トップ
事務所案内
お問合せ
労務コンテンツ一覧
サービス案内
人事労務ニュース
リーフレット
リンク先
IPO労務監査・改善
M&A労務監査
労働問題解決
高難度業務対応
就業規則作成・改定
給与監査顧問
給与計算代行
手続代行・手続監査
お知らせ
作成日:2026/04/13
【令和8年度】地方労働行政運営方針を読み解く
労働行政

【令和8年度】地方労働行政運営方針を読み解く
─ 厚生労働省が示す「今年の重点課題」全体要約版 ─

社会保険労務士法人T&M Nagoya|2026年4月


厚生労働省は令和8年4月10日付で「「令和8年度地方労働行政運営方針について」」を策定・公表しました。この方針は、各都道府県労働局が今年度の重点課題と具体的な取組を定めるための"指南書"であり、労働基準監督署の定期監督やハローワークの支援施策の方向性を示すものです。

本記事では、全35ページにわたる運営方針の内容を、経営者の皆さまに分かりやすい形で全テーマを網羅的に要約いたします。「今年、行政が何を重視し、どこに力を入れるのか」を把握することで、先手を打った労務管理が可能になります。


📌 この記事の要点

@ 賃上げ支援・同一労働同一賃金の遵守徹底が最優先テーマ

A カスタマーハラスメント対策法(令和8年10月1日施行)への対応が急務

B 改正労働安全衛生法の段階的施行(ストレスチェック義務拡大・高齢者安全対策等)

C 医療・介護・保育分野の人材確保が「全ハローワーク最重点事項」に格上げ

D 改正女性活躍推進法・改正育児介護休業法の履行確保が強化される

E フリーランスの就業環境整備と労働者性判断の体制が充実


全体像|令和8年度の6大柱

令和8年度の地方労働行政運営方針は、大きく6つの柱で構成されています。

第3 最低賃金・賃金の引上げに向けた支援、非正規雇用労働者への支援

第4 リ・スキリング、ジョブ型人事(職務給)の導入、労働移動の円滑化

第5 人手不足対策

第6-1 多様な人材の活躍促進(高齢者・障害者・外国人・若者等)

第6-2 女性活躍推進・ハラスメント対策・両立支援

第6-3 安全で健康に働くことができる環境づくり・フリーランス支援

全体を貫くキーワードは、「物価上昇を上回る賃上げの継続」「労働供給制約への対応」「多様で柔軟な働き方」の3つです。以下、各柱のポイントを順に解説します。


第3|賃上げ支援・同一労働同一賃金・年収の壁

▶ 賃上げ支援助成金パッケージの周知強化

「賃上げ支援助成金パッケージ」として、生産性向上(設備・人への投資)、非正規雇用労働者の処遇改善、より高い処遇への労働移動を包括的に支援する助成金群の周知が行われます。経済産業省等の関係省庁や地方公共団体の支援策との連携も強調されており、「働き方改革推進支援センター」との連携を含め、事業者が自らのニーズに沿った支援策を活用できる体制が整備されます。

あわせて、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」に基づき、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の事業主への周知が進められます。

▶ 同一労働同一賃金の遵守徹底

今年度も引き続き、監督署の定期監督等において同一労働同一賃金の確認が実施されます。短時間・有期雇用・派遣労働者の待遇状況について企業から情報提供を受け、是正指導の実効性を高める方針です。

特に注目すべきは、基本給・賞与について正社員との待遇差がある理由の「説明が不十分な企業」に対する点検要請が継続されることです。加えて、同一労働同一賃金の施行5年後見直しに関する労政審での議論を踏まえた指針改正の円滑な施行に向けた周知が進められます。

▶ 非正規雇用労働者の処遇改善・年収の壁対応

キャリアアップ助成金では、「正社員化コース」「賃金規定等改定コース」に加え、「年収130万円の壁」への対応として令和7年7月に新設された「短時間労働者労働時間延長支援コース」の周知・活用勧奨が実施されます。

