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作成日:2026/03/26
【ブログ】飲食店の給与上昇と深刻な人手不足の矛盾ー 社労士が解説する8つの実践的解決策と法的リスク ー

【最新】飲食店の給与上昇と深刻な人手不足の矛盾
ー 社労士が解説する8つの実践的解決策と法的リスク ー

飲食業界の経営者の皆さま、こんにちは。社会保険労務士法人T&M Nagoyaです。

2025年、飲食業界の平均給与は確かに上昇傾向にあります。しかし現場では、深刻な人手不足が一向に改善されていません。

「給与を上げても応募が来ない」

「せっかく採用してもすぐに辞めてしまう」

「人手不足で営業時間を短縮せざるを得ない」

「残業が増えているのに、残業代の計算が正しいか不安…」

こうした悩みを抱えていらっしゃいませんか?

本記事では、2025年最新の給与データと人手不足の実態を整理したうえで、8つの実践的解決策を解説します。さらに、多くの飲食店が見落としがちな「法的リスク」についても、社会保険労務士の視点から踏み込んでお伝えします。

1. 2025年、飲食業界の平均給与はどう変化したのか?

1-1. 東京・大阪・愛知・福岡の平均給与データ

株式会社シンクロ・フードが2025年度上期(4月〜9月)に実施した調査によると、飲食業界の平均給与は以下の通りです。

地域 平均月給(2025年度上期) 前半期比
東京都 301,309円 +3,874円(101.3%)
大阪府 288,499円 +2,836円(101.0%)
愛知県 275,643円 +1,726円(100.6%)
福岡県 267,748円 +4,338円(101.6%)
地域 平均時給(2025年度上期) 前半期比
東京都 1,308円 +12円(101.0%)
大阪府 1,219円 +7円(100.6%)
愛知県 1,147円 +14円(101.2%)
福岡県 1,085円 +10円(101.0%)

出典:株式会社シンクロ・フード「2025年度上期飲食店動向」(求人飲食店ドットコム掲載の求人案件61,976件をもとに算出)

1-2. 業態別・職種別の給与傾向

東京都の主要業態別平均月給(2025年度上期)を見ると、和食が306,000円と最も高く、居酒屋・ダイニングバーが304,578円、イタリアンが298,000円、洋食・西洋料理が295,000円、カフェ・喫茶店が294,600円と続きます。

職種別では、調理スタッフの給与がサービス・ホールスタッフより高い傾向が続いています。これは、調理スキルの専門性と採用難易度を反映したものです。

1-3. 最低賃金上昇の影響

2025年10月以降、最低賃金が全国加重平均で1,121円(前年度1,055円から66円増)に引き上げられました。全都道府県で初めて1,000円を超え、引き上げ幅は目安制度が始まった1978年以降で過去最大です。

飲食業界への影響は甚大です。シンクロ・フードの調査によると、約15%の飲食店が「経営継続が危うい」と回答。さらに、約65%が「2030年には最低賃金が1,500円以上になる」と予測しています。

⚠ 社労士からの法的注意点:最低賃金違反のリスク

最低賃金の引き上げで特に注意すべき点があります。まず、固定残業代(みなし残業代)を含めた給与設計をしている場合、基本給部分が最低賃金を下回っていないか必ず確認してください。固定残業代を差し引いた「基本給」が最低賃金を下回れば、最低賃金法違反(同法4条)となります。

また、2025年度は発効日が都道府県で大きくばらついています(最も早い栃木県10月1日〜最も遅い秋田県2026年3月31日)。複数地域に店舗を展開する飲食チェーンでは、地域ごとの発効日を個別に把握し、適切なタイミングで賃金改定を行う必要があります。

最低賃金法違反には、50万円以下の罰金(同法40条)が科される可能性があります。意図せず違反状態になっているケースも少なくありませんので、必ず発効日前に全従業員の賃金をチェックしましょう。

2. なぜ給与が上がっても人が集まらないのか? ー 5つの構造的要因

給与が上昇傾向にあるにもかかわらず、飲食業界の人手不足は深刻化の一途をたどっています。帝国データバンクの調査では、飲食業界の非正社員の人手不足割合が全業種中でトップクラスに位置しており、2026年に入っても状況は改善していません。その背景には、以下の5つの構造的要因があります。

2-1. 長時間労働と不規則なシフト

飲食業界の年間労働時間は、全産業平均より約200時間長いといわれています。1日10時間以上の勤務が常態化し、深夜・早朝勤務が頻繁で、土日祝日の出勤も多いため、家族や友人との時間が取りにくい状況です。シフトが不規則でプライベートの予定が立てられないことも大きなマイナス要因になっています。

