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作成日:2026/10/23
【裁判例】「通報への報復」とは認めない、それでも解雇・配転・自宅待機はすべて違法−虐待を通報した看護師3人をめぐる大阪地裁堺支部判決が示した「排除目的」という物差し
裁判例解説
「通報への報復」とは認めない、それでも解雇・配転・自宅待機はすべて違法
虐待を通報した看護師3人をめぐる大阪地裁堺支部判決が示した「排除目的」という物差し
2026年10月23日|社会保険労務士法人T&M Nagoya 三重 英則(特定社会保険労務士)

おはようございます。社会保険労務士法人T&M Nagoya(名古屋市中区)の三重英則です。

社員が行政や外部に通報したあと、その社員に人事上の措置をとる場面で、会社が最も気にするのは「報復と見られないか」という点です。そして多くの会社は、「処分の理由は通報とは関係ない」と説明できれば足りると考えています。

2026年7月30日に大阪地裁堺支部が言い渡した判決は、その考え方の危うさを示しています。報道によれば、裁判所は、障害者施設で虐待の疑いなどを市に通報した看護師3人に対する解雇、配置転換、自宅待機命令を、いずれも無効又は違法と判断しました。一方で、これらが通報への報復を目的としたものとは推認できないとも述べています。報復とは認めなかったのに、処分はすべて倒れた。その理由は、裁判所が「職場から排除する目的」を認めたことにあります。本記事では、報道で確認できた事実に限って判決を整理し、とりわけ半年前後に及んだ自宅待機命令が違法とされた点と、「排除目的」と「報復目的」という2つの物差しの違いを考えます。

📌 この記事でわかること

✓ 堺市の指定管理施設「ベルデさかい」で働いていた看護師3人が運営法人を訴えた訴訟で、大阪地裁堺支部(横田昌紀裁判長)は2026年7月30日、解雇と配置転換を無効、自宅待機命令を違法とし、未払賃金や慰謝料など合わせて2,000万円余りの支払を命じたと報じられていること

✓ 判決は、解雇や自宅待機命令には合理的な理由がなく、職場から排除する目的による権利の濫用と判断した一方、公益通報への報復が目的だったとは推認できないとしたこと

✓ 「報復ではない」と説明できても、処分そのものに合理的な理由がなく排除目的が認められれば、解雇や業務命令は権利の濫用として倒れること

✓ 賃金を支払っていても、目的と期間によっては自宅待機命令そのものが違法になり得ること。2026年12月1日施行の改正公益通報者保護法の推定規定と刑事罰は解雇と懲戒に限られ、業務命令としての自宅待機や配置転換は対象外ですが、不利益な取扱いとして禁止されることに変わりはないこと

✓ 判決原文は未確認で、大阪高裁で控訴審が予定されており判決は確定していないこと

通報者への人事措置は、「報復ではない」と言えるかではなく、「排除ではない」と説明できるかで問われます。

1 本記事の情報源と限界

本判決は、本記事の執筆時点で判決原文を確認できていません。本記事は次の資料に基づいて構成しています。

第1は、NHKの報道を出典として明記した地域ニュースサイト「おもしゃいな泉州」の記事(2026年7月31日掲載)です。判決日、裁判所、裁判長名、原告が看護師3人であること、2019年と2022年の2回の通報とそれぞれに対する市の調査結果、半年間の自宅待機、裁判所が解雇と自宅待機命令を「合理的な理由がなく、排除目的であり権利の乱用」と判断したこと、通報への報復が目的だったとは推認できないとしたこと、支払額が2,000万円余りであること、法人側が「解雇は業務命令違反が理由であり、公益通報とは無関係」と主張していたことは、この記事で確認できます。

第2は、各社の報道の見出しです。読売新聞オンラインは解雇と配置転換の無効と2000万円の支払命令、判決が「職場の秩序を乱す行為とは認めない」としたことを、朝日新聞は解雇と配置転換の無効を、MBSニュースは「職場から排除しようとしていたものと推認」したことを、読売テレビは「公益通報に対する報復が目的と推認できない」としたことを、それぞれ見出しで伝えています。

