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雇用保険法と上場審査
IPO労務監査における6つの新論点 ― N-3期から備える主幹事審査対応
2026年5月18日 | 社会保険労務士法人T&M Nagoya
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📌 本記事の要点
IPO労務監査の中核論点は、依然として労働時間管理・管理監督者性・未払残業代精算の3つにある。これらの整備が上場準備の大前提となる。本記事はそれを踏まえたうえで、2024年5月成立の改正雇用保険法(令和6年法律第26号)により新たに比重を増した「拡張論点」を整理する。具体的には(@適用漏れ、A高年齢雇用継続給付、B育児休業給付、C教育訓練給付、D雇用調整助成金過去受給、E労働条件通知書)の6点である。中核論点と拡張論点、両輪での点検が上場準備労務監査の本質であり、いずれも是正に時間を要するため、N-3期からの先行着手が最善解となる。
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IPO労務監査の核心は、労働時間管理・管理監督者性・未払残業代の精算という3つの中核論点にある。これらは現在も変わらず労務監査の主軸であり、これらの整備なくして上場準備は進まない。一方で、2024年5月成立の改正雇用保険法(令和6年法律第26号)は、これら中核論点に加えて点検すべき「拡張論点」を新たに生み出した。雇用保険の適用関係、給付制度の運用、過去の助成金受給履歴、労働条件通知書の整合性──これらは中核論点ほどの重みはないものの、放置すれば判明時点での当期精算や引当金計上など企業財務に影響を及ぼし得る重要性を持つ。本記事は、上場準備中の経営者・CFO・労務担当者が、中核論点を整備したうえで、追加的に何を点検すべきかを明らかにすることを目的とする。
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1. なぜ雇用保険関連がIPO労務監査の重要論点となるのか
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IPO労務監査において雇用保険関連の論点が比重を増している理由は3つある。第一に内部統制評価との連動性、第二に将来義務化される改正への準備状況が評価対象となること、第三に企業財務に影響を及ぼし得る性質である。第三の点について補足すれば、雇用保険関連の不備は最大2年の遡及加入や雇用調整助成金不正受給の3倍返還等の財務影響を生じ得るが、実務上は判明時点での当期精算(特別賞与等による一時金処理)で対応されるケースが多く、過年度遡及修正に至るのは金額が極めて重大なケースに限られる。むしろ重要なのは、判明時点で速やかに精算方針を確定できる体制が整っているかという内部統制の品質である。これらは中核論点ではなく「拡張論点」として位置づけられるべきものである。中核論点については次節で改めて整理する。
本記事は「2026年雇用保険法改正」を切り口にIPO労務監査の論点を扱うものであるが、ここで強調しておきたいのは、雇用保険関連の論点は決して労務監査の中心ではないという点である。IPO労務監査の中核は、依然として労働時間管理・管理監督者性・未払残業代の精算という3つの論点にある。本論点の整備なくして上場準備は進まない。
| 中核論点 |
点検の核心 |
| @ 労働時間管理 |
客観的な労働時間の把握(タイムカード・ICカード・PCログイン記録等)と36協定上限規制(時間外労働月45時間/年360時間、特別条項月100時間未満/2-6か月平均80時間以下/年720時間)の遵守。労働安全衛生法第66条の8の3に基づく労働時間状況把握義務との整合性。事前申請制と実態の乖離。 |
| A 管理監督者性 |
労働基準法第41条第2号の管理監督者該当性を実態判断で点検。「管理職」「課長以上」等の社内呼称ではなく、(@)職務内容・責任と権限、(A)勤務態様(出退勤の自由)、(B)賃金等の待遇の3要素から実態判断する(日本マクドナルド事件 東京地判平成20年1月28日等)。いわゆる名ばかり管理職問題は、IPO審査で最も指摘されやすい論点の一つである。 |
| B 未払残業代の精算 |
過去最大3年(令和2年4月以降に発生した賃金請求権、労働基準法第115条・附則第143条第3項)の遡及精算リスク。固定残業代制度の適正性(時間数・金額・差額支払いの3要件、テックジャパン事件 最判平成24年3月8日、医療法人康心会事件 最判平成29年7月7日等)。IPO準備で発覚した場合の自主精算方針の決定。 |
