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作成日:2026/06/03
障害者法定雇用率「2.7%」へ ― 残り4週間でやるべきこと
法改正対応・実務解説
障害者法定雇用率「2.7%」へ ― 残り4週間でやるべきこと
― 対象37.5人以上、除外率引下げ、カウント方法の変更まで一気通貫で整理
2026年6月3日 | 社会保険労務士法人T&M Nagoya

📌 この記事のポイント

  • 2026年7月1日、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げ。雇用義務の対象事業主も常時雇用労働者37.5人以上へ拡大
  • 2025年4月の除外率10ポイント引下げと組み合わさり、建設業・運送業・医療・介護・保育などの対象業種では「ダブルの影響」で雇用義務人数が増える
  • 2026年6月1日の障害者雇用状況報告(ロクイチ報告)は2.5%基準で行う。7月から2.7%適用となるタイミングの取り違いに要注意
  • 当法人の実務感覚として、新たに対象となる従業員37.5人以上40人未満の中小企業ほど、自社の対象該当性を把握できていないケースが目立つ

2026年7月1日、民間企業の障害者の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられます。本記事を執筆している2026年5月25日時点で、施行まで残り約6週間。多くの中小企業にとって、いよいよ「待ったなし」の局面です。

この引き上げは、2023年に決定された段階的引き上げ計画の最終ステップにあたります。同時に、雇用義務の対象となる事業主の範囲も「常時雇用労働者37.5人以上」へ拡大され、これまで対象外だった企業が新たに義務の対象に加わります。さらに、法定雇用率の引き上げと前後して、除外率の引下げ障害者のカウント方法の変更など、関連する制度改正も相次いでいます。

本記事では、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク発行のリーフレット「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」(LL080401障01)の公表内容に基づいて変更点を正確に整理し、当法人が顧問先と進めている実務対応の全体像を解説します。

1.法定雇用率引上げの全体像 ― 段階的引上げの最終ステップ

民間企業の法定雇用率と対象事業主の推移(比較表)

厚生労働省リーフレットに示された改正前後の推移は、次のとおりです。

区分 令和5年度
(改正前)
令和6年4月〜 令和8年7月〜
(2026年7月1日施行)
民間企業の法定雇用率 2.3% 2.5% 2.7%
対象事業主の範囲
(常時雇用労働者数)
43.5人以上 40.0人以上 37.5人以上
国・地方公共団体等の
法定雇用率
2.6% 2.8% 3.0%
都道府県等の
教育委員会の法定雇用率
2.5% 2.7% 2.9%

法定雇用率2.7%が適用されると、常時雇用労働者37.5人につき1人の障害者雇用が義務付けられる計算になります(37.5人×2.7%=約1人)。これまで「従業員40人未満だから雇用義務はない」と整理していた従業員37.5人以上40人未満の企業が、2026年7月から新たに義務の対象に加わる点に特に注意が必要です。

💡 「常時雇用する労働者数」のカウント方法

「常時雇用する労働者数」には、週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者も0.5人としてカウントします。自社の対象該当性を判断するには、フルタイム職員・パート職員・有期契約職員すべてを正確に集計する必要があります。「うちは正社員ばかりだから関係ない」と早合点せず、短時間労働者を含めた頭数の確認から始めることが第一歩です。

2.「6月1日報告」と適用タイミングの取り違いに要注意

実務上、特に注意したいのが毎年6月1日時点の障害者雇用状況のハローワークへの報告(いわゆる「ロクイチ報告」)との関係です。リーフレットには次のとおり明記されています。

令和8年6月1日時点の報告では、法定雇用率2.5%での不足有無などを確認します。

つまり、2026年6月1日のロクイチ報告は、まだ引き上げ前の2.5%を基準に行うということです。法定雇用率2.7%が適用されるのは2026年7月1日以降であり、6月1日報告の時点では2.5%基準で不足を判定します。

