作成日:2026/06/01
2025年度「人手不足倒産」441件で3年連続の過去最多 ―「従業員退職型」初の100件超が示す 定着支援の重要性
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労務トピックス
2026.6.1
2025年度「人手不足倒産」441件で3年連続の過去最多 ―「従業員退職型」初の100件超が示す 定着支援の重要性
帝国データバンク調査が突きつける構造的危機と、社労士が果たすべき役割
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📌 本記事のポイント
| ● 2025年度の人手不足倒産は441件。年度ベースで初めて400件を突破し、3年連続で過去最多を更新 |
| ● 退職を引き金とする「従業員退職型」が118件と初の100件超え。「採用難」から「定着難」へ局面が転換 |
| ● 倒産企業の約75%が従業員10人未満。中小・小規模企業ほど人材獲得競争で取り残されている |
| ● 建設・運送・介護・飲食など労働集約型産業が直撃。地域社会のインフラ崩壊リスクへ |
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はじめに ― 「仕事はあるのに、人がいなくて潰れる」時代
倒産といえば、かつては「売上が落ちて資金繰りに行き詰まる」というイメージが一般的でした。しかし今、まったく異なる理由で企業が消えています。「受注はあるのに、働く人を確保できずに事業を継続できない」――いわゆる人手不足倒産です。
帝国データバンク(TDB)が2026年4月9日に公表した「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」によれば、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の人手不足倒産は441件に達し、年度ベースで初めて400件を超え、3年連続で過去最多を更新しました。
本稿では、この調査結果を読み解き、社会保険労務士法人として顧問先の「人材確保・定着」をどう支えるべきかを、当法人の視点で考えます。
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1.調査結果の核心 ― 数字で見る「人手不足倒産」の深刻化
(1) 件数は441件、前年度比1.3倍
2025年度の人手不足倒産は441件。前年度(2024年度)の350件と比べて約1.3倍(+26.0%)に増加し、年度ベースで初めて400件の大台を突破しました。これで3年連続の過去最多更新です。
ここでいう「人手不足倒産」とは、TDBの定義では、従業員の退職・採用難・人件費高騰などの「人手不足」を要因とする、負債1,000万円以上の法的整理(倒産)を指します。単なる景気悪化ではなく、「人」を直接の引き金とした倒産にフォーカスした集計です。
(2) 「従業員退職型」が初の100件超 ― 辞めて潰れる
注目すべきは類型別の内訳です。なかでも、従業員の退職を直接の引き金とする「従業員退職型」が118件に達し、年度ベースで初めて100件を超え、4年連続で増加しました。
これは、「採用できない」だけでなく、「今いる人が辞めてしまう」ことが倒産に直結していることを意味します。中核となる従業員や技術者が抜けると、残った人員に負荷が集中し、さらなる退職を招く――いわゆる「退職の連鎖」が、企業の存続を脅かしているのです。当法人の視点から見れば、これは定着(リテンション)の失敗が経営を直撃している姿にほかなりません。
(3) 約75%が「従業員10人未満」の小規模企業
倒産企業の規模を見ると、「従業員10人未満」の小規模企業が約75%を占めました。大企業が賃上げ・好待遇で人材を吸い上げる一方、体力の乏しい小規模企業が人材獲得競争で取り残され、淘汰されている構図が浮かび上がります。中小・小規模企業を多く支援する立場にある当法人にとって、これはまさに「対岸の火事」ではありません。
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2.業種別 ― 労働集約型産業を直撃
業種別の内訳は、人手不足倒産が「どこで」起きているかを如実に示しています。
| 順位 |
業種 |
件数 |
備考 |
| 1 |
建設業 |
112件 |
全体の25.4%。最多。資格・技能を持つ現場作業員の退職が続発 |
| 2 |
道路貨物運送業 |
55件 |
いわゆる「2024年問題」の影響でドライバー確保困難 |
| 3 |
老人福祉事業(介護) |
22件 |
業種別で過去最多を更新 |
| 4 |
飲食店 |
21件 |
業種別で過去最多を更新 |
| 5 |
労働者派遣業 |
12件 |
業種別で過去最多を更新 |
建設業が全体の4分の1を占めて突出しており、技能労働者の高齢化と若手のなり手不足が深刻です。道路貨物運送業は、時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)でドライバー確保がいっそう困難になりました。そして、私たちの生活基盤を支える介護(老人福祉)や飲食といった、低賃金・重労働になりがちな労働集約型サービス業が軒並み過去最多を更新しています。
これらはいずれも、私たちの暮らしに不可欠な「エッセンシャル」な仕事です。人手不足倒産は、単なる一企業の問題ではなく、地域社会のインフラそのものの崩壊につながりかねない構造的リスクなのです。
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3.なぜ人手不足倒産は増え続けるのか ― 構造的な3つの要因
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@ 生産年齢人口の減少
日本の生産年齢人口(15〜64歳)は減少を続けており、労働力供給の総量そのものが先細りしています。これは一時的な景気変動ではなく、長期的・構造的なトレンドです。
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A 賃上げ競争と「人材の流出」