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本記事の射程 上記3つの中核論点は、IPO労務監査の基盤であり、これらの整備なくして雇用保険関連の論点を議論しても意味がない。本記事は中核論点が整備されていることを前提に、これに追加して点検すべき「雇用保険関連の拡張論点」を整理するものである。中核論点の詳細については、別記事および顧問先個別のご相談で扱う。
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なお、雇用保険関連の論点は、是正に時間を要するものが多い。雇用契約書の遡及的整備、過去受給助成金の検証、給付申請手続の見直し──いずれも数か月から1年単位の対応期間を要する。N-1期に発覚しても手遅れになる可能性があり、N-3期からの先行着手が望ましい。
雇用保険の適用関係は、雇用保険法第6条の適用除外規定および同法第13条の被保険者期間規定により詳細に定められている。実務上、適用漏れが頻繁に発生するパターンは次のとおりである。
| 適用漏れパターン |
主な発生原因 |
| 短時間労働者の判定誤り |
週所定労働時間20時間以上の判定で、シフト変動が考慮されていない/所定外労働の常態化が見落とされる |
| 取締役兼従業員の判定誤り |
使用人兼務役員として被保険者該当となる範囲の判定誤り(雇用関係の実態が役員報酬と賃金で区分されていない) |
| 業務委託契約の実態判定 |
契約形式は業務委託だが実態は労働者性が認められるケース(フリーランス保護法との関連も論点化) |
| 入社月の届出遅延 |
取得届を翌月10日までに提出する義務(雇用保険法施行規則第6条)の不遵守 |
適用漏れが発覚した場合の遡及加入は、原則として確認の請求があった日から起算して最大2年間まで遡及される(雇用保険法施行規則第8条等の解釈)。遡及加入により会社負担となる過去保険料は、判明時点で当期費用として処理されるか、または引当金として計上される。
2028年10月の適用拡大を控えた点検 2028年10月施行予定の改正により、週所定労働時間10時間以上の労働者まで適用対象が拡大される。現時点では未だ施行されていないが、IPO審査では「将来義務化される範囲も含めた準備状況」が評価される。現在パート・アルバイトとして雇用保険未加入の従業員について、週所定労働時間10時間以上の者を全数把握し、2028年10月以降の被保険者数増加見込みおよび保険料負担増を試算しておくことが望ましい。
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4. 拡張論点A 高年齢雇用継続給付の取扱いと賃金設計
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2025年4月から、高年齢雇用継続給付の支給率上限が15%から10%へ縮小された。この縮小はIPO労務監査において、次の2つの論点を生じさせる。
論点A:給付前提の賃金設計の合理性 多くの企業の嘱託規程は「定年退職時賃金からの低下分を給付で補填する」という設計を採用してきた。給付縮小により、この設計の合理性が問われる場面が増えている。とりわけ、長澤運輸事件(最判平成30年6月1日)以降、再雇用後賃金の合理性判断は職務内容との均衡を厳しく問う方向にある。給付制度の存在を理由とした賃金低下が、パートタイム・有期雇用労働法第8条・第9条との関係で問題視されないか、再点検が必要である。
論点B:給付申請手続の適正性 支給対象月の賃金額の届出、60歳到達時等賃金証明書の作成・保存等、給付申請に必要な手続が漏れなく行われているか。届出漏れがあれば従業員から損害賠償請求を受けるリスクがあり、これも労務監査の重要点検項目となる。
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▶ 連載第1弾との接続 高年齢雇用継続給付の縮小と賃金設計見直しの実務的詳細は、連載第1弾「高年齢雇用継続給付15%→10%への縮小──再雇用制度の前提が崩れる2026年」をご参照いただきたい。本記事は、その内容をIPO労務監査の文脈で読み直したものである。
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5. 拡張論点B 育児休業給付・育児時短就業給付金
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育児関連給付は、2024年5月の改正により大きく拡充された。改正の主なポイントは(@)出生後休業支援給付金の新設(夫婦ともに育休取得の場合、給付率を実質80%相当へ引上げ)、(A)育児時短就業給付金の新設(2歳未満児の養育のため時短勤務を行う場合の所得補填)の2点である。これらの新設給付について、IPO労務監査では次の3点が点検対象となる。
@ 給付申請手続の不備 給付金申請には、休業前賃金月額証明書の作成、ハローワークへの届出など複数の手続が必要となる。手続漏れによる従業員の不利益発生は、損害賠償請求の対象となり得る。