第3は、共同通信が2026年8月28日に配信した記事(47NEWS)です。配置転換について判決が業務上の必要性自体は認めたうえで不当な動機・目的によるものと判断したこと、法人が控訴したことは、この配信記事のみに依拠しています。同記事は会員限定の掲載先が多く、当法人は本文の全体を直接確認できていません。

このほか、施設が堺市の指定管理施設で、指定管理者が社会福祉法人三篠会であることは堺市の指定管理者評価資料で、控訴審の第1回期日が大阪高裁で2026年11月12日に予定されていることは原告を支援する会のウェブサイトで確認しました。同会のウェブサイトには、3人の自宅待機の期間と、その後に1人が解雇され、1人が他の施設へ、1人がそれまでの組織図になかった部署へ異動を命じられたことも記載されています。これは原告側の資料であることに留意して扱います。

確認できていない事項

1 判決原文と事件番号、請求額。原告の氏名は報じられていますが、本記事では記載しません。

2 支払額の内訳。未払賃金と慰謝料の別、原告ごとの金額は分かりません。

3 解雇と配置転換の正確な日付と、2022年の通報から各措置までの期間。自宅待機の期間は、NHKが「半年間」、共同通信が「5〜6か月」と報じており、原告を支援する会のウェブサイトは3人の待機を2022年11月1日又は同月10日から2023年3月31日ないし同年5月14日まで(約4か月半から約6か月半)としています(原告側の資料)。

4 判決が、公益通報者保護法や障害者虐待防止法の適用をどう判断したか。報復目的を推認しなかった理由も分かりません。

5 控訴審の行方。本判決は地方裁判所の第一審判決であり、上級審で判断が変わる可能性があります。

2 事案の概要
項目 報道等で確認できる内容
原告 堺市立重症心身障害者(児)支援センター「ベルデさかい」で勤務していた看護師3人
被告 施設を運営する社会福祉法人三篠会(堺市の指定管理者)
1回目の通報 2019年、施設内での虐待の疑いを堺市に通報。市の調査で一部の行為が虐待と認定された
2回目の通報 2022年、別の問題について再び通報。市の調査では認定されなかった
その後の措置 2022年11月から半年前後の自宅待機ののち、1人が解雇され、1人が他の施設へ、1人がそれまでの組織図になかった部署へ配置転換された(待機の始期と措置の内訳は原告を支援する会のウェブサイトによる)
法人側の主張 解雇は業務命令違反が理由であり、公益通報とは無関係
判決 2026年7月30日、大阪地裁堺支部(横田昌紀裁判長)。解雇と配置転換は無効、自宅待機命令は違法。未払賃金や慰謝料など合わせて2,000万円余りの支払を命じる
その後 共同通信の報道では法人が控訴。大阪高裁での控訴審第1回期日は2026年11月12日と、原告を支援する会が告知している
3 裁判所の判断(報道に基づく)

報道を突き合わせると、判決の内容は次のように整理できます。

報じられている判決の骨子

1 解雇。合理的な理由のない権利の濫用として無効とした。読売新聞オンラインは、判決が「職場の秩序を乱す行為とは認めない」としたことを見出しで伝えている。

2 配置転換。無効とした。共同通信の報道では、業務上の必要性自体は認めたうえで、職場から排除する不当な動機・目的によるものと判断したとされる。

3 自宅待機命令。合理的な理由がなく、排除目的による権利の濫用として違法とした。

4 報復目的。一連の措置が通報に対する報復を目的としたものとは推認できないとして、この点の原告側の主張は認めなかった。

5 支払。未払賃金や慰謝料など合わせて2,000万円余りの支払を命じた(ほかの報道では「2000万円」と表記)。

原告側は、解雇、配置転換、自宅待機命令のいずれについても主張が認められ、支援する会は判決を「全面勝訴」と表現しています。ただ、一連の措置が通報への報復であったという点だけは、裁判所に認められませんでした。処分は違法だが、報復とは認定しない。この組合せが本判決の特徴です。裁判所がなぜ報復目的の推認に踏み込まなかったのかは、判決原文を確認できていないため分かりません。本記事では、その理由を推測で補うことはしません。

4 半年前後の自宅待機は、なぜ違法になり得るのか

本判決で、実務上とりわけ見落とされやすいのが自宅待機命令の部分です。自宅待機は、懲戒処分としての出勤停止と違い、業務命令として命じられるのが通常です。そして労働者には「働かせろ」と求める権利(就労請求権)が原則として認められないと解されてきたため、賃金を全額支払っている限り、自宅で待機させても違法にはならないと考える経営者は少なくありません。

