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作成日:2025/05/15
“休憩時間”の形骸化に警鐘——ジェットスターCA裁判が示す、労務管理の見直しポイントとは

機内で座っていれば「休憩」になるのか?——東京地裁は、客室乗務員(CA)の訴えを支持し、ジェットスター・ジャパンに対して慰謝料の支払いと休憩時間の確保を命じました。
これは、単なる航空業界の話ではありません。変形労働時間制や現場裁量に依存した「なんとなく休憩」が通用しない時代に入ったことを、中小企業も強く意識すべきタイミングです。

 

■ CA裁判の概要とポイント  

ジェットスター・ジャパンで働くCA35名が、十分な休憩が与えられていないとして提起した裁判で、東京地裁は以下の判断を下しました。

  • 休憩に相当する時間が不十分と認定し、慰謝料計385万円の支払いを命じる  
  • 機内で座るだけ、便間の待機時間は「休憩」に当たらない  
  • 労働基準法施行規則32条2項に該当しても、休憩の質が重要  

注目すべきは、休憩時間の「実質性」を強く問うた点です。形式的に与えられているかどうかではなく、精神的・肉体的な緊張が解かれる実態があるかが判断基準とされました。

 

■ なぜ中小企業に関係するのか?  

この判決は大企業の話だと片付けるのは早計です。特に、以下のような現場を持つ企業には強い示唆があります。

  • シフト制や変形労働時間制を採用している  
  • 業務の性質上、明確な「休憩時間」が取りづらい現場(例:製造・物流・医療・介護)  
  • 「ちょっと座れる時間」や「空き時間」を休憩と見なしてきた慣習がある  

これらに該当する企業では、就業規則や運用実態を見直す必要があります。休憩の定義を曖昧なままにしておくと、将来的に労使トラブルや訴訟リスクを抱えることになりかねません。

 

■ 三重からの視点:労働者の「回復時間」の本質に立ち返る  

私がこの判決を通して強く感じるのは、制度よりも「人間の感覚」に即した運用の必要性です。

  • 働く人が「本当にひと息つけているか?」  
  • 業務から解放される時間が「きちんと確保されているか?」

こうした視点に立ち返らず、法令の枠だけで運用を済ませていると、制度は形骸化し、やがて紛争の火種となります。

 

■ 中小企業が取るべきアクション  

1. 休憩時間の運用実態を点検する(机上ではなく現場ヒアリングを)  

2. 休憩に関する定義・判断基準を就業規則に明記する  

3. 変形労働時間制やシフト管理の適正運用を再チェックする  

4. 「実質的な休息」が取れているかを、定期的に振り返る機会を持つ

 

労務管理の本質は、“人の働き方”を支えることにあります。ルールで縛ることが目的ではなく、ルールを通じて「安心して働ける職場」を築くことが目的です。

現場主義で、かつ法律と感覚の接点を見据えた労務改善こそが、いま求められている姿勢ではないでしょうか。