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作成日:2025/10/03
あなたの悪いウワサを聞いた」転職者“内定取消”した企業に200万円支払い命令 裁判所“噂”で内定取消はNG? 採用判断に潜む企業リスク

先日のYAHOO!ニュース(弁護士JPニュース)の、ある裁判例が話題となりました。転職活動中のAさんが内定を得たにもかかわらず、後になって「前職での悪い噂」を理由に内定を取り消された件です。

最終的に裁判所は「内定取消は無効」と判断し、企業側に対し約200万円の支払い(未払い賃金+慰謝料)を命じました。
本件のポイントは、「噂」のみに基づいて採用判断を覆した企業側の対応の是非にあります。

 

■採用内定の法的位置付け

「内定」と聞くと“仮の採用”のように感じられるかもしれませんが、実は法的には『始期付解約権留保付労働契約』というれっきとした契約とみなされます。つまり、企業が一方的にこれを破棄するには、合理的な理由と社会通念上の相当性が求められるのです(最判S54.7.20 大日本印刷事件)。

 

■内定取消が無効とされた理由

本件では以下の点が重視されました:

l   内定取消の根拠とされた“悪い噂”が、採用決定前から存在していた情報であり、新たな事実ではなかった

l   情報提供者が本人と同部署で働いた経験がなく、発言の信憑性に乏しかった

l   本人から釈明書の提出を受けた上で再面接し、経営陣が納得していたにもかかわらず、再度の取消が行われた

つまり、主観的・感情的な社内意見や噂のみを理由に、内定取消という重大な判断を下したことが、裁判所に否定されたのです。

 

■企業がとるべき対応とは?

この事案は、企業の採用プロセスにおける「判断の重み」と「情報の扱い方」を改めて問い直すものです。

採用段階での“見えないリスク”に対しては、 

l   面接や書類では見えない情報は、バックグラウンドチェックなどのプロセスで慎重に確認 

l   評価に不安がある場合は、入社後の試用期間中でのパフォーマンス観察で対応 

l   特定の社員の私的な意見や噂だけに依拠せず、客観的事実に基づく判断を徹底 

 といったスタンスが必要です。

 

■社労士としての視点

「人を採る」ことは、組織の未来を左右する大きな意思決定である一方で、「採った後にどう支援し、育てるか」もまた、企業の責任の一部です。

今回の件のように、感情的な社内反発や不確かな情報による内定取消は、法的リスクだけでなく、社内の信頼構築や採用ブランディングにも悪影響を及ぼします。

労務リスクを最小化しながら、持続可能な採用活動を実現するために、プロセス設計の段階から私ども社労士が関わることので、この様なリスクを低減することができると、改めて感じさせる事例だと考えました。

 

 

採用や内定取消に関するご相談は、【IPO労務/採用リスク対策】を専門とする当事務所までお気軽にご連絡ください。