しかし、業務命令権も無制約ではありません。労働契約法3条5項は、労働者も使用者も、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用してはならないと定めています。自宅待機命令が正当化されるのは、事実関係の調査中に証拠の隠滅や関係者への働きかけを防ぐ必要がある場合、利用者や他の社員の安全を確保する必要がある場合など、出勤させないことに具体的な必要があり、かつ、その必要が続いている期間に限られると考えられます。

過去の裁判例にも、自宅待機命令そのものを違法としたものがあります。アルバック販売事件(神戸地裁姫路支部平成31年3月18日判決)は、無期限の自宅待機命令には正当な理由がないとし、退職を促すという不当な目的でされたことが疑われるとして、自宅待機命令は裁量権を逸脱した違法なもので不法行為を構成すると判断しています。待機の目的が本来の必要から離れていると評価され、違法とされた点は、本件と共通しています。

本件では、報道によれば半年前後の自宅待機ののちに解雇や配置転換が行われ、裁判所は自宅待機命令に合理的な理由がなく、排除目的による権利の濫用と判断しました。待機の理由として何が説明されたとしても、半年前後という期間を正当化できるだけの具体的な必要が示されなければ、待機はそれ自体が「職場から遠ざけておくための措置」と評価されることになります。自宅待機は、会社が判断を先送りしている間の便利な手段に見えますが、長引くほど、その期間そのものが会社の目的を物語る証拠になります。

比較項目 業務命令としての自宅待機 懲戒処分としての出勤停止
性質 調査や安全確保のための暫定的な措置 非違行為に対する制裁
根拠と手続 業務命令権。具体的な必要性と相当な期間が求められる 就業規則の懲戒事由と種類の定め、弁明の機会などの手続が必要
賃金 原則として支払う 就業規則の定めにより無給とすることが多い
違法とされやすい場面 必要性が具体的でない、期間の定めや見直しがない、退職や排除の目的がうかがわれる 懲戒事由に当たらない、処分が重すぎる(労働契約法15条)、弁明の機会などの手続を欠く
5 「排除目的」と「報復目的」――2つの物差しの違い

本判決を理解する鍵は、裁判所が使った2つの物差しが別物だという点にあります。

1つ目は、労働契約法の権利濫用法理です。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効です(労働契約法16条)。配置転換や自宅待機などの業務命令も、合理的な理由を欠くもの、不当な動機・目的によるものは権利の濫用になります(同法3条5項)。この物差しでは、処分の理由がなぜ通報なのかを特定する必要はありません。理由が何であれ、合理的な理由がなく、職場から排除すること自体が目的になっていれば、それだけで処分は倒れます。

2つ目は、公益通報者保護法です。同法は、公益通報をしたことを理由とする解雇を無効とし(3条)、公益通報をしたことを理由とする降格、減給その他の不利益な取扱いを禁止しています(5条)。この物差しでは、措置が「通報を理由として」行われたという因果関係が問われます。本判決は、報道によれば、この因果関係を推認しませんでした。

法人側は、解雇は業務命令違反が理由であり、公益通報とは無関係だと主張していました。2つ目の物差しについては、結果としてこの主張に沿う結論になっています。しかし、1つ目の物差しで処分はすべて否定されました。「通報とは無関係」と説明できることと、処分に合理的な理由があることとは、まったく別の問題だということです。報復でないことを示すために通報以外の理由を挙げても、その理由が裁判所に認められなければ、残るのは「排除しようとした」という評価だけです。

なお、配置転換について業務上の必要性を認めながら不当な目的で無効とした点は、東亜ペイント事件(最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決)の枠組みのうち、業務上の必要性があっても不当な動機・目的によるときは権利の濫用になるという類型に当たります。この類型については、当法人ブログの松江赤十字病院の医師配転判決の解説記事で詳しく整理しています。

では、2026年12月1日に改正公益通報者保護法が施行されると、何が変わるのでしょうか。消費者庁の改正概要によれば、通報後1年以内(外部への通報の場合は、事業者が通報を知ってから1年以内)の解雇又は懲戒は、その効力を判断するうえで、公益通報を理由としたものと推定されます。あわせて、公益通報を理由とする解雇や懲戒をした者には刑事罰が科されます。本件で措置の対象となった類型に当てはめると、次のとおりです。