⚠ 顧問先からの問い合わせが急増するポイント

「7月に上がるなら6月報告も2.7%で計算するのでは?」という混同が極めて起きやすいタイミングです。当法人では、顧問先には「6月1日報告は2.5%基準、7月から2.7%適用」とシンプルに伝えるようにしています。

3.関連改正@ ― 除外率の引下げ(2025年4月施行済)と「ダブルの影響」

障害者の雇用が一般的に困難と認められる業種について、雇用義務を軽減する「除外率制度」があります。この除外率が、2025年4月1日から各業種ごとにそれぞれ10ポイント引下げられました。これまで除外率が10%以下であった業種は、除外率制度の対象外となっています。

引下げ後の主な除外率(2025年4月1日施行)

除外率 主な業種
5% 非鉄金属第一次製錬・精製業、貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く)
10% 建設業、鉄鋼業、道路貨物運送業、郵便業(信書便事業を含む)
15% 港湾運送業、警備業
20% 鉄道業、医療業、高等教育機関、介護老人保健施設、介護医療院
25% 林業(狩猟業を除く)
30% 金属鉱業、児童福祉事業
45% 道路旅客運送業、小学校
50% 幼稚園、幼保連携型認定こども園
70% 船員等による船舶運航等の事業

除外率が下がると、雇用すべき障害者数を算定する際に「除外」される労働者数が減るため、実質的に雇用義務人数が増えます。建設業・運送業・医療・介護・保育など、除外率設定業種を経営している企業では、法定雇用率2.7%への引き上げと除外率10ポイント引下げの「ダブルの影響」を必ず試算し、必要な雇用数を再計算する必要があります。

4.関連改正A ― 障害者のカウント方法の拡充

障害者雇用率の算定における障害者のカウント方法も、近年継続的に拡充されています。法定雇用率の達成が難しい企業にとっては、活用次第で大きな選択肢となります。

(1) 精神障害者の算定特例の延長

週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇入れからの期間等に関係なく「1カウント」として算定できます(本来は0.5カウントのところを特例で1カウント)。

(2) 週20時間未満の障害者のカウント新設(2024年4月施行済)

週所定労働時間が10時間以上20時間未満精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者について、雇用率上「0.5カウント」として算定できるようになりました。フルタイムや週20時間以上での就労が難しい障害者にも雇用の門戸を広げる狙いです。

💡 当法人の実務感覚 ― 短時間雇用の活用提案

中小企業の経営者からは「フルタイムで障害のある方に働いていただくのは難しい」という声をよくいただきます。週10〜20時間という超短時間雇用でも雇用率にカウントできるようになったことで、企業は「短時間からの雇用」という現実的な選択肢を持てるようになりました。法定雇用率2.7%の達成が見通せない顧問先には、この超短時間雇用の活用を含めた提案を行うのが当法人のスタンスです。

5.障害者雇用納付金・調整金 ― 年度途中の率切り替えに注意

リーフレットのQ&Aでは、納付金の算定についても明確に示されています。令和8年度分の障害者雇用納付金(申告期間:令和9年4月1日〜同年5月17日)については、次のとおり取り扱われます。

期間 算定に用いる法定雇用率
令和8年6月以前 2.5%
令和8年7月以降 2.7%

つまり、2026年度は年度の途中(7月)で法定雇用率が変わるため、6月以前と7月以降で異なる率を用いて計算することになります。納付金の対象となる常時雇用労働者100人超の企業では、この年度途中の率の切り替えを踏まえた申告実務に備える必要があります。

