日本版同一労働同一賃金の企業対応について
日本版同一労働同一賃金の企業対応について
これが改正され、法律名も「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改選に関する法律」と変更になります。
以下、この法律名を「短時間労働者・有期労働契約者法」と言いますが、この中に関連する条文が、この「同一労働同一賃金」に関する内容になります。それが、パートタイム・有期雇用労働法第8条及び第9条であり、2020年4月1日より施行されます(中小企業は2021年4月1日施行)。
この内容が、同一労働同一賃金に関するものであり、欧州のものと異なる日本独自の内容として、新たに動き始めるのです。
これにより、この頁は、企業がこの先何を行う必要があるのか、その表面に触れてみたいと思います。
1.条文を確認してみましょう。
第8条は、不合理な待遇差を禁止した均衡待遇規定、第9条は差別的取扱を禁止した均等待遇規定であり、期間の定めのない従業員(「無期雇用フルタイム社員」を指す。)と期間の定めのある従業員(いわゆる「契約社員」や「パートタイマー」。)との間で、その労働条件に差異が存在する場合においては、これらの対応が求められます。
※「不合理の意味」
「労働契約法第20条は、『不合理と認められるものであってはならない』と規定しており、同規定は、労働協約や就業規則、個別契約によって律せられる有期雇用労働者の労働条件が、無期雇用労働者の労働条件に比して、法的に否認すべき内容ないし程度で不公正に低いものであることを禁止すると解される。」(大阪地裁平成30年1月24日 大阪医科薬科大学事件)
2.企業が抑えておきたいポイント
先ず、ここで企業が抑えておきたいポイントは、第8条は、現行法の労働契約法にある第20条の規定の考え方が、現行法のパートタイム労働法第8条と統合され、新法は、その適用範囲を「短時間労働者・有期労働契約者」としたことです。
これは、平成31年1月30日基発第0130第1号に明確に記されており、その抜粋内容は、
つまり、労働契約法第20条の考え方が無くなるのではなく、短時間労働・有期労働契約法第8条にそのまま受け継がれている、ということを表します。
⑴ 労働契約法関係(平成24年8月10日基発0810第2号)
⑵ パートタイム労働法関係(平成26年7月24日雇児発0724第1号)
⑶ パートタイム・有期雇用労働法関係(平成31年1月30日基発0130第1号)
3.誰と誰を比較するのか
これは、平成31年1月30日基発第0130第1号に明確に記されており、この点も確認しておきましょう。
「通常の労働者」とは、同一の事業主に雇用される正社員(無期雇用フルタイム労働者)をいいます。無期雇用フルタイム労働者とは、事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者をいいます。
通常の労働者の中にも、総合者、一般職、限定正社員など様々な雇用管理区分がありますが、その比較対象とする正社員は「会社側が選定」することになります。
4.何を以て比較するか
そして、上記対象者間において、何を以て比較するかということですが、この点は良く耳にしている箇所と思いますが、それは、
1.従事する業務の内容
- 業務内容や役割における差異の有無及び程度
- 業務量(残業時間)や休日労働、深夜労働の有意な差
- 臨時対応業務などの差
2. 責任の程度
- 業務に伴う責任や差異の有無及び程度(単独で決裁できる金額の範囲、管理する部下の人数、決裁権限の範囲、職場において求められる役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応、売上目標、成果への期待度業績や成果に対する責任の有無・程度、責任の差異が人事考課に反映されているか、数字を伴う「結果」について責任を負う立場か、上司の指示を守るなどの「行動」責任を負う立場かなど)
- 人事考課の差異
3.配置の変更の範囲
- 配転(業務や職種変更、転勤)、出向、昇格、降格、人材登用等における差異(実態重視)
4.その他の事情
- 正社員登用制度の有無・実績、労働組合やその他労使間での交渉状況、従業員への説明状況、労使慣行、経営状況、正社員登用等の処遇向上に通じる措置の実施状況や実績、非正規労働者が定年後再雇用された者であるか等
となります。
第8条は「1」、「2」、「3」の三種類の内容を考慮しますが、第9条は「1」と「2」だけで判断します。
ここで、企業が絶対に対応しておく必要があるのは、『第9条に関する対応』です。第9条は、差別取扱禁止条文ですから、労働条件に差異があること自体を禁止する内容であり、直ちにその対策をしっかりとしておく必要があります。
何を注意すべきか、その詳細や対策は、当職がコンサルタント業務を行う中で、ご説明させていただきます。
※ 厚生労働省 職務分類表
※ 要考慮三要素に基づき対比すべき具体的事項2
また、現行パートタイム労働法第9条は従来からありましたが、同法違反においては企業名公表のペナルティがありました。
新パートタイム・有期雇用労働法第8条には、この企業名公表はありませんが、同第9条は引き続き企業名公表はあります。
5.新パートタイム・有期雇用労働法第14条
加えて、新パートタイム・有期雇用労働法第14条にも注意が必要です。
2 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第6条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
3 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
ここで注意すべきは、この第14条2項に基づいて会社が説明をできない場合、第8条違反が想定されてしまうことと、当職は考えます。
この点も無視できない事項と考えます。
6.同一労働同一賃金ガイドライン
最後に、同一労働同一賃金ガイドラインも併せて確認しておくことが必要です。
平成30年12月28日付「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(厚生労働省告示第430号)」が公開されており、これには、同一労働同一賃金を考える上での基本的な考え方及び具体例が示されております。
以下、厚生労働省のホームページから抜粋した「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要図です。(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html)
この指針において基本的な考え方には、こう示されております。
そのキーワードを読み落とすことなく、この指針を確認することで、日本版同一労働同一賃金の企業対応にかかる対応が、見えてくると考えます。
この点も、当職は、コンサルタント業務の中で明らかにして、どう対応していくべきか当職の考えを示して参ります。