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作成日:2026/04/09
フリーランス新法 ― 施行後に何が起きているか
法務ブリーフィング
フリーランス新法 ― 施行後に何が起きているか
公正取引委員会が動き出しました。御社は大丈夫ですか?
2026年4月8日 / 執筆:三重 英則|社会保険労務士法人T&M Nagoya
2024年11月、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称フリーランス新法が施行されました。

施行からおよそ1年半。すでに公正取引委員会は45社への行政指導と大手出版社2社への勧告を実施しています。「うちは小さい会社だから関係ない」と思っていませんか? 実はフリーランスに仕事を1件でも発注していれば、御社もこの法律の対象です。

本記事では、フリーランス新法の概要から実際の違反事例、そして御社が今すぐ取るべき対応までをわかりやすく解説します。
📌 この記事でわかること
✓ フリーランス新法の全体像と4つの基本ルール
✓ 公正取引委員会による行政指導・勧告の具体的事例
✓ 違反した場合のペナルティ(罰金・社名公表)
✓ 御社が今すぐ確認すべきチェックリスト
✓ 対応スケジュールの目安

フリーランスに業務を発注している中小企業の経営者・管理者の方は、ぜひ最後までお読みください。
1. そもそも「フリーランス新法」って何?
正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)といいます。かみ砕いて言うと、「フリーランスに仕事を頼むときのルール」を定めた法律です。

これまで、個人のフリーランスは会社と比べて立場が弱く、「報酬を払ってもらえない」「急に仕事を打ち切られた」といったトラブルが多発していました。フリーランス・トラブル110番への相談件数は月750件以上にのぼります。

この法律は、そうしたトラブルからフリーランスを守るために作られました。業種や資本金の金額にかかわらず、フリーランスに業務を発注するすべての事業者が対象です。
2. 御社がやるべきこと ― 4つのルール
ルール1 ― 条件をすぐ書面で渡す(第3条)

フリーランスに仕事を頼んだら、直ちに以下の6項目を書面またはメール等で伝えなければなりません。

❶ 仕事の内容(何をやってもらうか)
❷ 報酬の金額(いくら払うか)
❸ 支払期日(いつ払うか)
❹ 発注者の名前
❺ 業務委託をした日
❻ 納品日

口頭だけの発注はNGです。メール・チャットでもOKですが、記録が残る形にしてください。
ルール2 ― 報酬は60日以内に払う(第4条)

フリーランスから成果物を受け取った日から数えて、60日以内に報酬を支払わなければなりません。

「翌々月末払い」のような支払いサイトが長い契約は、見直しが必要な場合があります。
ルール3 ― 7つの禁止行為を守る(第5条)

1ヶ月以上の継続取引では、以下の行為が禁止されています。

❶ 成果物の受け取り拒否
❷ 報酬の減額(後から値引きする)
❸ 返品(やり直しの強要)
❹ 買いたたき(不当に安い報酬での発注)
❺ 物品の購入やサービス利用の強制
❻ 不当な経済的利益の提供要請
❼ 発注内容の不当な変更・やり直し

これらは下請法の規制を個人のフリーランスにも拡大したものと理解するとわかりやすいです。
ルール4 ― ハラスメント対策と育児介護配慮(第12〜14条)

フリーランスに対しても、ハラスメント防止体制の整備が求められます。
また、6ヶ月以上の継続取引では、フリーランスからの申出に応じて育児・介護との両立に配慮する義務もあります。

従業員だけでなく、取引先のフリーランスも保護の対象に含まれた点が大きな変化です。
3. すでに「お咎め」を受けた会社があります
【事例1】ゲーム・アニメ業界等 45社への行政指導(2025年3月)

公正取引委員会が77社を調査した結果、45社で違反(または違反の可能性)が確認されました。

対象業界はゲーム、アニメ制作、リラクゼーション、フィットネスなど多岐にわたります。

主な違反内容:
・業務委託の条件を書面やメールで明示していなかった(第3条違反)
・報酬の支払期日を明確に定めていなかった(第4条違反)

これはフリーランス新法に基づく初めての行政指導事例であり、公正取引委員会が本法を積極的に運用する姿勢を明確にしたものです。
【事例2】大手出版社2社への勧告(2025年6月)

小学館と光文社に対し、ライター・カメラマン・イラストレーターとの取引で明示義務違反と報酬支払義務違反があったとして、公正取引委員会が勧告を行いました。

「勧告」は行政指導よりも重い措置であり、会社名が公表されます。

大企業だけの問題ではありません。同じルールが中小企業にも等しく適用されます。
4. 違反するとどうなるの?
段階 内容 影響
助言・指導 改善を求められる 社名は非公表
勧告 公正取引委員会から正式な勧告 社名が公表される
命令 是正命令 命令違反には50万円以下の罰金
社名が公表されると、取引先やフリーランスからの信用を失います。罰金の金額以上に、レピュテーション(評判)へのダメージが深刻です。

フリーランスの確保が事業継続に不可欠な業種(IT・クリエイティブ・建設業等)では、「あの会社はフリーランス新法違反で勧告を受けた」という情報が広まるだけで、優秀なフリーランスから敬遠されるリスクがあります。
5. 今すぐ確認してください(チェックリスト)
以下に1つでも当てはまる場合は、対応が必要です。
☐ フリーランス(個人事業主)に業務を発注している
☐ 発注時に書面やメールで条件を明示していない
☐ 報酬の支払いが成果物受領から60日を超えることがある
☐ 報酬額を後から減額したことがある
☐ フリーランスとの契約書のひな形を見直していない
☐ フリーランスに対するハラスメント防止の方針がない

1つでもチェックがつく場合は、早急な見直しをおすすめします。
6. 対応スケジュール(案)
いつまでに 誰が 何をする
今月中 経営者・管理部門 フリーランスとの取引の洗い出し
来月末まで 管理部門 契約書ひな形の見直し・整備
来月末まで 経理担当 支払いサイトの確認・60日以内への変更
2ヶ月以内 管理部門 発注時の条件明示フロー整備(メールテンプレート等)
3ヶ月以内 人事・総務 ハラスメント防止方針にフリーランスを含める
まとめ
フリーランス新法は、すべての事業者に等しく適用されます。「知らなかった」では済まされません。

しかし、必要以上に恐れることもありません。やるべきことはシンプルです。

❶ 発注時に条件を書面で明示する
❷ 報酬を60日以内に支払う
❸ 7つの禁止行為を避ける
❹ ハラスメント防止と育児介護への配慮

この4つを守れば、法令遵守は十分に可能です。

私たちT&M Nagoyaは、「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」をMISSIONに掲げています。フリーランス新法への対応も、契約書ひな形の整備から社内体制の見直しまで、伴走してサポートいたします。

「うちは大丈夫だろうか?」と少しでも不安を感じたら、まずはお気軽にご相談ください。
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契約書ひな形の整備・支払いフローの見直し・社内研修まで、ワンストップで対応いたします。

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【根拠法令】
・特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)
・同法第3条(取引条件の明示義務)、第4条(報酬の支払期日)、第5条(禁止行為)
・同法第12条〜第14条(ハラスメント対策・育児介護配慮)
・同法第24条〜第25条(罰則)

【参考資料】
・公正取引委員会「フリーランスの取引適正化に向けた取組」
・厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」
・政府広報オンライン「フリーランスが安心して働ける環境づくりのための法律」

【免責事項】
本記事は2026年4月時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。具体的な事案については、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
この記事を書いた人
三重 英則
社会保険労務士法人T&M Nagoya 代表社員
特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員

法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。