2024年(5.10%)、2025年(5.25%)に続き、2026年春闘でも連合の集計で3年連続5%超の高い賃上げ水準が示されています。これは裏を返せば、賃金を上げられる体力のある企業に人材が集中し、上げられない企業から人が流出することを意味します。TDBの調査でも、求める人材が「自社よりも賃金水準の高い他企業へ流出してしまう」という企業の声が報告されています。中小企業にとっては、賃上げ原資の確保が死活問題です。
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B 「採用難」から「定着難」へ
かつては「採用できない」ことが人手不足の主因でしたが、現在は「せっかく採っても辞めてしまう」定着難が大きな比重を占めています。「従業員退職型」倒産の増加は、その象徴です。採用にコストをかけても、定着しなければ穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。
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4.社労士が果たすべき役割 ―「採って終わり」から「辞めない職場づくり」へ
人手不足倒産は、社会保険労務士にとって最も貢献できるテーマの一つです。労務管理の専門家として、当法人は顧問先の「人材確保・定着」を多面的に支援しています。
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✓ (1) 賃金制度・評価制度の整備による「処遇の見える化」
「なぜこの賃金なのか」が説明できない賃金体系は、従業員の不満と離職を招きます。職務や貢献に応じた納得性の高い賃金・評価制度を設計し、賃上げ原資を生産性向上で確保する道筋を示すことが、定着の土台になります。
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✓ (2) 労働時間・働き方の改善
長時間労働や硬直的な勤務体系は、退職の連鎖を生む典型要因です。勤務間インターバル、柔軟な勤務制度、年休取得促進などを通じて「働き続けられる職場」を整えることが、リテンションに直結します。
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✓ (3) ハラスメント・職場環境対策
「人間関係」は退職理由の上位常連です。ハラスメント防止体制の整備や相談窓口の実効性確保は、従業員退職型倒産を防ぐ重要な打ち手です。
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✓ (4) 多様な人材の活用支援
高年齢者の継続雇用、女性の活躍推進、外国人材(育成就労制度等)、障害者雇用、副業・兼業人材の活用など、限られた労働力をいかに取り込むか――その制度設計と法令対応こそ、社会保険労務士の専門領域です。
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✓ (5) 各種助成金・支援策の活用
人材確保・処遇改善・職場環境整備を後押しする各種助成金(キャリアアップ助成金、業務改善助成金、人材確保等支援助成金など)の活用提案は、資金力の乏しい中小企業にとって即効性のある支援となります。
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5.顧問先に今すぐ伝えたいメッセージ
人手不足倒産が示す最大の教訓は、「人材確保・定着は、もはや人事の問題ではなく経営そのものの問題である」ということです。仕事があっても人がいなければ事業は続きません。そして、人が辞めない職場をつくることは、採用にコストをかけ続けるよりもはるかに本質的で持続可能な戦略です。
当法人は、単なる手続き代行者ではなく、顧問先の「人を大切にする経営」を伴走支援する存在です。「採用がうまくいかない」と嘆く前に、「今いる人がなぜ辞めるのか」「どうすれば辞めずに済むのか」を一緒に考える――それが、人手不足時代に当法人が果たすべき最大の役割だと考えます。
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おわりに
2025年度の人手不足倒産441件、3年連続過去最多という数字は、私たちに静かな危機を突きつけています。とりわけ「従業員退職型」の増加は、定着支援こそが企業存続の鍵であることを物語っています。
社会保険労務士法人T&M Nagoyaは、「経営者と共に歩き続ける」伴走者として、顧問先の人材確保・定着を全力で支援してまいります。人手不足にお悩みの経営者の方は、ぜひ一度当法人にご相談ください。
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根拠資料・出典
- 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」(2026年4月9日公表)
- 帝国データバンク「全国企業倒産集計 2025年度報」(2026年4月8日公表)
- 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年)」(2026年1月8日公表)
- 連合「2026春季生活闘争 第1回〜第3回回答集計結果」
- 日本経済新聞「『人手不足倒産』3年連続過去最多」
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WRITER
三重 英則 / MIE Hidenori
社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員
特定社会保険労務士 / 経営心理士 / 経営法曹会議賛助会員
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※本記事は2026年5月22日時点で公表されている帝国データバンクの調査結果および公開情報に基づき作成しています。最新の統計・動向は各調査機関の公表資料をご確認ください。また、個別事案については当法人までご相談ください。
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