

柱@ 不法就労防止を「事業主の責務」として明確化

今回の見直しの最大のメッセージは、不法就労の防止を事業主の責務として明確に位置づけたことです。

不法就労とは、概ね次の3類型を指します。
@ 在留資格を持たない外国人を働かせること
A 在留資格で認められた範囲を超えて働かせること(例:留学生を資格外活動許可の時間を超えて働かせる)
B 就労が認められない在留資格の人を働かせること

ここで当法人が顧問先に必ずお伝えしているのが、「不法就労助長罪」(出入国管理及び難民認定法73条の2)の存在です。事業主が外国人を不法就労させた場合、刑事罰の対象となります。しかも、「知らなかった」では免責されません。在留カード等の確認を怠ったことに過失がある場合には、処罰を免れないのが原則です(同条2項参照)。今回の指針見直しは、この「事業主の確認責任」を改めて強く打ち出したものといえます。

柱A 雇入れ・離職時の届出義務の徹底

事業主には、外国人を雇い入れたとき・離職したときに、その氏名・在留資格・在留期間等をハローワークに届け出る義務(外国人雇用状況の届出。労働施策総合推進法28条)があります。今回の見直しでは、この届出を確実に行うよう運用の徹底が求められました。

罰則にも注意が必要です。届出を怠ったり、虚偽の届出をしたりした場合には、30万円以下の罰金が科され得ます(労働施策総合推進法40条1項2号)。「うっかり届け出ていなかった」では済まされません。

なお、届出にあたっては、雇入れ・離職の際に在留カード等で在留資格・在留期間を確認することが前提となります。在留カードの真偽確認(出入国在留管理庁の在留カード等番号失効情報照会サイトの活用、専用アプリの使用等)も、不法就労を防ぐうえで実務上きわめて重要です。

柱B 日本語学習機会の提供(努力義務)と育成就労制度への対応

見直しでは、外国人労働者およびその家族に対する日本語学習の機会を設けることが、事業主の努力義務として言及されました。

さらに、2027年4月施行予定の「育成就労制度」で働く外国人が、目標とする関連技能や日本語能力を習得できるよう、事業主が取り組むことも求められています。育成就労制度は、現行の技能実習制度を発展的に解消し、「人材確保」と「人材育成」を目的に掲げる新制度です。技能と日本語能力の段階的な習得が制度の根幹に据えられているため、受入れ事業主には、これまで以上に計画的な育成・キャリア形成支援が求められます。

3.【法改正比較】不法就労助長罪の厳罰化(2026年6月14日施行予定)

指針見直しと併せて、企業経営者が必ず押さえるべきなのが不法就労助長罪の厳罰化です。2024年6月14日公布の改正入管法(令和6年法律第60号)により、罰則が大幅に引き上げられ、2026年6月14日に施行される予定です。改正前後を整理すると、以下のとおりです。

項目 改正前(現行) 改正後(2026年6月14日施行予定)
自由刑 3年以下の拘禁刑 5年以下の拘禁刑
罰金刑 300万円以下の罰金 500万円以下の罰金
併科 可(上限引上げ後の額で併科)
過失犯処罰 「知らないこと」に過失があれば処罰対象(変更なし) 同左(変更なし)
両罰規定 法人にも罰金刑(入管法76条の2) 同左(上限引上げ後の罰金額が適用)

※ 2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に統一されました。
※ 罰金刑との併科が認められているため、最大で「5年以下の拘禁刑+500万円以下の罰金」が同時に科される可能性があります。
※ 改正の背景には、育成就労制度における転籍自由化に伴う悪質ブローカーの介入リスクへの対応があります。施行日は今後の政令により最終確定されますので、最新情報は出入国在留管理庁・厚生労働省の公式発表でご確認ください。

✓ 当法人からの注意喚起

罰則の上限引上げそのものよりも、「過失でも処罰される」点が改正前後を通じて変わらないことが重要です。在留カード未確認、有効期限の管理漏れ、資格外活動許可の範囲確認の懈怠などは、すべて「過失」と評価され得ます。中小企業の経営者から「ブローカーに任せていた」「本人が大丈夫と言ったから」というお話を伺うことがありますが、これらは抗弁になりません。

4.適用時期と押さえるべきスケジュール

項目 内容 時期
指針見直し案の了承 労働政策審議会分科会で了承 2026年5月15日
改正指針の適用 順次適用開始 2026年6月以降
不法就労助長罪の厳罰化 5年以下の拘禁刑/500万円以下の罰金へ引上げ 2026年6月14日(予定)
育成就労制度の施行 技能実習制度を発展的に解消し新制度へ 2027年4月(予定)

指針はあくまで「事業主が適切に対処するための指針」であり、それ自体に直接の罰則があるわけではありません。しかし、指針が前提とする届出義務違反(30万円以下の罰金)や、不法就労助長罪(厳罰化後:5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金)といった法令上の罰則は厳然と存在します。指針見直しは、これら法令遵守の重要性を改めて事業主に促すものと理解すべきです。

5.企業・労働者への影響

企業(事業主)への影響

最大の影響は、外国人雇用に関するコンプライアンス対応の負担が一段と重くなることです。具体的には、採用時・離職時の在留カード確認と真偽チェックの徹底、ハローワークへの届出の確実な履行、資格外活動許可の範囲(留学生の週28時間以内等)の管理日本語学習機会の提供に向けた体制づくりが、いずれも事業主の責務として明確化されます。

