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作成日:2026/04/01
2029年、70歳就業時代へ−新たな高年齢者雇用対策基本方針を読み解く(厚生労働省)−

2029年、「70歳就業時代」が本格始動
――新たな高年齢者雇用対策基本方針が示す、企業が今すぐ動くべき理由


2026.04.01|社会保険労務士法人T&M Nagoya 代表 三重英則

経営者の皆さまに、重要な政策動向をお伝えします。

2026年3月31日、厚生労働省は新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」を策定・公表しました。

これは単なる「行政のお知らせ」ではありません。2029年までに達成すべき数値目標が設定され、70歳までの就業確保措置の実施率を40%以上に引き上げるという明確な方針が打ち出されました。

現在、70歳までの就業確保は「努力義務」にとどまっていますが、政府が数値目標を掲げた以上、将来の義務化は既定路線と考えるべきです。

本稿では、この基本方針の内容と、企業が今すぐ取るべき対応について、率直にお伝えします。

📌 この記事でわかること
✓ 新たな基本方針の概要と3つの数値目標
✓ 施策の3本柱と、その企業実務への影響
✓ 「努力義務→義務化」への流れをどう読むか
✓ 経営者が今すぐ着手すべき具体的アクション

「まだ先の話」ではありません。準備を始める企業と、始めない企業で差がつく時代に入りました。

1. 新たな基本方針とは何か――法的位置づけと背景

「高年齢者等職業安定対策基本方針」は、高年齢者等雇用安定法第6条第1項に基づき、厚生労働大臣が策定するものです。

人口動態や高年齢者の雇用・就業の実態を踏まえ、中期的な就業率目標を設定し、その達成に向けた施策の基本的方向を定める――いわば、国の高齢者雇用政策の「設計図」です。

今回の方針は、令和8年度(2026年度)から令和11年度(2029年度)までの4年間が対象期間。背景には、深刻化する人口減少と高齢化があります。

なぜ今、この方針が出されたのか

@ 生産年齢人口(15〜64歳)が急速に減少し、労働力の確保が困難に
A 65歳以上の就業意欲は高いが、受け皿となる制度整備が追いついていない
B 70歳までの就業確保措置(努力義務)の実施率が34.8%にとどまる
C 社会保障制度の持続可能性の観点からも、高齢者の就業促進が急務

「働きたい高齢者が働ける環境を整える」ことは、もはや福祉政策ではなく、国の存続に関わる経済政策です。

2. 2029年までの「3つの数値目標」を読み解く

基本方針の核心は、3つの明確な数値目標です。

指標 目標値(2029年) 現状実績(2024年) 必要な伸び
60〜64歳の就業率 79.0%以上 74.3% +4.7pt
65〜69歳の就業率 57.0%以上 53.6% +3.4pt
70歳までの就業確保措置の実施率 40.0%以上 34.8%(2025年6月時点) +5.2pt

⚠️ 最も注目すべきは「70歳就業確保措置の実施率40%」

現行法では、70歳までの就業確保は「努力義務」にとどまります。しかし、政府が明確な数値目標を掲げたことは、将来の義務化を見据えた布石と読むべきです。

65歳までの雇用確保義務も、かつては努力義務からスタートしました。同じ道筋をたどる可能性は極めて高いと考えられます。

「努力義務だからまだいい」ではなく、「義務化される前に準備する」企業が、次の時代を勝ち抜きます。

3. 施策の「3本柱」と企業への影響

基本方針では、目標達成に向けた3つの基本施策が掲げられています。それぞれが企業実務に直結する内容です。

@ 企業への支援措置の強化
70歳までの就業確保措置のさらなる拡大と、高齢期の処遇改善を図るための企業支援が強化されます。助成金の拡充や行政指導の強化が見込まれるため、「対応している企業」と「していない企業」の差が明確になる段階に入ります。
A きめ細かなマッチングの推進
ハローワークの「生涯現役支援窓口」を通じ、高齢期の多様なニーズに応じた就職支援が推進されます。企業側も、「シニアを活用する体制」を整えておくことで、公的な人材紹介の恩恵を受けやすくなります。
B 多様な就業機会の提供
シルバー人材センター事業の活性化等により、雇用だけでなく業務委託やボランティアも含めた幅広い就業・活躍の機会が提供されます。企業にとっては、「雇用」以外の選択肢も視野に入れた柔軟な制度設計が求められます。