ワークライフバランスを重視する現代の求職者にとって、これらは応募をためらう決定的な理由となり得ます。

2-2. 「3K職場」のネガティブなイメージ

「きつい・汚い・危険」という飲食業界のイメージは根強く残っています。厨房の暑さ(40度超)、立ち仕事による身体的負担、クレーマー対応によるメンタルストレスなど、特に若年層の応募を妨げる要因となっています。

2-3. 他業種との賃金格差

厚生労働省の令和6年度賃金構造基本統計調査によると、飲食チェーン店に勤務する正社員の全国平均年収は約358万円。全産業平均の約422万円と比較すると、依然として約6万円の月額格差が存在します。給与が上がっても他業種との差が縮まらない限り、「同じ時間働くなら、もっと給与の高い仕事を」という求職者心理は変わりません。

2-4. キャリアパスの不透明さ

昇給・昇格の基準が不明確な店舗が多く、「この仕事を続けて、将来どうなるのか?」が見えにくいことも大きな課題です。昇給制度が曖昧、店長やマネージャーへの道筋が不明確、スキルアップ研修が不十分といった状況が、「将来性がない仕事」というイメージにつながっています。

2-5. 最低賃金上昇による人件費圧迫と悪循環

最低賃金の上昇は労働者にとってプラスですが、飲食店経営にとっては深刻な人件費増をもたらします。人件費が高騰して採用枠を増やせず、既存スタッフの労働時間が増加し、疲弊したスタッフが離職し、さらに人手不足が深刻化するという悪循環が生じています。

⚠ 社労士からの法的注意点:長時間労働・未払残業代のリスク

人手不足が慢性化すると、既存スタッフへの負担が増え、長時間労働が常態化しがちです。ここで注意すべき法的リスクをまとめます。

@ 残業代の未払い:飲食業では「店長」「料理長」を管理監督者扱いして残業代を支払わないケースが散見されますが、裁判例上、名ばかり管理職の問題として多くの飲食企業が敗訴しています(日本マクドナルド事件・東京地判平20.1.28等)。「店長」という肩書だけでは労働基準法41条2号の管理監督者には該当せず、実態に基づく判断が必要です。

A 固定残業代の無効リスク:求人票に「月給30万円(みなし残業40時間含む)」と記載しているケースがありますが、固定残業代が有効とされるためには、基本給部分と固定残業代部分の明確な区分、対価性、超過分の別途支払い等の要件を満たす必要があります。

B 未払残業代の請求時効:2020年4月以降の賃金債権の消滅時効は3年(当分の間の経過措置。将来的には5年に延長予定)です。過去3年分の未払残業代をまとめて請求されるリスクがあり、金額が数百万円に及ぶことも珍しくありません。

3. 人手不足を解消する8つの実践的対策

ここからは、飲食店の人手不足を解消するための8つの具体的対策をご紹介します。多くの飲食店で実際に効果が実証されている方法に加え、それぞれに潜む法的リスクもあわせて解説します。

【対策1】労働条件の抜本的改善

時給・月給の引き上げ(地域相場より100〜150円高く設定)、週休2日制の導入、残業削減、有給休暇の取得促進(年5日の取得義務の確実な遵守)など、労働条件を根本から見直すことが最も効果的です。

ある関東圏の居酒屋チェーン(30店舗)では、時給を150円引き上げ、シフトの完全自由化、社員食堂の無料化、月1回の個別面談を実施した結果、離職率が80%→30%に劇的改善し、応募者数も3倍増、売上が前年比115%に向上しました。

⚠ 法的注意点

有給休暇の年5日取得義務(労基法39条7項)に違反した場合、対象となる労働者1名につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。パート・アルバイトであっても、所定の要件を満たせば有給休暇は発生しますので、全従業員を対象に管理簿を整備しましょう。

【対策2】外国人材の積極活用

2019年に開始された特定技能「外食業」制度により、即戦力となる外国人材の雇用が大幅に容易になりました。接客・調理・配膳など飲食店の全業務に従事可能で、最大5年間の継続就労が可能です。日本語能力試験N4以上のコミュニケーション能力が保証されている点も安心材料です。

受入れ企業には、日本人と同等以上の労働条件の設定、相談窓口の設置、日本語教育支援、住居確保などの包括的サポート体制が求められます。多言語マニュアルや文化・宗教への配慮(礼拝室の設置、ハラール対応等)を整備した居酒屋チェーンでは、離職率が30%→10%に低下した事例もあります。

⚠ 法的注意点

外国人雇用は法令違反のリスクが高い領域です。不法就労助長罪(入管法73条の2)は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金と非常に重い罰則です。在留資格の確認を怠り、就労資格のない外国人を雇用した場合、「知らなかった」では済まされません。

