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作成日:2026/05/11
【重要】厚生労働省・ハラスメント防止指針の解釈Q&A41問を公表 ― 先行適用された8問から確認する実務対応のポイント
TOPIC / 法改正
ハラスメント防止指針の解釈Q&A41問が公表
― 先行適用された8問から確認する実務対応のポイント ―
📌 本稿の要点
・厚生労働省は、令和8年4月24日付で「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」を公表しました。
・全41問のQ&Aは、令和8年10月1日のカスタマーハラスメント・求職者等セクシュアルハラスメント防止措置の義務化に合わせて適用されますが、このうち問22〜26(パワハラ関係)、問38〜40(セクハラ・全体関係)の合計8問は、令和8年4月24日から先行適用されています。
・先行適用分は、同僚・部下からのパワハラ、SOGI(性的指向・ジェンダーアイデンティティ)に関するアウティング強要・禁止、勤務時間外懇親の場での事案、取引先社員からのセクハラ、同性間セクハラなど、既存のパワハラ・セクハラ防止措置義務における解釈上の論点を整理した内容となっています。
・経営者・人事ご担当者には、まず先行適用分の内容を踏まえた自社運用の再点検を進め、残る33問についても10月1日の施行に向けて体制整備を進めることが求められます。
1.Q&A公表の背景と全体像

令和7年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法および改正男女雇用機会均等法(令和7年法律第63号)により、令和8年(2026年)10月1日からカスタマーハラスメント防止対策および求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止対策が事業主の義務となります。これに先立ち、令和8年2月26日には「カスタマーハラスメント防止指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)および「求職者等セクシュアルハラスメント防止指針」(同告示第52号)が告示されました。

今般、厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課は、これらの指針および従来のパワーハラスメント防止指針・セクシュアルハラスメント防止指針の解釈について、実務上想定される疑義を整理した「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」を令和8年4月24日付で公表しました。

▶厚生労働省「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」
 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695619.pdf

▶ Q&A全41問の構成(7カテゴリ)
公表されたQ&Aは、次の7つのカテゴリに分けて整理されています。
カテゴリ 問番号 問数 適用日
カスタマーハラスメント関係 問1〜21 21問 令和8年10月1日
パワーハラスメント関係 問22〜26 5問 令和8年4月24日
(先行適用)
カスハラ・パワハラ関係 問27 1問 令和8年10月1日
セクハラ・求職者等セクハラ関係 問28 1問 令和8年10月1日
求職者等セクハラ関係 問29〜37 9問 令和8年10月1日
セクシュアルハラスメント関係 問38〜39 2問 令和8年4月24日
(先行適用)
全体 問40〜41 2問 問40:令和8年4月24日
問41:令和8年10月1日

先行適用された8問(問22〜26、問38〜40)は、いずれも既にパワハラ防止指針・セクハラ防止指針として効力を有している事項に関する解釈であり、新たな義務を課すものではなく、現行ルールの運用における解釈上の論点を整理した内容となっています。したがって、これらの内容は、現時点で既に自社のハラスメント対応運用に反映が求められるものと考えられます。

2.先行適用された8問の要点(令和8年4月24日適用分)
問22 同僚・部下からの言動と「優越的な関係を背景とした言動」

パワーハラスメントの三要素のうち「優越的な関係を背景とした言動」については、同僚や部下からの言動であっても該当し得ることが明示されました。具体的には、業務上必要な知識や経験を有しており、その者の協力を得なければ業務の円滑な遂行が困難である場合や、同僚・部下からの集団による行為で抵抗・拒絶が困難な場合などが挙げられています。

実務上の含意:「上司から部下へ」という構図にとどまらず、専門技術者・ベテラン社員・集団からの言動も、状況によってはパワハラとして対応が必要となります。管理職研修だけでなく、一般社員に対する啓発も欠かせません。

問23 「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」の判断

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とは、社会通念に照らし、明らかに業務上必要性がないか、態様が相当でないものを指します。具体例として、@業務上明らかに必要性のない言動、A業務の目的を大きく逸脱した言動、B業務遂行の手段として不適当な言動、C行為の回数・行為者の数等が社会通念上許容範囲を超える言動、が挙げられています。

判断にあたっては、言動の目的、労働者の問題行動の有無や内容・程度、経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等を総合的に考慮するとされ、労働者の行動が問題となる場合には、その内容・程度と指導の態様との相対的な関係性が重要な要素と位置付けられています。

実務上の含意:労働者側に問題行動があった場合でも、人格を否定するような言動など必要かつ相当な範囲を超えた指導はパワハラに該当し得ます。「指導の必要性」と「指導の方法・程度の相当性」を切り分けて検討する姿勢が求められます。

問24 SOGI(性的指向・ジェンダーアイデンティティ)に関するカミングアウトの強要・禁止

労働者の性的指向・ジェンダーアイデンティティについて、本人の了解を得ずに他の労働者に暴露・開示すること(いわゆるアウティング)に加え、カミングアウトすることを禁止する行為、強要する行為のいずれもパワーハラスメントに該当し得ることが明示されました。