A 育介法改正との整合性 2025年4月および10月から段階施行された改正育児・介護休業法(柔軟な働き方を実現するための措置等)と、給付金制度の取扱いを社内制度として一体的に整備できているか。両者の不整合は、就業規則・育児介護休業規程の品質欠如として指摘される。
B 男性育休取得率の開示準備 常時雇用労働者数1,000人超の事業主は男性労働者の育児休業等取得率の公表が義務化されており、上場準備企業ではESG情報開示の文脈でも注目される。給付制度の周知不徹底による取得率低迷は、開示上のマイナス要因となり得る。
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6. 拡張論点C 教育訓練給付・教育訓練休暇給付金
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2025年10月から新設された「教育訓練休暇給付金」は、雇用保険被保険者期間5年以上の労働者が、企業が設ける教育訓練休暇制度を利用して連続30日以上の無給休暇を取得し厚生労働大臣指定の教育訓練講座を受講する場合に、失業給付の基本手当と同額が支給される制度である(雇用保険法等の一部を改正する法律附則による)。
本制度は法律で休暇付与を義務付けるものではない。企業が任意で教育訓練休暇制度を設けた場合に、労働者が給付金を受給できる支援制度である。IPO労務監査では次が点検される。
@ 社内教育訓練制度の整備状況 リスキリング推進の流れの中、社内に教育訓練休暇制度を設けているか。設けている場合、就業規則上の規定整備が行われているか。
A 自己都合退職者の給付制限免除との連動 2025年4月から、離職前1年以内に教育訓練給付金対象講座を受講した自己都合退職者は給付制限が免除される運用に変更された。社内のリスキリング支援制度がこの新運用と整合しているか、退職時の従業員説明資料に反映されているかが点検対象となる。
IPO労務監査において、近年とりわけ慎重な検証が求められるのが、新型コロナウイルス感染症対応のため2020年から2023年にかけて支給された雇用調整助成金(特例措置)の受給履歴である。緊急対応のため要件確認が簡素化された期間であり、要件を満たしていなかった可能性のある受給事例が、現在になって発覚するケースが増えている。
| 想定される問題類型 |
監査での点検観点 |
| 休業実態の不整合 |
休業計画届と実際の業務指示の記録に齟齬がないか |
| 休業手当の不適切支給 |
休業手当6割支払い要件に対する基準賃金算定の正確性 |
| 受給期間中の解雇等 |
受給対象期間中に解雇等を行っていないか(不支給要件該当) |
| 記録・帳簿の保存 |
受給に係る関係帳簿の保存(雇用安定事業関係資料の保存義務) |
不正受給と認定された場合、支給金返還に加えて、その2倍に相当する額(合計3倍返還)の納付および年5%の延滞金、悪質な場合は事業主名の公表(5年間)が課される。上場前後にこれが発覚した場合の影響は重大である。N-3期の段階で、コロナ期受給の自主的検証を実施し、問題があれば自主返還を含めた対応を選択することが望ましい。
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8. 拡張論点E 労働条件通知書・雇用契約書の記載不備
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労働基準法第15条および労働基準法施行規則第5条は、労働条件の明示事項を詳細に定めている。2024年4月からは、就業場所・業務の変更の範囲、有期労働契約の更新上限、無期転換申込機会・無期転換後の労働条件、といった事項の明示が義務化された。IPO労務監査では、これらの記載が正確に行われているかが点検される。
雇用保険との関連で特に問題となるのは、次のような不整合である。
@ 週所定労働時間の記載と実態の乖離 労働条件通知書には週所定労働時間20時間未満と記載しながら、実態では恒常的に20時間以上勤務している場合、雇用保険被保険者該当の判定との不整合が生じる。
A 雇用期間の見込みと実態の乖離 雇用保険被保険者該当には「31日以上の雇用見込み」が要件となるが、契約上「2か月以内」と記載しながら反復更新している場合、被保険者該当判定との不整合が生じる。
B 固定残業代の記載不備 固定残業代制度を採用する場合の記載要件(時間数・金額・超過分の取扱い)が明示されているか。固定残業代の記載不備は、上記の中核論点B(未払残業代の精算)と直結する論点であり、IPO労務監査では併せて頻出論点となる。テックジャパン事件(最判平成24年3月8日)以降、固定残業代の有効性判断は明確化要件を厳格に問う方向にある。
下記は本記事のスコープである「拡張論点」のチェックリストである。これらの点検は、中核論点(労働時間管理・管理監督者性・未払残業代精算)の整備を前提として実施される。