また、外国人労働者に対しても労基法、最低賃金法、社会保険・労働保険の適用は日本人と同様です。「外国人だから」と社会保険に未加入のまま就労させることは法令違反となります。

ハローワークへの外国人雇用状況の届出(雇入れ・離職時)も義務付けられており、届出を怠ると30万円以下の罰金が科されることがあります。

【対策3】DX・省人化の導入

セルフオーダーシステム(タブレット注文)、配膳ロボット、キャッシュレス決済、予約・在庫管理システムなどの導入で、業務効率を大幅に改善できます。

ある焼肉店では、セルフオーダーシステムを初期費用50万円で導入した結果、ホールスタッフを3名→1名に削減し、月30万円の人件費削減を実現。投資回収期間はわずか約2ヶ月で、お客様の待ち時間短縮による満足度向上も達成しました。

鈴茂器工の調査(2025年)では、外食利用者の約9割が機械化を受け入れると回答しており、「時間短縮」と「セルフ化」が消費者にも歓迎されていることがわかります。

【対策4】キャリアパス・スキルアップ支援

調理師免許取得支援、店長候補育成プログラム、ソムリエ・栄養士などの資格取得費用の会社負担、明確な昇給・昇格基準の提示など、「何をすれば昇給するのか」を可視化することで、従業員のモチベーションと定着率が大幅に向上します。

あるイタリアンレストランでは、調理師免許取得支援と外部研修費用の全額会社負担を導入した結果、離職率が40%→15%に改善し、調理技術の向上によるメニューの質向上にもつながりました。

【対策5】柔軟な働き方の提供

短時間勤務(週20時間、ランチタイムのみ等)、副業OK、シフト希望制、事務・経理業務のリモートワーク化など、柔軟な働き方を提供することで、これまでアプローチできなかった人材層(主婦層、学生、シニア層等)への採用間口が広がります。

あるカフェチェーンでは、短時間勤務制度(週2日・4時間からOK)を導入し、保育園のお迎え時間に配慮したシフトを組んだ結果、主婦層の応募が前年比200%増となり人手不足が解消されました。

⚠ 法的注意点

短時間労働者やパート・アルバイトを多く雇用する場合、同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法8条・9条)への対応が必須です。正社員と非正規社員の間に不合理な待遇差がある場合、損害賠償請求の対象となり得ます。基本給、賞与、各種手当、福利厚生の各項目について、待遇差の有無とその合理性を検証しておきましょう。

【対策6】職場環境の改善

清潔な厨房(最新換気システム、エアコン完備)、最新設備(食洗機、自動調理機)、休憩スペースの充実(従業員専用ラウンジ、Wi-Fi完備)、おしゃれで機能的なユニフォームなど、「3K職場」イメージの払拭は人材確保に不可欠です。

⚠ 法的注意点

職場環境の改善は、安全配慮義務(労働契約法5条)の観点からも重要です。厨房での火傷、刃物による負傷、高温環境での熱中症などが発生した場合、使用者が安全配慮義務を怠っていれば、民法上の損害賠償責任を問われます。特に夏場の厨房温度管理は、労働安全衛生法に基づく対策が求められます。

【対策7】従業員エンゲージメントの向上

月1回の1on1ミーティング、MVP表彰・インセンティブ制度、チームビルディングイベント(社員旅行、懇親会)、匿名の従業員満足度調査など、「この店で働き続けたい」と思ってもらえる職場づくりが定着率向上の鍵です。

従業員が定着すれば、採用コスト削減だけでなく、サービス品質の向上→顧客満足度の向上→売上増加という好循環が生まれます。

【対策8】採用ブランディングの強化

Instagram・X・TikTokでの職場の雰囲気発信、求人サイトでの「働きやすさ」「成長環境」の訴求、スタッフインタビュー動画、スマホ対応の採用サイトなど、「この店で働きたい」と思ってもらえる情報発信が重要です。

⚠ 法的注意点

求人広告の記載内容にも注意が必要です。2024年4月施行の改正職業安定法により、求人情報の正確性・最新性の確保が義務付けられています。「月給30万円以上可能」と記載しながら実際には固定残業代込みの金額であった場合、労働条件の明示義務違反となりかねません。求人票と実際の労働条件が乖離するトラブルは労働紛争の入口となりますので、正確な記載を心がけましょう。

