| 裁判例解説 |
育休から復帰したその日の「内勤配転」で外勤手当が止まった 東京地裁令和8年2月18日判決が配転命令を無効とし、3か月弱後の定期異動は有効とした分かれ目 |
| 2026年10月26日|社会保険労務士法人T&M Nagoya 三重 英則(特定社会保険労務士) |
|
|
おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。
育児休業から戻ってくる社員の配置を、いつ決めているでしょうか。「復帰してから様子を見て決める」「しばらくは内勤で慣れてもらう」という運用は、多くの職場で善意から行われています。しかし、その配置が賃金の減少を伴うとき、会社の善意は裁判所には別の形で映ることがあります。
東京地裁が2026年2月18日に言い渡した判決は、約3か月の育児休業から復帰した男性社員を、復帰当日に外勤営業職から内勤職へ移し、外勤手当の支給を止めた配転命令を無効としました。他方で、その3か月弱後に行われた年度初めの定期異動は有効としています。同じ会社、同じ社員に対する2つの配転で、結論が分かれました。本記事では、その分かれ目がどこにあったのかを整理し、育休復帰時の配置と処遇を決めるときに会社が押さえておくべき点を考えます。
|
| 📌 この記事でわかること |
|
✓ 東京地裁は2026年2月18日、育児休業から復帰した当日に男性社員を外勤営業職から内勤職へ移し、外勤手当の支給を止めた配転命令を、配転命令権の濫用として無効としたこと
✓ 判決は、復帰のタイミングで手当の不支給を伴うこと、育児介護休業法10条の趣旨、会社の育児休業規程が復帰時の職場・職務を原則として休業直前のものとしていたことから、業務上の必要性が労働者の不利益を「相当程度上回る」必要があるという、通常より厳しい物差しを用いたこと
✓ 会社が挙げた繁忙期の連絡ミス防止や休業が延びる可能性は「やや抽象的」「一般的な可能性」にとどまるとされ、月5万3220円の外勤手当の不支給を正当化できないとして、3か月分の外勤手当と慰謝料20万円の支払が命じられたこと
✓ 復帰から3か月弱後の年度初めの定期異動は、適正な人員配置の必要によるもので、育児休業を理由とすることを認める証拠はないとして有効とされたこと。同じ日に会社が外勤手当を全社で廃止した給与規程の改定も、合理性があるとされたこと
✓ 判決は控訴されており、確定していないこと
復帰後の配置は、復帰した日ではなく、休業に入る前から準備しておくもの。本判決はそのことを会社に求めています。
|
|
| 1 本記事の情報源 |
|
本記事は、労働判例1354号(2026年8月1日・15日合併号)74頁に掲載された判決文(東京地裁令和8年2月18日判決、令和5年(ワ)第18575号)に基づいています。掲載誌には、一部認容・一部棄却・一部却下で控訴と表示されています。控訴審の結果は確認できておらず、判決は確定していません。被告は建築資材等の販売や建築工事等を行う会社で、本記事では会社名を記載しません。
本件では、配転命令の効力のほかに、外勤手当が固定残業代に当たるか、原告が別の労働組合(地域労組)に加入し、多数組合を脱退した後も労働協約が適用されるか、外勤手当を廃止した給与規程の改定が有効か、昇給や賞与で不利益に扱われたかも争われました。本記事は、このうち育休復帰時の配転を中心に取り上げます。
|
|
判決が認定した事実経過は次のとおりです。
|
| 時期 |
判決が認定した事実 |
| 平成30年2月 |
採用。採用決定条件明示書には、給与として外勤手当4万8000円と記載されていた。以後、リフォーム営業等の外勤営業職として勤務。判決は、外勤手当を、毎週水曜日を除く定時終業後1時間30分(1か月当たり約24時間)の時間外労働の対価として支払われる固定残業代と認定した |
| 令和4年9月10日 |
開始予定日を同年10月10日、職場復帰日を令和5年1月10日として育児休業を申し出る |
| 令和4年10月10日 |
育児休業を開始(令和5年1月9日まで)。休業前に、担当顧客に休業中は別の社員が担当する旨を連絡 |
| 令和4年12月20日 |
予定どおり1月10日に復帰すると上司に連絡。上司は、まずは営業ゼッケンをつけられないので、引継ぎ先の社員のフォローや内勤の手伝いをお願いすることになると思う、という趣旨の返信をする |
| 令和5年1月10日 |