4. 企業がいま確認すべき3つのポイント

No. 確認項目 具体的な検討内容
@ 継続雇用制度の上限年齢 現在の再雇用制度は65歳が上限の企業が大半。70歳までの就業確保措置(定年延長・継続雇用・業務委託等)の導入を具体的に検討する段階。行政指導の強化も見込まれる。
A 高齢社員の処遇設計 定年後再雇用時の大幅な賃金引き下げは、同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)の観点からリスク大。各種手当・賞与の支給基準を含め、合理的な説明ができる制度が必要。
B 多様な就業形態の整備 基本方針は「雇用」だけでなく「就業」という広い概念を使用。業務委託(創業支援等措置)も選択肢だが、実質的に労働者性が認められると偽装請負のリスク。契約と実態の整合性に要注意。

5. 今後の見通し――経営者が押さえるべき3つの流れ

【見通し1】努力義務から義務化へ

65歳までの雇用確保義務も、かつては努力義務から段階的に義務化されました。70歳就業確保についても、同じ道筋が想定されます。数値目標の設定は、その第一歩です。

早めに制度を設計しておけば、法改正時に慌てずに済みます。これは「コスト」ではなく「経営リスクの低減」です。
【見通し2】助成金制度の拡充

「企業支援の強化」が基本方針に明記されています。65歳超雇用推進助成金をはじめとする助成金の拡充・要件緩和が見込まれます。

制度を整えている企業ほど、助成金を活用しやすくなります。最新情報を定期的にチェックし、活用できるものは積極的に申請する姿勢が重要です。
【見通し3】高齢者の労災リスクへの対応強化

高齢者の就業率が上がれば、当然ながら労災リスクも高まります。安全配慮義務の観点から、作業環境の整備、健康管理体制の見直し、リスクアセスメントの実施が一層重要になります。

「雇用したけれど安全管理が追いつかない」では、本末転倒です。

6. 経営者が「今すぐ」取るべき4つのアクション

1 現行の継続雇用制度を棚卸しする
自社の定年年齢、再雇用制度の上限、処遇条件を改めて確認してください。「65歳まで」で止まっている場合、70歳までの就業確保措置を検討するスタートラインに立つ必要があります。
 
2 再雇用者の処遇を「同一労働同一賃金」の視点で点検する
定年後の賃金が「一律○割減」になっていませんか。基本給、手当、賞与のそれぞれについて、正社員との差に合理的な説明ができるか確認しましょう。不合理な待遇差は、訴訟リスクに直結します。
 
3 高齢社員の安全衛生管理体制を見直す
転倒、腰痛、熱中症――高齢者特有の労災リスクに対する安全配慮義務は年々厳格化しています。作業環境の改善、定期健康診断の充実、無理のない業務配分を再確認してください。
 
4 専門家に相談し、総合的な制度設計に着手する
継続雇用制度の設計、就業規則の改定、助成金の活用、安全衛生対策――これらはすべて連動しています。場当たり的な対応ではなく、社労士等のプロと一緒に、一貫した戦略を立てることが重要です。

対応スケジュール(目安)

時期 取組内容
2026年4〜6月 【現状把握】自社の定年・再雇用制度、処遇条件、高齢社員の在籍状況を棚卸し。課題の洗い出し。
2026年7〜9月 【制度設計】70歳までの就業確保措置の方式決定(定年延長/継続雇用延長/業務委託等)。処遇制度の見直し。
2026年10〜12月 【規程整備】就業規則・再雇用規程の改定。安全衛生管理体制の見直し。助成金申請の準備。
2027年1月〜 【運用開始】新制度の施行。従業員への周知・説明。運用状況のモニタリング開始。

⚠️ 「うちはまだ関係ない」は最も危険な判断です

「まだ努力義務だから」「高齢社員は少ないから」――そう考える企業は多いかもしれません。

しかし、法改正は突然やってきます。準備期間なしに義務化されれば、その日から対応を迫られます。

65歳雇用確保義務化のときも、「まさかここまで」と慌てた企業は少なくありません。同じ轍を踏まないために、今この瞬間から、準備を始めてください。

70歳就業時代に備える。
その第一歩を、今日から。


社会保険労務士法人T&M Nagoya は、
「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」
ことをMISSIONとしています。

継続雇用制度の設計から、処遇改善、助成金活用まで。
一緒に、最適な制度をつくりましょう。


▶ 無料相談のお申し込みはこちら

【根拠法令・参考情報】
・高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者等雇用安定法)第6条第1項
・同法第9条(高年齢者雇用確保措置)、第10条の2(高年齢者就業確保措置)
・短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)第8条、第9条
・厚生労働省「新たな『高年齢者等職業安定対策基本方針』を策定しました」(令和8年3月31日)

【免責事項】
本記事は2026年4月1日時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。具体的な制度設計や法的対応については、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。

この記事を書いた人
三重 英則(HIDE)
社会保険労務士法人T&M Nagoya 代表社員
特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員

法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。