実務上の含意:「告白を促す」「カミングアウトしないよう求める」といった、当事者の意思を尊重しない介入は、いずれの方向であってもパワハラに該当します。SOGI関連の研修においては、当事者の自己決定の尊重を中核に据えた内容とする必要があります。

問25 勤務時間外の懇親の場における事案への対応

パワハラ防止指針における「職場」には、勤務時間外の懇親の場であっても実質上職務の延長と考えられるものは含まれ得るとされ、その判断要素として、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意か等が示されました。

実務上の含意:形式的に「就業時間外だから対象外」と整理することは適切ではなく、開催経緯・参加者構成・参加の任意性等を個別に検討する必要があります。また、該当の有無が微妙な場合でも、広く相談に応じる体制を整えることが求められる点に留意が必要です。

問26 パワハラの原因・背景を解消するための取組

パワーハラスメントの原因・背景を解消するための取組として、@コミュニケーションの活性化・円滑化のための研修、A適正な業務目標の設定等の職場環境改善が望ましいとされました。

実務上の含意:あわせて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示・指導はパワハラに該当しないこと、労働者側にもこれを真摯に受け止める意識が重要であることが明示されています。この点は、管理職が萎縮して必要な指導を控える、いわゆる「指導控え」を防ぐうえでも、社内周知すべきポイントです。

問38 取引先社員からの性的な言動とセクシュアルハラスメント

セクハラの行為者は、労働者を雇用する事業主や役員、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主またはその雇用する労働者、顧客、患者またはその家族、学校における生徒等もなり得るとされました。取引先社員の性的な言動により自社の雇用する労働者の就業環境が害される場合は、セクハラに該当します。

実務上の含意:セクハラはカスハラと一部重なり得る局面があり、社内のセクハラ相談窓口で取引先社員による事案も受け止められる体制設計が必要となります。なお、10月1日からのカスハラ防止措置義務との連動を意識した相談体制の見直しが求められます。

問39 同性に対する性的な言動とセクシュアルハラスメント

セクハラには同性に対するものも含まれ、被害者の性的指向・ジェンダーアイデンティティを問わないことが明示されました。

実務上の含意:「男性間の冗談」「女性同士のからかい」といった性別構成にかかわらず、性的な言動による就業環境侵害はセクハラ対応の対象となります。研修・通報対応における前提として、改めて確認すべき内容です。

問40 「相談に対応する担当者」と「相談窓口」の関係

「相談窓口」とは、事業主が労働者・求職者等からの相談に対し適切・柔軟に対応するための体制整備の一環としてあらかじめ定めるべき相談対応のための窓口を指します。「相談窓口」を定めていると認められる例の一つとして「相談に対応する担当者」を定めていることが挙げられており、外部機関への委託も認められるとされました。

実務上の含意:「相談窓口」と「担当者」は対立概念ではなく、後者は前者を構成する選択肢の一つです。中小企業においては、外部機関委託の活用も含めた現実的な体制設計を検討する余地があります。

3.令和8年10月1日適用分の主な論点(残り33問の概観)

令和8年10月1日の義務化と同日に適用される33問は、新設されるカスタマーハラスメント関係(問1〜21)、求職者等セクシュアルハラスメント関係(問28〜37)を中心に、実務上想定される論点が広範に整理されています。主な論点は次のとおりです。

▶ カスタマーハラスメント関係(問1〜21)の主要論点
顧客等の範囲:契約関係のない潜在的顧客、施設の近隣住民、訪問先での取引先労働者・サービス利用者等も含まれる(問1〜3)。
「社会通念上許容される範囲を超えた言動」の判断:「言動の内容」と「手段や態様」の両面に着目し、目的、業種、態様・頻度等を総合考慮(問4)。事業主・労働者側の対応に問題があった場合も背景として留意(問4)。
無断撮影:撮影行為一般が直ちにカスハラとなるのではなく、三要素を満たす場合に該当(問5)。
労働局の役割:個別事案がカスハラに該当するか否かを労働局が判断するわけではなく、事実関係の確認は事業主の義務(問6)。
方針の周知範囲:顧客対応のない部署を含む全労働者への周知が必要(問9・更問)。
録音・録画と個人情報保護法:利用目的の特定・通知または公表が必要。プライバシーポリシーへの記載とトップページから1回程度の操作で到達可能な場所への掲載が望ましい(問10〜11)。
相談窓口:他のハラスメント窓口との一体化は必須ではなく、現場の上司等を担当者とすることも可能(問12)。
悪質事案への対処:警告文発出・出入禁止等の方針を定めることが求められるが、必ず当該措置を講じなければならないわけではない(問16〜18)。
就業規則改訂:既存の懲戒規定で対応可能であれば、カスハラ固有の規定の新設は必須ではない(問19)。
業界マニュアル活用:単なる配布だけでは措置義務を果たしたことにならず、自社実情に応じた調整・周知が必要(問21・更問)。
▶ 求職者等セクシュアルハラスメント関係(問28〜37)の主要論点
内定者の扱い:採用内定により労働契約が成立したと認められる場合はセクハラ防止指針、そうでない場合は求職者等セクハラ防止指針で対応(問28)。
「求職者等」の範囲:就職説明会・インターンシップ・OB/OG訪問参加者、教育実習・看護実習等の実習受講者を含む。社会科見学・授業の一環の講演会参加者は含まれない(問29)。
「求職活動等」の範囲:飲食店でのOB/OG訪問、貸し会議室、学校キャンパス等、職場以外の場所も含む。実質上採用活動・実習の延長と考えられる懇親の場も対象(問30)。
役員・事業主自身の言動:「事業主が雇用する労働者」には該当しないが、求職者等セクハラ防止指針の措置を参考に適切な対応が望ましい(問31)。
面談規則:面談時間・場所の指定、複数人対応等の実施体制、SNSの種類の指定等を定めることが考えられる(問33)。
相談窓口の担当者:人事担当者以外を担当に指定することも考えられる(問34・更問)。
採用面接でのパワハラ類似行為:求職活動等におけるパワハラに類する行為についても、セクハラ防止措置を参考に必要な対応が望ましい(問36)。
定期採用をしていない企業:採用活動を開始した時点で全ての措置義務の履行が必要(問37)。
▶ その他の論点
「労働者の就業環境が害された」の判断(問27):「平均的な労働者の感じ方」を基準とし、頻度・継続性を考慮するが、強い身体的・精神的苦痛を与える態様の言動の場合は1回でも該当し得る
調停手続における参考人(問41):労働施策総合推進法に基づく調停(カスハラ紛争)では顧客等も、男女雇用機会均等法に基づく調停では求職者等も「その他の参考人」に含まれ得る(ただし募集・採用に係るものは除外)。
4.当法人からの実務対応提言

