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作成日:2025/09/01
【約40年ぶりの見直し】労働者性の判断基準が変わる? 厚労省の最新動向を解説

20255月、厚生労働省は「労働基準法における『労働者』に関する研究会」を立ち上げ、労働者性の判断基準の見直しに着手しました。

この見直しが実現すれば、昭和60年以来、約40年ぶりの基準刷新となり、企業の人事・労務管理に大きな影響を与える可能性があります。

 

労働者性見直しの背景:変化する働き方

現在の労働者性の判断基準は、1985年の労働基準法研究会報告をベスに整理されています。しかし近年は、プラットフォームワーカー(例:配達員、家事代行等)のように、従来の雇用形態に当てはまらない働き方が急増しています。

たとえば、形式上は業務委託契約であっても、実態としては企業の指揮命令下にある場合、これを「労働者」として扱うべきかどうかが、頻繁に問題になります。今回の見直しは、こうした実務上の課題に対応するものです。

 

労働者性の基本定義(現行)

労働基準法第9条では、労働者を以下のように定義しています。

>「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」

この定義を補うため、昭和60年の報告では、使用従属性(@指揮監督下の労働かどうか)と、報酬の労務対償性(A労務提供に対して賃金が支払われているか)を主な判断軸とし、以下のような要素を総合的に勘案するよう定めています。

指揮監督関係の判断要素

(1)仕事の依頼・指示に対する諾否の自由の有無

(2)業務遂行方法に対する具体的な指揮命令の有無

(3)勤務時間・場所の拘束があるかどうか

(4)代替性(他人への業務委任や補助者の利用が可能か)

報酬の対償性

(1)使用者の指揮監督の下で一定時間の労働を提供しているか

(2)その労務の対価として報酬が支払われているか

 

また、補強的な判断材料として、事業者性(機材費や報酬体系の特徴)、専属性(その事業者のみに従属しているか)なども考慮されます。

 

今後の見直し方向と論点

厚労省の会議では、次のような課題と提言が挙げられています。

ア) 現行の判断基準は「分かりにくく予見可能性に欠ける」

イ) プラットフォームワーカーや研修医など、労働と教育・委託の境界にあるケスも含めて再整理すべき

ウ) チェックシトの導入など、判断の標準化が必要

エ) 働く人が自らの立場を把握し、適切な相談や支援が受けられる仕組みを整備すべき

 

また、欧州では2024年に「プラットフォーム労働指令」が採択され、労働者性が広く認められました。日本も同様に、配達員や配信者など新しい働き方に即したルル整備が求められています。

 

実務対応:企業はどう備えるべきか?

企業としては、形式的な契約書面だけではなく、実態に即した労務管理が重要です。以下の点を意識することで、後のトラブルを防ぎやすくなります。

 

チェックポイント

 

観点

確認事項

指揮監督

業務内容・時間・場所の指定が恒常的に行われていないか?

報酬体系

成果報酬に見えても、時間拘束との関係性はないか?

自由度

業務の拒否が可能か?本人に裁量があるか?

契約形態

業務委託契約であっても、社会保険回避目的になっていないか?



出典:厚生労働省「令和7311日第195回労働条件分科会資料2」より引用


今後、労働者性の明確化が企業経営を左右する時代へ

契約形態を問わず、実態が「使用従属関係」にあれば、企業には労働法上の義務が発生します。

また、フリーランス保護法の制定や副業の拡大など、働き方の多様化が加速する中で、労働者性の誤認は行政指導や訴訟リスクに直結します。

 

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三重総合社労士事務所では、最新の法令動向をふまえた契約書・就業規則の整備支援、フリーランス・委託契約の適正運用アドバイスまで、幅広く対応しております。

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