東京商工会議所が、従業員承継を検討する際のチェックシートを公開しました。
このチェックシートでは、「株式の買取資金の準備ができない」「後から親族が承継希望を表明する」など、従業員承継にありがちなトラブルを想定したチェック項目と、事前に確認すべきポイントがまとめられています。
同会議所が実施した中小企業1万社へのアンケートによれば、2020年に19.6%だった従業員承継の割合は、2023年には27.4%まで上昇。一方で、親族内承継は減少傾向にあり、事業承継の多様化が進んでいます。
しかし、従業員承継はまだまだ前例が少なく、親族内承継やM&Aと比べて情報不足や制度的支援の不足といった課題も残されています。そのため、経営者が自ら自社の状況を把握し、事前にリスクや対応策を確認することが求められます。
このチェックシートは、表面にチェック項目と潜在的リスク、裏面には従業員承継の実例を掲載しており、初めて検討する企業にとっても実用的な構成となっています。
【専門家の視点:労務リスクにも目を向けて】
私の専門であるIPO労務支援や就業規則設計の観点からも、従業員承継には重要な労務上の観点が関わってきます。
例えば、
といった点は、従業員承継のスムーズな実現に不可欠です。
単なる「人」の引き継ぎにとどまらず、「組織の労務構造」「ガバナンス体制」までを見据えて準備を進める必要があります。
【まとめ】
事業承継=親族、という時代はすでに過去のものになりつつあります。
特に中小企業にとって、従業員承継は信頼関係をベースにした有効な選択肢の一つです。
東京商工会議所が作成したチェックシートは、これからの承継を考える企業にとって貴重な指針となるはずです。
私の事務所でも、労務面からの従業員承継支援に対応しております。
「承継の準備、何から手をつけたらいいかわからない…」という経営者の方は、どうぞお気軽にご相談ください。
※この記事は東京商工会議所が発表した「従業員承継 チェックシート」公開の情報に基づき、社会保険労務士の視点から法令等を踏まえて解説・編集したものです。商工会議所の公式資料の転載ではなく、独自の解釈に基づく参考記事としてご覧ください。