職場復帰。同日、担当職務が外勤営業職から内勤職に変更される(配転命令1)。以後、外勤手当(月5万3220円)が支給されなくなる |
| 令和5年1月12日 |
人事部長と上司から、職務変更と外勤手当の不支給の説明を受け、異議を述べる。上司は、内勤業務をしながら現場調査や取引先への訪問などの外勤業務を行うことは可能であり、外勤営業職として扱えないかと提案し、人事部長は検討すると答える |
| 令和5年1月25日 |
人事部長から、再度協議したが結論は変わらないと伝えられる |
| 令和5年2月2日 |
配転命令1には同意しないが、さらなる不利益を避けるため異議を留めて内勤業務に従事する旨を、内容証明郵便で会社に通知 |
| 令和5年2月15日 |
会社が、配転命令1は有効で拒否できず、これ以上の留保は看過できず懲戒処分も辞さない旨を、内容証明郵便で通知 |
| 令和5年4月1日 |
新設の部署の営業職へ配置転換される(配転命令2)。同日、会社は給与規程を改定し、外勤手当を全社で廃止して月7000円の外勤活動手当を新設した |
| 令和5年5月11日 |
会社が、配転命令1は有効としつつ、外勤手当削減の激変緩和措置による特別手当として9万3135円を支払う旨を通知 |
| 令和8年2月18日 |
東京地裁判決(その後、控訴) |
|
|
この経過で目を引くのは、会社が復帰日を約4か月前の申出の時点で把握していたこと、上司が復帰の約3週間前の時点で内勤での受入れを示唆していたこと(判決は、曖昧な表現ではあるが事前に伝えられていたと評価しています)、そして復帰後に上司自身が外勤営業職として扱う案を出していたことです。いずれも、後の判断に影響しています。
|
| 3 裁判所の判断 |
|
配転命令に関する裁判所の判断は、4つに分けて整理できます。
|
|
判決の骨子
1 判断の物差し。配転命令1は、原告が育児休業から復帰したタイミングで行われ、かつ外勤手当の不支給という効果を伴うものであり、育児介護休業法10条の趣旨や、会社が育児休業規程等で復帰時の職場と職務を原則として休業直前のものとする旨を定めていることに照らせば、業務上の必要性と労働者の不利益を比較衡量するに当たっては、前者が後者を「相当程度上回るものである必要がある」とした。
2 業務上の必要性の評価。休業が延びる可能性、年度末に向けた繁忙期に担当者の変更を避けて連絡ミスや発注ミスを防ぐこと、引継ぎ先の社員の業務負荷を考慮してバックアップが必要であることを考慮した点について、必要性がないとはいえず、目的も不当ではないとしつつ、ミスの具体的なおそれは認められず必要性は「やや抽象的なもの」にとどまり、休業延長の可能性も「一般的な可能性」にすぎないとした。予定どおりの復帰を前提に復帰後の職務を検討することに支障があったとはうかがわれず、上司の提案についても具体的な支障が検討されたとは認められないとした。
3 結論(配転命令1)。業務上の必要性は外勤手当(月5万3220円)の不支給という不利益を正当化するに足りず、期間が配転命令2までの3か月弱で勤務地の変更を伴わないことを考慮しても、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとして、配転命令権の濫用により無効とした。
4 配転命令2と不法行為。配転命令2は、年度初めの定期異動の一環として適正な人員配置の必要によるもので、育児休業を理由とすることや不当な動機・目的を認める証拠はなく、不利益も通常甘受すべき程度を著しく超えないとして有効とした。配転命令1は、復帰のタイミングで手当の不支給を伴ったことなどから、原告の人格的利益を侵害するものとして不法行為上も違法とし、慰謝料を20万円とした。
|
|
|
慰謝料の算定では、内勤職の期間が3か月弱であったこと、勤務地の変更を伴わないこと、令和5年1月から3月までの外勤手当の支払が認められることなどが考慮されました。復帰後の配置や待遇の説明義務違反という原告の主張については、配転命令の経緯に不相当な面があることは否めないとしつつ、内勤職となることは曖昧な表現ではあるが事前に伝えられていたことなどから、配転命令とは別個の不法行為にはならないとしています。
判決は、配転命令1を育児介護休業法10条違反として独立に判断したのではなく、同条の趣旨を物差しを厳しくする理由として用い、配転命令権の濫用として無効としました。配転命令2については、同条違反の主張を退けています。
