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作成日:2026/05/16
改正物流効率化法が成立 −「中継輸送」推進で2024年問題に新たな処方箋
法改正解説

改正物流効率化法が成立
「中継輸送」推進で2024年問題に新たな処方箋

― 長距離輸送をドライバー複数人で分担、日帰り運行と担い手確保へ ―

📌 この記事のポイント

  • 2026年5月13日、改正物流効率化法(中継輸送推進法)が参議院本会議で可決・成立
  • 一つの長距離輸送を複数のドライバーで分担する「中継輸送」を国が本格推進
  • 中継輸送実施計画の認定制度を新設し、認定計画に基づく取組に各種支援措置を講じる枠組み
  • 税制上の優遇措置や公的金融支援等の具体的内容は今後の政省令等で整備される見込み
  • 運送事業者には運行管理・点呼・賃金管理の見直しが、荷主企業には輸送設計とリードタイム協議の見直しが求められる

2026年5月13日、参議院本会議で「物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律」(改正物流効率化法)が可決・成立しました。トラックドライバーの長距離輸送を複数事業者・複数ドライバーで分担する「中継輸送」の仕組みづくりを進めることが柱で、運転手が日帰りで業務を完了できる環境を整え、担い手確保にもつなげることが目的とされています。

本改正は、2024年4月から適用されているトラックドライバーの時間外労働年960時間上限規制(いわゆる「2024年問題」)への構造的対応として位置づけられるものであり、運送事業者・荷主企業双方の労務管理実務に直接影響します。本記事では、改正法の内容と実務への影響、当法人の視点から整理した対応の方向性を解説いたします。

1. 改正法の全体像と成立の経緯

本改正法案は2026年3月6日に閣議決定された後、両院での審議を経て、2026年5月13日の参議院本会議で可決・成立しました。国土交通省の公表資料によれば、改正の柱は大きく以下の2点に整理されています。

改正法の二本柱

柱1 中継輸送の実施に関する関係者の連携・協働の促進
国土交通大臣が中継輸送の実施に関する基本方針を策定し、国・地方公共団体・事業者(トラック事業者・荷主・倉庫業者等)に中継輸送の促進に必要な助言・協力等の責務(努力義務)を課す。

柱2 中継輸送を促進するための計画認定制度の創設
中継輸送を実施しようとする者が共同で「貨物自動車中継輸送実施計画」を作成し、国土交通大臣が認定する制度を新設。認定された計画に基づく取組について各種支援を実施する。

国土交通省の閣議決定資料では、認定計画に基づく取組について「各種支援を実施」とされており、具体的な支援措置の内容は今後の政省令・税制改正等で整備される見込みです。報道では、中継拠点施設の整備に対する税制上の優遇措置や、公的金融機関による出融資、計画策定経費等への国の支援措置が想定されているとされており、国土交通省としても中継拠点の全国的な整備を進める方針が示されています。

2. 改正前後の主な変更点

既存の物流効率化法(2025年4月・2026年4月段階施行)との関係で、今般の改正による変更点を整理します。

項目 改正前(現行制度) 改正後(2026年成立法)
中継輸送の位置づけ 個別事業者の自主的取組として実施可能だが、法的な促進措置はなし 法律上の促進対象として明確化。国交大臣が基本方針を策定
関係者の責務 物流効率化全般の努力義務(積載効率・荷待ち時間短縮等) 上記に加え、中継輸送の促進に必要な助言・協力等の努力義務を国・地方公共団体・事業者に規定
計画認定制度 中継輸送に特化した認定制度なし 「貨物自動車中継輸送実施計画」を国交大臣が認定する制度を新設
支援措置 中継輸送に特化した一体的支援制度なし 認定計画に基づく取組について各種支援を実施(税制優遇・金融支援等の具体的内容は政省令・税制改正で整備見込み)
政策目標 中継輸送拠点に関する政策目標は未整理 中継拠点の整備を全国的に進める方針(具体的な目標値は基本方針等で策定見込み)