法定雇用率未達成の場合、不足1人あたり原則月5万円の納付金が発生する一方、超過達成には調整金・報奨金が支給されます。

6.強化された事業主支援策 ― 「義務」を「戦力化」に転換する

障害者雇用は「義務だから仕方なく」ではなく、適切な支援を活用すれば戦力化につながります。当法人が顧問先に提案している主な支援策は次のとおりです。

  • 障害者雇用相談援助事業(2024年4月〜):障害者雇用に関する相談援助を行う事業者から、原則無料で雇入れ・雇用継続に必要な雇用管理の相談援助を受けられる
  • 加齢に対応した助成:加齢により職場適応が難しくなった障害者に対する職務転換、能力開発、人員配置、設備設置等への助成
  • 障害者介助等助成金の拡充:雇用管理のための専門職・能力開発担当者の配置、介助者等の能力開発経費への助成追加
  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)助成金の拡充:助成単価・支給上限額・利用回数の改善
  • 職場実習・見学の受入れ助成の新設

これらは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)等を通じて利用できます。単なる手続代行を超え、これらの支援策を組み合わせて提案することが、当法人の伴走支援の一つの形です。

7.施行までの6週間でやるべきこと ― 当法人のチェックリスト

最後に、施行までの約6週間で経営者・人事担当者が確認すべき事項を整理します。

  1. 対象該当性の確認 ― 常時雇用労働者37.5人以上か。これまで対象外だった37.5〜40人未満の企業が新たに義務対象に入らないかをまず確認
  2. 必要雇用数の再計算 ― 法定雇用率2.7%+除外率10ポイント引下げの影響を反映し、2026年7月以降に必要な障害者雇用数を算定
  3. 現状の雇用率の把握 ― 現在の雇用障害者数(カウント方法の特例を含む)を正確に把握し、2.7%基準での過不足を見える化
  4. 6月1日報告の準備 ― 2026年6月1日のロクイチ報告は2.5%基準で行うことを確認
  5. 採用・定着計画の策定 ― 不足する場合、短時間雇用(週10〜20時間の0.5カウント)も含めた現実的な採用計画を立てる
  6. 支援策・助成金の活用検討 ― 障害者雇用相談援助事業や各種助成金の利用を提案
  7. 障害者雇用推進者の選任(努力義務)の確認
  8. 納付金申告実務の確認(100人超企業)― 令和8年度は6月以前2.5%・7月以降2.7%で算定する点を周知

8.おわりに ― 「義務」を超えた人材確保戦略として

障害者の法定雇用率2.7%への引き上げは、単なる「義務の数字が上がる」話ではありません。除外率の引下げ、カウント方法の柔軟化、支援策の拡充がパッケージで進められており、これは国が掲げる「共生社会」の実現多様な人材の戦力化へ向けた大きな流れの一部です。

当法人が顧問先に伝えているのは、未達による納付金リスクを回避することだけでなく、障害者雇用を企業の持続的な人材確保戦略として前向きに位置づける視点です。人手不足が深刻化する今、短時間雇用やジョブコーチ支援を活用しながら、誰もが能力を発揮できる職場づくりを進める――この姿勢こそが、結果として法定雇用率の達成にもつながります。

施行まで残りわずか。今こそ、自社の障害者雇用の現在地と未来図を描き直すタイミングです。

障害者法定雇用率2.7%への対応・実務支援は
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🔗 関連する当法人のサービス

【根拠法令・参考資料】

  • 障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)
  • 障害者の雇用の促進等に関する法律施行令
  • 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」(LL080401障01)
  • 第123回労働政策審議会障害者雇用分科会(2023年1月18日開催)資料

【免責事項】本記事は、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク発行のリーフレット「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」(LL080401障01、2026年5月25日確認)に基づいて作成しています。記事内容は2026年5月25日時点の情報に基づくものであり、個別の算定・申告にあたっては、最新の厚生労働省資料および管轄ハローワークの取扱いを必ずご確認ください。個別事案への適用については社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

EXECUTIVE WRITER / 執筆者

三重 英則(みえ ひでのり)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員

特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員

経営者と共に歩き、最善の解を導き出す――それが当法人のミッションです。障害者雇用計画の策定、ロクイチ報告・納付金申告の実務代行、各種助成金の活用支援まで、経営者の皆様の伴走支援を行っています。