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作成日:2025/05/21
年金制度改正法案が国会提出!企業担当者が知っておくべきポイント

先週の金曜日、長らく提出が待たれていた年金制度改正法案(社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案)が、ついに国会に提出されました。2025年の通常国会で審議が予定されており、成立すれば、企業の人事・労務担当者の方々にも少なからず影響が出てくる内容が盛り込まれています。

今回の改正は、現代の多様な働き方やライフスタイルに対応し、高齢期の生活安定と所得再分配機能の強化を目指すものです。主な改正概要は以下の通りです。

T.働き方に中立的で、ライフスタイルの多様化等を踏まえた制度を構築するとともに、高齢期における生活の安定及び所得再分配機能の強化を図るための公的年金制度の見直し

1. 被用者保険の適用拡大等

  • 短時間労働者の適用要件緩和: 令和9年10月1日から令和17年10月1日までの間に、段階的に「賃金要件」が撤廃され、さらに「企業規模要件」も段階的に撤廃されます。これにより、より多くの短時間労働者が社会保険の適用対象となる見込みです。
  • 個人事業所の適用拡大: 常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種が解消され、被用者保険の適用事業所となります。
  • 保険料負担の軽減措置: 適用拡大に伴い、保険料負担割合を変更することで労働者の保険料負担を軽減できるようになります。また、労使折半を超えて事業主が負担した保険料に対し、制度的な支援が導入されます。

2. 在職老齢年金制度の見直し

厚生年金受給権をお持ちで一定の収入がある方が対象となる在職老齢年金制度について、支給停止となる収入基準額が現在の50万円(令和6年度価格)から62万円に引き上げられます。

3. 遺族年金の見直し

  • 男女差の解消と有期給付の導入: 遺族厚生年金の男女差を解消するため、18歳未満の子がいない20〜50代の配偶者は原則5年の有期給付の対象となり、これまで対象外だった60歳未満の男性も新たに支給対象となります。
  • 配慮措置等の新設: 5年経過後の給付継続、死亡分割制度、有期給付加算の新設、収入要件の廃止、中高齢寡婦加算の段階的見直しなど、きめ細やかな配慮措置が講じられます。
  • 子に支給する遺族基礎年金の見直し: 遺族基礎年金の受給権を持たない父母と生計を同じくすることによる支給停止規定が見直されます。

4. 厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の段階的引上げ

将来の給付充実のため、標準報酬月額の上限が現在の65万円から75万円に段階的に引き上げられます。また、最高等級の被保険者が全体に占める割合に基づき上限額を改定できるルールも導入されます。

U.私的年金制度の見直し

  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢上限の引上げ: iDeCoの加入可能年齢の上限が70歳未満に引き上げられます。
  • 企業年金運用の見える化: 厚生労働省が企業年金の運用に関する情報を集約し、公表することになります。

V.その他

  • 子のある年金受給者への保障強化と配偶者加給年金の見直し: 子に係る加算額の引上げ等が行われる一方で、老齢厚生年金の配偶者加給年金の額が見直されます。
  • 外国人の脱退一時金請求制限: 再入国の許可を受けて出国した外国人については、当該許可の有効期間内は脱退一時金を請求できなくなります。
  • マクロ経済スライドの継続: 報酬比例部分のマクロ経済スライドによる給付調整が、次期財政検証の翌年度まで継続されます。

厚生労働省はすでに「年金制度改正法案を国会に提出しました」という特設ページを公開しており、法案の内容が視覚的にも分かりやすくまとめられています。

社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案.pdf

審議はこれから本格化しますが、企業の人事・労務ご担当者の皆様におかれましては、本法案の内容を今のうちからご確認いただくことをお勧めいたします。今後の動向に注視し、必要な対応を検討してまいりましょう。