支払を命じられたのは、令和5年1月から3月までの外勤手当15万3747円(1月分は所定労働日数18日のうち勤務した16日分で日割り)、慰謝料20万円、未払割増賃金5671円です。4月以降の外勤手当は、労働協約の拡張適用(労働組合法17条)が否定され、給与規程の改定も労働契約法10条の合理性を満たすとされたため認められず、付加金や昇給・賞与に関する請求も退けられました。訴訟費用は25分の2を会社、残りを原告の負担としています。
|
| 4 なぜ物差しが厳しくなったのか――通常の配転法理との違い |
|
配転命令の効力は、通常、東亜ペイント事件(最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決)の枠組みで判断されます。就業規則等に配転の根拠があり、勤務地や職種の限定がなければ、会社は配転を命じることができ、業務上の必要性がない場合、不当な動機・目的がある場合、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合などの特段の事情があるときに限って、権利の濫用になるという考え方です。この枠組みでは、業務上の必要性は高度なものである必要はなく、会社の判断はかなり広く尊重されます。
本判決は、この枠組みを前提にしながら、業務上の必要性と不利益を比べるときに、必要性が不利益を「相当程度上回る」ことを求めました。判決が物差しを厳しくした理由として挙げたのは、次の3つの事情です。
|
| 事情 |
意味合い |
| 復帰のタイミングと育児介護休業法10条の趣旨 |
復帰当日の配転であり、育児休業の取得と時間的に最も近接している。判決は、育児休業等を理由とする不利益な取扱いを禁じた同条の趣旨を、物差しを厳しくする理由に挙げている |
| 経済的不利益の明確さ |
外勤手当(月5万3220円)が支給されなくなるという、金額で示せる不利益があった |
| 会社自身の規程 |
会社は、復帰時の職場と職務を原則として休業直前のものとすると定めていた。原則から外れるなら、その理由を説明する責任は会社にある |
|
|
当法人が特に注目するのは、3つ目の事情です。育児介護休業法22条の雇用管理等の措置について同法28条に基づいて定められた指針(平成21年厚生労働省告示第509号)は、育児休業後の原職又は原職相当職への復帰について、事業主に配慮を求めています。これは配慮を求めるもので、原職への復帰を直接義務づけるものではありません。しかし本件の会社は、それを自社の規程として定めていました。会社が自ら書いたルールが、裁判所が会社の判断を測る物差しとして使われたことになります。
もう1つ見落とせないのは、外勤手当の性格です。判決は、外勤手当を、毎週水曜日を除く定時終業後1時間30分の時間外労働の対価として支払われる固定残業代と認定しています。職務に結びついた手当は、職務が変われば外れるのが当然だと考える会社は少なくありません。しかし本判決は、その手当が支給されなくなることを、配転に伴う不利益として正面から評価しています。手当の名目や性格にかかわらず、支給が止まれば月5万円余りの賃金が減るという事実が、比較衡量の天秤に載せられたことになります。
なお、賃金が減らない配置の変更でも不利益な取扱いに当たるとされた裁判例として、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル事件(東京高裁令和5年4月27日判決)があります。部下を持つチームリーダーだった女性が、育児休業から復帰した後に部下のいない職に就けられた事案で、東京高裁は、業務内容の質が著しく低下し将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねない配置の変更は不利な影響をもたらす処遇に当たるとして、男女雇用機会均等法9条3項と育児介護休業法10条に違反すると判断し、会社に220万円の支払を命じています。本判決は、それとは逆に経済的な不利益がはっきりしていた事案です。
|
| 5 3か月弱後の定期異動は有効――行政解釈との関係 |
|
本判決のもう1つの特徴は、復帰から3か月弱後の配転命令2を有効とした点です。ここで確認しておきたいのが、厚生労働省の解釈です。
