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懲戒処分弁明の機会就業規則
懲戒事由があっても処分が無効に|就業規則の懲戒手続違反と弁明の機会の実質的付与
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📌 この記事の要点
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懲戒処分は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利の濫用として無効となります(労働契約法15条)。この「相当性」の判断では、懲戒事由の有無や処分の重さだけでなく、手続の適正さも重要な要素になります。とりわけ、就業規則や懲戒規程に懲戒手続のルールを定めている場合、そのルールを踏まずに処分を行うことは、懲戒権の濫用と評価されるリスクがあります。
本件(学校法人松山大学事件・松山地裁令和7年12月23日判決)は、大学を運営する学校法人に雇用され准教授として勤務していた原告が、運動部の部員に対するハラスメントを理由に停職45日の懲戒処分を受けたことを不服として、処分の無効確認等を求めた事案です。裁判所は、懲戒の対象とされた行為についてハラスメント該当性を事実として認定し、懲戒事由に該当すると判断しました。争点となったのは、手続面の適否です。
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本件の懲戒手続規程の要点
被告では、常務理事会が事実確認のうえ懲戒の種類について理事長に意見を述べる前提として、教育職員については各学部教授会において当該職員に弁明の機会を与えなければならない旨が定められていました。また各学部教授会規則では、教員の懲戒案について教授会が意見を述べるものとされていました。つまり、教授会による弁明の機会の付与と意見の表明が、懲戒手続に組み込まれていたわけです。 |
裁判所は、本件懲戒処分が、各学部教授会規則に抵触する形で、学部教授会の審議を経ず、教授会が意見を述べることなく決定された点を、規程の制定趣旨を没却するものであり、重大な手続上の瑕疵であると述べました。本件では、教授会において原告の弁明を聴取する手続は行われていましたが、その後に必要とされた教授会からの意見聴取を経ないまま処分が決定されていました。
裁判所は、懲戒処分が重大な不利益処分であることから、処分の判断者が当該職員からの弁明を聴く機会を持つことで手続保障を図る必要があると指摘しました。そのうえで、教授会が原告の弁明を聴取したにもかかわらず、教授会が意見を述べることなく処分が決定されたため、原告は処分を決定する側に対する弁明の機会を、形式的にはもちろん実質的にも付与されなかったといわざるを得ない、と評価しました。
結論として裁判所は、懲戒事由該当性は認めつつ、手続上の瑕疵は処分を無効にするほど重大であって、処分の相当性を検討するまでもなく本件懲戒処分は無効である、と判断しました。認定された行為の内容からすると一見厳しい結論にも見えますが、自ら定めた手続ルールを履践しなかったことの帰結として理解できる判断です。
| 観点 | 本件で問われたこと |
|---|---|
| 規程の遵守 | 規程が求める教授会の意見聴取を経ずに処分を決定した |
| 弁明の機会 | 弁明の聴取自体はあったが、それを踏まえる手続が機能せず実質性を欠いた |
| 処分の相当性 | 手続瑕疵が重大なため、相当性の検討に入るまでもなく無効とされた |
本件から得られる第一の教訓は、自社で定めた手続ルールは、まず自社を拘束するということです。懲戒手続を規程で定めた以上、それに則った手続を経なければ、処分そのものが無効と評価されかねません。弁明の機会の付与は、就業規則等に特段の定めがない場合でも、法的リスクを踏まえれば行っておくのが実務上は安全です。
第二に、重めの手続を定めると、迅速・機動的な懲戒対応が難しくなるという副作用があります。これを見直すこと自体は選択肢になりますが、慎重な手続を簡素化する変更は、その経緯・理由を合理的に説明できるよう整理しておく必要があります。安易な手続規程の変更は、変更自体が無効と判断され、変更後の規程に基づく処分まで無効とされるリスクをはらみます。規程の設計・変更にあたっては、事前に専門家へ相談することをお勧めします。
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懲戒手続のチェックポイント
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根拠法令・参照判例
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。判例・法令の解釈や個別事案への適用は、事実関係により結論が変わり得ます。実際の対応にあたっては、弁護士・社会保険労務士等の専門家へご相談ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。
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執筆者
三重 英則(みえ ひでのり)
社会保険労務士法人T&M Nagoya/社員
特定社会保険労務士・経営心理士・経営法曹会議賛助会員 当法人の価値観:誠実・Think more・伴走
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