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作成日:2026/04/10
自民党が「労基署の残業指導見直し」を提言へ ―月45時間超の時間外労働も柔軟に?企業が今すぐ確認すべきこと―
労働時間規制 速報解説
【2026年4月最新】自民党が「労基署の残業指導見直し」を提言へ
―月45時間超の時間外労働も柔軟に?企業が今すぐ確認すべきこと―
2026年4月10日 / 社会保険労務士法人T&M Nagoya
📌 この記事の要点
@ 2026年4月9日、自民党の日本成長戦略本部が「労基署の残業指導運用の見直し」を盛り込んだ提言案を了承
A 月45時間以内への一律削減指導を見直し、36協定・特別条項の範囲内で時間外労働がしやすくなる方向を目指す内容
B 上限規制(月100時間未満・年720時間等)の法改正ではなく、「労基署の指導姿勢」の変更がポイント
C 企業は「法令遵守」と「従業員の健康確保」を両立する自社のルール・体制の再点検が急務
1. 何が起きたのか? ― 自民党提言の概要

2026年4月9日、自民党の日本成長戦略本部(本部長:岸田文雄元首相)は、高市早苗首相が掲げる「もっと働きたい改革」に関する提言案を了承しました。

報道によれば、提言案の主なポイントは次の2点です。

📋 提言案の2大ポイント
1 労基署の一律指導の見直し
「時間外労働を月45時間以内に削減することを求める一律の指導を見直す」
2 36協定・特別条項の活用支援
「違法な残業にならないように36協定や特別条項の締結に向けたサポートを行う」=労基署に「取締り」だけでなく「支援」の役割を求める内容

提言は近く高市首相に手渡され、2026年夏にまとまる「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)への反映を目指しているとされています。

2. 現行の時間外労働ルールをおさらい

今回の提言を正しく理解するには、現行の労働基準法における時間外労働の枠組みを押さえておくことが不可欠です。

区分 上限 根拠
法定労働時間 1日8時間・週40時間 労基法32条
36協定(原則) 月45時間・年360時間 労基法36条4項
特別条項(臨時的な特別の事情) 年720時間以内
月100時間未満(休日労働含む)
2〜6か月平均80時間以内
月45時間超は年6回まで
労基法36条5項・6項
罰則 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条1号)

この表のとおり、「月45時間」はあくまで36協定の原則的な上限であり、適法に特別条項を締結すれば月45時間を超える時間外労働は現行法でも可能です。

しかし実務上は、労基署が企業に対して「月45時間以内に抑えるように」という一律の行政指導を行っており、特別条項の範囲内であっても企業が「指導を受けている」と感じるケースが少なくなかったとされています。

今回の提言は、この「指導のスタンス」を変えようというものであり、法律の上限規制そのものを緩和するものではない点が重要です。

3. 提言の背景 ― なぜ今、この議論が出てきたのか

今回の提言の背景には、以下のような流れがあります。

📅 時系列で見る提言への道のり
2019年4月〜 働き方改革関連法施行。罰則付き時間外労働の上限規制がスタート(中小企業は2020年4月〜)

2024年1月 厚生労働省が「労働基準関係法制研究会」を設置。約40年ぶりの労基法大改正に向けた議論を開始

2025年1月 同研究会が報告書を公表。連続勤務14日以上禁止、勤務間インターバル義務化等の規制強化の方向性を提示

2025年7月 参院選で自民党が「働きたい改革」を公約に掲げる。過労死遺族らが反対声明を発表

2025年10月 高市早苗首相就任。上野厚労相に「労働時間規制の緩和の検討」を指示

2025年12月 規制強化(厚労省案)と規制緩和(政権方針)の調整がつかず、2026年通常国会への労基法改正案提出を見送り

2026年4月9日 自民党日本成長戦略本部が労基署の指導見直し提言案を了承(←今回のニュース)

注目すべきは、法改正の議論が行き詰まるなか、法改正を経ずに行政運用(指導のあり方)を変更するという手法が取られようとしている点です。

法律上の上限規制自体は維持しつつ、「労基署の指導方針」という運用レベルで実質的な変化をもたらそうとするアプローチと言えます。

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4. 企業にとってのメリットと懸念点
✅ 企業側から見たメリット(想定)
@ 繁忙期の対応力向上
特別条項の範囲内で月45時間を超える時間外労働がしやすくなり、受注増や季節変動への対応に柔軟性が増す可能性がある

A 36協定・特別条項の適正活用が促進
労基署が「取り締まり一辺倒」から「適法な協定締結のサポート」に軸足を移すことで、特に中小企業にとって制度活用のハードルが下がる

B 労基署との関係性の変化
「指導を受ける=悪いこと」という萎縮効果が薄れ、より建設的な相談・指導関係が構築される可能性
⚠️ 見過ごせない懸念点
@ 長時間労働の助長リスク
専門家からは「残業削減の圧力が弱まることで、長時間労働が常態化しかねない」という懸念の声が上がっている

