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2026年7月1日、民間企業の障害者の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられます。本記事を執筆している2026年5月25日時点で、施行まで残り約6週間。多くの中小企業にとって、いよいよ「待ったなし」の局面です。 この引き上げは、2023年に決定された段階的引き上げ計画の最終ステップにあたります。同時に、雇用義務の対象となる事業主の範囲も「常時雇用労働者37.5人以上」へ拡大され、これまで対象外だった企業が新たに義務の対象に加わります。さらに、法定雇用率の引き上げと前後して、除外率の引下げや障害者のカウント方法の変更など、関連する制度改正も相次いでいます。 本記事では、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク発行のリーフレット「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」(LL080401障01)の公表内容に基づいて変更点を正確に整理し、当法人が顧問先と進めている実務対応の全体像を解説します。 1.法定雇用率引上げの全体像 ― 段階的引上げの最終ステップ民間企業の法定雇用率と対象事業主の推移(比較表)厚生労働省リーフレットに示された改正前後の推移は、次のとおりです。
法定雇用率2.7%が適用されると、常時雇用労働者37.5人につき1人の障害者雇用が義務付けられる計算になります(37.5人×2.7%=約1人)。これまで「従業員40人未満だから雇用義務はない」と整理していた従業員37.5人以上40人未満の企業が、2026年7月から新たに義務の対象に加わる点に特に注意が必要です。
2.「6月1日報告」と適用タイミングの取り違いに要注意実務上、特に注意したいのが毎年6月1日時点の障害者雇用状況のハローワークへの報告(いわゆる「ロクイチ報告」)との関係です。リーフレットには次のとおり明記されています。
つまり、2026年6月1日のロクイチ報告は、まだ引き上げ前の2.5%を基準に行うということです。法定雇用率2.7%が適用されるのは2026年7月1日以降であり、6月1日報告の時点では2.5%基準で不足を判定します。
3.関連改正@ ― 除外率の引下げ(2025年4月施行済)と「ダブルの影響」障害者の雇用が一般的に困難と認められる業種について、雇用義務を軽減する「除外率制度」があります。この除外率が、2025年4月1日から各業種ごとにそれぞれ10ポイント引下げられました。これまで除外率が10%以下であった業種は、除外率制度の対象外となっています。 引下げ後の主な除外率(2025年4月1日施行)
除外率が下がると、雇用すべき障害者数を算定する際に「除外」される労働者数が減るため、実質的に雇用義務人数が増えます。建設業・運送業・医療・介護・保育など、除外率設定業種を経営している企業では、法定雇用率2.7%への引き上げと除外率10ポイント引下げの「ダブルの影響」を必ず試算し、必要な雇用数を再計算する必要があります。 4.関連改正A ― 障害者のカウント方法の拡充障害者雇用率の算定における障害者のカウント方法も、近年継続的に拡充されています。法定雇用率の達成が難しい企業にとっては、活用次第で大きな選択肢となります。 (1) 精神障害者の算定特例の延長週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇入れからの期間等に関係なく「1カウント」として算定できます(本来は0.5カウントのところを特例で1カウント)。 (2) 週20時間未満の障害者のカウント新設(2024年4月施行済)週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者について、雇用率上「0.5カウント」として算定できるようになりました。フルタイムや週20時間以上での就労が難しい障害者にも雇用の門戸を広げる狙いです。
5.障害者雇用納付金・調整金 ― 年度途中の率切り替えに注意リーフレットのQ&Aでは、納付金の算定についても明確に示されています。令和8年度分の障害者雇用納付金(申告期間:令和9年4月1日〜同年5月17日)については、次のとおり取り扱われます。
つまり、2026年度は年度の途中(7月)で法定雇用率が変わるため、6月以前と7月以降で異なる率を用いて計算することになります。納付金の対象となる常時雇用労働者100人超の企業では、この年度途中の率の切り替えを踏まえた申告実務に備える必要があります。 法定雇用率未達成の場合、不足1人あたり原則月5万円の納付金が発生する一方、超過達成には調整金・報奨金が支給されます。 6.強化された事業主支援策 ― 「義務」を「戦力化」に転換する障害者雇用は「義務だから仕方なく」ではなく、適切な支援を活用すれば戦力化につながります。当法人が顧問先に提案している主な支援策は次のとおりです。
これらは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)等を通じて利用できます。単なる手続代行を超え、これらの支援策を組み合わせて提案することが、当法人の伴走支援の一つの形です。 7.施行までの6週間でやるべきこと ― 当法人のチェックリスト最後に、施行までの約6週間で経営者・人事担当者が確認すべき事項を整理します。
8.おわりに ― 「義務」を超えた人材確保戦略として障害者の法定雇用率2.7%への引き上げは、単なる「義務の数字が上がる」話ではありません。除外率の引下げ、カウント方法の柔軟化、支援策の拡充がパッケージで進められており、これは国が掲げる「共生社会」の実現と多様な人材の戦力化へ向けた大きな流れの一部です。 当法人が顧問先に伝えているのは、未達による納付金リスクを回避することだけでなく、障害者雇用を企業の持続的な人材確保戦略として前向きに位置づける視点です。人手不足が深刻化する今、短時間雇用やジョブコーチ支援を活用しながら、誰もが能力を発揮できる職場づくりを進める――この姿勢こそが、結果として法定雇用率の達成にもつながります。 施行まで残りわずか。今こそ、自社の障害者雇用の現在地と未来図を描き直すタイミングです。
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