4. 社会保険労務士ができるサポート

飲食業界の人手不足対策は、「採用を増やす」だけでなく、法令遵守を前提とした労務管理の最適化が不可欠です。社会保険労務士は、以下のようなサポートを提供できます。

サポート領域 具体的な内容
労働時間管理の適正化 残業削減のための業務効率化提案、シフト管理システムの導入支援、変形労働時間制の活用提案、有給休暇取得促進のための制度設計
就業規則の作成・改訂 外国人雇用対応の就業規則作成、柔軟な働き方に対応した規則改訂、同一労働同一賃金対応、ハラスメント防止規程、育児介護休業規程の整備
助成金の活用 キャリアアップ助成金(正社員化コース:1人57万円、賃金規定等改定コース:32万円等)、働き方改革支援助成金(対象経費の75%・上限250万円)、業務改善助成金(最大600万円)
賃金制度の設計 昇給制度・評価制度・退職金制度の設計、最低賃金上昇に対応した賃金体系の見直し、固定残業代制度の適法な設計
外国人雇用の手続支援 在留資格の確認・管理体制構築、雇用契約書の多言語作成、外国人労働者の社会保険・労働保険手続、ハローワークへの届出対応

5. 今すぐ確認!人手不足対策&法令遵守チェックリスト

以下のチェックリストで、あなたの店舗の現状を確認してみてください。★マークは法令上の義務に関する項目です。

労働条件
時給・月給は地域相場より高いか?
シフトは柔軟か(週2日・4時間からOK等)?
有給休暇は年5日以上取得させているか?
全従業員の賃金が最低賃金を上回っているか(固定残業代控除後)?
労働時間を適切に記録・管理しているか(タイムカード、勤怠システム等)?
職場環境・安全衛生
厨房は清潔で快適か(エアコン・換気完備)?
休憩スペースは充実しているか?
ハラスメント相談窓口を設置し、周知しているか?
キャリア支援・エンゲージメント
スキルアップ研修を実施しているか?
昇給・昇格基準は明確に定めているか?
定期面談・従業員満足度調査を実施しているか?
採用活動・外国人材
複数の求人媒体を活用し、SNSでも情報発信しているか?
求人票の記載内容は実際の労働条件と一致しているか?
外国人従業員の在留資格を適切に確認・管理しているか?
外国人従業員も社会保険・労働保険に適正に加入させているか?
就業規則・同一労働同一賃金
常時10人以上の従業員がいる場合、就業規則を作成・届出しているか?
正社員と非正規社員の待遇差について、合理的な説明ができるか?

まとめ:「人」を大切にし、法令を守る店舗が生き残る時代

2025年、飲食業界の平均給与は確かに上昇しています。しかし、給与を上げるだけでは人は集まりません。そして、人手不足は労務リスクを高めます

少人数で回す現場では、長時間労働が常態化し、残業代の未払い、有給休暇の未取得、安全配慮義務の不履行など、知らず知らずのうちに法令違反のリスクが積み上がっていきます。ある日突然、退職した従業員から未払残業代を請求されたり、労基署の臨検を受けたりするケースは決して珍しくありません。

人手不足を解消する鍵は、「働きやすさ」と「成長できる環境」の整備、そして「法令遵守を基盤とした労務管理」の三位一体にあります。

労働条件の抜本的改善(時給アップ、シフト柔軟化、残業削減)

外国人材の積極活用(特定技能制度の活用)

DX・省人化の導入(セルフオーダー、配膳ロボット)

キャリアパス・スキルアップ支援(研修、資格取得支援)

柔軟な働き方の提供(短時間勤務、副業OK)

職場環境の改善(清潔な厨房、最新設備)

従業員エンゲージメントの向上(定期面談、表彰制度)

採用ブランディングの強化(SNS、動画コンテンツ)

人手不足対策は、経営戦略そのものです。

社会保険労務士法人T&M Nagoyaでは、労働時間管理、就業規則の作成・改訂、助成金の活用、賃金制度設計、外国人雇用の手続支援まで、飲食業界の人手不足対策を法令遵守の観点から総合的にサポートしています。

「うちの店舗は大丈夫だろうか?」と少しでも不安を感じたら、お気軽にご相談ください。現状の労務管理を無料で診断し、リスクと改善策を具体的にお伝えします。

飲食店の労務管理・人手不足対策のご相談はこちら

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お気軽にお問い合わせください。

【参考】
・株式会社シンクロ・フード「2025年度上期飲食店動向 飲食店の平均給与(業態・業種別)」
・厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額答申」
・厚生労働省「令和6年度賃金構造基本統計調査」
・帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」
・鈴茂器工「飲食店の人手不足に関する調査2025」

※本記事は2026年3月時点の情報に基づいて作成しています。法令・助成金の内容は随時変更されますので、最新情報は厚生労働省のウェブサイト等でご確認ください。個別の法的判断については専門家にご相談されることをお勧めします。