厚生労働省は、2025年11月21日に開催された「労働政策審議会 職業安定分科会 雇用環境・均等分科会 同一労働同一賃金部会」において、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し案を公表しました。
この見直しは、過去の複数の最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件、メトロコマース事件、日本郵便事件など)を反映した内容であり、企業にとって実務面での再確認が求められる重要なタイミングとなっています。
■ 見直し案の主なポイント
今回のガイドライン案における注目すべき点は、以下の2項目です。
1. 【退職手当】に関する均等待遇の考え方が明示
これまで議論の中心でありながら、明確な記載がなかった退職金制度について、待遇差の合理性を判断する基準が示されました。たとえば、勤続年数や職務の内容、配置の変更範囲等が正社員と非正規社員で大きく異ならない場合には、退職金の支給においても不合理な差が認められない可能性があります。
2. 【契約期間が無期かつ所定労働時間が同一】である非正規労働者の取り扱いを明確化
「通常の労働者」と比較される対象に、無期雇用でフルタイム勤務する労働者が明示され、比較対象としての重要性がより一層強調される内容となっています。特に派遣社員や有期契約社員であっても、このカテゴリーに該当する場合は、待遇差について合理的説明が求められることになります。
■ ガイドライン改定と企業の実務対応
正式なガイドラインの公表は近いと見られており、今後、各地の労働局による企業指導や是正指導が強化されることも予想されます。
これまで「正社員と非正規社員の待遇差は慣行」として捉えていた企業も、法的な整合性が問われる時代に突入しています。とりわけ、退職金や賞与など「後払い型報酬」の分野では、職務の違い、貢献度、長期的な人材育成などの観点から、合理的理由の説明が不可欠になります。
■ 企業が今からできること
- 自社の退職金制度の有無と支給条件を確認
- 無期・フルタイムの非正規社員との待遇差を洗い出す
- 必要に応じて制度設計や就業規則の見直しを検討
同一労働同一賃金に関する裁判例の蓄積により、ガイドラインはより実務に即した内容に進化しています。今後の公表を待たず、早めの対応を行うことが、トラブル予防と人材定着につながる第一歩です。
※出典:厚生労働省「第5回 同一労働同一賃金部会(2025年11月21日)」資料より
同一労働同一賃金ガイドライン 見直し(案)