措置の類型 改正前(現行法) 改正後(2026年12月1日施行)
解雇 公益通報を理由とする解雇は無効(3条)。通報が理由であることは労働者側が主張・立証 無効(3条2項)。通報後1年以内の解雇は、効力の判断に当たり通報を理由とするものと推定(3条3項)。刑事罰として個人に6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金、法人に3,000万円以下の罰金
懲戒(懲戒としての出勤停止を含む) 不利益な取扱いとして禁止(5条) 解雇と同じく無効(3条2項)とされ、推定規定と刑事罰の対象
業務命令としての自宅待機、配置転換 不利益な取扱いとして禁止(5条) 禁止は変わらない(3条1項に移る)が、推定規定と刑事罰の対象外。法定指針で不利益な取扱いの例示が明確化される

本件の解雇について、仮に改正後であれば推定規定が働いたかどうかは、2022年の通報から解雇までの期間が報道からは分からないため判断できません。他方で、自宅待機と配置転換は、改正後も推定規定と刑事罰の対象外です。改正後も、自宅待機や配置転換は、本件と同じく労働契約法の権利濫用法理と、改正後の公益通報者保護法3条1項(現行5条の不利益取扱いの禁止を引き継ぐ規定)によって民事上争われることになります。改正法の全体像と、資料の持ち出しをめぐる論点は、当法人ブログのスターサージカル事件の解説記事で整理しています。

6 実務への示唆――通報や申告をした社員に人事上の措置を検討するとき

以下は、本件の事実関係を離れて、一般的な実務として整理したものです。

点検1 自宅待機に「目的・期間・賃金・見直し日」を定めているか

自宅待機を命じるときは、何のための待機か(調査対象の事実、確保したい安全)、いつまでの予定か、賃金をどう支払うか、いつ見直すかを書面で示してください。調査のための待機であれば、調査の進み具合に合わせて定期的に継続の要否を判断し、その記録を残します。「処分が決まるまで」「状況が落ち着くまで」という終わりの見えない待機は、それ自体が排除の目的を疑わせます。制裁として休ませたいのであれば、それは自宅待機ではなく懲戒としての出勤停止の問題であり、就業規則の根拠と弁明の機会などの手続が必要です。

点検2 処分の理由を、通報より前からの事実と記録で説明できるか

業務命令違反や協調性の欠如を理由にするのであれば、いつ、どの命令に、どう違反し、会社がどう指導したのかを、通報より前の記録で示せるかを確認してください。本件で法人側は業務命令違反を解雇の理由と主張しましたが、裁判所は解雇に合理的な理由を認めず、読売新聞オンラインの見出しによれば「職場の秩序を乱す行為とは認めない」と判断しています。通報のあとに初めて問題視し始めた事情や、「協調性がない」「勤務態度が悪い」といった評価の言葉だけでは、処分の理由として認められにくく、むしろ排除の目的を推認させる事情になりかねません。

点検3 「通報が事実でなかった」ことを処分の理由にしていないか

本件では、2回目の通報は市の調査で認定されませんでした。しかし、行政機関への通報が後の調査で認定されなかったからといって、それだけで通報者を処分してよいことにはなりません。公益通報者保護法は、権限を有する行政機関への通報について、通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合のほか、そう思料したうえで氏名・住所や通報対象事実の内容などを記載した書面を提出する場合にも保護の対象としています(3条2号)。また、障害者虐待防止法は、障害者福祉施設従事者等による虐待を受けたと思われる障害者を発見して市町村に通報した施設従事者等について、虚偽の通報や過失による通報を除き、通報をしたことを理由として解雇その他不利益な取扱いを受けないと定めています(16条3項・4項)。通報内容の当否と、通報者の処遇とは、切り離して判断する必要があります。

点検4 職場の緊張を和らげる方法が、「通報者を外す」ことに偏っていないか

通報のあと、通報者と通報された側との関係が悪化し、職場の運営に支障が出ることは現実にあります。そのとき、会社が取りやすいのは通報者を職場から外す方法ですが、それは本件で違法とされた措置の型そのものです。勤務シフトや担当の調整、第三者による調査の実施、関係者への聞き取りと再発防止策の周知など、不利益が通報者の側だけに偏らない方法を先に検討し、その検討の経過を記録に残してください。

