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作成日:2026/03/20
【裁判例】業務委託契約なのに「週40時間勤務」を義務付け → 裁判所が労働者性を認定、バックペイ201万円命令

CASE STUDY / 裁判例解説

業務委託契約なのに「週40時間勤務」を義務付け

→ 裁判所が労働者性を認定、バックペイ201万円命令

東京地方裁判所 令和8年(2026年)3月判決 / 令和8年3月23日 労働新聞第3538号2面掲載

 

⚠ 本記事は、労働新聞社が2026年3月19日に報じた東京地裁判決(令和8年3月23日第3538号2面掲載)を参考に、当事務所が法的観点から解説を加えたものです。判決の内容はニュース報道に基づくものであり、判決原文の引用・複製は行っておりません。本記事の内容は情報提供を目的とするものであり、個別事案への法的助言ではありません。

■ 事案の概要

東京都内の営業代行会社と「業務委託契約」を締結し、営業代行業務に従事していた男性が、契約解除を不服として提訴した事案です。東京地方裁判所(黒木裕貴裁判官)は、男性の労働者性を認定し、同社に201万8,000円のバックペイ支払いを命じました。

注目点は、名称が「業務委託契約」であっても、契約上「1日8時間・週5日」の従事義務+GPS報告義務が課されていた実態から、裁判所が有期労働契約と認定した点です。

■ 事件の時系列

令和元年
11月

 
 

業務委託契約締結

委託期間1年・月額25万円+インセンティブ。自動更新条項あり。再委託禁止。

令和2年
1月

 
 

委託料の減額合意

12月分から月額20万円へ減額(管理業務未従事による)。以降20万円が継続して支払われる。

令和3年
2月

 
 

業務停止通告 → 契約解除

2月23日に「契約不履行」を理由に翌日から業務停止を通告。3月2日に正式解除。

令和3年
12月

 
 

民事調停申立て(不成立)

業務委託料相当額の支払いを求め申立て。→ 不成立。

令和4年
8月

 
 

民事訴訟へ移行(業務委託料請求で提訴)

令和5年
4月

 
 

訴えの変更:「労働契約上の地位確認」を主位的請求に追加

第3回弁論準備手続期日で主張を転換。労働契約であるとして訴えを変更。

令和8年
3月

 

東京地裁 判決

有期労働契約と認定 → バックペイ201万8,000円の支払命令

■ 裁判所の判断:労働者性を認定した根拠

労働者性の判断は、労働基準法の適用に関する昭和60年の行政通達(いわゆる「労働者性判断基準」)や最高裁判例が積み上げてきた枠組み(使用従属性・労務提供の対償性等)に沿って行われます。本件で裁判所が重視したポイントは以下の通りと報じられています。

🕐

時間的拘束性(強固)

契約上、1日8時間・週5日(週40時間)の業務従事義務が明記されていた

📍

GPS管理による監督

GPSアプリで業務状況の報告義務あり。使用者による業務遂行の指揮命令を裏付け

🚫

再委託禁止

事前承諾なき再委託禁止。自己の裁量による第三者への業務移管ができない点が独立性を否定

裁判所が退けた主張(会社側・男性側それぞれ)

会社側の主張(排斥)

「男性が当初、業務委託を主張していたのだから訴訟途中で労働契約への変更は許されない(禁反言)」→ 裁判所は、弁論準備での就労状況の主張を踏まえての変更であり、訴訟上の信義則・禁反言に反しないと判断

男性側の主張(一部排斥)

「期間の定めは形骸化していた(無期契約に転化)」→ 裁判所は、自動更新条項の存在等から形骸化は推認できないとして有期契約の性格を維持。また報酬減額も「自由な意思に基づく合意」として有効と認定

■ 特定社会保険労務士からの実務解説

@ 「業務委託」の名称だけでは労働者性は否定できない

本判決が示す最重要の教訓は、「契約書のタイトルが業務委託であっても、実態が労働関係であれば労働法が適用される」という原則の再確認です。労働者性は契約の名称ではなく、就労の実態(指揮命令・時間的拘束・場所的拘束・専属性・報酬の性質等)で判断されます(労働基準法第9条、昭和60年労働省告示通達「労働基準法の『労働者』の判断基準について」参照)。

A 「週40時間・1日8時間の義務付け」が致命的な証拠になった

本件では、契約書自体に週40時間・1日8時間の従事義務が明記されていた点が決定的でした。業務委託契約において、このような時間的拘束を定めることは、使用従属性の強固な証拠となります。業務委託を活用する企業にとっては、「時間ではなく成果物・成果で管理する」という設計原則の徹底が不可欠です。

B GPSによる位置情報管理も「使用従属性」の根拠に

GPSアプリによる業務状況の報告義務は、使用者が業務遂行の過程を常時把握・監督していたことを示す強力な証拠として機能しました。テクノロジーを活用した管理手法も、労働者性判断において不利に働く場合があることを示しています。

企業の実務担当者・経営者の方へ:業務委託リスクチェックポイント

 契約書に「就業時間」「出勤日数」「出勤場所」を義務付ける条項はないか
 GPSや勤怠管理システムで受託者の行動を常時把握していないか
 再委託を一切禁止し、受託者自身の労務提供のみを求めていないか
 報酬が「成果」ではなく「時間・日数」に比例する形になっていないか
 受託者が他社からも仕事を受けられる状況(専属性の排除)になっているか

C 訴訟途中での主張変更も認められた点にも注目

本件では、男性が訴訟提起時には「業務委託」を前提に委託料を請求していたにもかかわらず、途中から「労働契約」へと主張を変更しました。会社はこれを禁反言(自己の従前の行為と矛盾する主張は許されない)として争いましたが、裁判所はこれを認めませんでした。実務上、受託者が後から「実は労働者だった」と主張を転換してくるリスクがあることを示しており、契約設計段階での適正化が重要です。

■ 本判決のポイントまとめ

 「業務委託」という契約形式より、就労の実態(時間的拘束・指揮命令・専属性等)が優先される
 週40時間・1日8時間の義務付け+GPS報告義務が「使用従属性」の強固な証拠と判断された
 有期労働契約と認定され、バックペイ(賃金相当額の遡及支払い)201万8,000円が命令された
 訴訟途中での主張変更(業務委託→労働契約)も禁反言に反しないと認容された

業務委託契約の適法性・労働者性リスクについてのご相談

「現在の業務委託契約が労働契約と認定されるリスクはないか」「フリーランス・外注管理の適正化を図りたい」というご相談は、当事務所にお気軽にお問い合わせください。
元法律事務所勤務・使用者側・労働者側双方の経験を持つ特定社会保険労務士が、リスクの洗い出しから契約書の見直し・就業規則整備まで一貫してサポートします。

HIDE社会保険労務士事務所(名古屋) https://mh5.jp

【出典・参考情報】

労働新聞社「営業代行の労働者性認める 週40時間が契約義務 東京地裁」(2026年3月19日配信、令和8年3月23日 労働新聞第3538号2面掲載)
※本記事は上記報道を参考に当事務所が独自に解説を加えたものです。判決原文・判決書の転載は行っておりません。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律上の助言ではありません。具体的なご事情については、専門家にご相談ください。

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