| 点検項目 |
優先度 |
推奨着手時期 |
| 【中核論点】労働時間管理・管理監督者性・未払残業代の三位一体点検 |
最優先 (大前提) |
N-3期 |
| 【拡張論点】全従業員の雇用保険適用関係の点検 |
最優先 |
N-3期 |
| 【拡張論点】コロナ期雇用調整助成金受給履歴の検証 |
最優先 |
N-3期 |
| 【拡張論点】労働条件通知書・雇用契約書の全件点検 |
最優先 |
N-3期 |
| 【拡張論点】嘱託規程・賃金規程の点検(給付縮小対応) |
高 |
N-2期 |
| 【拡張論点】育児介護休業規程と給付制度の整合点検 |
高 |
N-2期 |
| 【拡張論点】2028年10月適用拡大に向けた被保険者数試算 |
高 |
N-2期 |
| 【拡張論点】教育訓練休暇制度の社内規程化検討 |
中 |
N-1期 |
| 【拡張論点】給付申請手続のフロー文書化 |
中 |
N-1期 |
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10. T&M Nagoyaの「経営者と共に歩く」労務監査アプローチ
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当法人のIPO労務監査は、「指摘」のための監査ではなく「解決」のための監査である。問題点をリストアップして経営者にお渡しするだけでは、上場準備の現実的な助けにはならない。当法人では、論点ごとに「リスクの深さ」「是正可能性」「想定される財務影響」を整理し、N-3期から逆算した実行可能なロードマップを経営者と共に構築する。
とりわけ重視するのは、主幹事証券会社・取引所の審査の流れを踏まえた「優先順位設計」である。すべての論点を同時並行で完璧に整備することは現実的ではない。財務影響の重大性、是正に要する期間、開示準備との関連性を考慮し、限られた経営資源を最適配分する。
また、過去のコロナ期助成金受給に問題が発覚した場合、自主返還を含む対応の選択肢を、税理士・弁護士とも連携しながら検討する。誠実な対応こそが、上場審査における信頼の基盤を構築する。
Q1. N-3期からの労務監査着手は早すぎませんか? むしろ標準的とされる。雇用契約書の不備や給付金関連の論点は是正に時間を要するため、N-3期着手が望ましいと考えられる。N-1期に発覚する論点は対応期間が足らず、上場スケジュール自体への影響が懸念される。
Q2. 雇用保険適用拡大は2028年施行ですが、なぜ今から備える必要があるのですか? 主幹事審査では「法改正への対応準備状況」も評価対象となるためである。施行直前の駆け込み対応は内部統制の脆弱性として指摘されるリスクがある。また、被保険者数増加に伴う保険料負担増は財務予測にも影響するため、早期把握が望まれる。
Q3. コロナ期の雇用調整助成金受給に不安があります。 受給要件を満たしていたかの遡及的検証が可能である。仮に問題があった場合の自主返還の選択肢も含め、早期の専門家相談が望まれる。なお、不正受給と認定されると最大3倍返還および5年間の事業主名公表となるため、リスクの大きさを正確に評価することが重要である。
Q4. 高年齢雇用継続給付の縮小はIPO労務監査にどう影響しますか? 給付前提の賃金設計を維持している場合、同一労働同一賃金違反のリスクとして指摘される可能性がある。詳細は連載第1弾記事「高年齢雇用継続給付15%→10%への縮小」をご参照いただきたい。
Q5. 労務監査と税務監査・会計監査の関係はどうなりますか? 実務上、労務監査で未払賃金が発覚した場合の処理は、過年度に遡って財務諸表を修正するケースは限定的である。一般的には、判明時点で精算する方式が採られ、その際は特別賞与等の一時金として支給し、当期の人件費として処理する方法が多く用いられる。この方式の利点は、所得税法上、支給を受けた年分の給与所得として取り扱われるため、過年分の所得税・住民税の修正や年末調整のやり直しが不要となり、税務・経理面の煩雑さが大きく軽減されることである(過去の給与を修正して支払う方式を選択することも可能だが、その場合は過年分の年末調整再計算・源泉徴収票の再発行等が必要となる)。引当金計上が必要となるのは、判明時点でまだ精算が完了していない場合や、追加発生見込み額がある場合などである。過年度遡及修正(企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」適用)は、金額が極めて重大で過去の財務情報の正確性を著しく損なう場合等の例外的処理にとどまる。重要なのは、労務監査の早期実施により、精算方針を税理士・公認会計士と十分に協議できる時間的余裕を確保することである。当法人は税理士法人・公認会計士事務所と必要に応じて連携を取りつつ監査業務を進める。