3. 改正の背景にある「2024年問題」と輸送力危機

本改正の背景には、トラックドライバーの労働環境と輸送力をめぐる深刻な構造問題があります。2024年4月から、自動車運転業務には時間外労働の年960時間上限規制が適用されており、長距離輸送を一人のドライバーが完結させる従来の働き方そのものの見直しが法的・実務的に迫られています。

政府の試算では、現在の物流体制と荷主の商慣行を放置した場合、2030年度には全国で必要とされる輸送力の約34%が不足するとされており、地方への配送ほどこの影響は大きく現れます。一方、ドライバーの平均年齢は他業種に比べて高く、若年層の入職も低迷しています。長距離輸送に伴う車中泊・宿泊を伴う働き方は若年層に敬遠される傾向が指摘されており、「日帰りで業務が完結する運行設計」への転換は、人材確保の観点からも喫緊の課題と整理できます。

中継輸送は、こうした課題への構造的な対応策と位置づけられます。例えば長距離輸送において中間地点で2人のドライバーが荷物または車両を引き継ぎ、それぞれ出発地に戻る運用とすれば、宿泊を伴わない日帰り運行が可能となり、拘束時間も大幅に短縮されます。

4. 中継輸送の主要な方式と実務上の特徴

国土交通省は中継輸送を「長距離・長時間に及ぶ運行等において、運行途中の中継地等において他の運転者と乗務を交替する輸送形態」と定義しています。実務上は次の方式が用いられており、改正法はこれらいずれの実施も後押しする内容となっています。

方式 仕組み 主なメリット 留意点・課題
ドライバー交替方式 中継地点で運転者のみを交替し、車両と貨物はそのまま継続して運行 積み替え不要で時間ロスが少ない 車両の管理責任・点呼方法を事業者間で明確化する必要
トレーラー・トラクター方式 トラクターヘッドのみを中継地点で付け替え、トレーラー部分(荷物)を引き継ぐ 作業時間が短く効率的 牽引免許保有者の確保が前提
貨物積み替え方式 中継地点で貨物を別車両に積み替えて運行 既存車両・既存ドライバーで対応可能、共同配送にも応用可 積み替え作業時間と人員確保、破損リスク管理が必要
複数方式の組み合わせ 上記方式を路線特性・貨物特性に応じて組み合わせて運用 柔軟な運行設計が可能 運行管理・労務管理が複雑化、ルール整備が前提

5. 中継輸送導入に伴う労務管理上の主要論点

中継輸送は労働時間規制への有効な対応策であると同時に、運送事業者にとっては運行管理・労務管理の枠組みを再設計する課題でもあります。改正法を活用する際に当法人として留意すべきと考える論点を整理します。

(1) 運行管理体制の整備

原則として運行管理は事業用自動車の配置営業所で行う必要があります。中継輸送を実施するために他営業所所属の運転者を乗務させる場合、当該運転者を配置営業所に兼務させ、点呼・労務管理を行う必要があるとされています。異なる事業者間で実施する場合は、運行区間・運転者交替場所・運行管理および車両管理の責任関係・損害賠償に関する事項等を協定書等で定めることが従来から求められており、改正法の運用においてもこの整理は維持されると想定されます。

(2) 点呼の実施方法

中継地点での交替に際しては、対面点呼が物理的に困難な場合があり、IT点呼・電話点呼等の活用と、その手順の社内規程化が必要となります。点呼簿の記録・保存方法、アルコールチェック実施手順についても運用ルールを定めることが望まれます。

(3) 拘束時間・休息期間の管理

改善基準告示上の拘束時間・休息期間の管理は、運行設計の変更に伴い再点検が必要となります。日帰り運行へ移行する場合は宿泊を伴う運行特例の適用がなくなる一方で、勤務間インターバル(原則11時間以上、最低9時間)を確保しやすい設計が可能になります。中継地点での待機時間が発生する場合、その時間の労働時間性(手待時間か休憩時間か)の整理も重要論点となります。

