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作成日:2025/09/05
【アマゾン配達員訴訟から見る「労働者性」の境界線とは】

95日のYAHOO!ニュースに、「アマゾン配達員は「労働者」か「個人事業主」か? プラットフォーム業界の“働き方”を左右する訴訟の行方」という記事が公開されていました。

 

アマゾンの配送業務を担う配達員が、元請企業との「業務委託契約」を一方的に解除されたことを受け、「これは実質的な解雇であり、労働者としての地位がある」として提訴。さらに、過重な業務にもかかわらず報酬が一定であったことから、残業代の支払いも求めています。

裁判所はこの弁論準備手続の中で、「労基署による“労災認定”を尊重する」と発言し、配達員の「労働者性」を一定程度認める心証を示しました。

 

 なぜこの問題が重要なのか?

私は社会保険労務士として、多くの企業と向き合う中で「雇用か、業務委託か」の判断がいかに難しく、かつ重要かを痛感しています。

形式上は“個人事業主”であっても、実態として会社の指揮命令下で働いている場合、労働法の適用が求められるケースがあります。

 

 企業側が押さえておくべきポイント

本件のような争いを未然に防ぐために、企業には以下のような労務設計が求められます。

(1)業務委託契約の実態チェック 

契約書の整備だけでなく、実際の業務運用との整合性が重要です。

(2)指揮命令の線引き 

成果物の完成に対する責任はどちらにあるのか、勤務時間や勤務場所にどこまで拘束があるのか、業務指示の方法はどうか、などを具体的に整理する必要があります。

(3)労働者性を否定する合理的根拠の明文化 

訴訟リスクを抑えるためには、契約の独立性や自己裁量の範囲についても、日常の業務記録として残しておくことが有効です。

 

 最後に

この裁判の判決がどのような影響をもたらすか、社会的にも注目が集まっていますが、企業にとって大切なのは、いま雇用・委託している人材との関係性を、改めて“実態ベース”で見直すことです。形だけでなく「中身」も伴った契約関係の構築が、これからの時代の人材活用には不可欠です。

労務リスクを最小限にしつつ、公正で持続可能な働き方の設計を共に考えていきましょう。