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労務トピックス|統計・法改正
男女間賃金格差「75.8」が1976年以降で最も縮小
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📌 本記事のポイント ・厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(2025年3月17日公表)で、男女間賃金格差(男=100)は75.8となり、比較可能な昭和51年(1976年)以降で最も縮小しました。 |
労働経済政策の最も重要な統計である「賃金構造基本統計調査」の令和6年(2024年)結果が、厚生労働省より公表されました(2025年3月17日報道発表、3月24日確報)。最大の注目点は、男女間賃金格差(男性=100とした女性指数)が75.8となり、比較可能な1976年(昭和51年)以降で最も格差が縮小したことです。
「日本は先進国の中で最も男女賃金格差が大きい」という長らくの評価から脱しつつあると指摘されています。しかし、この数字を「ジェンダー平等の達成」と評価できる状態かは、慎重な分析が必要です。本稿では、最新統計の構造と、2026年4月1日に施行される改正女性活躍推進法への実務対応について整理します。
| 区分 | 月額賃金(所定内給与) | 前年比 |
| 一般労働者全体 | 33万0,400円 | +3.8%(33年ぶり高水準) |
| 男性 | 36万3,100円 | +3.5% |
| 女性 | 27万5,300円 | +4.8% |
一般労働者全体の月額賃金33万400円は過去最高水準で、伸び率3.8%は平成3年以来33年ぶりの高水準です。男女ともに平成3年以来の高い伸び率となっています。
| 調査年 | 女性指数 | 前年差 |
| 令和3年(2021年) | 75.2 | ― |
| 令和4年(2022年) | 75.7 | +0.5 |
| 令和5年(2023年) | 74.8 | −0.9 |
| 令和6年(2024年) | 75.8 | +1.0 |
比較可能な1976年(昭和51年)以降で最も格差が縮小しました。これまで最も格差が縮小していたのは令和4年の75.7でしたが、令和6年はこれをわずかに上回る水準となりました。
| 区分 | 1時間当たり賃金 | 前年比 |
| 男女計 | 1,476円 | +4.5% |
| 男性 | 1,699円 | +2.5% |
| 女性 | 1,387円 | +5.7% |
女性短時間労働者の時給は5.7%と高い伸び率を示し、女性正社員の伸び率(+4.4%)も上回りました。最低賃金引上げと人手不足を背景とした、女性比率の高い職種(接客・サービス・医療介護等)への賃上げ圧力が反映されたと考えられます。
| 役職 | 男性月額 | 女性月額 | 差額 |
| 部長級 | 63万6,400円 | 54万9,900円 | 8万6,500円 |
| 課長級 | 52万2,400円 | 45万8,100円 | 6万4,300円 |
| 係長級 | 39万6,300円 | 35万4,000円 | 4万2,300円 |
同一役職においても男女の賃金差が存在し、女性の勤続年数が相対的に短いこと等が一因と考えられます。役職が上位になるほど絶対額の差は拡大する傾向にあります。
男性の賃金ピークは55〜59歳(44万4,100円)であるのに対し、女性のピークは45〜49歳(29万8,000円)と、女性は約10歳早くピークを迎えます。ピーク時の賃金差は約14万6,000円であり、女性のキャリア中断(出産・育児)、管理職比率の低さ、ロールモデル不在等の複合的影響と分析されています。
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要因1:女性の正社員化の進展 人手不足を背景に、非正規雇用に滞留していた女性が正社員に転換することで、女性全体の平均賃金が押し上げられました。実際、令和6年は女性正社員の伸び(+4.4%)が非正規(+3.3%)を上回っています。 要因2:同一労働同一賃金の浸透 2020年4月(中小企業は2021年4月)施行のパート・有期労働法改正により、正社員と非正規の不合理な格差是正が義務化されました。女性非正規労働者の賃金底上げに寄与しています。 要因3:女性活躍推進法による情報開示 2022年7月施行の改正女性活躍推進法により、男女賃金差異の公表が義務化(301人以上企業)されました。さらに2026年4月施行の改正法では、101人以上企業に拡大されます。公表自体が自発的な格差是正を促す効果を発揮しています。 要因4:人手不足下の賃上げ圧力 5%超の賃上げに象徴される賃上げ圧力は、女性比率の高い職種(接客・サービス・医療介護等)に顕著に作用しました。最低賃金引上げと相まって、短時間労働者の女性賃金(時給+5.7%)を直接押し上げています。 |
OECDの最新公表値(雇用見通し2025)によれば、日本の男女間賃金格差は2023年で22%、加盟36か国中35位(最下位は韓国)です。OECD平均は約11%(女性が男性の89%水準)であり、日本は依然として大きな格差を抱えています。
なお、OECDと日本の厚生労働省では指標の算出方法が異なります(OECDは中位値、厚労省は平均値)。算出方法を揃えて比較しても、日本の格差は先進国の中で大きい水準にあります。
| 主要国・地域 | 男女賃金格差(OECD 2023年ベース) |
| OECD平均 | 約11%(女性が男性の約89%) |
| 米国 | 約17% |
| ドイツ | 約14% |
| 日本 | 約22%(36か国中35位) |
| 韓国 | 約31% |
※ 国別の数値は年により変動するため、各年のOECD公表値を確認することを推奨します。
また、「75.8への到達」を真の達成と評価するには注意が必要です。日本では男性の賃金上昇が女性に比べて緩やかであったこと、定年延長下でも高齢男性労働者が段階的に賃金カーブから離脱していくこと、女性の部長級比率が依然として10%台にとどまっていることなど、相対指標の改善と構造改善の進展度合いには差異があります。
女性活躍推進法は当初2026年3月末までの時限立法でしたが、令和7年(2025年)6月11日に公布された改正法により、10年間延長(令和17年3月31日まで)されるとともに、情報公表義務の対象範囲と項目が拡大されました。施行日は令和8年(2026年)4月1日です。
