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作成日:2025/06/12
【事例紹介】退職日の前倒しは“実質解雇”と判断された事例 ― 退職合意の真意と企業対応の留意点

労働契約における「退職日」をめぐって、東京地裁が企業側の指定を“実質解雇”と認定した判決が示されました(令和7年5月22日判決)。

本件は、退職日を労働者が申し出た日よりも早めに企業が設定し、実際に退職させたという事案。裁判所はこの対応について、労働者の真意による同意がなかったとし、解雇予告手当および同額の付加金の支払いを命じました。


この判決のポイントは以下の通りです:

  • 労働者が5月15日を退職日と申し出ていたにもかかわらず、企業側が4月10日を最終出勤日として退職させた。
  • 双方が交わした守秘義務誓約書に「退職日は4月10日」と明記されていたが、裁判所は労働者の署名・押印について「真意に基づいた同意とはいえない」と判断。
  • 変更による賃金損失等の不利益が大きいことを踏まえ、企業の対応は慎重さを欠いていたとされた。

 

このような判断は、「形式的な同意」があったとしても、それが実質的な合意か否かを厳しく問うものです。労働契約終了時の同意文書には、署名・押印があったとしても、説明責任や不利益の有無、本人の納得度が欠けていれば、無効と判断されるリスクがあります。

 

【三重総合社労士事務所からの視点】

企業が労働者の退職希望日よりも前倒しで退職日を指定する場面は、特にトラブルの多い局面です。「退職合意書」や「誓約書」などを用いたとしても、その運用や手続きが適正でなければ、今回のように“解雇”とみなされかねません。
実際、当職が相談を受けた事案ですが、年次有給休暇未消化分の私用回避目的や感情的になって退職日を前倒しにしようとしたことがありました。この時も、この裁判例と同様に、労働者が退職日を指定した後、会社が一方的に退職日を早めると、それは解雇と判断されるリスクがありますよ、とアドバイスをしてきたのですが、そこに契約書同には「真の同意論」が求められています。

 

当事務所では、以下のような支援を通じて企業のリスクを最小限に抑えるサポートを行っています:

  • トラブルを未然に防ぐ退職プロセスの設計
  • 合意書の文面精査と「同意の実質」を担保する運用指導
  • 解雇・退職リスクに関する従業員対応研修や管理職教育

 

退職にまつわるトラブルは、企業の信用にも大きく影響するものです。企業の意向と労働者の権利のバランスを取りながら、法的リスクを回避するための適切な設計と対応が求められます。

 

「形式ではなく、真の合意か?」

この問いに、企業が自信を持って答えられる体制づくりを、私たちが伴走支援いたします。