今般のQ&Aは、新たな義務を追加するものではなく、既存・新設の指針に対する解釈を整理したものですが、実務運用上の対応水準を引き上げる内容を多く含んでいます。当法人としては、次の順序で対応を進めることを推奨いたします。

✓ 実務対応チェックポイント
【先行適用分(令和8年4月24日適用)への対応】
☐ パワハラ防止規程・社内通達における「優越的な関係」の定義に同僚・部下からの言動を含めて明記しているか
☐ 「指導の必要性」と「方法の相当性」を切り分けた指導ルールが管理職に共有されているか
☐ SOGIに関する社内方針において、アウティングだけでなくカミングアウトの強要・禁止についても禁止行為として明記されているか
☐ 勤務時間外の懇親の場における事案も含めて、相談を広く受け付ける窓口運用がなされているか
☐ 取引先社員・同性間の性的言動についても、セクハラ相談窓口で受け止める運用となっているか
☐ 相談窓口の体制(社内担当者・外部委託の選択を含む)について現状を確認し、必要に応じて見直しを行ったか

【10月施行分への対応】
☐ カスハラ防止指針に基づく方針の明確化・周知・啓発の準備に着手しているか
☐ 顧客等とのやり取りの録音・録画を行う場合の個人情報保護法対応(プライバシーポリシー改訂等)を検討しているか
☐ 求職者等セクハラ防止指針に基づく面談規則(時間・場所・実施体制・SNS等)の策定を検討しているか
☐ 採用面接担当者に対する研修計画を策定しているか
☐ 業界団体マニュアルを利用する場合、自社実情に応じた調整・周知を行う計画があるか
5.結びに

今回の解釈Q&Aは、ハラスメント防止措置義務の理解と運用を一段深める内容です。とりわけ、先行適用された8問は、現行のパワハラ・セクハラ対応の中で「これまで判断に迷っていた論点」を明確化したものであり、すでに自社運用に反映が求められる事項を含みます。

令和8年10月1日のカスハラ・求職者等セクハラの義務化までは、本稿時点で残り約5か月。準備の遅れは、義務化後の運用品質を直撃します。当法人は、就業規則・各種規程の改訂、相談窓口体制の設計、社内研修の企画、業界マニュアルを踏まえたカスハラ対応マニュアルの策定など、企業ごとの実情に応じた支援をご提供しています。何から着手すべきか整理がつきにくいというご相談でも歓迎いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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【根拠法令・参考指針】
・労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)
・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)
・労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号、令和7年6月11日公布、一部規定を除き令和8年10月1日施行)
・事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(パワーハラスメント防止指針)
・事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(セクシュアルハラスメント防止指針)
・事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第51号/カスタマーハラスメント防止指針)
・事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第52号/求職者等セクシュアルハラスメント防止指針)
・個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
【免責事項】
本記事は、令和8年4月24日付で公表された厚生労働省「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」の内容を、当法人の理解に基づき整理したものです。記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な事案への適用については別途専門家にご相談いただくことを推奨いたします。法令・指針等は今後改正される可能性があり、本記事の内容が将来にわたっての正確性を保証するものではありません。
WRITER / 執筆者
三重 英則(みえひでのり)
社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員
特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員
経営者と共に歩き、最善の解を導き出す。
【出典・参考資料】
・厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(令和8年4月24日)
 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695619.pdf
・厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」