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✓ 当法人から上場準備企業に伝えたい3つのメッセージ
@ 「N-1期発覚」が最大のリスク 労務関連の論点は、N-1期に発覚すると是正期間が足らず、上場スケジュールに影響を与えうる。N-3期からの先行着手が、経営者にとって最も誠実な選択である。
A 過去の助成金受給は「自主検証」が分かれ目 コロナ期の助成金受給に不安がある場合、主幹事の指摘を待つのではなく、自主的に検証し必要であれば自主返還する。この姿勢が、内部統制の品質として高く評価される。
B 「制度を作る」より「運用を整える」 上場準備で問われるのは規程の形式美ではなく、運用の品質である。給付申請手続が確実に回っているか、労働条件通知書が実態と整合しているか──運用の細部こそが審査の本質である。
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12. まとめ ― 中核論点の整備と拡張論点の点検、両輪で
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IPO労務監査の中核は、依然として労働時間管理・管理監督者性・未払残業代の精算という3つの論点にある。これらの整備なくして上場準備は進まず、本論点の点検は経営者の最優先事項である。2026年雇用保険法改正は、これら中核論点を前提としたうえで、追加的に点検すべき「拡張論点」を生んでいる──雇用保険の適用関係、給付制度の運用、過去助成金受給履歴、労働条件通知書の整合性。これらは個別には小さく見えても、放置すれば判明時点での精算処理や引当金計上の負担として顕在化する重要性を持つ。
中核論点と拡張論点は、どちらか一方では足りない。中核論点を整備しないまま拡張論点に取り組んでも審査は通らず、拡張論点を放置すれば上場後の運用リスクが残る。両輪で点検することが、上場準備労務監査の本質である。
いずれの論点も、是正に時間を要する。N-1期で発覚した場合、上場スケジュール自体に影響を与えうる重大性を持つ。一方、N-3期からの先行着手であれば、論点を一つひとつ丁寧に整理し、必要な是正措置を講じる時間的余裕がある。「経営者と共に歩き、最善の解を導き出す」という当法人の理念は、この時間的余裕を経営者と共有することから始まる。
上場という重要なマイルストーンを、労務リスクで躓くことなく達成するために。N-3期の今こそ、中核論点と拡張論点の両輪で、労務監査を始めるべき時である。
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IPO労務監査のご相談を承ります
N-3期からの先行着手で、上場準備を労務リスクから守る。 当法人が伴走型でサポートいたします。
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【根拠法令・参考資料】
・雇用保険法第6条・第7条・第13条・第61条・第61条の6・第61条の12 ・雇用保険法施行規則第5条〜第8条 ・雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号) ・労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条 ・短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第8条・第9条 ・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(2025年4月・10月施行改正) ・最高裁判所第二小法廷 平成30年6月1日判決(長澤運輸事件) ・厚生労働省「雇用調整助成金の不正受給対策」関連通達 ・労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告(令和6年)
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【免責事項】 本記事は2026年5月15日時点の公表情報に基づき作成しています。最新の法令・行政解釈・通達の内容は、必ず原典をご確認ください。また、IPO審査の具体的基準は主幹事証券会社・東京証券取引所により詳細が異なる場合があります。個別の事案については、必ず社会保険労務士・弁護士・公認会計士等の専門家にご相談ください。本記事の内容を実務に適用したことによる損害について、当法人は責任を負いかねます。
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【執筆者】
三重 英則(みえ ひでのり)
社会保険労務士法人T&M Nagoya 社員 特定社会保険労務士・経営心理士・経営法曹会議賛助会員
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