作成日:2026/04/30
男性育休取得率40.5%で過去最高を更新 ― 100人超企業の「目標設定義務化」と 企業が今すぐ取り組むべき実務対応 ―
| 労務トピックス 育児・介護休業法 |
男性育休取得率40.5%で過去最高を更新 ― 100人超企業の「目標設定義務化」と 企業が今すぐ取り組むべき実務対応 ― |
| 2026年4月16日|社会保険労務士法人T&M Nagoya |
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📌 この記事の要点
● 2024年度の男性育休取得率は40.5%で過去最高。前年度から10.4ポイント上昇し、初めて40%台に到達 ● 2025年4月施行の次世代法改正により、100人超企業は一般事業主行動計画に「男性育休取得率の数値目標」を設定することが義務化済み ● 政府目標は「2025年度50%・2030年度85%」。取得率だけでなく取得日数の「質」も課題に ● 出生後休業支援給付金の創設(給付率最大80%)や両立支援等助成金の活用で、企業の負担軽減が可能 |
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近年、急速に進展している男性育休を巡る環境変化。2024年度の調査では男性育休取得率が40.5%と初めて40%台に達し、過去最高を更新しました。一方、政府は「2025年度までに50%、2030年度までに85%」という高い目標を掲げており、2025年4月には次世代育成支援対策推進法の改正が施行され、100人超の企業には数値目標の設定が義務化されています。
本記事では、男性育休を巡る最新の動向と、経営者・人事担当者の皆様が今すぐ取り組むべき実務対応を解説します。 |
■ 過去最高の40.5%を記録
厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」(2025年7月30日公表)によると、2022年10月〜2023年9月の1年間に配偶者が出産した男性のうち、2024年10月1日までに育児休業(産後パパ育休を含む)を開始した男性の割合は40.5%となり、前年度(30.1%)から10.4ポイント上昇して過去最高を更新しました。
また、育児休業を取得した男性のうち産後パパ育休を利用した割合は約6割にのぼり、2022年10月に創設された同制度の効果が着実に現れていることが確認されました。 |
| 年度 |
男性育休取得率 |
主な出来事 |
| 2015年度 |
2.65% |
― |
| 2019年度 |
7.48% |
― |
| 2021年度 |
13.97% |
産後パパ育休(出生時育児休業)創設を含む育介法改正 |
| 2022年度 |
17.13% |
産後パパ育休(出生時育児休業)施行(10月) |
| 2023年度 |
30.1% |
育休取得率の公表義務化(1,000人超企業) |
| 2024年度 |
40.5%(過去最高) |
育休取得率の公表義務を300人超企業へ拡大(4月) |
📊 事業所規模別の取得率(2024年度)
500人以上:53.8% | 100〜499人:55.3% | 全体:40.5% 大企業では半数を超えた一方、中小企業での伸び悩みが課題として指摘されています。 |
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■ 女性との格差は依然として大きい
同調査における女性の育児休業取得率は86.6%であり、男女間に約46ポイントの差があります。「夫婦ともに育休を取得する」という文化的な浸透にはまだ時間がかかる状況です。
■ 「取得日数」の短さが課題
取得率は向上しているものの、取得日数の短さが課題として指摘されています。2023年度調査では、育休を取得した男性の約6割が「1か月未満」にとどまっており、そのうち「5日未満」が16%、「5日〜2週間未満」が22%を占めました。
一方、厚生労働省の意識調査(2025年)では、若年男性の7割が「1か月以上」の取得を希望しており、希望と現実の間に大きなギャップが存在しています。「お飾り育休」ではなく、育児に実質的に関与できる取得期間の確保が今後の重要課題です。 |
| 2. 100人超企業への「数値目標設定」義務化 ― すでに施行済み |
| 2024年の育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法の改正により、2025年4月1日から、従業員100人超の企業が策定する一般事業主行動計画に、以下の数値目標の設定が義務化されました。 |
📋 2025年4月施行:次世代法改正の義務化事項
❶ 行動計画策定・変更時に育児休業取得状況・労働時間の状況を把握すること(PDCAサイクルの実施) ❷ 男性の育児休業等取得率の数値目標を行動計画に設定すること ❸ フルタイム労働者1人当たりの時間外・休日労働時間に関する数値目標を設定すること ❹ 行動計画の労働局への届出と公表 |
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| 企業規模 |
行動計画策定・届出 (数値目標含む) |
男性育休取得率の公表 (育介法) |
| 301人以上 |
義務(2025年4月〜) |
義務(2025年4月〜) |
| 101〜300人 |
義務(2025年4月〜) |
努力義務 |
| 100人以下 |
努力義務 |
努力義務 |
⚠ 対応が未了の企業はご注意ください
| 2025年4月1日以降に開始または変更する行動計画から、数値目標の設定が義務となっています。対象となる従業員100人超の企業(約5万社)で、まだ行動計画の見直しが完了していない場合は、早急に対応が必要です。対応しない企業には、厚生労働大臣が公表を求めて勧告できる規定もあります。 |
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| 3. なぜ男性育休取得が重要なのか ― 社労士の視点から |
理由@:少子化対策としての位置づけ 政府が男性育休を強力に推進する背景には、少子化対策があります。共働き世帯が増える中、育児の負担が母親に偏ることで「もう一人産む気持ちになれない」という状況が生まれています。父親が育児に実質的に参加することが、第二子・第三子出産の意欲につながると考えられています。
理由A:女性活躍推進との不可分の関係 母親だけが育休を取得し、父親は仕事を続けるという旧来のモデルでは、出産・育児後の女性のキャリアに大きな断絶が生じます。男性育休の取得率向上は、女性が仕事を中断せざるを得ない状況を緩和し、女性の活躍推進と直結しています。
