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作成日:2026/06/09
【ブログ】AI時代に、外部専門家とどう付き合うか ― コンサル業界「過去最多の倒産」が中小企業に示すもの
労務トピック

AI時代に、外部専門家とどう付き合うか
― コンサル業界「過去最多の倒産」が中小企業に示すもの

📌 この記事の要点

  • 経営コンサル業の倒産・廃業が過去最多ペース。生成AIによる業務の「コモディティ化」と、補助金申請代行などへの依存が主因と報告されています。
  • これは「専門家が不要になる」サインではなく、経営者にとって専門家の"選び方・使い方"が変わるサインです。
  • AIに任せてよい定型業務と、人間の専門家にしか担えない「判断・責任・伴走」を切り分けることが、これからのコスト管理とリスク管理の分かれ目になります。

帝国データバンクが2026年6月に公表した調査によると、2026年1〜5月に発生した経営コンサルティング業の倒産・休廃業解散は累計242件にのぼり、年間では2000年以降で最多となる600件超に達する可能性があると報告されています。「経営を支援する側」が、いま市場から退出しているのです。この動きは、外部の専門家やコンサルタントを活用する中小企業の経営者にとっても、決して無関係な話ではありません。

なぜ「経営を支援する側」が淘汰されているのか

帝国データバンクは、淘汰の背景として、生成AIの性能向上により基礎的なデータ収集・分析や資料作成といった業務がAIに代替されつつあること、そして補助金申請代行や節税スキームの指南など「実質的な課題解決を提供しないビジネス」への依存を挙げています。AIで誰でもできることに付加価値を見いだせなくなった事業者から、競争力を失っているという構図です。

【データ】2026年1〜5月のコンサル業倒産は74件で、過去最多だった前年同期(69件)を上回るペース。休廃業・解散は前年同期比12.8%増の168件。国内コンサル市場は2023年度に売上高ベースで4兆円を突破したものの、成長率は鈍化し転換期を迎えていると報告されています(出典:帝国データバンク)。

「専門家不要」ではなく「選び方が変わる」サイン

ここで誤解してはならないのは、これが「外部の専門家がいらなくなる」という話ではない点です。複数の業界分析が共通して指摘するのは、AIによって消えるのは"職業"ではなく"業務の中身が再編される"ということです。下書きや一次調査はAIが担い、人間は最終的な判断・責任・顧客との関係づくりに集中する――その切り分けが、これからの専門家活用のカギになります。

AIで代替が進みやすい業務 専門家にしか担えない価値
汎用的な資料・ひな形の作成、一次的な情報収集、一般論レベルの説明、定型的な文章下書き 自社の実情をふまえた個別具体の判断、法的責任を負える助言、労使トラブル・紛争への対応、制度設計や交渉の伴走
「とりあえずの正解」の提示 「自社にとっての最善解」を一緒に決め、結果に責任を持つこと

たとえば労働社会保険の手続代行は、社会保険労務士法によって社労士(または社労士法人)の独占業務と定められています(社会保険労務士法第2条・第27条)。AIが書類の下書きを助けることはできても、報酬を得て業として手続を担い、その内容に責任を負うのは有資格者でなければならない、というのが法の建て付けです。「AIに丸投げできる業務」と「責任を伴う専門業務」は、性質がまったく異なります。

経営者が見直すべき3つの視点

@ 提供されている価値は、AIで代替できないか
顧問料やコンサル料の対価が「AIでも数分でできる作業」に対するものなら、コスト効率を見直す余地があります。逆に、判断・責任・伴走に対する対価であれば、その価値はむしろ高まっています。

A サービスの継続性は確保されているか
特定の補助金や節税スキームに依存したビジネスは、制度変更や需要の一巡で一気に立ち行かなくなるおそれがあります。支援者の突然の廃業は、自社の手続や管理体制に直接の穴を空けます。「この支援は数年後も続くか」という視点が欠かせません。

B 責任の所在は明確か
無資格の代行業者や名義の不明確なサービスに独占業務を委ねると、法令違反や手続の不備が自社のリスクとして跳ね返ります。誰が、どの資格と責任のもとで対応しているのかを確認することが、これまで以上に重要になります。

✓ 今の顧問・外部支援を点検するチェックポイント

  • 支払っている対価は「作業」に対してか、「判断・責任」に対してか
  • 補助金や特定スキームへの依存が、相手方の経営を不安定にしていないか
  • 独占業務を、適切な資格者が責任をもって担っているか
  • トラブルや紛争が起きたとき、伴走して動いてくれる相手か
  • AI活用を前提に、自社でできることと外部に任せることを整理できているか

これからの「外部専門家」の使い方

AIの普及は、経営者にとって脅威ではなく、むしろ外部支援を賢く取捨選択する好機です。一般論や定型作業はAIや自社で巻き取り、外部の専門家には、自社の労務リスク管理、就業規則をはじめとする制度設計、労使トラブルへの対応、組織の成長フェーズに応じた高度な課題――AIには委ねられない領域を任せる。そうした使い分けができる企業ほど、コストを抑えながらリスクに強い体制を築けます。

当法人は「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」ことを使命に掲げています。AIで代替できる作業の請負ではなく、自社の実情に踏み込んだ判断と伴走にこそ専門家の価値があると考え、難度の高い労務課題に向き合っています。外部支援の見直しをお考えの際は、お気軽にご相談ください。

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根拠法令・出典

社会保険労務士法第2条(業務)、同第27条(業務の制限)/帝国データバンク「『経営コンサルティング業者』の倒産・休廃業解散動向(2026年1-5月)」

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言を行うものではありません。個別の判断にあたっては、専門家にご相談ください。記載の統計・動向は公表時点の情報に基づきます。

執筆者:三重 英則

社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員/特定社会保険労務士・経営心理士・経営法曹会議賛助会員