| 項目 | 改正前(現行:〜2026年3月31日) | 改正後(2026年4月1日施行) |
| 男女間賃金差異の公表義務 | 常時雇用301人以上の企業に義務(2022年7月8日施行) | 常時雇用101人以上の企業に拡大 |
| 女性管理職比率の公表義務 | 必須項目ではなく、301人以上企業の任意の選択項目 | 常時雇用101人以上の企業に新たに義務化 |
| 女性の健康課題への配慮 | 特段の規定なし | 企業に対し、月経・妊娠・出産等の女性特有の健康課題への配慮を求める規定が新設 |
| 法律の期限 | 2026年3月末までの時限立法 | 10年間延長(令和17年3月31日まで) |
※ 男女間賃金差異は引き続き「全労働者」「正社員」「パート・有期労働者」の3区分での公表が必要です。
※ 男性育児休業取得率の公表義務は、別途、育児・介護休業法に基づき、常時雇用1,000人超の企業に課されています(2026年4月1日からは300人超に拡大)。
公表は自社の公式ウェブサイトや厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」等で行います。事業年度終了後おおむね3か月以内に、前事業年度の実績を公表する必要があります。
公表義務違反そのものに直接の罰則はありませんが、労働局からの報告徴収に対し報告をしない・虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料の対象となります。また、行政指導・是正勧告に従わない場合は企業名公表の可能性があり、くるみん認定・えるぼし認定・公的入札の加点要件等にも影響します。投資家・取引先・求職者からの評価にも直結する事項となります。
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✅ 経営者が押さえるべき実務対応チェックポイント @ 自社の男女賃金差異を3区分(全労働者・正社員・パート有期)で算出し、現状を「見える化」する。 A 数値だけでなく、役職構成比・勤続年数差・雇用形態差・残業時間差等の原因分析を行い、一般事業主行動計画に反映する。 B 女性管理職比率の向上に向けたキャリアパス設計・メンタリング・時短勤務管理職制度等を体系化する。 C 賃金テーブル・各種手当(家族手当・住宅手当)の支給要件・賞与査定における無意識のバイアスを点検する。 D 男性育児休業取得促進と女性のキャリア継続支援を両輪で進める。 E 公表内容を採用ブランディング・IR・取引先関係構築に活用する積極的な情報発信戦略を設計する。 |
特に、101〜300人規模の企業では、今回の改正で初めて公表義務の対象となります。データ収集の体制、算出方法、社内承認フロー、公表媒体の設計までを2026年4月までに整える必要があります。
当法人は、IPO労務監査・M&A労務DD・休職制度設計・労使紛争対応を専門領域とする社会保険労務士法人です。男女賃金差異の公表対応は、これらの専門領域と深く連動します。
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▼ IPO労務監査との連携 IPO準備企業にとって、男女賃金差異の公表は労務監査の重要項目です。主幹事証券会社・投資家からのチェックに耐えうる労務体制を構築する上で、本統計と改正法の動向は必須の前提知識となります。 ▼ M&A労務DDとの連携 買収対象企業の男女賃金差異の状況は、企業価値評価の定性指標として重要視されています。差異が大きく改善計画もない企業はリスク要因として評価され、PMI(買収後統合)コストが膨らみます。 ▼ 休職制度設計との連携 育児・介護による休職を取得した労働者が、復職後に処遇上の不利益を被らない仕組みの設計は、賃金格差縮小と直結します。当法人の休職制度設計の知見を活かし、復職後の評価・処遇の連続性を確保する制度設計をご提案します。 |
男女賃金格差「75.8」という数字は、確かに歴史的な改善を示しています。しかし経営者として押さえるべきは、「数値の改善が目的ではなく、多様な人材が活躍できる組織を構築することが目的である」という基本姿勢です。
公表される数値は、企業が「人的資本経営」の名の下で、女性・若手・シニア・外国人など多様な人材の能力を最大限に引き出すことができたかどうかの結果指標にすぎません。数値そのものに一喜一憂するのではなく、その背景にある自社の構造を見つめ、改善のストーリーを語れる企業こそが、長期的に選ばれる企業になります。
当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」というMISSIONのもと、単なる法令対応にとどまらない「真の人的資本経営」の実現を、これからも伴走支援してまいります。
女性活躍推進法対応・一般事業主行動計画策定・人的資本経営の伴走支援を承ります |
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根拠法令・出典 ・厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2025年3月17日報道発表、3月24日確報更新) 免責事項 本記事は2026年5月19日時点で公表されている法令・統計に基づく一般的な解説であり、個別事案への適用を保証するものではありません。法令・行政解釈は今後改正される可能性があります。実際の対応にあたっては、最新の公表情報をご確認の上、必要に応じて当法人または所轄労働局にご相談ください。 |
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執筆者 三重 英則(みえ ひでのり) 社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員 特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員 中小企業の経営者・人事責任者の伴走支援を専門とし、IPO労務監査・M&A労務DD・休職制度設計・労使紛争対応を主要業務領域とする。当法人のMISSION「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」のもと、誠実・Think more・伴走の三つのVALUESを実践しています。 |