厚生労働省は、平成27年1月23日付けの通達(雇児発0123第1号)で、育児休業の申出や取得を「契機として」不利益な取扱いを行った場合は、原則として育児休業を「理由として」不利益な取扱いをしたものと解するとし、「契機として」いるかどうかは、基本的に育児休業の申出や取得と時間的に近接しているかで判断するとしています。この通達と併せて厚生労働省が公表しているQ&A(「妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A」)は、原則として育児休業等の事由の終了から1年以内に不利益な取扱いがされた場合は「契機として」いると判断するとし、人事異動のように定期的に行われる措置については、1年を超えていても、事由の終了後の最初のタイミングまでであれば「契機として」いると判断するとしています。
この解釈を当てはめると、配転命令2は復帰から3か月弱後の、復帰後最初の定期異動ですから、「契機として」いる場面に当たり得ます。もっとも、同じQ&Aは、業務上の必要性から不利益な取扱いをせざるを得ず、その必要性が不利益の程度を上回ると認められる特段の事情がある場合などを例外として認めています。本判決は、配転命令2について、定期異動の一環であり適正な人員配置の必要によるもので、育児休業を理由とすることを認める証拠はないとして有効としました。判決文を見る限り、裁判所は行政解釈の「契機」の枠組みは用いず、通常の配転法理の枠組みで、業務上の必要性、不当な動機・目的の有無、不利益の程度を検討しています。
ここから言えるのは、同じ「復帰後の配転」でも、個別に行う配転と、全社的な定期異動の一環として行う配転とでは、説明のしやすさが大きく違うということです。ただし、裁判で有効とされることと、都道府県労働局による助言・指導の対象にならないこととは別の問題です。労働局は行政解釈に沿って対応しますから、復帰後1年以内の不利益な変更については、定期異動であっても、業務上の必要性と不利益の程度を説明できる記録を残しておくことが安全だと考えられます。
|
| 6 実務への示唆――育休復帰時の配置と処遇を決める前の4つの点検 |
|
いずれも本件の事実関係を離れて、一般的な実務として整理したものです。
|
|
点検1 復帰後の配置と処遇を、休業に入る前に決めて伝えているか
本件の会社は、育児休業の申出の時点で復帰予定日を把握していました。判決は、予定どおりの復帰を前提に復帰後の職務を検討することに支障があったとはうかがわれない、と指摘しています。復帰の1か月から2か月前には本人と面談し、復帰後の職場、職務、賃金、勤務時間を書面で示しておくことが、紛争予防の基本です。休業が延びる可能性があるなら、延びた場合の扱いも併せて決めておけば足ります。
|
|
点検2 就業規則の「原職復帰」の定めと、実際の運用が一致しているか
育児・介護休業規程に「復帰後は原則として原職に復帰させる」と定めている会社は多いはずです。本判決では、この定めが会社の判断を厳しく測る物差しになりました。原則を定める以上、例外として別の職務に就かせる場合の要件と手続(理由の説明、本人との協議、期間の見通し)も規程や運用マニュアルで定め、例外を使うときはその記録を残してください。規程に書いた原則は、会社自身を縛ります。
|
|
点検3 職務に結びついた手当を外すとき、不利益の程度と緩和の方法を先に決めているか
外勤手当、営業手当、役職手当など、職務に結びついた手当は、配置の変更と同時に外れる設計になっていることが多いものです。復帰時の配置変更で手当が外れる場合は、その金額が本人の賃金に占める割合を確認し、一定期間の調整手当など不利益を和らげる方法を、配転と同時に示すことを検討してください。本件では、会社は復帰から約4か月後に、外勤手当削減の激変緩和措置として特別手当の支払を通知しましたが、判決は配転命令1の効力の判断でこれに触れていません。緩和措置は、紛争になってから出すより、配転と同時に出すほうが会社の説明として一貫すると考えられます。
|
|
点検4 社員が異議を述べたとき、現場の提案を含めて検討した記録があるか
本件では、復帰後の面談で上司自身が外勤営業職として扱う案を出していたにもかかわらず、その案に具体的な支障があるかを検討した形跡が認められないとされました。社員の異議や現場からの代替案が出たときは、採れない理由を具体的に検討し、その結果を記録しておくことが、業務上の必要性を後から説明するための重要な手段になります。社員が異議を留めて就労すること自体は正当な対応であり、これに対して懲戒処分を示唆することは、紛争を硬化させるだけでなく、会社の対応全体の評価にも影響し得る点に注意が必要です。
|