7 当法人の視点

通報をした社員への対応について相談を受けたとき、当法人がまず確認したいのは、「その社員に、この職場で働き続けてもらう前提で考えているか」という点です。この前提に立てるなら、自宅待機には期間と出口があり、配置には業務の中身があり、処分には通報前からの記録があるはずです。前提に立てないなら、どれほど丁寧に「通報とは無関係」と説明を整えても、措置の全体が排除の意図を語ることになります。

当法人の見解

当法人は、本判決の実務上の意義を、通報者に対する措置の適否は「報復かどうか」より手前の段階で決まり得ることを示した点に見ています。会社は、報復ではないことの説明に力を注ぎがちです。しかし本判決で措置を否定したのは、報復の認定ではなく、合理的な理由のなさと排除の目的でした。2026年12月1日以降は、解雇と懲戒について推定規定と刑事罰が加わり、民事上、報復でないことの立証の負担は会社側に移ります。その一方で、自宅待機と配置転換は推定の対象外にとどまるため、会社がこれらの措置に流れやすくなるおそれがあると当法人は考えています。本件は、その流れの先に何があるかを先取りして示した事例とも読めます。

反対の見方もあります。使用者側からは、通報をきっかけに職場の人間関係が悪化し、利用者の安全を守るためには、当事者を一時的に引き離すことが避けられない場面がある、という主張があり得ます。当法人も、そうした必要が現実にあることは否定しません。ただ、その必要は、期間を区切り、通報者だけに不利益が偏らない方法で満たすべきものです。必要があるという事実は、半年前後の待機や、通報者を別の施設や組織図にない部署へ移すことを正当化する理由にはなりません。なお、本判決は第一審判決であり、控訴審の判断や判決原文の確認によって評価が変わり得ることを付け加えておきます。

簡易な確かめ方を1つ挙げます。過去3年間に、行政機関への通報、内部通報、ハラスメントの相談や申告をした社員を一覧にし、その後1年以内に行った人事上の措置(自宅待機、異動、評価の引下げ、契約の不更新など)を書き出してください。そのうえで、各措置の理由を通報や申告より前の記録で説明できるかを1件ずつ確認します。説明できない措置があれば、そこが紛争の芽になり得ます。

まとめ

堺市の指定管理施設「ベルデさかい」で虐待の疑いなどを市に通報した看護師3人が運営法人を訴えた訴訟で、大阪地裁堺支部は2026年7月30日、解雇と配置転換を無効、半年前後に及んだ自宅待機命令を違法とし、合わせて2,000万円余りの支払を命じたと報じられています。裁判所は、これらの措置に合理的な理由がなく、職場から排除する目的による権利の濫用と判断する一方、通報への報復が目的だったとは推認できないとしました。判決原文、支払額の内訳、解雇と配置転換の正確な時期は確認できておらず、控訴審が予定されているため、本記事は報道に基づく整理であることを重ねてお断りします。

当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命としています。通報をした社員への対応は、報復ではないと説明することより、職場に残す前提で措置を設計することが、結局は会社を守ります。自宅待機の命じ方、処分前の記録の整え方、内部通報規程と懲戒規定の整備まで、経営者と一緒に考えてまいります。紛争の予防と対応については労働紛争解決支援、自宅待機や懲戒の規定の整備については就業規則作成・改定支援のページもご覧ください。

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【根拠法令】

労働契約法3条5項(権利濫用の禁止)、15条(懲戒)、16条(解雇)/公益通報者保護法3条(解雇の無効)、5条(不利益取扱いの禁止)/公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号、2026年12月1日施行)による改正後の公益通報者保護法3条1項(不利益取扱いの禁止)、2項(解雇・懲戒の無効)、3項(解雇・懲戒の推定)、21条・23条(罰則)/障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律16条(障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る通報等)