特に、留学生アルバイトを多く雇用する飲食・小売・コンビニ業界、技能実習生・特定技能外国人を受け入れる製造・建設・農業・介護業界では、対応の巧拙が重大な刑事リスクの分かれ目になります。厳罰化後は、罰金額の上限が500万円に達するため、両罰規定により法人にも同額の罰金が科され得ることを踏まえれば、経営判断としても看過できない水準です。

労働者(外国人)への影響

外国人労働者にとっては、適正な雇用管理の下で働ける環境が整うことがメリットです。届出の徹底により、離職時のハローワークによる再就職支援も受けやすくなります。日本語学習機会の提供は、技能習得とキャリア形成、ひいては日本社会への定着を後押しすることが期待されます。

6.当法人が顧問先にお伝えしている実務対応

(1) 在留カード確認の「型」を作る

外国人を採用する際は、@在留カードの原本確認、A在留資格・在留期間・就労制限の有無の確認、B在留カード番号の失効情報照会、Cコピーの保管という一連の手順を、採用フローに組み込むことを推奨しています。留学生の場合は資格外活動許可(週28時間以内等)の確認が必須です。確認手順を「型」として標準化することが、属人的な確認漏れを防ぐ最も確実な方法です。今回の指針見直しでは、偽造の有無が確認しやすい専用アプリの活用も適切と指摘されており、当法人ではアプリ導入の検討も併せてお勧めしています。

(2) 雇入れ・離職時の届出を漏らさない仕組みづくり

雇用保険の被保険者である外国人は雇用保険の資格取得・喪失届と兼ねて、被保険者でない外国人は専用の届出様式(様式第3号)で、ハローワークに届け出ます。入社・退職の手続きフローに「外国人雇用状況届出」を明示的に組み込むことが、届出漏れ(30万円以下の罰金リスク)を防ぐうえで実務上の要諦です。当法人の労務手続代行業務でも、外国人従業員については別途のチェック項目を設けて対応しています。

(3) 「知らなかった」では済まないことを経営者に理解いただく

不法就労助長罪は、過失(確認を怠った場合)でも処罰対象になり得る重い罪です。「本人が大丈夫と言ったから」「仲介業者に任せていたから」は通用しません。経営者の方には、在留資格の確認は事業主自身の責任であることを、改正前後の罰則を比較しながら明確にお伝えしています。2026年6月14日以降は罰則の上限が5年・500万円に引き上げられる見込みであり、リスクの重みが従来とは比較になりません。

(4) 育成就労制度を見据えた中長期の人材戦略を提案する

2027年4月施行予定の育成就労制度は、外国人材を「使い捨て」ではなく「育てて定着させる」方向への転換です。技能・日本語能力の習得支援、キャリアパスの提示、生活支援を含めた受入れ体制の設計を、いまのうちから検討しておくことが望ましいといえます。これは単なる法令対応を超えた、人手不足時代の経営戦略そのものであり、当法人では顧問先と中長期的な視点で人材戦略の設計を進めています。

(5) 労働関係法令は「日本人と同じ」が大原則

外国人だからといって、最低賃金を下回る賃金、過酷な長時間労働、社会保険未加入が許されるわけでは決してありません。労働基準法・最低賃金法・社会保険諸法は国籍を問わず適用されます。むしろ言語・文化の壁により権利侵害が見えにくくなりやすい構造があるため、外国人材の労務管理においては、適正な労働条件の確保を社外の第三者として当法人が監査的にチェックする意義は大きいと考えています。

おわりに ― 「コンプライアンス」と「人材戦略」の両立を

今回の外国人雇用管理指針の見直しは、新しい義務を一から創設するというより、既に存在する事業主の責任(在留資格の確認、届出、適正な雇用管理)を、不法就労防止の観点から改めて明確化・徹底するものです。しかし、その背後には、2026年6月14日施行予定の不法就労助長罪の厳罰化(5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金)や、現行の届出義務違反(30万円以下の罰金)という、決して軽くない罰則が控えています。

2027年4月の育成就労制度のスタートを目前に控え、外国人雇用は「コスト削減の手段」から「育成・定着を前提とした人材戦略」へと、その位置づけを大きく変えようとしています。コンプライアンスリスクを確実に回避しつつ、外国人材を戦力として育て、定着させる――この両立こそが、これからの労務管理の中核テーマです。

当法人は、経営理念「顧客のために」のもと、ミッションである「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」を実践し、外国人雇用におけるコンプライアンス対応から育成就労制度を見据えた中長期の人材戦略まで、企業の実情に即した伴走支援を提供しています。ご不明な点や個別のご相談がございましたら、お気軽に当法人までお問い合わせください。

外国人雇用・労務管理のご相談はこちら ▶

【根拠法令・参考情報】

● 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第7条、第28条、第40条

● 出入国管理及び難民認定法 第73条の2、第76条の2

● 出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)

● 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(厚生労働省告示)

● 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」(2025年1月31日公表)

● 報道:東京新聞「外国人雇用巡る指針見直し 届け出徹底、適切管理を」(2026年5月15日)ほか

【免責事項】本記事は、2026年5月時点で公表されている公的情報および報道に基づき、一般的な解説を行うものです。改正指針の正式な内容・適用時期、各様式の詳細、不法就労助長罪の厳罰化規定の施行日確定等については、最新の厚生労働省告示・リーフレットおよび管轄ハローワーク・出入国在留管理庁の取扱いを必ずご確認ください。個別事案への適用については、必ず弁護士・社会保険労務士等の専門家へ個別にご相談ください。

執筆者

三重 英則(みえ ひでのり)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員

特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員

「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」をミッションに、IPO労務監査、給与監査、就業規則の作成・改訂、労働紛争解決、外国人雇用を含む高難度の労務管理まで、企業の実情に即した伴走支援を提供しています。