▶ 無期転換ルールの周知

令和6年4月から労働条件の明示事項に無期転換申込機会と無期転換後の労働条件が追加されたことを踏まえ、令和7年12月に公表された「無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例」を含めた周知が継続されます。

✅ 経営者のチェックポイント

正社員とパート・有期社員の待遇差について、「なぜ差があるのか」を合理的に説明できますか? 監督署の定期監督で確認される可能性があります。説明の準備と賃金制度の点検を今のうちに行いましょう。


第4|リ・スキリング・ジョブ型人事・労働移動の円滑化

▶ 教育訓練給付の拡充とリ・スキリング国民運動

令和7年10月に創設された「教育訓練休暇給付金」(雇用保険被保険者が教育訓練のための休暇を取得した場合の生活費支援)や、雇用保険被保険者以外への「リ・スキリング等教育訓練支援融資」の周知が引き続き行われます。

さらに、令和8年度から新たに全世代型リ・スキリングを促進する国民運動が実施されます。全国的な周知広報キャンペーンを通じ、リ・スキリングの重要性・必要性の認知向上が図られます。

▶ ジョブ型人事指針の周知・配偶者手当の見直し

「ジョブ型人事指針」を通じた職務給導入の支援とともに、配偶者手当の見直しについても中小企業への周知が強化されます。配偶者手当は「女性の就労を抑制している場合がある」との指摘を踏まえたものです。

▶ 労働市場の見える化と中途採用支援

「job tag」「しょくばらぼ」の活用促進に加え、新たに構築された労働関係情報のワンストップ・プラットフォーム「みんなの労働ナビ」の周知が行われます。また、賃金上昇を伴う中途採用者の雇用拡大を支援する早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)の活用促進も進められます。


第5|人手不足対策

▶ 医療・介護・保育分野が「全ハローワーク最重点事項」に

令和8年度は「医療・福祉ささえる求人充足プロジェクト」と銘打ち、全ハローワークの最重点事項として医療・介護・保育分野の事業所へのアウトリーチ支援が展開されます。ハローワーク所長自ら事業所訪問に積極対応し、部門横断・組織一丸での求人充足支援が実施されます。

背景には、民間職業紹介事業者のシェア拡大と、急な離職による欠員・紹介手数料負担の問題があります。ナースセンター、福祉人材センター等との連携も強化されます。

▶ 雇用仲介事業者への規制強化

お祝い金・転職勧奨の禁止が職業紹介事業の許可条件に追加され、職種毎の平均手数料率の公開が義務化されています。「スポットワーク」仲介事業者についても法違反があれば適切に指導する方針です。

▶ その他の人手不足分野

建設・運輸・警備分野でのマッチング支援強化、人材確保等支援助成金や社会保険労務士等を活用した雇用管理改善コンサルティングの活用も引き続き推進されます。


第6-1|多様な人材の活躍促進

▶ 高齢者の活躍促進

70歳までの就業機会確保に向けた環境整備が引き続き推進されます。「65歳超雇用推進助成金」は令和8年度から助成額が拡充され、70歳までの就業確保措置・高齢期の処遇改善・氷河期世代を含む有期雇用労働者の無期雇用転換に取り組む企業への支援が強化されます。全国300か所の「生涯現役支援窓口」での伴走型支援や、セカンドキャリア研修の新規実施も注目点です。

▶ 障害者の就労支援

令和7年4月に除外率が10ポイント引き下げられ、令和8年7月には法定雇用率が2.7%に引上げ予定です。障害者雇用ゼロ企業をはじめ、採用準備段階から職場定着までの一貫したチーム支援が実施されます。精神障害者・発達障害者・難病患者の多様な障害特性に対応した専門支援も充実します。

▶ 外国人労働者の支援

外国人留学生の国内就職支援、定住外国人への相談支援に加え、外国人労働者の雇用管理の適正化に向けた事業所訪問指導・セミナーが実施されます。技能実習生については、人身取引が疑われる事案への司法処分を含む厳正対処が明記されています。多言語相談体制として全国13言語対応が整備されます。