理由B:人材確保・定着の競争力 現在の採用市場では、「育休取得実績・職場環境」が求職者の企業選択において重要な要素となっています。特に20〜30代の若年層において、育休取得可能な職場かどうかは就職先を選ぶ際の重要な判断基準の一つです。育休が取りやすい企業は、優秀な人材を引きつける力を持ちます。 |
@ 「取得しやすい職場文化」の醸成
取得率が低い企業に共通する問題として、「育休を取ろうとすると上司・同僚から白い目で見られる」という職場の雰囲気があります。制度は整っていても、実際に取得しにくい文化が存在する場合は、制度整備だけでは解決しません。
▶ 経営トップ・管理職自身が育休取得や育休支持の姿勢を示す(トップメッセージ) ▶ 育休取得者の体験談を社内で共有する(ロールモデルの提示) ▶ 育休取得について上司との面談を定期的に設ける |
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A 個別の「取得意向確認」の実施
育児・介護休業法の改正により、労働者・配偶者の妊娠・出産の申出時に個別周知・意向確認を行うことが義務化されています。この機会に、男性従業員に対しても積極的に確認を行いましょう。
意向確認で使える質問例: ▶「出産後、育児休業(または産後パパ育休)の取得を考えていますか?」 ▶「取得を検討する場合、どのくらいの期間を想定していますか?」 ▶「取得に際して不安なことや障壁に感じることはありますか?」 |
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B 業務引き継ぎ体制の整備
男性育休取得が進まない現実的な理由の一つが「自分が抜けると業務が回らない」という懸念です。
▶ 属人化している業務の棚卸しと標準化・マニュアル化 ▶ 引き継ぎ書のフォーマット作成など引き継ぎ支援の仕組み整備 ▶ 育休代替要員の計画的な確保 ▶ 育休代替要員の人件費支援として両立支援等助成金(育児休業等支援コース)の活用 |
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C 「産後パパ育休(出生時育児休業)」の活用促進
2022年10月に創設された「産後パパ育休」は、子の出生後8週間以内に最大28日間取得できる制度で、分割取得(2回まで)も可能です。
2025年4月からは、産後パパ育休と通常の育児休業を合わせて取得した場合に「出生後休業支援給付金」が受給でき(給付率が実質最大80%に)、経済的なインセンティブがより高まっています。 |
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| 制度 |
取得可能期間 |
特徴 |
| 通常の育児休業 |
子が1歳(最長2歳)まで |
長期取得に適している。分割取得可(2回まで) |
| 産後パパ育休 |
子の出生後8週間以内(最大28日間) |
出産直後の育児参加に最適。分割取得可(2回まで)。休業中の一定の就業も可能 |
| 5. 男性育休取得促進に活用できる助成金・支援制度 |
■ 両立支援等助成金 ― 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備に取り組み、産後パパ育休を取得させた中小企業に支給される助成金です。 |
| 区分 |
支給額 |
| 第1種:産後パパ育休取得 |
20万円(代替要員確保の場合は加算あり) |
| 第2種:育休取得率向上(目標達成時) |
20万円 |
■ 両立支援等助成金 ― 育児休業等支援コース
育休取得時・職場復帰時の支援を行った中小企業事業主に支給されます。 |
| 支援内容 |
支給額 |
| 育休取得時 |
28.5万円 |
| 職場復帰時 |
28.5万円 |
| 6. まとめ ― 男性育休は「特別なこと」から「当たり前」へ |
取得率40.5%という数字は確かに過去最高ですが、「100人に40人は取得する」という状況はまだ普及途上です。2030年度の政府目標85%を達成するためには、企業が積極的に環境を整備していく必要があります。
社労士として経営者・人事担当者の皆様にお伝えしたいのは、男性育休は「コスト」ではなく「投資」だということです。 |
❶ 育休を取得しやすい職場は、優秀な人材を採用・定着させる力を持つ 若年層にとって育休取得の実績は企業選択の重要な判断基準。「選ばれる企業」になるための投資 |
❷ 給付金・助成金を活用すれば、企業の財務的負担を軽減できる 出生後休業支援給付金(給付率最大80%)、両立支援等助成金の積極的な活用を |
❸ 「数字を追う」前に「なぜ育休取得を進めるのか」の共有を 行動計画の数値目標設定が義務化された今、形式的な達成でなく組織全体で目的を共有することが大切 |
| ※ 初回相談は無料です。就業規則の見直し・助成金申請もサポートしています。 |
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📖 根拠法令・参考資料
・育児・介護休業法(平成3年法律第76号) ・次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号) ・厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」(2025年7月30日公表) ・厚生労働省パワハラ防止指針(令和2年厚生労働省告示第5号) ・厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」 ・厚生労働省「法改正のポイント|育児休業制度特設サイト」 ・日本経済新聞「男性育休取得率が初の4割超 24年度40.5%」(2025年7月30日) ・WEB労政時報「男性育休、目標設定義務化 従業員100人超の企業 厚労省、法案提出へ」 |
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| ※ 本記事は上記の公開情報に基づき、経営者・人事担当者の皆様への情報提供を目的として作成しています。助成金の支給要件・金額は年度により変更される場合があります。最新の情報は厚生労働省の公式発表や、お近くの社会保険労務士にご確認ください。 |
執筆者 三重 英則(みえ ひでのり) 社会保険労務士法人T&M Nagoya 代表社員 特定社会保険労務士 / 経営心理士 / 経営法曹会議賛助会員 |