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作成日:2026/06/27
【裁判例】シフト制従業員の「所定労働日数」は何日か ―― 休業手当の算定をめぐる判断・横浜地方裁判所 令和2年3月26日判決
判例解説労働時間休業手当

【H事件】シフト制従業員の「所定労働日数」は何日か
―― 休業手当の算定をめぐる判断
横浜地方裁判所 令和2年3月26日判決


📌 この記事の要点

・雇用契約書に「週○日程度」「業務の状況に応じて決める」と記載されたシフト制従業員について、休業時の所定労働日数の認定方法が争われた事案
・横浜地裁は、契約書の記載のみにとらわれず、過去の勤務実態を踏まえて契約当事者の意思を合理的に解釈し、所定労働日数を認定した
・本件では、過去の勤務実態から「週4日」と認定された
・シフト制の休業手当を「シフトが入っていないから0」と安易に処理することのリスクを示す事案


1.シフト制の「所定労働日数」という難問
正社員などフルタイム勤務であれば所定労働日数は明確で、休業日の確定も容易です。しかしシフト制の場合、毎月シフトによって日数が変わり、契約書には「所定労働日はシフトによる」とだけ書かれていることが少なくありません。とりわけ会社都合の休業時に休業手当を算定する場面で、「そもそも所定労働日数は何日なのか」が問題になります。本件は、この点を正面から扱った裁判例です。
2.事案の概要
指定居宅サービス事業を営むY社で、Xはデイサービスの送迎業務を担当していました。期間雇用契約の「出勤日」欄には、当初「毎週(月〜日のうち週5日程度)」「業務の状況に応じて週の出勤日を決める」等の記載がありました(ただし日曜は非営業)。その後Y社は、雇用期間を区切り直し、「出勤日」を「週1日以上とする」等と記載した契約書・労働条件通知書を作成して、Xへ内容証明郵便で送付しました。
3.裁判所の判断 ― 実態から「合理的に解釈」する

✔ 所定労働日数の認定プロセス

@ 「週5日程度」だけでは確定できない:当初契約の「週5日程度」は非営業日の日曜も候補に含む記載であり、かつ「業務の状況に応じて決める」とあることから、直ちに週5日とは認定できない

A 「週1日以上」の契約書も決め手にならない:これはY社が労働基準監督署の指導を受けたことを契機に、雇用期間の始期から約10か月後に一方的に送付したものにすぎず、当事者双方の意思を反映した書面とは認め難い

B 勤務実態から合理的に解釈:契約書の記載のみにとらわれず、請求期間より前の勤務実態を踏まえて契約当事者の意思を合理的に解釈して認定するのが相当

C 結論:Y社が過去の勤務実態を立証しないことも踏まえ、Xは請求期間より前はおおむね週4日勤務していたと推認され、所定労働日数は週4日と認められる

「合理的解釈」とは、契約書がない・内容が不明確・複数の解釈が可能といった場合に、証拠や状況から当事者の意思を推測して認定する手法です。本判決は、シフト制の所定労働日数を、形式的な契約文言ではなく過去の実態に照らして決めるべきとした点に意義があります。
4.実務上の留意点

▼ シフト制の休業手当をめぐる注意点

「シフト未確定だから0」は危険:会社都合の休業時に、所定労働日数を0として休業手当を支払わない取扱いは、後から過去の実態に基づき所定労働日数を認定され、休業手当の支払を求められるリスクがある

過去の実態に照らして確定する:休業日数は形式よりも過去の勤務実態をもとに確定し、休業手当を支払うのが安全

契約後の一方的な条件変更は効力が弱い:始期から相当期間後に一方的に送付した契約書は、当事者の意思を反映した合意と認められにくい

契約書の記載を整える:所定労働日数・シフトの決定方法をできる限り明確にし、実態と整合させる

5.まとめ
本判決は、シフト制従業員の所定労働日数を過去の勤務実態から合理的に解釈して認定した事例で、休業手当の算定に直結します。シフト制を多用する事業所では、契約書の記載と実際のシフト運用の整合、休業時の取扱いを点検しておくことが重要です。当法人では、就業規則・労働契約の整備給与計算の観点から、シフト制の所定労働日数・休業手当の運用をご支援しています。
🔎 本記事の事案部分は出典資料(弁護士ニュースレター)の記載に基づき再構成しています。判決原本・労働判例での確認は行っていないため、事実関係・日数の細部については確信度「中」としてお取り扱いください。休業手当(労働基準法26条)・合理的解釈の枠組みは公開情報で確認済みです。
シフト制・休業手当のご相談はこちら ▶社会保険労務士法人T&M Nagoya

📖 根拠法令・参考判例

・労働基準法26条(休業手当)
・H事件(横浜地方裁判所 令和2年3月26日判決)※出典:弁護士ニュースレターに基づく
・(参考)厚生労働省「シフト制労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」

※本記事は2026年6月時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法的助言を構成するものではありません。記載の事実関係は出典資料に基づく要約であり、結論は個別事情により異なります。具体的な対応にあたっては社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。

執筆:三重 英則(社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員)

特定社会保険労務士/経営心理士/経営法曹会議賛助会員(SRP認証番号 第160175号)。中小企業・IPO準備企業の労務監査、就業規則・賃金規程整備、労使紛争対応を中心に使用者側の実務支援を行っています。