▶ 就職氷河期世代・若者への支援

就職氷河期世代を含む中高年層向けの専門窓口によるチーム制の一貫支援が継続されます。若者については、採用活動の早期化に伴う二極化への対応や、ユースエール認定の取得促進を通じた中小企業の人材確保支援が強化されます。

▶ 雇用保険制度の適正運営

令和10年10月から施行される雇用保険被保険者資格の適用拡大に向けて、デジタル技術を活用した電子申請の拡充が進められます。雇用関係助成金の不正受給には、支給決定前の能動的な実地調査による厳正な対処が徹底されます。


第6-2|女性活躍推進・ハラスメント対策・両立支援

▶ 改正女性活躍推進法(令和8年4月1日施行)

令和7年6月に成立した改正女性活躍推進法により、常時雇用101人以上の事業主に男女間賃金差異・女性管理職比率の情報公表が義務化されます(令和8年4月1日施行)。要因分析と「説明欄」の活用の重要性について周知が進められるほか、新設された「えるぼしプラス」認定制度の取得勧奨、不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースの活用促進も行われます。

▶ カスタマーハラスメント対策法(令和8年10月1日施行)

⚠ 要注目|令和8年10月1日施行

改正労働施策総合推進法等により、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止および求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止のための雇用管理上の措置が事業主に義務付けられます。施行後は、カスハラ防止指針・求職者等セクハラ防止指針に基づく着実な履行確保が図られます。

既存のパワーハラスメント防止措置についても、防止措置を講じていない事業主に対する厳正な指導が引き続き実施されます。12月の「ハラスメント撲滅月間」を中心とした周知啓発も継続されます。

▶ 育児・介護休業法の改正対応

令和6年5月に成立し令和7年4月・10月に段階的施行された改正育児・介護休業法の履行確保が強化されます。主なポイントは以下のとおりです。

・育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の義務付け

・男性育休取得状況の公表義務の対象を300人超の事業主に拡大

・出生後休業支援給付、育児時短就業給付(令和7年4月創設)の周知

・介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の周知強化

・次世代法に基づく行動計画策定義務の履行確保

権利侵害が疑われる事案や育休取得を理由とする不利益取扱いが疑われる事案には、積極的な報告徴収・是正指導が行われます。

▶ 多様な働き方の実現

多様な正社員制度(短時間正社員、勤務地限定、職務限定)の普及促進、テレワークの導入・定着促進、勤務間インターバル制度の導入促進、年次有給休暇の取得促進、選択的週休3日制の周知が引き続き進められます。


第6-3|安全衛生・労働条件確保・フリーランス支援

▶ 長時間労働の抑制

月80時間超の時間外・休日労働が疑われる事業場や、過労死等に係る労災請求が行われた事業場への監督指導が引き続き実施されます。一定期間内に複数の過労死等を発生させた企業に対しては、本社を管轄する労働局長から「過労死等の防止に向けた改善計画」の策定を求める指導が実施されます。

建設業については改正建設業法(工期ダンピング対策)、トラック運転者については改正物流法(令和8年4月全面施行)、医師についてはタスクシフト/タスクシェアの支援が、それぞれ業種別に進められます。

▶ 労働条件の確保・改善

法定労働条件の確保に向けて、重大・悪質な事案には司法処分を含む厳正な対処が行われます。夜間・休日対応の「労働条件相談ほっとライン」やインターネット情報監視で収集された情報に基づく監督指導も継続されます。裁量労働制の不適正運用の監督、外国人労働者・自動車運転者・障害者の各分野での法令遵守の確保も重点事項です。