A 過労死ラインとの関係
過労死認定の目安は時間外労働が月80時間超。特別条項の上限(月100時間未満)は過労死ラインに近接しており、安易な運用は重大な健康リスクに直結する

B 「働きたい」と「働かされる」の境界
労使間の交渉力格差を考えると、労働者個人の「もっと働きたい」という意思が真に自由なものかどうか、慎重な検討が必要

C 人材確保・定着への逆効果
特に若年層や子育て世代にとって、残業が常態化する企業は選ばれにくい。長期的な人材戦略との整合性が問われる
5. 経営者・人事担当者が今すぐ確認すべき5つのチェックポイント

今回の提言が骨太の方針に反映され、実際に指導方針が変更されるかは今後の推移を見守る必要がありますが、「法令遵守+健康経営」の視点から、以下の点を今すぐ確認しておくことをお勧めします。

🔍 5つのチェックポイント
Check 1|36協定の内容は最新か?
協定の有効期限、対象業務、上限時間が現在の実態に合っているかを確認。未届出や期限切れは違法状態になります。

Check 2|特別条項は適切に設定されているか?
「臨時的な特別の事情」が具体的に記載されているか、年6回の制限を超えていないか、月100時間未満・複数月平均80時間以内の要件を満たせる体制かを確認。

Check 3|労働時間の把握・記録体制は万全か?
客観的方法(タイムカード、ICカード、PCログ等)による労働時間の記録が適切に行われているか。自己申告制の場合は特に注意が必要です。

Check 4|長時間労働者への健康確保措置は機能しているか?
月80時間超の労働者への医師面接指導(労安衛法66条の8)の実施体制、ストレスチェック結果の活用状況を確認。

Check 5|就業規則・賃金規程と実態のズレはないか?
固定残業代の設定時間と実労働時間の乖離、割増賃金の計算基礎の適正性を点検。「指導が緩くなる=未払残業代リスクがなくなる」わけではありません。
6. 社労士からの視点 ― 「規制緩和」ではなく「自律管理」の時代へ

今回の提言で最も重要なメッセージは、「労基署の指導が緩くなること」ではなく、「企業が自律的に労働時間を管理する責任がより重くなること」です。

これまでは、労基署の一律指導が「歯止め」として機能していた面がありました。その歯止めが弱まるということは、企業自身が法令遵守と健康確保の両立を主体的に設計・運用しなければならないことを意味します。

特に注意すべきは以下の点です。

⚡ 指導方針が変わっても、法律上の上限規制は変わりません。
月100時間未満・複数月平均80時間以内等の罰則付き上限は維持されています。

⚡ 民事上の安全配慮義務(労働契約法5条)は変わりません。
過重労働による健康被害が発生した場合、損害賠償責任を負うリスクはむしろ高まると考えられます。行政の指導が弱まった環境下で長時間労働を放置していた場合、「企業として予見・回避できたのに何もしなかった」と評価される可能性があります。

⚡ 未払残業代の請求リスクは変わりません。
労働者からの未払残業代請求訴訟のリスクは、行政指導の方針変更とは無関係に存在し続けます。消滅時効は現行3年(経過措置終了後は5年)です。
7. 今後の注目スケジュール
時期(見込み) 注目イベント
2026年4月中 自民党提言の首相への提出
2026年夏 骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)の決定 ← ここに反映されるかが最大の焦点
2026年〜2027年 労働政策審議会での労基法改正議論(規制強化と規制緩和の調整)
2027年以降 労基法改正法案の国会提出・成立(時期は未確定)
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根拠法令・出典
・労働基準法 第32条(労働時間)、第36条(時間外及び休日の労働)、第119条(罰則)
・労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮)
・労働安全衛生法 第66条の8(面接指導等)
・朝日新聞「残業めぐり労基署の指導見直し提言へ 自民、政府に 月45時間超も」(2026年4月9日付)
・日本経済新聞「自民党、労使協定内で残業時間柔軟に 一律指導停止を提言」(2026年4月9日付)
・東京新聞「36協定の締結促進や、労基署の一律指導緩和…自民が労働時間制度の運用見直しを近く高市首相に提言」(2026年4月10日付)
・厚生労働省「労働基準関係法制研究会」報告書(2025年1月8日公表)
※ 本記事は2026年4月10日時点の報道および公表情報に基づいて作成しています。提言の最終的な内容、骨太の方針への反映状況、法改正の動向については今後変更される可能性があります。
※ 記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的助言を構成するものではありません。具体的な対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。
WRITTEN BY
三重 英則(みえ ひでのり)
社会保険労務士法人T&M Nagoya 代表社員
特定社会保険労務士 / 経営心理士 / 経営法曹会議賛助会員