|
| 7 当法人の視点 |
|
育休復帰者の配置を考えるとき、当法人がまず確認したいのは、「その配置は、復帰した社員でなくても同じ判断をしたか」という点です。育児休業を取らなかった社員が同じ時期に同じ事情を抱えていたら、同じ配置と同じ手当の扱いになったか。答えが「はい」と言い切れ、その理由を書面で説明できるなら、配置の判断は多くの場合に維持できます。答えに迷うなら、その配置は育児休業を契機とした不利益な取扱いと見られるおそれがあります。
|
|
当法人の見解
当法人は、本判決の意義を、物差しの厳しさそのものよりも、会社自身が選んだ手続と規程が、会社の判断を測る基準に転化した点に見ています。東亜ペイント事件の枠組みは、会社の人事の裁量を広く認めるものです。しかし本件では、原職復帰を原則とする自社規程があり、復帰日を事前に把握していて外勤営業職での復帰を検討することに支障がなかったのに、手当の不支給を伴う内勤配置を選び、現場の代替案についても具体的な支障が検討されたとは認められなかったという経過がありました。裁判所は、そうした会社自身の選択と行動を手がかりに、会社に求める説明の水準を引き上げたと読むことができます。裏返せば、復帰前に準備し、例外の手続を踏み、代替案を検討した記録がある会社であれば、同じ配置でも評価は変わり得るということです。
反対の見方もあります。使用者側からは、3か月とはいえ担当顧客を引き継いだ以上、年度末の繁忙期に担当者を戻すことは顧客にも混乱を招くのであり、復帰直後の内勤は業務上合理的だ、という主張があり得ます。また、外勤手当が外勤に伴う時間外労働への対価であるなら、内勤で時間外労働がなくなれば支給しないのは筋が通る、という考え方もあるでしょう。当法人もこれらの考え方に一定の合理性があることは否定しません。実際、判決は外勤手当を時間外労働の対価と認定していますが、配転命令1の判断では、内勤への変更で時間外労働がどう変わったかには触れず、会社がこうした必要性を具体的な支障として示せなかったことを重く見ています。抽象的な必要性は、明確な金額の不利益に勝てない。これが本判決から読み取れる実務上の結論だと考えます。
簡易な確かめ方を1つ挙げます。過去3年間に育児休業から復帰した社員について、休業前と復帰後の職務、役職、手当、月額賃金を一覧にしてみてください。休業前より賃金が下がった社員がいれば、その理由を書面で説明できるかを確認します。説明できないものがあれば、それは今後の紛争の芽になり得ます。
|
|
| まとめ |
|
東京地裁は2026年2月18日、約3か月の育児休業から復帰した男性社員を復帰当日に内勤職へ移し、外勤手当の支給を止めた配転命令を、配転命令権の濫用として無効としました。裁判所は、復帰のタイミングであること、手当の不支給を伴うこと、会社が原職復帰を原則と定めていたことから、業務上の必要性が不利益を相当程度上回ることを求め、会社の説明はやや抽象的で月5万3220円の不利益を正当化できないとしました。他方、3か月弱後の年度初めの定期異動は有効とされています。判決は控訴されており、控訴審で判断が変わる可能性があることを重ねてお断りします。
当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。育休を取った社員が安心して戻れる職場は、会社にとっても人材を失わない職場です。復帰後の配置と処遇のルールを、規程と運用の両面から経営者と一緒に整えてまいります。育児・介護休業規程と賃金規程の整備については就業規則作成・改定支援、配転や処遇をめぐる紛争の対応については労働紛争解決支援のページもご覧ください。
|
|
育休復帰時の配置と手当のルール、規程と運用を一緒に点検しませんか
復帰前面談の手順、原職復帰規定の例外要件、職務連動手当の緩和措置の設計まで、 社会保険労務士法人T&M Nagoya がご相談をお受けします。
▶ 無料相談のお申し込みはこちら
|
|
|
|
| この記事を書いた人 |
|
三重 英則(HIDENORI MIE)
社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員(特定社会保険労務士)
特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)
法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。
|
|