なお、「スポットワーク」については、使用者向け・労働者向けリーフレットの周知と、相談への丁寧な対応が行われます。

▶ 改正労働安全衛生法の段階的施行

⚠ 要注目|改正安衛法の施行スケジュール

令和8年4月〜 高年齢労働者の安全対策(作業環境改善等の努力義務化)、個人事業者等を含む統括管理の対象拡大、化学物質の自律的管理の対象拡大(約2,900物質)、登録設計審査等機関制度の開始

令和8年10月〜 個人ばく露測定の作業環境測定としての位置付け義務化

令和9年1月〜 個人事業者等の災害報告制度の創設

令和9年4月〜 個人事業者等自身の措置義務、混在作業での措置義務

メンタルヘルス対策では、改正安衛法に基づく50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の義務化を見据え、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」の周知が行われます。治療と就業の両立支援についても、改正労働施策総合推進法により事業主の努力義務となったことを踏まえた指針の周知が進められます。

その他、高年齢労働者・転倒・腰痛対策としてエイジフレンドリー補助金の活用促進、熱中症予防対策として改正労働安全衛生規則の履行確保(報告体制整備・重篤化防止措置手順作成の義務化)なども重点事項です。

▶ フリーランスの就業環境整備

フリーランス・事業者間取引適正化等法の着実な履行確保が継続されます。全国の監督署に設置された「労働者性に疑義がある方の労働基準法相談窓口」では、申告があった場合に原則として労働者性の有無を判断し、必要な指導が行われます。労基法上の労働者と判断された事案は、年金事務所や労働保険適用部門への情報提供が徹底されます。


まとめ|令和8年度に経営者が押さえるべき7つのアクション

1. 同一労働同一賃金の点検:正社員と非正規社員の待遇差の説明ができるか再確認

2. カスハラ対策の体制整備:10月1日施行に向けた対応方針・マニュアルの策定

3. 男女間賃金差異の情報公表:101人以上の事業主は4月1日施行に対応

4. 障害者雇用率2.7%への準備:7月引上げに向けた採用計画の策定

5. 安全衛生体制の見直し:高齢者安全対策の努力義務化、化学物質管理の対象拡大への対応

6. 育児・介護休業制度の運用点検:男性育休取得の推進と不利益取扱いの防止

7. 助成金の活用検討:賃上げ支援パッケージ、キャリアアップ助成金、65歳超雇用推進助成金等


令和8年度の地方労働行政運営方針は、「賃上げの継続」と「多様な人材が安全に働ける環境づくり」を両輪とし、監督署の定期監督・是正指導とハローワークの支援施策の両面から推進されます。

私たち社会保険労務士法人T&M Nagoyaは、「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」というミッションのもと、この運営方針が示す行政の重点課題を踏まえた実務対応をサポートいたします。「うちの会社は大丈夫だろうか」「何から手をつければよいか」─ そのようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。


無料相談のお申込みはこちら

📝 根拠資料・関連法令

・「令和8年度 地方労働行政運営方針」(地発0410第1号・基発0410第1号・職発0410第1号・雇均発0410第3号・開発0410第1号、令和8年4月10日)

・労働基準法(昭和22年法律第49号)、労働契約法(平成19年法律第128号)

・パートタイム・有期雇用労働法(平成5年法律第76号)、労働者派遣法(昭和60年法律第88号)

・労働施策総合推進法(昭和41年法律第132号)、男女雇用機会均等法(昭和47年法律第113号)

・女性活躍推進法(平成27年法律第64号)、育児・介護休業法(平成3年法律第76号)

・労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)

・高年齢者雇用安定法(昭和46年法律第68号)、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)

・フリーランス・事業者間取引適正化等法(令和5年法律第25号)


※ 本記事は令和8年4月10日公表時点の「令和8年度 地方労働行政運営方針」の要約です。記事は情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言を構成するものではありません。具体的な対応にあたっては、社会保険労務士や弁護士等の専門家にご相談ください。


執筆者

三重 英則(みえ ひでのり)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 代表社員

特定社会保険労務士・経営心理士・経営法曹会議賛助会員