【参考判例】

本件:大阪地方裁判所堺支部2026年(令和8年)7月30日判決(横田昌紀裁判長)。当法人は判決原文を確認できていません。事件番号、請求額、支払額の内訳は不明です。控訴審が大阪高等裁判所に係属しています(第1回期日は2026年11月12日と原告を支援する会が告知)。/アルバック販売事件(神戸地方裁判所姫路支部平成31年3月18日判決、労働判例1211号81頁)/東亜ペイント事件(最高裁判所第二小法廷昭和61年7月14日判決)

【出典・参考資料】

おもしゃいな泉州「【堺市】障害者施設での公益通報後解雇、大阪地裁堺支部が『解雇は無効』とし施設側に賃金・慰謝料等2,000万円超の支払いを命令」(2026年7月31日掲載、NHKニュースを出典として明記) https://waryaji.com/1-3832//Yahoo!ニュース(読売新聞オンライン配信)「看護師3人に対する解雇や配置転換の無効と2000万円の支払い命令…大阪地裁堺支部が障害者支援施設の運営法人に、『職場の秩序を乱す行為とは認めない』」 https://news.yahoo.co.jp/articles/c93e170e5376fe22fa5553caa6d4463784dee70e/Yahoo!ニュース(朝日新聞配信)「3看護師の解雇や配置転換は『無効』 法人に2000万円の賠償命令」 https://news.yahoo.co.jp/articles/8d7c0c7af54e04511c6b64daf9fde52eab03dbe5/Yahoo!ニュース(MBSニュース配信)「虐待などの公益通報後に『解雇・異動』 看護師らが無効訴えた裁判で“全面勝訴”『職場から排除しようとしていたものと推認』大阪地裁堺支部」 https://news.yahoo.co.jp/articles/6be3878bfe616a1e36ded027b0b26838ff38db52/Yahoo!ニュース(読売テレビ配信)「虐待などを市に通報後に解雇された職員『解雇は無効』判決 一方で『公益通報に対する報復が目的と推認できない』」 https://news.yahoo.co.jp/articles/0d6698fcb65dcdaec78efee5c6f0360734e243ab/神戸新聞NEXT(共同通信配信)「障害者施設の虐待を通報した看護師3人がクビにされたり飛ばされたり…報復なのか?法廷闘争の末、下された判決に涙」(2026年8月28日) https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/primenews/202608/0020755543.shtml/堺市「指定管理者評価表(堺市立重症心身障害者(児)支援センター)」(令和5年度) https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/gyosei/shiteikanrisha/hyoka/r6hyoukahyou.files/28.pdf/ベルデさかい 解雇・配転裁判を支える会(仮) https://huseihayurusanai-hukusi.amebaownd.com/、同「Concept」 https://huseihayurusanai-hukusi.amebaownd.com/pages/7908397/concept/消費者庁「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号)の概要」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/overview/assets/consumer_partnerships_cms205_260501_01.pdf/衆議院「公益通報者保護法の一部を改正する法律」(令和7年法律第62号)本文 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/21720250611062.htm/全国労働基準関係団体連合会「労働基準判例検索」(アルバック販売事件) https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/09301.html

【免責事項】

本記事は2026年10月時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。本記事で取り上げた判決は、判決原文ではなく報道に基づいて構成しています。配置転換についての判断の内容と法人による控訴は共同通信の配信記事のみに、自宅待機の期間と措置の内訳は原告を支援する会のウェブサイト(原告側の資料)に依拠しています。当事者の心情や経緯、通報の具体的な内容について、報道にない事実を補ってはいません。具体的な事案については、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

なお、紛争性のある事案の交渉代理および訴訟代理は、弁護士法72条により社会保険労務士の業務範囲外です(特定社会保険労務士による個別労働関係紛争のあっせん代理等の法定の例外を除きます)。当法人は、自宅待機・懲戒に関する就業規則の整備、内部通報規程の整備、指導記録の作成支援、人事上の措置の手順設計を担い、解雇や配置転換の効力、損害賠償が争われる局面では提携する弁護士と連携して対応いたします。

この記事を書いた人

三重 英則(HIDENORI MIE)

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員(特定社会保険労務士)

特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号第160175号)

法律事務所で約7年間、使用者側・労働者側双方の労働紛争を経験。年間350件以上の相談に対応し、20年以上にわたる紛争解決の実績を持つ。IPO労務監査、M&A労務デューデリジェンス、団体交渉対応など高難度案件を専門とし、「経営者と共に歩き続ける」伴走型の支援を提供している。