(4) 賃金体系の見直し

運送業では距離給・歩合給を一部に組み込んだ賃金体系が広く用いられていますが、中継輸送への移行で1運行あたりの距離が短縮されると、賃金水準への影響が生じます。年収水準の維持を前提とした賃金規程の再設計、固定残業代を採用している場合の見合いの精査、就業規則改定手続の履践が必要となるケースが想定されます。

✓ 経営者・人事担当者が今、確認すべきチェックポイント

□ 運送事業者の方
・現行の長距離運行ルートで中継輸送導入の余地がないか、路線別・貨物別に棚卸しを行う
・他事業者との連携可能性(協定書のひな型整備、運行管理責任の分担方法)を検討する
・点呼方法(IT点呼・電話点呼)の社内規程整備と運用フローを確認する
・運行距離短縮を前提とした賃金体系の影響をシミュレーションし、必要に応じ就業規則改定を準備する
・改善基準告示違反リスクの再点検と、改善計画の策定を進める
□ 荷主企業の方
・自社の輸送計画における長距離輸送区間を可視化し、中継輸送導入が想定される区間を整理する
・リードタイム設定・納品時間指定の再協議余地を、調達・販売部門と社内で共有する
・改正物流効率化法(2026年4月施行分)の特定荷主該当性と、中長期計画における中継輸送の位置づけを確認する
・物流統括管理者(CLO)と運送事業者との対話の場を制度化する

6. 今後のスケジュールと事業者の備え

改正法の具体的な施行日や、中継輸送実施計画の認定基準・申請手続の詳細は、今後公布される政省令および国土交通大臣告示で定められる見込みです。基本方針が策定された段階で、認定制度の運用要件・支援措置の対象範囲が明確化されることになります。

2025年4月施行の改正物流効率化法(努力義務段階)、2026年4月の特定事業者規制(中長期計画・定期報告・CLO選任義務)と段階的に強化されてきた一連の物流法制は、今般の中継輸送推進法によって、運送事業者の働き方そのものを再設計する段階へと進んだと整理できます。

運送事業者・荷主企業の双方にとって、中継輸送の導入は単なる効率化策ではなく、ドライバー確保戦略と一体の労務改革と位置づけて検討する視点が重要と考えられます。当法人では、運送業の労務管理体制の構築、運行管理規程・賃金規程の見直し、改善基準告示への対応、IPO準備企業における物流関連内部統制の整備等について、伴走型の支援を行っております。

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労務手続代行・監査 運送業の労務管理体制を継続的に支援します

就業規則作成・改訂 賃金規程・運行管理規程の改定に対応します

高難度業務対応型顧問 複雑な運送業の労務課題に伴走支援します

IPO労務監査・改善支援 物流関連の内部統制整備をサポートします

【根拠法令等】

・物資の流通の効率化に関する法律(旧・流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律。令和6年法律第23号により改題)

・物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律(2026年5月13日成立/法律番号は公布時に確定)

・貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)

・貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)

・自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示・令和4年厚生労働省告示第367号)

【免責事項】本記事は2026年5月14日時点の情報に基づき作成しています。改正法の具体的な施行日・政省令の内容は今後公布されるものを含み、最新情報は国土交通省等の公式発表をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別事案への適用については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。

執筆者

三重 英則(みえ ひでのり)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員
特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員

「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」を法人ミッションとして、中小企業・IPO準備企業の労務戦略支援、複雑案件への伴走支援、就業規則・賃金制度の設計、労務監査等を担当。運送・物流業界の労務管理にも知見を有する。

【出典・参考文献】

・国土交通省「『物資の流通の効率化に関する法律の一部を改正する法律案』を閣議決定」(令和8年3月6日報道発表)

・時事通信「改正物流効率化法が成立=トラック運転手確保へ『中継輸送』」(2026年5月13日)

・北日本新聞「トラック中継輸送を推進」(2026年5月13日)

・国土交通省自動車総合安全情報「中継輸送に関するQ&A」

・国土交通省「中継輸送の実施に当たって(実施の手引)」(平成29年3月)

・国土交通省「中継輸送の取組事例集」(令和2年1月)

・経済産業省「物流効率化法について」

・「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(国土交通省)